追伸
思いの外、長く滞在したヌーア族の要塞。ラウダ達は惜しまれながらも、この地を後にする。ガリは涙を溜めながら人々と握手を交わし、ラウダは子供達に囲まれた。
ピーノはそれらの人々を静かに見つめていた。
縁と呼ばれるものは何とも不思議だ。偶然に立ち寄ったこの地だが、ここに来たことで小さな変化が起き始めている。
ラウダの迷いは一つの方向に動き出し、ウンブラとガリの心にも違う色が出始めている。
人生において、偶然の出会いや出来事がその後を大きく変えることがある。最初は水面に投げかけられた小さな波紋であっても、やがて波を起こし、大きなうねりへと変え、突き動かす。
その偶然は、本当にたまたまなのだろうか?
「ヴィサスの良心よ、最後まであの子達を見守るのだぞ」
カカルはピーノに冷ややかな視線を向けた。
「はい、必ず」
表情を変えることなく、その人形は丁寧に会釈した。
「お前の筋道通りに行くかのぉ?」
老婆の非難にも似た声色にも、人形は表情を崩さない。
「さぁ?どうでしょう??あのお方の血を引く者。想定内には収まらないでしょう」
ピーノは僅かに微笑んだ。
それを見逃さないカカルは、微妙な表情を浮かべた。




