古書2 ~本文・印刷用データ~
自分の文章を印刷された活字で見た経験はありますか? 死ぬほどテンションが上がりますのでオススメです。(挨拶)
『小説家になろう』で、ネット上で全世界の誰もが見られる形の『活字』になったのを見るのも、よいものですが。
印刷・製本はまた違うんですよ……。
なんだかこう……じわじわ来るんです。
自力での『自主製本』は、1冊から対応していますし、部数を増やせば安くなるから大量注文して爆死とか、そういう切ない事もありません。
……というかむしろ、部数を増やすのに向いてないかもしれない。
今回は、一点限りという事で、全力で製本に凝ったバージョンですね。
しかし、製本の前に、まず必要なものがあります。
それは、小説本文の『印刷用』データ。
適当に流し込んで印刷! で終える方はここで終了です。お疲れさまでした。
そうでない方は……製本用に必要な空白の幅を見た目重視で考えたり、文字数や行数や行間をどうするか考えたり、千を超えるルビを処理したり、まだ誤字報告されずに眠っていた誤字を掘り出して背筋を冷やしたり、行終わりの文字にこだわったりして……ぜひともご一緒に、印刷沼という名の地獄をチラ見しましょう。
楽しいですよ?
……あ、印刷所に原稿を渡して終える方もここで終了です。お疲れさまでした。
でも、今少し下界の様子をのぞき見していかれてはいかがでしょう。
今すぐ必要にならなくても、知識を入れるのは楽しいですよ。
……なお、今日のコンセプトは、
「自分がもう一度必要になった時にこれを見れば同じやり方で本を作れる」
です。
なので、需要は定かではありません……が、私は、自分がそれをやるかどうかに関係なく、好きで何かを作っている人を見るのが好きです。
・本文データ作成
結論から言うと、データの編集・印刷に使用したソフトは、『LibreOffice Writer』です。
テキストデータそのものはあっても、それだけで『本』にはなりません。
押さえるべきポイントは……。
・縦書き/横書き
・1話の扱い
・フォント
・行数・文字数の設定
・ページスタイル(総合レイアウト)
・目次
・挿絵
・ルビ(次回)
……といった所でしょうか。
今回は「挿絵」というほどのものはありませんが、イラストもあります。
順番に解説を入れていきたいと思います。
・縦書き/横書き
今回は「横書き」にしました。
英語などはそうですし、洋書感もあります。
考えるべき事には言語もあるのですが、今回は日本語で。
言語変換すると洋書らしさは出るかもしれません。
ちゃんと英訳する方は……うん、頑張って下さい。無責任な応援を贈ります。
横書きの場合、左ページ→右ページとなります。
縦書きだとまた小説らしさもありますね。
ルビの振り方が違ったり。
『小説家になろう』は、横書き(ページ閲覧)と、縦書き(PDF)という、二通りの読み方がありますので、好きな方でいいと思います。
元々、『病毒の王』は一応横書きをデフォルトにしていますが、縦書きでひどく崩れるような書き方はしていないつもりです。
ちなみに個人的な意見ですが、「A4」のような大判本だと横書きの方が読みやすい気もします。
日本語の本では、図鑑や写真集とかが多いでしょうか。
文庫本とかだと縦書きの方が好き……。
……いや、あまり日本語で横書きの文庫本って知りませんが。
当初は「A5」にしようと思っていたのですが、A5だとどちらがいいのかは迷う所。
洋書っぽさを求めるなら横書きですが、読みやすさは縦書きの方が上のようにも思います。
まあ、好みです!
好みで選んではいけない事もありますが、好みでしか選べない事もある。
今回は自主製本なので、全部好みで選んでいいのです。
・1話の扱い
『小説家になろう』では、1話ごとにサブタイトルを付ける形になっています。
この扱いをどうするか、という事になるのですが。
今回はそのままです。
・フォント
好みのフォントを選びましょう。
……って言ったらざっくりすぎでしょうか。
目次が「HG明朝E」、「16pt」、「9pt」。
サブタイトルが同じく、「HG明朝E」、「16pt」。
本文が「源暎アンチック v5」、「8pt」。
「pt」は、『LibreOffice Writer』でのサイズ単位です。
……ポイント?
「8pt」が、文庫本のよくあるサイズっぽい……気がします。
大判本ですが、少し小さめです。
文字サイズの選択基準は読みやすさ……ですが、膨れ上がっていくページ数を少しでも圧縮したかったというのもあります。
・行数・文字数の設定
行数、そして文字数は、フォントサイズと密接に関わってきます。
紙のサイズにもよりますね。
ライトノベルにも色々ですが、文庫本では1ページ「17行」・1行あたり「34文字」程度が、私の思う読みやすい行数・文字数でしょうか。
レーベルによりますが、だいたいこの辺だと思います。
『小説家になろう』はちょっと特殊で、「行数無制限」・1行あたり「37文字」です。
(※少なくともPC版は。縦書きPDFはまた違います)
今回は、1ページ「65行」・1行あたり「53文字」となっています。
……えらい特殊フォーマットですね。
これは、膨れ上がっていくページ数を少しでも圧縮したかったというのもあります。
(2回目)
・ページのレイアウト(総合まとめ)
※「書式」→「ページスタイル」→「行数と文字数」。
文字数・行数・文字サイズ。
これは『LibreOffice Writer』特有の(謎)仕様なのですが……フォントサイズと行数・文字数が、それぞれ影響し合うと言いますか……。
フォントサイズを決めると、行数や文字数にある程度制限が掛かる。
……まあ、普通のレイアウトの本を作ろうという場合は、それほど問題にならないと思います。
コツは、まず文字サイズを決める事。
そして、ルビの文字サイズ=本文の文字サイズ÷2、とする事。
基本の文字サイズは「8pt」、ルビサイズは「4pt」です。
フォントにも印象を左右されるので、最初に決めておくと楽です。
また、グリッド線周りのチェックは外しておきます。
一回「グリッド線の表示」をクリックして、有効にした上で「グリッド線を印刷する」を無効にするとかしたような気がする……。
※「書式」→「ページスタイル」→「ページ」
ページの用紙サイズ。
それと、上下左右の空白ですね。
「用紙サイズ」はA4と決まっていますね。「幅」・「高さ」も同様です。
それと「印刷の向き」は「縦」。
「文字の方向」は「左から右へ(横書き)」。
ちなみに「ページレイアウト」「番号」などはデフォルトです。
「余白」は、左右3cmずつ、上下1cmずつ。
左右を大きく取ると、ちょっと『小説家になろう』らしいかな? と思ったりもします。
製本の都合上、左右は大きめに取っておいた方が安全というのも大きいです。
特に今回は大判本なので……。
※「書式」→「ページスタイル」→「フッター」
『LibreOffice Writer』では、ヘッダーとフッターという設定項目があります。
ヘッダーは上側、フッターは下側に、テキストや画像を配置する空間ですね。
今回は、フッターにページ番号を入れています。
今回は、ヘッダーは未設定です……が、サブタイトルのためにヘッダーを入れた方が良かったのかな?
今回は、フォントサイズの拡大で対応させています。
ただ、大判本なので、上の方の余白が大きい方が(そしてサブタイトルと同じサイズの空白がある方が)読みやすかったかな……とか。
……ただ、ページ数がさらに増えそうなので、これはこれで良かったような気もしますね。
・目次
要らないと思えば要らない……それが目次。
今回は、大判本かつ、『病毒の王 EX』は、全27話で構成される短編集のような、小エピソードをまとめた完結後番外編……という形なので採用しています。
一応、自分が読みたい時に読めるといいなあ、と思って作っているので、読みたいエピソードのページが分かるようにしています。
また、「見出し番号」を自動で対応させる方法もある……のですが、今回は不採用。
色々とやっている内によく分からなくなった。
なのでページ番号自体は手動入力です。
※「書式」→「ページスタイル」→「ページ」
目次用のページスタイルも当然A4で、前後2cmずつ空白を取っています。
文字数と行数指定は「なし」で。
※目次の段落スタイルより。「配置」
配置は「中央」。左右の幅を大きく取る形になります。
※目次の段落スタイルより。「タブ」
一番影響が大きいのは、この「タブ」。
「配置」・「種類」・「リーダー」という3項目が主に影響します。
「配置」のサイズはかなり適当……いえ、丁度いいという意味ですよ?
なんとなく現物合わせで数字を弄った結果辿り着いた数字なので……理論的な事は説明できない……。
言ってしまうと、それぞれの項目に、『自分が気持ちいいと思う数字』が入るまで、仮の数字を入れていく事が大事だと思います。
ほどほどの所で、自分が納得する、美しさが生まれる……といいな。(願望)
「種類」も、変えると見た目が変わる……のですが、文章で上手く説明できない……。
個人的にいい感じになったのは「右/下(T)」。
「リーダー」が一番説明しやすい。サブタイトルとページ数を繋げています。
今回は「--------」(多分)。
もちろん選択基準は好みです。
面白いのは、「文字(H)」。
特定の文字で、サブタイトルとページ数を繋げられます。
……どの文字を入れれば面白いかはよく分からないのですけど。
・挿絵
今回は、『小説家になろう』で掲載している挿絵イラストは使用していません……が、最初のページに何もないのも寂しいなーと思いまして、タイトルページを作ってみました。
※使用データに黒枠を追加。
イラストは、『短剣をくわえた蛇』です。
『病毒の王』内では、主人公の"病毒の王"及び、彼女が率いる魔王軍の一軍である"第六軍"の紋章として登場します。
辞書に使われているような、ちょっと妙なモノクロイラストのイメージです。
どんな感じだったかなーと、辞書を開いてみる。
……あれ、私の持ってる辞書、イラストないな?
イメージの元が分からないの怖い。
……まあ、とりあえずイラストを用意します。
そして、好きなフォントでタイトルを入れます。
使用フォントは、「A-LoD-Title-001」。オリジナルフォントです。
昔、フォントを作りたくなった事がありまして。
その遺産が、今でも「好きなフォントを作れる」という形で残って……いるんですけど、記憶が風化してロストテクノロジー化してきた。
私にとっての製作記は、自分の技術が、自分にとってロストテクノロジー化していく事への抵抗でもあります。
……なぜか忘れるんですよね?
作業量が膨大なせいかな。
つらい作業が多いせいかな。
まあ、それはさておき。
『LibreOffice Writer』への画像の入れ方は、「挿入(I)」→「画像(I)」で画像を入れた後、画像を右クリック、「プロパティ」→「種類」からサイズをA4に合わせます。
……元々イラストは、A4サイズで作っておいたはずなので、サイズ合わせがちゃんとできていたら、最後の合わせる作業は要らないかもしれない。
・オマケ(行末・行頭文字)
これはシステム面とは少し違いますが、行末文字の処理が『小説家になろう』と『LibreOffice Writer』では異なります。
分かりやすいのは『…』とか。
『……』が分割されて、行末と行頭に配置されてしまったりします。
『小説家になろう』では、通常の横書きページと縦書きPDFで表示が変わるので、普段は行末文字の処理のために特別な改行などはしていません。
閲覧環境ごとに変えるような器用な真似ができない以上、無理はしない方がいいという判断です。表示が崩れる元。
ただ、今回は印刷なのでそれができる!
そんなわけで、『……』や、単語が途中で分割されないようになど、ちょいちょい処理を入れています。
段落がページをまたがないようにしたり、強調したいセリフを次のページに回したりなど。
このあたりは賛否が分かれる所かもしれません。
言った通り、フォーマットを変えた時に崩れる元なのでー……。
ある程度は、語句の変更や句読点で調整できたりもしますが、限界もありますね。
やっぱり好みとしか言えない。
でも、創作に好みを持ち込まないと地獄だとは思います。
持ち込んでも、こだわりのあまり地獄を見たりするのですが、それもまた楽しい……ですよね?
次回は「古書3 ~本文・ルビ~」です。