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地球が舞台の話1

自転車事故

作者: ひつじかい

 その日、速人(はやと)は何時ものように、自転車の二人乗りをしていた。

 速人が漕いで、後ろに乗せた恋人の莉蕗(りる)は立ち乗りをしていた。

 何時も通りの光景。


 前方に丁字路が見える。

 普通ならば一時停止し、左右を確認してから何方かに曲がる事になる其処を、速人は速度をほぼ落とさずに曲がった。



 キキーーッ

 ドンッ



 飛び出した自転車に気付き急ブレーキをかけた観月(みづき)は、ハンドルにしがみ付いたまま、恐る恐る路上を確認した。

 壊れた自転車と倒れている人間が目に入り、暫し呆然とする。


「大丈夫か?!」


 事故に気付いた誰かの声に我に返り、観月は慌てて自動車を降りて駆け寄った。


「しっかりして!」


 しかし、少女は、ぐったりとしたまま動かない。


「救急車呼んで!」

「警察も!」


 次々と集まって来た人々が、救急車や警察に電話をかけたり・スマホで撮影したり・止血しようとしたりと動く。

 チラリと見て、通り過ぎて行く者もいた。


「うぅ……」


 痛む体を起こした速人は、頭から血を流し倒れている莉蕗に気付いて慌て飛び起きた。


「莉蕗!」

「動かないで! 貴方も頭を打ってない?」


 心配そうな初老女性に声を掛けられたが、速人の耳には入らなかった。

 ピクリとも動かない少女の姿に、釘付けとなっていた。




「人殺し! 娘を返して!」


 大切な娘を失った母親は、速人に掴みかかった。

 彼が一時停止無視をした所為なのだから、当然だろう。


「す、済みません……」


 速人には謝る事しか出来なかった。

 自転車保険に入っていないので、彼の両親が払う事になる賠償額はかなりのものになるだろう。


「謝罪なんていらないから、娘を返して! 返してよお!」

「申し訳……ありません」


 速人の両親も、ひたすら頭を下げる。

 まさか、息子の所為で人が死ぬなんて、思っても居なかった。

 だから、警察から電話が来た時、最初、自動車と衝突したのだと思った。

 だが、違った。


 どうして、こんな事になったのか。

 交通ルールは教えた筈なのに。


「本当に、申し訳ありません」




「はぁ……。やっと帰れる」


 警察から解放された観月は、車の中で呟いた。

 事切れた幼い少女の姿が、頭から離れない。


「明日仕事なのに、寝れるかな?」


 観月は何時もより慎重に運転して、帰路に就いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] やられました! 自転車、飛び出し、自動車、急ブレーキと来たのでてっきり… 面白かったです!
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