古書9 ~表紙・装丁~
布装丁の限界に挑戦したい。(挨拶)
いいですよね、布装丁。
革装丁が高嶺の花なら、布装丁は手の届く憧れです。
……なぜ布装丁で立体刻印を作ろうと思ったのか。これが分からない。
自分の事は自分が一番よく分かると思うのは、きっと思い上がりなのだろうと思うのはこういう時。
・表紙の構造(布装丁)
だいたいこんな感じになっています。
簡単に言えば、厚紙の芯に、布を貼るだけ。
表紙の厚みは好みですが、今回は3mm。
実際の数字は、現物合わせ感ある……。
無闇に余裕を持たせればいいというわけでもなく、このあたりは現物合わせと言えば聞こえのいい、勘が混じる所があります。
さらに今回は立体への装丁という事で……数字なんて当てにできない。
参考になれば幸いですが、結局一冊一冊対応していくしかない感はあります。
……作業の精度が高ければ、数字通りにできるとも思うんですけど。
……こう言うのもなんですが、あんまり高くないんですよね、私の作業精度。
とりあえず、1.5~2cmぐらいとある所は2cm。大判本ですもの。
「表紙の厚み+0.5~1cm」は、適当にやって地獄を見た。
端の処理もこんな風にできなかった。
一番参考になるの、反面教師としてなのでは?
・布装丁
まず、いい感じの布を用意します。
この布に店先で一目惚れしたから布装丁を決めたまである。
今回は、968円/1mの布です。
長さ指定で購入したのは、40cm。
さらに手芸屋さんの会員特典で10%オフ。
なので40cm分の10%オフで、348円。
……実は半分ぐらい余るのですが、とりあえず348円と費用に計上します。
装丁前に、しわを伸ばしておきます。
広げて、霧吹きして、ぴんと張って、当て布を当ててアイロンという流れ。
初めての布は、すみっこで試しましょう。
……なぜか私は、いきなりこの写真の通りにやりました。
多分、ちょっと疲れてたんだと思います。
……ダメだったらどうするつもりだったの、この人。
そして水溶きボンドで貼っていく……のですが。
今回は、「引っ張る」工程が多く、そのために角度がずれたり、幅が短くなったりもするので、装丁の美しさを重視するなら、少し余裕を持たせて、後で切った方がいいかなと思います。
私は倹約精神のせいで、そういうの気付かなかったので、誤魔化した感ある。
表紙の裏と1枚目(と最後)のページに貼る、見返しの紙が厚いと、誤魔化しやすいですね。
私は薄い紙を使ったせいで、そういうの気付かな(略)
水溶きボンドでちょっとずつ貼り付けて、こすって伸ばしていきます。
アバウト極まりない説明で申し訳ないと思うのですが、手が塞がるので写真とかも、あんまりないのです。(写真は手洗い・乾燥休憩時に隙を見て)
強いて言えば、そうですね……。
ボンドは水に弱いので、強度に対する不安があるのですが、霧吹きの水で濡らして、「沿わせて」いくのも大事。
当時はもっと不安でしたが、上から水溶きボンドをつけて、接着する事もできましたので、今なら自信をもってオススメできます。
濡れすぎたら、ドライヤーを当てて乾かしてもOK。
自然乾燥でもいける……のかな?
それと、便利な道具について書いておきましょう。
いくつか手持ちの道具を試したのですが、これが一番使い勝手が良かった。
ほとんど誰もが持っていると思います。
爪。
うん、爪が一番使い勝手が良かったです。
両手で同時に使えますし、指先の繊細な動きに追随しますし、力加減も自由自在。
爪でこすって、沿わせて、伸ばして、貼り付けていきます。
ボンドが足りない部分は、水溶きボンドを上から少しつけたりもします。
なお、手がボンドで徐々に固まってきますので、「手が……石化能力か!?」と、石化攻撃を受けている冒険者ごっこをしないのであれば、合間合間に手を洗って、可動性を確保しましょう。
表紙の水気を拭うための布も何枚か用意しておくといいですね。
ぽんぽんと叩いて水気を吸わせたりする。
そして、また水溶きボンドをぶっかけ、霧吹きで水をかける。
……マッチポンプ?
だいぶ濡れてきました。
形も割と分かりますが、まだまだディテールが甘めです。
途中で、切り抜いたパーツを『型』として当てて、ゴムハンマーで叩いて形を出したりしていきます。
工程としては、多分なくてもいいけど、あったら楽だった……気がする。
書名も軽く押し込んで、とりあえず表紙の『刻印』が完了です。
うっすら書名もへこんで見えますね。(見えにくいですが)
背表紙・裏表紙も同様に貼っていきます。
最後は折り込んで処理しますので、写真はその手前。
背表紙は、出っ張り部分の紐にめちゃくちゃ気を遣う……。
裏表紙は、今回は平面なのですっごく楽です。
……怪しげな刻印も、背表紙デザインも採用しなければ、全部こんなにも楽に装丁できる……ってこと……?
なるほど。
布装丁が初心者にオススメされやすいわけですね。
……なんでこの人、装丁初めての初心者のくせに、勝手に難易度上げて、勝手に地獄を見てるのかな……。
もう一つ、勘でカットしたのが悪い方に。
……とりあえず、四隅にカットした布を貼って、少しでもカバー。
金具で目立たなくなる部分だったのが、不幸中の幸いですね。
これで、表紙の装丁の基本は完成です。
仮組みしてみる。
まだ本文と背表紙はくっついていませんが……静かにテンションが上がる。
段々と形になってくると、自分で自分に燃料を注げるようになります。
これが永久機関?
……いつまでも形にならないと、段々とやる気がなくなってくるんですよね。
しかし、全体の作業効率のためには、いっぺんにやった方がいい工程も多い……。
それまでは、自分の頭の中の絵を信じるしかない。
自分を信じられなくても、自分の妄想は信じる。自分の好きな物は信じる。
残りの作業は、製本と言ってイメージする花形作業、本文と表紙の結合!
次回は「古書10 ~花ぎれ・クータ・見返し~」です。