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凱旋

 春先より続いていた隣国との戦をおおよそ満足のいく内容で終結させ、斎賀國次期当主である章継あきつぐは上機嫌で戦地を離れた。


 数日後、彼は兵とともに領内で野営を張っていた。あと一日足らずで屋敷に到着する。


章継は感慨深く、周囲で思い思いにくつろぐ配下たちを見回した。


「これが最後の野営になる。皆、ご苦労だったな」


 あるじからの労いの言葉に、家臣たちは一様に誇らしげな表情を見せている。そんな中、章継の従弟にあたる雅朝まさともが軽口を叩いた。


「若〜、おれたち頑張ったから、祝勝会は奮発してよね?」

「ああ、もちろんだ。酒だろうがつまみだろうが、いくらでも用意してやる。なんなら俺の秘蔵の酒も全部出す」


 章継の言葉を聞いて、雅朝が「やった」と小さく拳を握る。その隣では、補佐役の景光かげみつが眉間のシワを濃くしていた。


「章継様は雅朝に甘すぎます」

「おれは別にワガママで言ってるんじゃなくて、兵の皆のことを考えてるの」

「どうだかな」

「働き者にはご褒美が必要だろ?」

「褒美は自らねだるものではない」

「その考え、ちょっと固すぎない? 皆が皆、景光みたいに枯れてるわけじゃないんだから」

「…もういっぺん言ってみろ」


 遠慮のない言葉の応酬は、付き合いの長い気安さからくるものだ。それがわかっているから、章継も好きにさせておく。


「まあとにかく、戦は終わった。少しくらい羽を伸ばしてもバチは当たらないだろう」


 章継が取りなすと、景光も納得したようだ。仏頂面ながら「厨房に声をかけておきます」と主の命に従った。


 予定通り、あくる日の昼過ぎに章継の率いる斎賀軍は斎賀城へと帰還した。先に送っておいた伝令が帰還予定を伝えていたため、到着時には盛大な出迎えが待ち受けていた。章継は疲れたそぶりも見せず、領民に無事な姿を見せる。


 その次は大殿に挨拶だ。先の戦で思いがけない怪我をして城で療養していた父は、息子の顔を見て誇らしげに頷いた。

 報告を終えると風呂と食事を済ませ、早めに床につくことにした。久々の褥は落ち着かない気分にさせるほど快適だった。

 雅朝が楽しみにしていた祝勝会は、準備のために翌晩への持ち越しだ。

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