厨二病達の異世界征服!
厨二病って怖いですよね。
厨二病。
それは黒。
それは闇。
自らの心に大きな傷を残すもの。
そんな過去を持った俺らの冒険譚の始まりだ!
…ここは…夢の中?
一台のテレビが目の前にあり他に何もない空間。
惰性で何もついていないテレビを眺めていると突然電源が入り若い時の俺が映った。
若いと言っても1ヶ月前とかの話だがな。
黒いコートを身に纏い片方の目は赤く輝いている。
まさか…
「ふっ、我が名を呼んだか?」
うわぁ!やっぱり!やめろって!
「終わりを告げる斜陽の騎士…」
やめろって……
「喰らえ!聖魔混同龍勢星破!」
「うがぁーっ!!」
はぁはぁ、またこれか…最近この夢ばっかだな…
俺は酒井健二。
つい2週間前に夢から覚めた高校2年生だ。
ちなみに俺と一緒に色々なことをした厨二仲間はまだ目覚めていない。
いずれアイツらも現実を知るだろう。
時間は…6時か。
今日は土曜だがもうすっかり目が覚めてしまったな。
しゃーない。もう起きるか。
自室を出て洗面所に向かう。
顔を洗えば気分爽快だしな。
そして蛇口を捻……
「へ?」
…ろうとした瞬間辺りを光が包み………
一面赤のカーペットが敷かれた空間に背中から叩きつけられた。
…は?
目の前の玉座に座っているおっさんに声をかけられる。
「よく来た勇者達よ!」
勇者?これっていわゆる異世界転移?
HAHAHA、そんな訳なかろう。
俺は厨二病は脱却したんだ。
落ち着いて話を聞けば分かり合えるはずさ。
「あのー、ここってどこですか?」
「よく来た勇者達よ!」
話し聞けやこのおっさん。
いかにも王様と言った人物にシカトされてるんだが。
ん?勇者達?
あたりを見渡すとそこには…
「お前らかよ!?」
「よぉ、いつぶりだ?斜陽の騎士?」
「これも運命の導きか……」
「斜陽よ、今こそ私の黒炎呪縛奏で沈むがよい。」
そこには見知った厨二病どもがいた。
「なんでお前らがここにいるんだよ!」
「そんなこと言うなよ。俺のライバル!」
「うるせえ相澤!」
「それも世を忍ぶ仮の名だ…」
UZEEEEEE!!!
1番最初に声をかけてきた自称ライバルの相澤篤志厨二病。
「織野もなんでだよ!」
「全ては我が操りし運命のままに…」
自称運命の女神織野由香。
もちろん厨二病。
「ふむ、怖気付いたのか?斜陽よ。」
「高橋。」
「ぐぅぁ!」
ブラックロンドなんてほざいてるのは自称大賢者の高橋結衣。夢からほぼ覚めかけているため本名を呼ぶともがき苦しむ。
もれなく厨二病。
「さぁ、今こそ魔王アリスベルグを倒し世界を平和に導くのだ!」
誰だよ。そんなことする義理もないし帰らせてもら…
「その依頼!俺たちが引き受けさせて貰おう!」
…えないよな。知ってた。こいつらバカだもん。
「おぉ!そうか!では出発は3日後!吉報を待っとるぞい!」
このじじい殴り飛ばしてやろうか。
結局あの後も帰ることは出来なかった。
どうやら本当に勇者として召喚されたらしい。
今は王宮の割り振られた部屋で説教をしている。
「で、どうするつもりだったんだ?」
「もちろん閻魔大剣で屠ってやるさ!」
「私の運命にかかれば魔王など余裕よ。」
「大賢者たるもの余裕だぞ?」
…はぁ。話にならん。
予想通りすぎて泣けてくる。
「まず相澤。その閻魔大剣とやらはどこにあるんだ?」
「そんなの…あれ?」
ほーら見ろ。そんなものあるなら見せてみろや。
「いでよ[閻魔]!」
直後相澤の手に闇が収束し……バカデカい大剣があった。
「ほーら見ろ!これが俺の閻魔だ!」
「………」
一度目を瞑り目頭をほぐす。
最近夢のせいであまり寝られてなかったからな。
目を開けて目の前を再確認。
バカデカい大剣があるだけだ。
「……はぁー!?」
なんで!?明らかにおかしいだろ!?
「織野!あそこの壺を運命の力で倒してくれ!」
「ん?いいわよ。何せ私は運命の…」
「いいから!」
「見てなさい!はぁ!」
壺が爆散する。
ここまでしろなんて言ってないが。
「……高橋。魔法を使え。撃つなよ?」
「ぐっ!?高橋じゃない。我は…」
「とりあえずやって見せてくれ。」
「[ファイアボール]」
部屋の中に大量の炎の玉が生まれる。
もしかして…
「[聖の審判]」
直後ファイアボールも閻魔も消滅する。
聖の審判は対象の異能を消す……と言う設定、
だった。
つまり…
「この世界では本物の能力者……?」
だとしたら……
「なぁお前ら聞いてくれ。」
これって俺たちでこの世界支配できるんじゃね?
あれから3日間が経過した。
「では行ってきます!」
「はい!いってらっしゃいませ!」
門にいた兵士の方に挨拶をして城を出る。
最後は色々な人が挨拶しにきてくれたのにあのジジイは何もしてこない。
城から離れて誰もいなくなったことを確認して声をかける。
「じゃあやっちゃいますか!」
「「「「異世界征服!!」」」」
あの後世界征服の話をしたら全員が賛成をした。
やはり面白そうな方にするらしい。
論理感?
正義感?
そんなもの厨二病はとうに捨てたらしい。
別にこの世界が憎いとか嫌いとか言う訳ではない。さっきの兵士さんのようにいい人も沢山いる。
そのため国を滅ぼすのではなく魔王をぶっころした後にこの世界の政治体系を変える。
極めてホワイトな世界征服だ。
それから一週間後。
「お前らが巷で世間を騒がす。勇者か!」
目の前に現れたのは黒い甲冑を着た騎士だった。
巷で騒がすなどと言われてるが身に覚えがありすぎてどれかわからん。
「俺は魔王軍四天王ハリスべ…」
「どらっ!!」
相澤が閻魔を投げる。
「おい!自己紹介中に攻撃するなとあれほど言ったろう!」
見ろよ!もう死んでるじゃねえか!
南無阿弥陀仏。この可哀想な人に哀悼を。
その後も…
「あ!2日後に魔王軍の幹部が来るみたいだよ!」
「なるほど。対策はどうする?」
「え?運命操ってもう殺しちゃったけど。」
とか
「私はぁ、魔王軍最高よ魔法使いぃ。
ビフロストじゃっ!」
「ほい、メラ○ーマ」
「ぎゃあぁぁ……」
とか見るに耐えない戦いが繰り広げられた。
え?俺?
魔王軍の最後の幹部をボコボコにしたぞ?
大声であの技を聞かれたくなさすぎて単独で夜奇襲してボコボコにな。
あの記憶は墓場まで持ってこう。
俺も多少厨二病に戻ったが未だに感性は一般人なんだ。
そして、魔王城に辿り着き…
「よく来た!勇者達よ!」
「バイバイ!」
「は?」
高橋が隕石降らせて壊滅させた。
さらばだ。名前も知らぬ魔王よ。
可哀想な敵ランキング堂々の一位としておこう。
ラスボスのくせに名乗れなかったのだから。
だが、本題はここからだ。
「高橋、拡声魔法を。」
「了解リーダー!」
高橋は厨二病としての自信が宿ったのか高橋と言われても動じなくなった。
チッ、コイツを弄るの楽しかったんだけどな…
「あー、あー、声聞こえてる?」
世界に向かって声を伝える。
「私達勇者一行は魔王の討伐を成功させました。」
「そのため宣言します。」
きっと今頃世界の人々は希望に満ち溢れた顔をしてるのだろう。
だけどそんないい話じゃないぞ?
「この世界を征服します。」
この世界はもう厨二病に狙われてるのだから。
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