表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/19

18.咆哮


 威風堂々――。

 高橋先輩にこそ、その言葉が似合う。


「立ち上がれ......」高橋先輩が言う。

「はは......とんでもない奴が来ちゃったねえ」霧ヶ峰は四つん這いで言う。

 立ち上がった霧ヶ峰から悲壮感が出ている。構うものか。


 俺はジャケットを脱いで、腕に巻き付けた。これなら鉈で切りつけられても、防御出来るだろう。


「来い」高橋先輩が言う。

「では遠慮なく......はは」


 疾風迅雷。

 霧ヶ峰のどこにそんな体力が残っていたのか。恐ろしい速度で高橋先輩に切りかかった。

 だが。

 高橋先輩は――腕で止めた。

 恐らく、プロテクターだ。路上格闘部の部室で見たことがある。


「行くぞ......おっ!」

 高橋先輩の攻勢が始まった。

 ラフなボクシングスタイル。直也が作った傷口を的確に殴りつける。

「ウウッ」霧ヶ峰が呻く。

「どうした......最後のあがきを見せてみろ......!」

 強い、それに執拗だ。

 俺の出番無さそうだな、これ......。

 そう思った瞬間。


 霧ヶ峰が叫んだ。

 あの警察官七人を怯ませた絶叫だ。

 さすがに高橋先輩も一瞬体が固まった。

 その隙を突いて、霧ヶ峰が切りかかる。

 それも足を狙って!

 だが、それも効かなかった。

 高橋先輩は足にもプロテクターを付けている!

 腰を捻って放った右フックが霧ヶ峰を襲う。

 そして高橋先輩は、霧ヶ峰の鉈を片手で押さえ、もう片方の手で首を絞める。

「高橋先輩! それは!」

「鷹狩......こいつは多数の被害者を出したクズだ......裁判を受けさせるつもりは俺には無い......ここで死んで......俺の糧になってもらう」

「人を、殺すんですか」

「鷹狩......お前も......自衛や直也のためなら人を殺すだろう......」


 俺は本当にこのままで良いのか迷った。

 霧ヶ峰はもがいている。

 そうして、力が尽き果てそうになった時、俺は閃いた。

 そう、天啓。

 俺は腕にまいたジャケットを手に持つと、それを霧ヶ峰に被せた。

 驚きで一瞬、高橋先輩は力を緩める。

 その隙に。

 俺は霧ヶ峰を持ち上げた。

「オオオオオ!!!」

 そして――。

 千住大橋から霧ヶ峰を落とした。

 下を流れる川まで、七メートルはありそうだ。

 俺は高橋先輩に言った。

「俺は、それでも高橋先輩に人殺しになってほしくない。あいつには、裁判を受けさせる」


 高橋先輩は何も言わず、目を閉じた――。


読了ありがとうございます。


よろしければ、ツイッターフォロー、ポイント付与を

お願い出来るでしょうか。


今日中(2021/09/04)に最終話を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ