古書10 ~花ぎれ・クータ・見返し~
製作パート10話めにしてようやく表紙と本文がくっつきます。(挨拶)
じれじれ系の恋愛物かな?
……だったらこんなものじゃないか。
・製本の構造
まず、寒冷紗で補強した本文を用意します。
次に、「花ぎれ」を接着します。
次に、「クータ」を接着します。
次に、「表紙」を、背表紙の所で接着します。
最後に、「表紙」の裏と、本文の一番最初と最後(遊び紙部分)と、「見返し」で接着します。
接着剤は好みですが、木工用ボンドが使いやすいでしょう。
少し水溶きにしてもいいですが、薄めすぎない事を推奨します。
「見返し」部分は、水溶きボンドやスティックのりなど、平面に塗りやすいものの方がいいですね。
では、順番に見て行きます。
・ロング花ぎれ(花布)
「花布」と書いて「はなぎれ」と読みます。
ハードカバーの背表紙に貼られている布で、たまに編まれたりもしています。
目的は、本を取る時に指で引っかける、背表紙部分の保護と言われています。
飾りという説もある。
今回はオリジナルの「ロング」花ぎれ。
オリジナル要素は、単純に長いだけです。
本の背に合わせて、幅は5cm。
長さは背表紙の高さ+上下に3cm……を、折り込んで使います。
よくあるのは、短いバージョンですね。真ん中が丸々ありません。
今回は、強度を確保するためにも、ロングバージョンです。
布は雰囲気に馴染むように茶色。端切れなので費用計上なし。
本の上下からはみ出させるのは、太めの糸一本分。
今回は毛糸です。
なみ縫いで、折り込んだ糸の下を縫います。
その後、適当に畳んで、目打ちでグサグサと刺して、穴を空けます。
これは、ボンドが染みこみやすく……なるといいな、という願望に基づきます。
丸く切り抜いたり、切れ込みを入れたりも考えられますね。
やりすぎるのも怖かったので、今回は小さめの穴で。
見ての通り、簡単な構造です。
割となんとなくでも大丈夫。端の処理とかもしてません。
長さは折り込みで調整できるので、幅さえ合えばなんとでもなります。
接着前に合わせてみて、ダメそうだったら調整しましょう。
・クータ
ちょっと可愛い名前ですね、クータって。
背表紙の補強&開きやすくするためのパーツです。
ハードカバー本でも、ある物とない物があります。
長方形の紙を折って作っています。
折り方ですが、構造的に、内側ではなく外側に短い所を配置するのがいいでしょう。
私は、後で気付いた。
↓はちゃんと外側に配置したイメージです。
すごく簡単です。
定規を使って折り込むのがコツ……でしょうか。
サイズをちゃんと測って、現物合わせして確認すれば、そうひどいミスはないと思います。
・製本の方式
製本方式にはいくつかありますが、軽く説明します。
○タイトバック/tight back
背表紙と本の背を直接、接着している。
シンプルな構造なので、作業は比較的楽で強度は高いが開きが悪い。
今は多分、ほとんどの本がこれ。
○フレキシブルバック/flexible back
タイトバックの亜種。
背表紙と本の背を直接接着しているのは同じ。
でも、名前の通り背表紙がフレキシブルな素材で出来ています。
開きやすく、しかし背表紙の文字が傷みやすい。
……この方式、あんまり見た事ない気がします。
いや、もしかして背表紙が薄い本は全部これ……?
○ホローバック/hollow back
背表紙と、本の背が直接接着されていません。
大きく開けるのがメリット。
ただ、ほとんど本の見返しで支える構造になっているため、かなり意識して強度を高める工夫をしないといけません。
今回の製本形式は――
……ホローバック? (疑問型)
……ちょっと自信がない。
多分そうだと思うんですけど。
以後の手順は、一番最初の「製本の構造」通りです。
おさらいすると、順番としては、背表紙、クータ、ロング花ぎれ、本文……となっています。(写真は背表紙&表紙)
クータと花ぎれは、水溶きボンド(あまり薄めすぎない)で接着します。
ロング花ぎれを貼った所です。
……この辺の写真、ピントがボケボケー……。
……光量が足りないのか、本格的に疲れてたのか、どちらでしょう。
※クータに、ほぼ同じ幅で切った細長いクッキングシートを入れておくのを推奨します。貼り付き防止です。
その後、ボンドがある程度乾くまで、背表紙のほんのりした丸みを活かして固定します。
……固定します。
固定、しなきゃいけないんですけど。
……ん? これどうやって固定するの?
ここで、固定手段を考えていなかった事に気が付く。
そんなまさか。
……そのまさか、か?
……リボンとか、幅広の布とかでいい感じに吊るのがいいんじゃないかなと思うのですが。
でも、今からそれを用意できるかと言うと……。
大量生産の暁には用意するとしても。(※予定はない)
結局諦めて、手で支える事に。
こう……なるべくいい感じに抱える。
これが猫だったら良かった。
本でも読もう……と思ったら、両手が塞がっている事に気が付く。(当たり前)
結局、アニメを一話見る事に。
なのでまあ、30分ぐらいしたら手を離してもいいはずです。
・見返し
「私を認めなかった馬鹿共を見返してやるぞ!」
と言えば、だいたいマッドサイエンティストの実験失敗フラグです。
それはそれとして、「見返し」は、本の開いたところですね。
ハードカバーだと、おおむねここに「見返し紙」が貼られます。
正式名称あったかな……。まあ、見返しに貼る紙です。
なるべく、薄く、強く、見た目のよい(※重要)紙がいいでしょう。
貼る時には、クッキングシートを、本文に当てて保護します。
「見返し」の部分は、とても重要です。
負担が集中しますし、開き心地にも大きく影響する部分です。
負担が集中してますね。(実感)
薄かった。
しかも水に弱かったらしい。
……この見返し紙はダメだったので廃棄します。
霧吹きで濡らしながら引き剥がしていく。(写真は左半分を剥がし終わった所)
……ここで、判断力が限界に達していると判断しました。
寝ましょう。それがいい。
次回は「古書11 ~補修~」です。




