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13/19

13.霧ヶ峰の週末


 女ってのはどうしてこうも罪深い生き物なのだろう。

 霧ヶ峰は起床して微睡みながら、そう思った。

 あの滑らかな曲線。淫靡な声。快楽の機関――。

 ベッドから霧ヶ峰は立ちあがる。


 リビングで珈琲を飲む。インスタントだが、十分だ。

 それからコンビニで買った惣菜パンを食べる。それと、プロテインが含まれたジュースを飲む。

 ――良い気分だ。霧ヶ峰はそう思った。

 これも先生に出会ったおかげかな、と霧ヶ峰は考えた。

 今までずっと一人だった。

 理解者がいなかった。

 だが、先生は俺を理解し、許容してくれている。霧ヶ峰はそう思う。


 霧ヶ峰は本を読み始めた。ナノテクノロジーについての本だ。

 極小のものを作るには、二つの方法があるという。

 原子のようなごく小さいものを組み合わせる方法と、大きなものからパーツ等を取り除く方法。

 二〇年近く昔の本だが、知見を得られて良かった。

 霧ヶ峰はラムネを食べた。ブドウ糖の補給のつもりだった。


 それから女のことについて考え始めた。

 どいつもこいつも俺のことを誘惑してくる。そんな女には天罰を与えなければならない。特に、最近は一人の女が俺に強烈にアタックしてくる。近日中に始末しなければ、俺の体がもたないだろう。そう霧ヶ峰は思った。


 午後一二時五〇分。

 玄関チャイムの音が鳴った。

 どうせ営業マンか何かだろう。霧ヶ峰は無視した。

 しかし、玄関チャイムはしつこかった。

 霧ヶ峰は腰を上げる。

 軽く脅してやったらどんな顔をするだろう、そんなことを考えた。

 玄関のチェーンを外し、扉を開ける。


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 無言だった。そして目に表情が無かった。

 霧ヶ峰は何も考えず、そのまま、リビングに戻った。

 棚から一つのコップを取り出し、お茶を注いだ。

 そして、リビングのテーブルにコップを置き、ソファに座った。

 霧ヶ峰は空を見つめた。

 しばらくして。

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 それから、またリビングのソファに座った。

 五分くらいして、霧ヶ峰は立ちあがった。

 それから二階に向かう。

 そして立ち尽くした。

 午後一三時。


 ベルの大きな音が響いた。


 それはゆっくりしたテンポで、何度も繰り返された。

 霧ヶ峰はずっと二階で立ち尽くしている。


 午後一三時一〇分。

 霧ヶ峰は一階のリビングに戻った。

 また空を見つめている。

 そして少し経って、霧ヶ峰は玄関に向かった。

 玄関にチェーンはかかっていなかった。

 扉の鍵もかかっていなかった。

 霧ヶ峰は黙って、何も考えず、扉の鍵を閉めた――。


読了ありがとうございます。


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お願い出来るでしょうか。


明日中(2021/09/02)に続きを投稿します。

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