隣国では聖女?!
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アーヴィン帝国──大陸一の帝国で周りは全て同盟若しくは従属国に囲まれたこの平和な国で、今1人の少女の物語が幕をあげる
それは喜劇か悲劇か……
【 序章】
いつからだろう、1人で過ごす日を数えなくなったのは
いつからだろう、疎ましい目で見られる事に慣れてしまったのは
アーヴィン帝国で知らぬ者はいない六貴族の内の一角、レニス公爵家
そこの長女として産まれたフィル・レニスは1人暗い室内で唯一外を見れる鉄窓を眺め思案する。
公爵家の令嬢とは思えないほどのボロボロなワンピース、不揃いな髪、腰掛けるベッドもそこらの宿屋以下の代物。部屋も洗面台と小さなテーブル、ベッドがあるだけの簡素…いや、窓が鉄窓になっていることを含めると部屋とは言えない。ここは牢屋だ。
彼女は最初からこうだったわけではない、あの日、あの出来事が全てを狂わせたのだ。
無垢な子どもが未来を閉ざす日常へ…
数年前
彼女はまだ幸せだった。大好きな両親、大好きな親友兼専属侍女や他の使用人と仲睦まじく暮らしていた。
レニス家の長女として、色々な勉学をする事もあったが真面目な彼女にとってそれも嫌ではなかった。
新しくものを覚える度に両親は自分を褒めてくれた。
六貴族の一角と言うのに倹約家な両親も自分の誕生日は盛大に祝ってくれた事もある。
今の彼女にしてみれば人生の最大の幸せだった。
だがある時…原因不明の高熱が出て、治まった時には全てが音を立てて崩れて言った
「ば、ばけものだわ…!」
朧気な意識の中、初めて自分に向けられた恐怖の瞳―それも今まで愛してくれた母親からの視線は未だ夢に見る。
「お嬢様が魔女、魔女になってしまわれた…!」
専属侍女のレイナですら、自分を見て怖がっている。流石に自分に何かあったのだと気付き身体を起こすと視界に入るアメジストの色をした髪に唖然とした。
(う、そ…なんで)
困惑し髪に触れて見るも、やはり色は間違いなくアメジスト…紫である。
目が覚めるまでは髪は母親譲りのハニーゴールドで、よく母親が自慢げに話してくれていた
『この髪は私に似たのね、可愛い我が子』
その髪が、何故……よりによって紫へ?
答えの出ない自問自答をしていると急に腕を掴まれる。
「っ……おと、うさ「魔女め、お前にそう呼ぶ権利など無い!」
騎士に掴まれた腕に驚き、父親へ助けを求めるもそこにあったのは拒絶の瞳。自分に似た空色の瞳を褒めてくれた父親はもういなかった。
そこからはあまり覚えていない。気付いたら騎士に引きづられ屋敷から遠く離れた小屋…いや、牢屋へと連れて来られ今からここで暮らすよう命じられた。
誰にも会わず、誰にも関わるなと念を押され…食事は一定の時間に扉の小さなドアから入れられる。その扉は外から鍵がかかり出ることは出来ない。
一生、孤独に生きていく事が決定した瞬間だった。