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魔女と呼ばれた令嬢  作者: 柊 ユウ
3/4

帝国との違い


あの日たまたま覗いた噴水に彼女が映ったのは奇跡なのか、はたまた必然なのか



今日もフィルとの通信を終えカインは椅子の背もたれに身体を預ける。大きな執務室、大量の書類に似つかわしくない桶がある事には執事も慣れたもので、通信が終わり次第下げられるそれを横目に今までを振り返る。


ただ執務の息抜きに庭を散歩していた際、普段は気にもとめない噴水き気を引かれ覗き込むと見えた顔に驚愕したのは覚えている。

次に目に入ったのは手入れされていれば綺麗な色を見せてくれるであろうアメジストを彷彿とさせる髪だ。

長年、自分の家系が探し求めていた色がそこにはあった。

本能的に彼女が欲しい。そう思ったが警戒されては水の泡だ、いつも通りの人のいい顔で話しかけると何と会話まで出来た。

そこから彼女の名前は簡単に聞き出せた、平民と告げていたが言葉遣いや時折見せる仕草は平民のそれではない。

この時はここで通信が途切れてしまったが、カインにとっては素晴らしい成果だった。


まず、カインの住むベルテルグ帝国では兄弟国であるアーヴィン帝国とは違い紫の髪を持つ者は聖女と呼ばれている。他の文化は似ているがここだけは違った。

そして彼女の様子から、彼女がいるのはアーヴィン帝国である事は明らかで。それなりの貴族の娘とまでは絞り込めた。

名前からレニス家の長女だと予想はするが、自分がそうだったように彼女もそうとは限らない。そこで従者を通して情報屋を使うことにした。

同時進行で通信を使い彼女自身からの情報も聞き出す事は忘れずに。



『髪、気持ち悪く無いですか…?』

『魔女、らしいんです。私…だから独りで居ないとダメなんです。』

『お父様やお母様に悪いことをしてしまいました…』



だが彼女の情報を聞き出すには、彼女の表情を曇らせる。それはカインの望むことではない、自分との会話で楽しんでもらう事が優先事項だ。

だから情報がある程度集まった時からは彼女自身の話ではなくこちらの国の話をする事にした。

そうすると、望み通り彼女の顔色が悲しみから楽しみへ変わるのはすぐだった。



「こちらではラベンダーの華が咲いているよ、今度の通信で見せてあげよう」

『ラベンダー、ですか?私好きです、あの香り…落ち着きますよね』

「好きなら良かった。次の通信を楽しみにしていてくれ」



女性らしく華に興味があるのか頬を緩ませ笑みを浮かべる彼女は愛らしく、自分も釣られて笑ってしまったのは記憶に新しい。

そんなたわいも無い通信を繰り返して数日、従者から頼んでいた情報が手紙となり届いた。

おそらく自分で届けるより早いと踏んだのだろう、出来た従者である。



[ 皇太子殿下へ 所望されていた詳細になります]


カインは早く知りたい気持ちを堪え中の報告書を切れないように封を切り取り出すと、見えた文面に思わず天を仰いだ。



「やっと、やっと見つけた…聖女。必ず迎えに参ります。」




1人の執務に笑い声が響く。カインの思惑とは……












報告します


現在、アーヴィン帝国内で殿下の言った年齢で社交界に一切の顔出しが無いのはレニス公爵家のフィル様のみになります。4年前から体調を崩されたと噂はありますが、主治医もおらず屋敷本邸にも気配はありません。

おそらく離れの小屋に監禁されているものと思われます。



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