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第一章 第九幕 ビームナックル

「私は彼女達を手伝いたい」

「睦月!しかし……」

「先輩!何を言ってるんですか……?」


舞華が出ていった後も三人の議論は続いていた。

そんな中、不意に部屋のインターホンが鳴り管制室に呼び出される。



「何があったんです?」

「地上で動きがあったので、ご報告を」


既に舞華は管制室には私達以外は揃っていたようだ。


「大阪に侵攻していた敵戦艦のひとつ、先の戦闘で無傷だったヤツが京都への侵攻を開始しました」

「また記録にない動きです」


「大阪の住民は6割が避難済み、大半がデコイです。それに気がついて次の獲物に目をつけた?」

「あるいは、ゲリラ部隊をおびきだす算段かもしれん」


「ええ、ゲリラ隊の半分が慌てて京都へ向かっています。敵から丸見えですね」

「まんまと釣られたわね。2期生ではヤツらと正面からやり合うのは厳しいわよ」


「なんとかならないかな。そうだ!また大阪の時みたいに私が敵艦に斬り込めば!皆が隠れる隙くらいは、皐月ちゃん敵艦に1番近い出口に繋げますか」

「待ちなさい睦月、もっと良い方法があるわ。皐月、近くに高台みたいなところはあるかしら?」

「はい、丁度良いところがありますが……狙撃ですか?しかし戦艦の装甲を抜くには……」


睦月では威力は問題ないが命中精度が足りないと言いたげだった。

皐月は更に如月の方をチラリと見る。

如月なら射撃の威力も精度も申し分はない。


「そもそも2期生は未来の記録では存在していません。ワタシ達はどう動くべきか……」

「そんな、まさか見捨てるんですか?!」


マキが如月に抗議する。

だが如月の使命を考えれば記録にない行動を取る事に慎重になるのも当然だろう。


「いいえ、睦月で充分よ。わたしが補正してあげる。睦月、アンタは思いっきりぶっぱなす事だけに集中しなさい」

「えっ……はい。ありがとう舞華ちゃん」


「わかりました高台付近の出口に接続します。しばしお待ちを」




「高台までワタシが案内します」

「いいの?如月ちゃん。記録にない事を手伝っても」


エレベーターの前で私達が出口との接続まで待機していると如月が声をかけてきた。


「ええ。ある人の言葉を思い出しました。ワタシ達のタイムマシンは未来から過去への一方通行です。1度過去へ渡ればもう未来に戻る事はできません。だから、もし迷った時はアンタはその時代の人として自分の思う様に行動しなさいって」


「あら、随分と良いこと言うじゃない」

「うふふ。その言葉を送ってくれたのは、舞華お母さんなんですよ」


「ちょっ、まっ、止めてよね。そう言う事は先に言いなさい。自画自賛したみたいで恥ずかしいじゃない……」


嬉しそうに言う如月の言葉に、舞華の顔は真っ赤にした。

ここまで派手に狼狽える舞華は中々レアなんじゃないだろうか。


「こほん、こっちは射撃に集中しなくちゃならないから周囲の警戒は任せたわよ。接敵した時は派手にやりなさい。アンタ達が放出した魔導エネルギーもこっちで再利用するから」




如月に案内されて高台に到着した。

ここからなら敵戦艦どころか戦場全体を見渡せる。

既に戦闘は始まっている様子だ。


「大阪から京都まで走って敵を追ってきた上、そのまま戦闘を始めるなんて、2期生には脳筋しかいないのかしら??」


魔導ドライブの力で体力も人の範疇を越えるのがヴァルキリーだ。

とはいえ、出力の乏しい2期生では走ってきすぐに戦闘というのは、荷が勝ちすぎていると言わざるを得ない。


「でも、意外と善戦してるみたいじゃないですか」


2期生達は隠蔽結界を巧みに使い一進一退の攻防を繰り広げている。

一見するとそういう風に見えた。


「善戦してると言うか、加減されてるな」

「加減っていったい……」

「大阪で戦艦を大破させた睦月を誘ってるのよ。これは、さっさっと撃つだけ撃って撤退した方が良さそうね。2期生の質が低い事も見破られてるわ」


そう言うと舞華はヴァルキリーの戦装束を解除していく。

あっという間にレオタードはビキニの様な極小面積になる。


「ちょっと舞華ちゃん!何で脱いでるの?!」

「何でって、今の私のデバイスは皮膚そのものよ。戦装束はデバイスに干渉して邪魔になる。大規模な魔導エネルギーを支配下に置くには肌の露出面積を増やす必要があるわ」


舞華はケロっとして言ってのけるが、舞華以外の皆は顔が真っ赤だった。

何と言うか舞華にはヴァルキリーを誘惑する妙な色気みたいなものがある気がした。




異星人の戦艦からは次々と揚陸艇が飛び出していた。

それだけの数の揚陸艇を送り出してもまだ足りないと言わんばかりに、戦艦内部では出撃待ちの揚陸艇で溢れかえっている。


出撃待ちをしている揚陸艇のひとつにその艦の艦長は通信を繋ぐ。

通信に出たのは傷付いたメットをかぶった男。

彼は上陸部隊のひとつを仕切る小隊長であり、このガルム星人最強の戦士であった。


「リャック、お前さん、いい加減メットを新調しないか?」

「艦長、何度も言っておりますが、これは戒めなのです。先の戦闘で多くの部下を死なせた私への。それにメットの機能に問題が無いと鑑定結果が出ています。大丈夫です」


「しかしな、お前さんはいわば上陸部隊の顔だ。そのお前さんにそんななりをさせてたんじゃ艦長の俺の顔がだな」

「おっと、発進の順番がきたようです。それでは艦長!」


と言って一方的に通信を切ってしまった。



艦長の言葉に彼は東京での戦いを思い出す。


「リャック隊長、ポインター作戦は順調ですな」


苦戦を強いられた対ヴァルキリー戦闘。

それに対する新しい作戦は順調を極め部下達も上機嫌だ。

部下達は意気揚々とポインター役の赤いレーザーにあわせて自分のレーザーを放つ。


「この星にヴァルキリーが現れてからこんな楽な戦いは初めてだ」


ヴァルキリーが出現して以来、この星では苦戦続きだった。

それに対して目覚ましい効果を見せた新しい作戦き部下達は大いに沸き立った。

それが慢心となり戦場では許されない大きな隙となった。


1人のヴァルキリーがレーザー網を抜け、斬り込んできたのだ。

懐に入られてしまえばレーザーの集中放火作戦は形無しだ。

あっという間に十数人の部下が地に伏した。


ヴァルキリーを相手に一対一で接近戦を挑むのは無謀。

それがわかっていもリャックは引く訳にはいかなかった。

彼の後ろにはまだ何人かの部下が残っている。


そこから彼の決断は早かった。

切り札を使うべく戦闘スーツのベルトのコンソールを素早く操作する。

勝負は一瞬。


一撃に全てをかける。

戦闘スーツのビームエネルギー防御膜を全てを攻撃に転換するのだ。

ビームエネルギー防御膜とは戦艦で使われているビーム兵器のビーム素子を流用した物でありとあらゆる実弾兵器、更にはレーザー光線をも無効化する異星人達の最強の鎧である。


これを貫けるのは防衛軍ではヴァルキリーの攻撃くらいしかない。

その守りを捨て、全てを攻撃に捧げる。

正に起死回生の一手。

これを外せばもう自身を守るモノは何もなくなる。


メットの内部に電子音が鳴り響く。

スーツのエネルギーを全放出する重要な動作の最終確認として、音声による承認を求めているのだ。


「ビームナックル」


その一言とともに、スーツの全エネルギーが右手に集まる。

敵であるヴァルキリーが目の前に迫りくる。

リャックはヴァルキリーの槍を見事に掻い潜り、ヴァルキリーの身体にその拳を叩き込んだ。


それを受けたヴァルキリーはその身を四散させ、リャックのメットには一筋の傷痕だけが残った。


一騎討ちでヴァルキリーを打ち破った姿を見た生き残った部下達はリャックを大いに褒め称えたが、リャックは自分の気の緩みが原因で部下を死なせた事が許せなかった。


「もう2度と、あの様な失態は御免だ……」



地上についたリャックは揚陸艇を降り、地上での作戦を初めるべく観測装置を見た。

その時彼はあることに気が付いた。

この周囲を漂うあるエネルギーの流れがある時の流れに似ているのだ。


そう、東京で光の柱が出現した時に。

彼はすぐさま艦長に通信を繋げた。

自分で書いててなんなんですけどちょっと舞華、可愛いしかっこよすぎじゃないですかね

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