23.レオナルドの驚き
店から出ると、レオナルドはラウダと並んで街を見て歩く。エレクトロは昼は殺風景だったが、夜になると華やかに変わった。ネオンがキラキラと光かり、着飾った女性達が店の前に立つ。昼間の肉体労働を終えた男達が吸い込まれるように、会食店に入っていく。フロアでは、酒と肴が振る舞われている。
「道あってるのか?歓楽街に入ってきてるぞ」
「ガリに貰った地図の通りだ。今日は祭りでもあるのか?凄い騒ぎだな?」
「え?マジで言ってんの?歓楽街だっつーの!」
「え?飯食うとこだろ?」
「……いや、男が遊びに来るとこだよ」
「賭け事でもするのか?」
ラウダは横の男を信じられないと言う目で見た。
「男がやりにくるんだよ」
「なにを?」
ラウダの口からはそれ以上は言えなかった。王子様が横を歩いている……。
「あーやりたいことをだよ。人それぞれだ」
「へぇ、趣味の集まりなんだな!凄いな!」
ラウダは頭を抱えていた。兵士なら普通に来るところだ。何者なんだこの男は……。
特に意識していなかったが、周りの人々の動きが艶かしく。ラウダは居心地が悪くなってきた。
「ラウダ、俺から離れるなよ」
レオナルドの表情が厳しくなった。そして、ラウダを傍に引き寄せた。
「なっ!なにすんだよ!!」
ラウダは顔を真っ赤にした。胸が動悸を打った。
「しっ!尾けられてる……」
レオナルドは三カ所に神経を集中する。ラウダも我を取り戻した。確かに異様な視線を感じた。
「とりあえず、人混みに紛れるぞ」
レオナルドはラウダの腕を掴むと、人が集まる中をかき分けていく。美しい娘達が男を取り囲んでいた。
「お兄さん達!寄ってかない?綺麗な顔してるから、安く相手してあげるわよ!」
化粧が濃い女がレオナルドの肩を掴んだ。レオナルドは和やかに笑いかける。
「俺はとくにやりたいこともないので、断る。趣味も特にない」
「はぁ?」
ラウダは苦笑いをする。2人は間をぬって先を進む。
ガツ!
ラウダはレオナルドと反対側の腕を掴まれ、路地の間に引っ張られた。
「ラウダ!」
レオナルドは一瞬手を離してしまった。慌ててラウダを追いかける。
そのレオナルドの声に1人の男が反応した。白いローブを被った男だ。その男はラウダの姿を確認すると、その後を追った。
ラウダは捕まれた手を振り解くと、路地を奥へと駆け抜ける。
表通りとは違い、裏道は暗くてジメジメしていた。緩い坂道を必死で駆ける。それの傾斜は徐々にきつくなった。そして、後ろから3〜5人の男が追いかけてくる。
(何者だ?アイツらアクア語で話している……軍人か?)
ラウダは走りながら、目に入った長い棒を手に取った。それを持ちながら走り抜けた。
ひたすら走り抜けると広場のような場所に行き着いた。その先は崖だった。
つまり、行き止まりだ。
「ラウダ!」
レオナルドは男達に蹴りを入れると、ラウダの傍に並んだ。
「お前はインフィニタの軍師だな?我々と来てもらおう」
男の1人がアクア語で話した。
「何者だ?」
レオナルドはラウダを後ろに隠す。
「お前には関係ない」
男達は懐から拳銃を出した。レオナルドも懐から拳銃を出す。
「お前が一発撃つと、俺たちが何発撃つと思ってるんだ?」
レオナルドは和やかに笑う。
「あんたらの銃、いい銃だよな?最新の電子自動充填式。打てたら速いだろうな?打ってみろよ」
男が手元を見ると、エラーが出ていた。それに慌てて他の者も確認する。
「お前!何やった!!」
「あんたら懲りないな?あ!学ばないってやつか?」
「磁気か?」
ラウダの言葉にレオナルドは頷く。走りながら、一人一人に試しに磁気を当てていた。その冷静な動きに、ラウダはレオナルドを見上げた。月の光でレオナルドの瞳がとても綺麗に見えた。
男達は拳銃を捨てると、腰の剣を一斉に引き抜いた。
パン!
レオナルドは1人に向けて発砲した。しかし、瞬時に交わされた。レオナルドは拳銃を懐に戻すと、腰の剣を同じく抜いた。
「お前ら、あの金髪は殺してもいい。赤毛はダメだ!生かして御前に届けろ!」
1人の男が叫んだ。一斉に切りかかる。レオナルドは交わしながら切り付けていく。ラウダも棒を握ると男達と戦う。2対5では分が悪い。
スーッ
ラウダの横に白いローブの男が並んだ。レオナルドはしまったと焦った。
「心配するな。敵ではない」
そのローブの男は静かに答えると、軽々と男の1人を交わし、胸に剣を突き刺した。それは余りにも優雅な動きだった。ラウダは目を見張る。
「ラウダ姫、お迎えにあがりました」
ローブの男は、ラウダだけに聞こえるように耳元で囁いた。ラウダは大きく目を見開く。
(姫だと!)
別の男が、ローブの男に切り付けた。ローブの男はラウダを後ろに隠し、軽く身を交わした。そして、その男の首を掻っ切った。躊躇は全くなかった。その反動で、男のローブが肩に落ち、その顔があわらになった。
(銀色の髪と瞳、神々しい美しさだな……)
ラウダは思わず見惚れてしまった。うっかりして、崖から足を踏み外した。レオナルドは瞬時に走り、ラウダを抱き寄せてた。何とか崖から離れる。そこに男の1人が切り付けてきた。レオナルドはとっさに腕で受けようとする。
「やめろ!」
ラウダはレオナルドを突き飛ばして、正面にでた。
ザクリ!
ラウダの胸が切り付けられた。
「お前!何やってるんだ!!」
リーダーらしき男が怒鳴った。
ザクリ!!!
レオナルドはラウダを受け止めると、相手の男を思い切り刺した。
ローブの男は振り返ると、目を見開いた。その瞳は怒りに燃えている。
「お前!その子を連れて逃げろ!!私が後始末をしておく!早く手当をしてもらえ!!」
そう言うと、凄い速さで男を切っていく。応援で次々と男が来ているが、ローブの男には敵わなかった。
「あんた!こっちに来な!!」
近くの家の扉が開いた。そこから女が手招きをしている。レオナルドはラウダを抱えると、その女の元に走った。
それを確認すると、銀色の髪を靡かせながら男は冷ややかに微笑んだ。
「よくも私の姫を傷つけてくれたな?報いは受けてもらわねばな?」
「お前は何者だ?」
「卑しい奴らに答えてやる必要はない」
銀色の瞳は真っ直ぐに男達を見据えている。それは冷ややかな怒りだった。
アウロラ区の次期主力、ファミリアだった。




