最終話
警察による事情聴取が終わった後、俺は涼子を喫茶店に呼び出した。
いつ見ても涼子は良い女だった。
「涼子......フッフフ......お前、アレを聞きたがっていただろう?」
「アレとは......ああ、私を助けてくれた方法についてですね。そうですね。聞きたいです」
俺はパフェを頼んだ。涼子の分も、だ。
「その前に頼みたいんだが、俺がネタをばらしても、がっかりしないでくれ」
「がっかりしませんよ」
「どうかな......手品師がネタをばらすと、ああそんなことなのね、って皆は言うもんだ」
喫茶店の空調は居心地よかった。
「涼子、お前が金庫破りの練習をしている時に、俺は霧ヶ峰を呼び出して占ったんだ」
「はい」
「その時に、俺はこう言ったんだ」
少し間を開けて――。
「近いうちに、貴方の家に王冠を被った精霊が訪れます。そして精霊は家を回って呪術を行いますと」
「精霊......」
「そう。そして精霊には話しかけても、疑問に思っても良くないと言ったんだ」
「よくわかりませんが、それで何故、私が家を出る時にチェーンがかかってなかったんですか?」
「俺が王冠を被って訪れたからさ」
涼子、愕然とする。
「わ、私は、先輩と入れ替わりに出て行ったということですか!? ということは、あの時のベルの音は先輩が鳴らしたもの?」
「そうさ......フッフフ......な? 手品ってのはネタをばらしちゃいけないんだ。敬意が無くなってしまうから――」
しばらくして。
俺は涼子に言ってみた。
「なあ涼子、俺に媚を売ってくれよ......フッフフ」
すると涼子は、俺の隣に移動した。
そして、――俺の肩に腕を回してくれた。
季節は春。
俺たちの人生は始まったばかりだった。
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