書見台4 ~ニス塗り~
ニスを塗るのが好きだ! (挨拶)
……でも、なかなかニスを塗る機会ってないんですよね。
いつか、ニスを塗りたいがために、木工し始めるかもしれない、と少し思うぐらいにはニス塗りが好きです。
いいですよね、ニス塗り。
・ニス塗り
テストの結果を受けて、最終的に書見台本体は、
「ニス(ウォールナット)+コーヒー液」(1:1)
で塗装する事に決定です。
塗装する場所は、迷ったのですがお風呂場で。
湿度が高く埃が立ちにくく。
窓を日常的に開けて換気する事も多く。
有事の際は洗い流せる。
と、条件が整っています。
……ただ、ちょっと寒いですね。(12月)
そんなわけで、お風呂場に塗装環境を構築します。
お風呂の蓋の上にぷちぷちをひいてー。
ぷちぷちの上に新聞紙をひいてー。
はい完成。
……まあ強いて言えばもう少し新聞紙多くてもいいのですが、水性ニスですし。
入浴時には撤収しますので、展開・撤収が楽な方がいいと思います。
そもそも、養生の必要性が薄いのが売りですからね。
まあとにかく、コーヒーニスを作っていきましょう。
電子ばかりを用意します。
ニスを入れ、同量のコーヒー液を入れる事で、1:1の比率にします。
細かい事に気を配る姿勢が大切だと思います。
まずニスをたぱたぱー。
次にコーヒー液をとぱー。
この時、手元が狂ったので、微妙に1:1よりコーヒー液が多い。
……細かい事を気にしない姿勢も大切だと思うんですよね。
まず、天板を塗っていきます。
とりあえず初回は天板のみ。
後でひっくり返して、天板以外の全部を塗る。
ハケはコーヒーニスに浸けっぱなしで、容器ごとラップしておきます。
こう見ると、木目がくっきり出ていて……『ナチュラルなダメージ感』がいいですね。
ダメージ加工なんてまったくやってないんですけども。
いっそわざとらしいひっかき傷や抉れ。
しかし、本当に自然そのままです。
……まあ「書見台としてナチュラルか?」は微妙なのですが。
古材(廃材)のいい所は、ダメージ加工のセンスに関して、「私がやったんじゃない」と思える所かもしれません。
様子を見ていると、三時間ぐらいで乾く……のかな?
もっと早くてもいいかもしれませんが、とりあえず乾燥時間を長めにして後悔する事はあんまりないので、それでいきます。
(※逆はよくあります。いくら早く塗りたくても、乾燥は大事)
だいたい三時間後にひっくりかえして天板以外を塗る。
これは裏側。はみ出た木工用ボンドがちょっと白く浮かび上がっていますが、乾いたらなんとかなります。
木工用ボンドのはみ出しは、本当に大丈夫なのか? と思ったのですが、なんとかなった。
……なぜなんとかなるのかは説明できないし、次になんとかなるのかどうかも自信がない。
次があれば、もうちょっとはみ出さないように気を付けようとは思います。
裏側……元『ありえないミス』部分はこんな感じ。
……普段、あまり見えないのですが。
・二度塗り
私は、二度塗りしていないニスを信用していない……と古書の表紙をニス塗りした際に語りました。
それは木材においても――いえ、むしろ木材だからこそです。
色の濃さも、基本的に重ねる事を想定して決めているので……。
以降は、満足するまでニスを重ね塗りする簡単なお仕事です。
そんなわけで、天板を二度塗り。
四時間半後。
この時間は、乾燥に最適な時間と言うより、他の事をしていた時間と言うべきやつで、深い意味はありません。
同じく、天板以外を二度塗り。
四時間後。
いい色になってきた……。
側面から。
色合いが濃くなって、彫刻ゆえの立体感が、陰影によってさらに引き立てられて……! と、段々見ているだけで楽しくなってくる。
・三度塗り
二度ある事は三度あると言いますし。
とは言え、三度塗りは必須ではありません。
しかし、もうちょっと濃くしたい……という事で、突き進む。
今回は、ニスとコーヒー液が1:1なので、ニスが薄めというのもあります。
三度塗り。天板以外。(寝る前なので、ひっくり返すのが面倒になった)
三時間ぐらい。
三度塗りラスト。天板。
時間がよく分からない。
最終的に、使ったニスの量は50mlぐらい。(ボトルは100ml入り)
思ったより使いませんでした。
ニス塗り作業を総括すると。
あー、ニス塗りたのしい……!
・エイジング
……これはこれで好きなんですけど。
廃材由来のナチュラルダメージによる『アンティーク感』は存分に出てるんですけど。
もう少し経年変化させるのを楽しみましょう。
使うのは、"古書"でも使ったコーヒーメディウム。
釘はニスが乗ってないので、メタルプライマーをちょっとだけぺたぺたと。
"古書"の、リベットや釘と一緒にやります。
ちなみに、使う薬液や塗料を使う機会をなるべく統一すると、少しだけ楽です。
少しだけ。
使う道具は、"古書"と同じく、布。
軽くぽんぽんとしたり、こすったり……。
かなり濃度が薄めなので、そこそこ大胆に。
端や手が当たりそうな場所を意識しつつ、最終的に面倒になって全体にやるまでがワンセット。
ここらの説明は、工程の中でも感覚的なものなので、説明しにくい……。
というか、ニスを含む塗装は手を動かしてのライブ感が楽しいので、あんまり細かい事を考えないのがいいと思います。
……ですが、塗りすぎると後悔するので、ひとさじの自制心を推奨します。
でも、どうせやりすぎないと本当に覚えないので、心の片隅にこの忠告を留めて、後は好きにやるのがいいと思う。
存分に『限界を確かめるための試験』をするべき。
失敗しても「それはそれで味があるよね」と笑って言えるような工程は、とてもとても貴重。
計測とかノコギリとかでそれをやっちまうと……笑えない。
ちなみに塗装全般ですが、見えない所や目立たない所、できれば同じ素材で軽くテストしてから始めると、泣く回数が減ります。
塗料の濃度やブレンド配分をデータで取り、目でも覚えるようにすると、さらに泣く回数が減ります。
……減るだけですけども。
でも、エラーやミスを重ねていく内に、泣きたくなるのを通り越して、なんか笑えてきますから大丈夫ですよ。
大丈夫に聞こえないのは、気のせいですよ。
本当に大丈夫かは、ちょっと自信ない。
・エイジング2
釘は真鍮製なので、 いずれいい感じに古びる……。
……はずなのですが。
まあ待ってられませんよね。
そんなせっかちさんにはエイジング。
真鍮を古びさせるためだけの商品が、この世にはあるんですよ。
私の手元にはないんですけど。
……真鍮アクセとか作るなら、まだ考えるんですけど。
さすがに、その。
釘の頭をちょっと古びさせるためだけに新規購入とか心が死ぬ。
アンティークメディウムで馴染むかなーと思ったんですけど。
正直、物足りない。
……ふむ。
釘の頭だけを、いい感じに黒ずませたい……と。
低予算で。
短時間で。
今すぐ。
(※明日は野外ロケに都合がいい)
よし、アクリル絵の具持ってこい。
黒アクリルを取り出して、つまようじ(先っぽが切られたやつ)もスタンバイ。
さらに、ボンドを拭った時のぼろ布(捨てる前の掃除用)も引っ張り出す。
1、黒アクリルを、先端が平たいつまようじで釘の頭に押しつける。
2、布を当ててしばし待つ。
完成!
……わずかツーアクション。シンプルですね。
まあ、疲れている時は物事はシンプルに行うべき。
中々いい古び具合になったのでは? と隙を見て自画自賛する。
ところで、なぜかこの作業を「天板の見える釘」からやった奴がいるらしいんですよ。
おかしいですね。
テストは「見えにくい部分からやれ」が鉄則ですよね。
天板の裏面に3つ、テスト用として、絶好の釘がありますよね。
上手くいったからいいものの、落としにくいアクリル絵の具で失敗したら、この人、一体どうするつもりだったんでしょう?
……疲れてるんですね。
そういうのが多すぎる……。
……つまり自業自得か、なら仕方ない。うん。
余談ですが、写真がほぼ全滅していたため、まともな工程写真がありません。
……確かこの作業は深夜だったので、手ぶれ補正が役立たずになるぐらい疲れていたみたいです。
・完成
くっきりと出た木目に、木の感触を残しながらも優しい手触り。
丁度いい塩梅で塗られたニス。
私の手元に流れ着くまで刻み込まれた、数々の傷跡。
側面に施された、精緻な彫刻。
日差しに照らされると、刻印された紋様が、陰影の濃淡を伴って柔らかく浮かび上がる。
背面を覗き込むと、陰になったそこにも紋様が刻まれている。
板に一筋走る『割れ』さえも、この書見台に刻まれた歴史の一部のようで。
ああ、全てが報われる気がする……!
あの暑かった素材採取……。(8月の、人気のない時間=炎天下)
地味に面倒な洗浄&乾燥……。
ありえないミスが眠っていた計測……。
丁寧にやれば水平を取れるくせに、断面が斜めになりがちなノコギリ……。
何枚板を切っても終わらない気がしてくるノコギリ……。
指が折れそうにさえ思えた彫刻……。
動かなくなり始めた右手を、左手を使って動かして彫り込んだライン彫刻……。
これはそんな大変じゃなかったグルーでの補強……。
後の処理が面倒だったボンド……。
釘が抜けなくなった釘打ち……。
やすりがけ……。やすりがけ……後、やすりがけ……。
仕上げのニス塗りは楽しい。
低予算の、はずなんですけど。
……使った額は本当に少ないんですけども。
魂をどこかに叩き売って製作費用を工面してる感してきた。
……目の前に書見台があるから、まあいいか。
もうちょっとだけサブアイテムを紹介して、完結する予定です。
次回は「ろうそく&燭台1 ~ろうそく~」です。