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自作小説をなるべく低予算で古書(魔導書)っぽく、ハードカバー&革装丁……風の布装丁で自主製本するエッセイ 【病毒の王】/製作記(写真あり)  作者: 水木あおい
羽根ペン

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23/25

羽根ペン&ペンスタンド1 ~羽根ペン~



 羽根ペンって憧れですよね。(挨拶)



 いいですよね、羽根ペン。


 羽軸を削ってインクをつける「つけペン」も、普通のペンの後ろに羽根がついただけの「羽根飾りペン」も、どちらも好きです。



 と言いつつ、今回は「羽根飾りペン風オブジェ」なんですけど。




挿絵(By みてみん)



 "古書"の上に無造作に置いたりすると、雰囲気満点。


 羽根ペンを無造作に本の上に置くってどういうシチュ? 


 ……というツッコミは禁止です。





・完成形




挿絵(By みてみん)



 いろいろやるとこうなります。


 羽根ペン・スタンドの二部構成で、製作記パートはお送りする予定です。





・ラフ




挿絵(By みてみん)



 色合いとか形状とかデザインとか……なんとなくイメージを固めるための作業。


 厳密な比率、レイヤー分けなど、あまり細かい事は考えず、ガシガシと描いていきます。


 後は、このラフを参考にしつつ作業を進めていきます。


 サイズ感など、違う所もありますが、おおむねラフのイメージ通り、と言ってもいいのではないでしょうか。



 まずは羽根ペンから作っていきます。





・羽根



 羽根は多分トンビの羽根。猛禽類の羽根っていいですよね。


 これは、今住んでいる町で初めて拾ったトンビの羽根です。


 その後もちょくちょく拾っているのですが、これが一番、形・状態、共に最高品質と言ってもいいでしょう。



 なので「一号機」から剥ぎ取られる。



 そういうわけでこれは、「二号機」ですね。


 「一号機」が気になった方は、『病毒の王』の2章終わりの製作記系番外編、『番外編・「レベッカの羽根ペン/製作記」 』よりどうぞ。(宣伝)





・ペン軸




挿絵(By みてみん)



 細かい模様が素敵ですね、と自画自賛してみる。


 彫金で好きなところは、やはりその緻密さと、繊細さでしょうか。


 金属の強度がそれを可能にします。



 まあ、これ金属ではないんですけど……。



 ……うん、金属でこれを作るのは無理。

 私に金属加工技術はありません。


 欲しいとは思っているスキルなのですが、中々……ですね。


 では、何で出来ているのかと言うと、こんな感じ。↓




挿絵(By みてみん)



 軸そのものはストローと、布ですね。


 ストローに、袋状にした布をはめています。

 その、布で覆われたストローに、羽根を差し込む形です。


 さらに糸を縫い付けて、模様を表現します。



 つまり、この模様、刺繍されてるんですよ。



 なんでこんな手法を思いついたかと言うと――


 ……ここで思いついた時のエピソードを語る事が出来れば格好いいだろうな、とは思うのですが、まったく思い出せない。


 特に、何かを見て連想したとか、そういう理由はないみたいです。


 でも、刺繍は良家の子女のたしなみですもの。



 私に刺繍スキルはありませんでしたが。



 いやほら、私、良家の子女ではありませんもの。

 そもそも今時の良家の子女が、刺繍スキルを標準装備しているのかも謎です。


 まあとにかく、刺繍スキルが欲しいわけですね。


 それも早急に。



 ……本っていいですよね。知識が詰まってますよね。



 良さそうな本を19冊読んで、刺繍に何ができるかをなんとなく脳に叩き込む。


 そして、それを自分にできそうな形にまで落とし込む。


 刺繍本――それも初心者向け――が、さらりと「基本の16ステッチ」なんて、ひどいパターン数を基本と言い切ってくるのは、ちょっと置いておきましょう。


 情報量に圧倒されるのは初心者の悪い癖です。


 多くの本に共通する基本の中から、「自分にできそうな」ステッチの技法をいくつか選び、さらにその中から、「今自分がしたい事に必要そうな」ものを絞る。



 「ストレート」。

 「アウトライン」。

 「サテン」。

 「レゼーデジー」。

 「チェーン」。

 「フレンチノット」。

 「コーチング」。



※「・ステッチ」省略


 

 以上が、選んだ7パターンです。



 数を絞ると、いける気がしてきましたね。


 本当にいけるかは、テストとその結果次第。


 テストは最低限のみで、後は実践です。



 ……何度目か分からないけれど、『実戦テスト』って言葉が頭をよぎる。





・ステッチパターン




挿絵(By みてみん)



 ステッチパターンとは、刺繍の設計図です。



 今回は、だいぶざっくり。



 一応、どの技法でどこを縫うかだけは決めておく。


 初心者のくせに、おおむね8cm×2cmに収めようというらしい。


 ふざけた設計しよるわ、とこのステッチパターンで実戦テストやらされる身としては、色々と言いたい事もあるのですが……。



 ……同時にそういう設計が大好物だったりする。


 

 やりがい搾取の構図を見たような気がしつつ、本人の設計で本人が苦労するのは、これは多分もう、仕方ない。




挿絵(By みてみん)



 パターンに従って、布に白い色鉛筆で描き込みます。





・刺繍



 

~刺繍中~



 おおむね、ちまちまとした作業。


 こういう作業は好きです。



 『得意』ではないんですけど。



 特に上手でも、あまりにも下手でもなく……。


 そんな風にステッチパターンとにらめっこしながら縫っていく中で、ふと違和感を覚える。


 そっと定規を取り出し、おそるおそる当ててみる。



 ……なんで「9cm」あるのかな?



 設計図では8cmだよ?


 ……まあ、布に正確な図を引く事すら難しいですからね。


 1cmのズレは作業精度の問題と言うより、頭の悪さの問題ですけど。



 今回は……9cmでもいい事にしましょう。



 羽根に合わせた設計ですが、逆に言えば羽根にサイズ感が合いさえすればいいので、多少融通が利くところでもあります。


 ……まあとにかく!




挿絵(By みてみん)



 刺繍完了!


 後は、これを袋状に縫う!



 ……メモのために手に取ったシャープペンシルが、上手く掴めずに、ころん、と転がり落ちる。



 ……あかん。無理。


 刺繍枠なしで刺繍していたせいか、手にうまく力が入らない……。


 作業中は集中していると言えば聞こえはいいのですが、どこまですれば壊れるか、限界を分かってない感ある。


 まあキーボードを打つぐらいの力は残っているので限界は超えていませんが、これ以上、繊細な作業は無理ですね。


 明日できる事は明日やりましょう。それがいい。





・袋状に縫う



 というわけで翌日です。


 本当はミシンを使いたい。

 ……が、よく言えば繊細、悪く言えばアホみたいな設計なので、これをミシンで縫えるような技術は私にはない。


 刺繍の表面を内側にして、袋状にします。




挿絵(By みてみん)



 ……病んでないですよ。

 多分。


 手持ちのまち針を多めにぐさぐさして、手縫いで。


 ……何かに似ている気がする。




 ……ハルキゲニアだ。




※カンブリア紀の古生物の一種です。


※アノマロカリスが好きです。





・袋をひっくり返す(意味:地獄を見る)




反省会:直径2cmの袋(刺繍&折り込みあり)を簡単にひっくり返せると思うのはやめましょう。





挿絵(By みてみん)



 こんな風な袋を、ひっくり返すだけです。



 ボトルカバーとか小さいバッグなどに使われる、ごく一般的な手法です。


 とっても簡単なのに、完成品は縫い目が裏に隠れて様になるのと、ひっくり返すのが楽しい、素敵な手法でもあります。



 あ゛ー、なんで形状的には可能だからって、スケールダウンさせてまだ、普通にできると思うのかなー。



 途中で何度、糸をほどいて、布をストローに貼り付けて、継ぎ目は後でどうにか誤魔化す方式にしようと思ったか……。


 ……いっそ、この作業が「不可能」なら。

 それを「自分にできない」と思えたなら。


 このプランを廃棄できたものを。

 諦められたものを。



 ……なまじ「少しずつは進む」だけに、その決断も下せない……。



 1cm進むのに、5分ぐらいかかる気がする……。(余分入れて13cm)


 後、余分が長い! 2cmも要らん!! 1cmで十分すぎる!!!


 布が固い! 刺繍の事しか考えてない!! ひっくり返す人の事も考えろ!!!

(※同一人物)


 刺繍が……ピンセットに引っ掛かるううううあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?


 せめて……せめて、折り込み側を先にひっくり返せよ馬鹿ぁ……。


 折り込みが……折り込みがひっかかる……ひっかかかかかか。





挿絵(By みてみん)




 終わっ……たああああああああああああああ!!!





 以上、リアルタイムのメモより、無編集でお送りしました。



 休憩を兼ねて、心の中の闇を吐き出しています。(吐き出しすぎ)



 クソ設計での無理矢理進行は、人間性が損なわれるタイプの作業。つらい。


 『頭の中に見えている絵』しか燃料がないので、多分この辺が一番きついです。


 作業時間がそれほどでもなかったので、「しんどい工程」のトップ3を惜しくも逃しましたが、瞬間的な精神汚染度がひどい。


 トップ4まで探すなら、多分この作業がランクインします。



 ちなみに、写真と写真の間から算出した作業時間は、1時間14分。



 ……袋状に縫った布を、ひっくり返す『だけ』のはずなのですが。


 ……13cmなので、1cmあたり……5.7分。(端数切り上げ)


 休憩も考えると、「1cm進むのに、5分ぐらいかかる気がする……。」という心の叫びは、割と正確だったみたいです。





・ペン先



 『リバースエンジニアリング』という概念があります。


 ひらたく言うと、「現物から工程を解析し、それを再現する事」ですね。


 そうしなければ分からない事も多いし、これはこれで高度な技術。

 コピー商品の是非とはまったく違う話です。



 ……初期の作品のせいか、ペン先の設計データがなかったので、自分の作品からリバースエンジニアリングする羽目に。



 そして、今回もそれを参考に現物合わせでやっているので、次に使えるようなデータはあまり残っていません。


 ……まあ、二本目の羽根ペンを作る事があるか分かりませんし。


 ……この設計はもう採用したくありませんし……。



 素材は、(多分)ポリスチレンの黒プラ板。



 ……PSって書いてあったらポリスチレンだと信じたい。


 プラ『板』っていうか、トレイ的なもので、形状からして、何か……お総菜とか入ってたんじゃないかなと思うのですが。


 『何か』に使えないかな、と取っておいたらしく、素材置き場から発掘された、唯一の黒プラ板です。


 ……意外にも、我が家には、ほかに黒プラ板がない。


 純正(市販)のプラ板に限っても、透明に白、なんなら赤もあるのに、なぜか黒はない……。


 あれ、持ってなかったっけ? と。




挿絵(By みてみん)



 まあそれはとにかく、ペン先は、過去を参考に切り出して……。


 三角っぽく丸めながら、ストローと布で作ったペン軸へ接着します。


 接着剤は、今回はネイルのトップコート。割と万能感ある。


 刺繍の位置などを調整すると、偶然なのですが、刺繍した模様が、ペンの持ち方をした指にフィットする所があった。




挿絵(By みてみん)



 前は、技術が足りずイメージを実現しきれなかったペン先。

 以前の、厚紙+アルミテープも素朴で嫌いではなかったんですけど、やはり鋭角が違います。


 ……これなら一応つけペンとして使えなくも……ない?




 ちなみに羽根に巻かれているのは黒い縫い糸。

 ネイルのトップコートで接着しています。


 これは以前のクラフトでやったものをそのまま残して再利用しています。





・ペン軸&ペン先・塗装



 塗装はこんな感じ。



1、少し水で薄めた黒アクリルを、メラミンでぽんぽんと。


30分ぐらい乾燥


2、少し水で薄めたメタリックペイント(シルバー)を、メラミンでぽんぽんと。


長めに乾燥


3、うすめ液で薄めたネイルのトップコートを、全体に塗って保護。


長めに乾燥



 以下、写真をまじえて。





挿絵(By みてみん)

※1、少し水で薄めた黒アクリルを、メラミンでぽんぽんと。



 カラーリングを統一し、ちょっぴり金属の質感を出すための下地です。




挿絵(By みてみん)

※2少し水で薄めたメタリックペイント(シルバー)を、メラミンでぽんぽんと。



 ↑のパーツは、羽根部分の飾り。ペン先と同じ素材です。




挿絵(By みてみん)

3、うすめ液で薄めたネイルのトップコートを、全体に塗って保護



 写真は塗り終わって、羽根ペン本体が完成した所。


 もう少し銀っぽくてもよかったかなと思いつつ、くすんだアンティークシルバーの雰囲気になったような気もする。


 ……正解のない工程なので、結果的に気に入ればいいと思います。




 とりあえず羽根ペンはできたので、次はペンスタンドを作ります。


 そういうわけで、次回は「羽根ペン&ペンスタンド2 ~ペンスタンド~」となっています。




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このエッセイを読んで原作に興味が湧いた方は「病毒の王」もよろしくお願いします。

― 新着の感想 ―
[良い点] いつも予想を裏切る素材選びが面白い。 布に刺繍したものがあの質感になるんですね。 そしてまさかあの作業が精神汚染をひきおこすほどのものとは!ww [気になる点] >素材置き場から発掘 と…
[良い点] 今回は全体的に病み要素というか、狂気のテイストが濃かったですね 思わず「窓に!窓に!」と叫びたくなるような発狂具合でした その甲斐あってと言うべきか、羽根ペンはとても素敵に仕上がっていま…
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