表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/19

16.乱舞


 大踏切通りを俺は駆け抜けた。

 霧ヶ峰が追ってくる。

 砂糖通りを俺は駆け抜ける。

 霧ヶ峰が追ってくる。

 柴葉商店街を俺は駆ける。

 霧ヶ峰が追ってくる。


 道の角を通る途中で、俺は学生カバンを捨てた。後で回収する。捨てるところは見られなかったので、破壊される恐れは無いだろう。

 果たして人間は全速力を何分維持出来るだろうか?

 俺はついにへろへろになった。

 霧ヶ峰もへろへろになったのか、スピードを落としている。

「先生~一緒に死んで~」

 そんな風に声をかけられたので俺は、

「嫌で~す」

 と返した。


 俺は体力を維持する為、賭けに出ることにした。

 振り返って、霧ヶ峰を待つ。

 少しして。

 霧ヶ峰が追い付いて来た。

「諦めたのかな......はは......は」

「いんや」

「!?」

 俺は霧ヶ峰に急接近する。

 そして胸倉を掴む。

「ふんッ」

 背負い投げ――。

 俺が柔道を学んでいることを霧ヶ峰は知らない。

 予想通り、霧ヶ峰は対応出来ず、アスファルトに叩きつけられた。

 そして俺はその場を離れた。

 ――後は、警察官のいる白草公園に逃げこみ、保護を求め、霧ヶ峰を指名手配してもらえばいい。

 そういう風にプランを考えた。

 その時。

 おぞましい殺気が俺の体に吸い込まれた。

 俺は振り返る。

 霧ヶ峰が立っていた。

「先生......体は痛くねえよ......痛いのは、心だ」

「タフですね......」

 俺は白草公園目指して全速力で走った。もうそろそろ二〇分だ!


 走っている俺の目に次々と風景が流れ込んでくる。

 公園。商店街。道路。家。神社。コンビニ。

 やがて。

 白草公園に辿り着いた。

 警察官が七名、見えた。

 俺は声をあげた。

「助けて下さーい!!」

 警察官たちが一斉にこちらを見る。

 俺は警察官たちの元に辿り着いた。

 終わった――。

 俺は安堵で力が抜けた。地面に座り込む。空が青い。空気がうまい。

 そして霧ヶ峰が現れた。

 鉈を隠そうともしない。

 警察官たちは俺に情報を聞くよりも先に、危機を排除することを優先した。

「止まりなさい君! 止まらなければ撃つ!」

 警告が行われた。

 霧ヶ峰は黙って接近してくる。

「もう一度だけ言う! 止まりなさい君! 止まらなければ撃つ!」

 警察官たちは拳銃を構えた。

 その時。

 予想を超えた事態が発生した。

 霧ヶ峰が叫んだのだ。

 途轍もなく大きな声で、狂気が含まれていた。

 一瞬、警察官たちに動揺が見えた。

 そしてその隙に――。

 霧ヶ峰が警察官たちに急激に接近し、切り込んだ。

 俺はぼーっと見てた。

 こんなことがあるのか?

 舞台を見るように。

 俺は眺めていた。

 一斉に射撃が行われたが、弾が当たったのか当たらなかったのかよくわからなかった。

 ただとにかく、霧ヶ峰は動けた。

 霧ヶ峰の初撃で警察官の一人が顔にダメージを負い、倒れ込む。

 警棒で警察官たちが向かうが、鬼となった霧ヶ峰は強かった。

 いくら叩かれても、鉈で暴れまわった。

 こんなことがあっていいのか?

 警察官七名だぞ?

 相手はたった一人。

 霧ヶ峰は舞う。

 孤独に舞う。

 狂気と共に舞う。

 一人、また一人と警察官は倒れる。

 やがて。

 警察官は全滅した。死んではいないと思うが、しばらくは立ちあがれないだろう。

 俺の肩を叩く者がいた。

 直也だった。

「先輩、逃げましょう。策があります」

「よお直也。俺ァ、この現実、受け入れ難いぜ」

「ええ。全く。行きましょうか」

 俺と直也はその場から離れた。

 霧ヶ峰はゆっくり、俺たちの後を付いて来た。


読了ありがとうございます。


よろしければ、ツイッターフォロー、ポイント付与を

お願い出来るでしょうか。


明日中(2021/09/04)にまた、続きを投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ