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主人の筆入れ  作者: 鬚爺
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第7話 コクヨ ネオクリッツ

これまでも「筆入れ」は登場してきた。我々の本拠地であり、休憩の場である。久しく、宇都宮美術館のミュージアムショップから招聘されたデルフォニックス(DELFONICS)のロールペンケースがその役目を担ってきた。私や銀色の君には個室が用意されている。一方で蛍光ペンやマッキーは二人部屋や三人部屋を利用。現行のロールペンケースは収納スペースが深く、上にフラップがある。ところが、我々が利用しているのは一世代前。足元を収納スペースに入れ、腰上を止めるような構造だ。例えるなら、自動車の後部座席のシートベルトのような状況だ。この部分がゴムバンドのため、最近、伸び始めたように感じていた。


休日、主人の手元には見たことのない「筆入れ」があった。我々はそこへ移動され、ファスナーが閉じられた。これが新しい本拠地?と思ったのも束の間、ロールペンケースへ戻された。どうやら、この筆入れに我々が格納可能かを確認したように思われた。

そこで三角スケールが一言。


「ほほ―、あれは私と同郷のネオクリッツですね。私にも刻印があるでしょう。『KOKUYO』出身です。しかし先ほどのものはどなたかが利用しているようです。それに定規が当てられていますね」


確かに主人がレザークラフトを行う際、活躍しているウルマ計器製作所の直尺を当てながら、大人の鉛筆の旦那がMDノートに寸法をメモしていく。どうやら我々の本拠地を建造するつもりのようだ。

それから数日にわたり、MDノートにネオクリッツの作成方法が試行錯誤の上、書き込まれていった。最終的には前面の小物入れとなるポケットは割愛され、縦長が短くされた。さらに原寸大の型紙が起こされる。その後は我々文房具の出る出番はなく、2週間以上が経過した後、引越となった。

大部屋にはなってしまったが、今までよりも広い。


新式筆入れは何といっても机上で本領を発揮する。ファスナーを開けると自立したペン立てとなるのだ。主人は職場や自宅の机にペン立て状にした新式筆入れを備え、そこから必要に応じたものを出動させていく。そのため、机上にペンを置かれることがなく、落下事件の確率も格段に低下しただろう。


「今後は私のようなケガを負うものもいなくなるといいな」


欠けたキャップをさすりながら、そうつぶやいた私であった。

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