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04.天啓


 泣きじゃくる男に俺は言った。

「僕、名前を鷹狩翔洋と言います。お客様は?」

「俺......俺は霧ヶ峰小路です......先生、俺はどうしたら良いんでしょう」

 霧ヶ峰は俺をつぶらな瞳で見つめてきた。

「無理をなさることは無いんです。それも運命。そのままで良いんです」

「本当に......?」

「ええ」

「先生......! 俺、先生に会えて良かった......!」

 感極まる霧ヶ峰に俺はこう言う。

「霧ヶ峰さん。次を手掛ける時はぜひ僕に相談をしに来てください。アドバイスが出来るはずです」

「......! わかりました......! 必ず先生に相談しに来ます!」

 俺はにこっと笑い、言った。 

「占い料金、一五〇〇円です」




「フッフフ......! こりゃヤベエなァ......! ヤベエことになっちまった......!」

 直也が天幕の裏側から声をかけてくる。

「先輩、どうするんすか。一応、録音データはありますけど」

 俺たちコールドリーダー部は念のため、接客時のやり取りを録音している。もっとも、こんな事態は想定していなかったがな......フッフフ!

「逆に聞くが、どう思う?」

「どうもなにも、警察に連絡するべきでは」涼子の声だ。

「フッフフ......! 俺が霧ヶ峰なら警察にこう言うね。『ガキを相手にからかってやっただけだ』ってな」

「じゃあ、この録音データは無意味っすか」

「最後の一押しに使えるかも、って感じだな。フッフフ......! まあ慌てるなよ。あの調子だと、次の殺害までにまだ時間があると見た。作戦を練ることが出来るはずだ」

「作戦? そもそも何をやろうとしてるんすか?」直也の声は暗い。

「フッフフ......! そりゃあ国民の一人として、連続殺人事件の解決に尽力することさ」

 俺は語気を強める。

「俺たちしかいないんだ......! やつが犯人ってことを......! 俺たちが証拠を握るしかねえだろ......! もし今の時点で警察にタレ込んでみろ! 霧ヶ峰は誤魔化したあげく、俺に報復してくる!」

「ヤバイっすね」

「先輩頑張ってください」涼子......お前、他人事か?

 俺はとりあえず――考える時間が欲しかった。なので、天幕を仕舞い、学校に帰ることにした。


 翌日。放課後。

 俺は何故か教諭の一人に呼び出された。

 職員室はいつ来ても慌ただしい。余裕のある運営をしてないように見える。生徒としては、どっしり構えてもらったほうが安心だが。

「先生、何ですか?」俺は切り出した。

「いや、実はね。霧ヶ峰という弁護士の方から連絡が来てね。相談したいので例の場所に来て欲しいとのことだ。なあ鷹狩、お前何をやったんだ?」



 フッフッフ......! 神がいるとしたらそいつは酷いやつだぜ......!

 俺は作戦を練る前に、次のステージに上がることになった。



 東京都。北千住。おおいわ通りにて。

 今日も人通りは変わらない。夕焼けの景色が美しく見える。人々の頭にあるのはきっと明日の展望だろう。

 天幕を張り、机と椅子をセットする。いつも通り、直也と涼子には裏で待機して貰う。

 三〇分ほど経った頃だろうか、人影が天幕の外に見える――。

「いやあ先生、すいません。学校に連絡しちゃいました」

 霧ヶ峰だった。

「構いませんよ」俺は答えた。

 霧ヶ峰は椅子にどかっと座る。どこか、ふわふわとした感じだ。

「いやあ実はね、先生。昨日言ったプロジェクトのことなんですが」

「はい」

「最近、俺のことを誘惑する女がいるんですよ......! 本当は駄目だと思うけど、俺の体がもたねえから、始末したい......! それで、何かこう、幸運を引き寄せるようなことや物が知りたいんですよ先生!」

「なるほど」

 その時――。

 俺の頭に天啓がひらめく!

「それでしたら、一度、家の写真を持って来てもらえませんか?」

「家の写真? 家全体の写真で良いですか先生?」

「ええ。僕は風水にも通じていましてね。家のオーラを見て、何をどうしたら良いか、助言が出来ます」

「なるほど......わかりました! 明日、持ってきます!」

 俺はにっこり笑って言った。

「今日のお代は結構です」



「フッフフ......! 良いこと思いついたぜェ?」

「どうしたんすか、先輩」

「なあ直也、シリアルキラーについて何か知っているか?」

「いや、知らないっすねえ。先輩詳しいんですか?」

「まあ、な! フッフフ......! いいか、シリアルキラーってのは大体の場合、戦利品を持ってるもんだ」

「戦利品?」

「犠牲者の身に着けていたものだったり、耳とか歯とか、犠牲者の一部だったりな......!」

 俺はそこで、手元にある新聞を見た。

「足立女性連続殺人事件。犠牲者は二十七人。共通しているのは――」

 俺はにやりと笑う。

「背骨の一部が無いことだ。恐らく霧ヶ峰のやつ、背骨を戦利品として持ってるぜ......フッフフ......!」

「でもそれ、普通は隠しますよね。どうやって探るんですか」涼子が言う。

「ああ。普通は隠す。しかし、戦利品ってのは身近に置いておきたいものだ。となれば、銀行の貸金庫ではなく、自宅に置いてあると思うぜ......フッフフ......!」

「それで、どうやって家を突き止めるんですか」

「そこで家の写真を要求した! 明日、霧ヶ峰は家の写真を持ってくる! それを手がかりに探るのさ!」

「でも、家の写真から住所を割り出すなんて、先輩に出来るんですか?」

「家の住所を割り出すのは、俺じゃ出来ねえ」

「それじゃあどうやって?」

「......フッフフ! こいつは宿題だ! 明日までに考えてみな!」


読了ありがとうございます。


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明日(2021/08/29)に続きを投稿します。

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