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第一章 第三幕 敵の腹の中なら話は別だ

今回ちょっと胸くそ展開入りますけどようやく主人公無双が始まります。

戦艦までは意外な程簡単に接近できた。

舞華の隠蔽結界のおかけだ。

私1人ではこうはいかなかっただろう。


ちなみにマキは拠点に置いてきている。

ダメだと言って聞かなかった彼女を舞華の拘束術式で拘束して拠点に閉じ込めたと言った方が正しい。

拠点に隠しておいたエネルギーユニットで魔導エネルギーも満タン。

準備は万全だ。


「もし戦艦内でレン以外の誰かを見つけたらその時は……」


途中で言葉を切った舞華をじっと見つめる。


「見捨てなさい」


続いたのは意外な一言だった。


「目的を見誤ったら誰も助けられない。あなただって生きては帰ってこれない」


そういう彼女に睦月は頷き返すしか出来なかった。

陽動を行うのは舞華だ。

戦艦内で余計な事をして時間をかければそれだけ舞華に危険がおよぶ。

戦艦への突入は完全に私の我が儘だから、余計な事をして舞華の危険を増やす訳にはいかなかった。



私は気配を隠すのが苦手だ。

だから小細工は無し。

舞華が派手に暴れて注意がそちらに向いている隙に揚陸艇の発進口から一気に内部に押し入るのみ。


突入に成功。

艦内の扉や隔壁は全てチャージで突き破る。

残念ながら全ヴァルキリー中最高の魔導エネルギーを操る私の突進攻撃で突き破れない隔壁や装甲なんて、異星人の戦艦でも用意できなかったらしい。


とにかくレンの気配に向けていくつも隔壁、それどころか壁や天井を突き破り一直線で突き進んだ。

そうしてレンの気配の元にたどり着く前に、捕らわれた人間達を見つけてしまった。

そう、見つけてしまったのだ。



寄り道は許されない。

だけど助けを求める人が目の前に実際にいると戸惑ってしまう。

檻の中の人間の1人と目が会う。


「オマエ、ヴァルキリーだな!早くここから出してくれ」


その男とは見覚えがあった。

東京の地球防衛軍日本支部、ヴァルキリー訓練施設の職員だ。




睦月が飛び込んだ戦艦の外では舞華の攻撃により次々と敵の兵器が破壊されていた。

睦月の放つ破壊の光槍は針の様に細く視認しづらい。

その上この針は突き刺さると内部で爆発するのだ。

これまでのヴァルキリーとの戦いで派手な光を放つ巨大な槍に慣れた異星人達は対処に戸惑った。


「あの子の魔導エネルギーは凄いわね。これだけ撃っても目減りする気配が丸でない」


そう言って雨の様に爆発する針を飛ばし微笑む舞華。

そこには適合値最低で出力に限りがあると言われていた彼女のかつての面影は何処にもなかった。




地球の空気が身体に合わない異星人達は総じて宇宙服を身に纏って戦場に出てくる。

その宇宙服はまるで特撮モノのヒーローの様なデザインが施されている。

宇宙服のデザインで所属の艦がわかる様に艦ごとに宇宙服のデザインは異なっている。


舞華が暴れている遥か遠くに狙撃用のライフル銃を構えている異星人がいた。

宇宙服のデザインから睦月が飛び込んだ戦艦とは違う艦の所属であることがうかがえる。


「発見されたら一貫の終わりだな」


幸運な事に彼が構えていたのはこの時の舞華の索敵範囲のギリギリ外だった。文字通りあと1ミリでも近付いていたら発見されていただろう。


「レーザーやビーム、実態弾でも着弾前に感知されて障壁で弾かれるな……だが、障壁が常時展開じゃないのが救いだな」


スコープを覗く彼は独り言こぼした。

それは舞華の癖だった。

魔導エネルギーの出力量に不安のある彼女は障壁を常時展開せずに攻撃を検知した瞬間のみ障壁を展開しエネルギーを節約しているのだ。


「あるいはナノマシンなら検知を抜けるか……試してみる価値はありそうだな」




「痛っ!」


首筋に何かが刺さった感触に舞華は顔をしかめた。

即座に索敵範囲を楕円形に広め刺された方角を確認する。

すると撤退していく狙撃手の姿が確認できた。

しかしもう反撃できそうな距離ではない。

戦艦から離れすぎる訳にもいかないので諦めるしかない。


「やられたわね……」





ヴァルキリーの訓練は壮絶を極め、手足が折れたり千切れたりで歩けなくなる事は日常茶飯事だった。

それだけの大怪我をしてもヴァルキリーならば治癒ユニットを打ち込むだけで翌日には元通り。

文字通り化け物といえるだろう。


そして大怪我で動けなくなったヴァルキリー達を、寄宿舎の部屋まで引きずってほりこんでいったのがこの職員達だった。

そう、引きずってである。

タンカを用意して運ぶ等という人間らしい扱いはされなかった。

文字通り、彼女達は物だった。


そして、いつかのあの日も動けなくなった睦月は職員達に引きずられて自身の部屋へ向かっていた。


「なあ、今ならコイツらにやりたい放題できんじゃね?」


あろうことか職員の1人がふざけてそんな事を言い出したのだ。


「やめとけ、イチモツを食い千切られるぞ。コイツらの見た目に騙されるな」

「ひぇー、おっかねぇ」


それに対した他の職員の発言も知れたモノだった。



睦月は黙って彼らから目を反らすとそのまま反対の壁を突き破った。

ここで出会ったのが彼らでよかった。

もしこれが全く見知らぬ誰かだったら、もっと強い罪悪感に教われただろう。



そんな風に幾度か捕まえられた人間を見捨ててようやくレンの捕らわれた部屋までたどり着いた。

壁を突き破って室内に入ると、裸で拘束されている彼女がいた。


「レンちゃん!無事ですか?」


壁を突き破ってきた私に驚くレン。

衰弱している様だが何とか生きていた。

槍の穂先で素早く拘束具を切り払いレンを腋に抱える。

裸のまま連れ出す事になるがそんな事言っていられる状況ではない。


「時間がありません。暫くの間我慢しててください」


そう言って部屋から飛び出した私の前に派手な格好の女と思われる異星人がいた。


「私のの船でずいぶん好き勝手やってくれたみたいだね」


どうやらその女は艦長らしい。

他にもレーザー砲を抱えた戦士が通路にぎっしり並んでいる。

レーザー砲は今まで見た事のないタイプのモノだ。

多分威力も高いのだろう。

絶対絶命と思われる状況だった。


だけどよく考えてみて欲しい。

ヴァルキリー中最高の出力を誇る睦月の防御障壁は通路に並べる範囲のレーザーの集中放火程度ではどうにかできるモノではない。

それがいくら通常よりも高威力のモノであってもだ。


加えてここは艦内。

いくら睦月の射撃が当たらないといっても敵の腹の中ならば話は別だ。

何処に飛んでも敵に大きな被害を与えられる。


「全力でぶっぱなす!」


それに、どういう訳か艦内に入ってからずっと調子が良かった。

通常時なら防御障壁と射撃を同時に行う事は睦月にはできないが今回は違った。


睦月の槍から放たれた破壊の光槍が敵戦艦の内壁を次々と突き破り艦外まで突き抜ける。

相次ぐ爆発に身動きが取れなくなっている敵を脇目に一気に外へ飛び出した。




戦艦から外に飛び出しすと、ふらついている舞華の姿が見えた。

周囲に残存してる敵戦力は見当たらない。


「舞華ちゃん!?」

「ちょっと肩貸しなさいよ……」


そう言って舞華が睦月に寄りかかってくる。

舞華の身体はとても熱かった。

舞華とレン、二人を抱えて急いで戦場からの離脱を図る睦月。

睦月の先ほどの攻撃で艦内の重要な機関が損傷したらしく睦月達を追ってくる敵の姿は少なかった。


だが全くいないというわけではなかった。

しかしいくら睦月といえども二人も抱えて戦闘などできるハズもない。

睦月が敵を蹴散らす為に二人を下ろそうとする。


「そのまま止まらないで」

「えっ?舞華ちゃん?」


上空に破壊の光槍が出現し敵を突き刺した。

舞華の攻撃だ。

だけどそれは舞華らしくない普通の攻撃だった。


こうして三人はようやく隠し拠点へ帰還したのだった。




異星人の戦艦に航行不能の大損害を与えたこの日の戦いは、此度の地球防衛戦が始まって以来、初めての大快挙でした。

最初の戦いがようやく終わった。

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