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一行怪談

作者:だんぞう
どこでもらったかわからないスタンプカードをいつも財布から出して除けておくのにいつの間にか戻っていて、しかも今気づいたけどスタンプ増えているんだよね、血の染みみたいなスタンプが。



コンビニ袋をガサガサやったときにテレビ横の小物が倒れた夜には、大好物だった鰹節を供えることにしている。



いつの間にか入り込んでいた大きな蛾が昼寝中の旦那の唇に止まっていたのを払おうとして、旦那の国では蝶も蛾も「パピヨン」なんだっけとつい躊躇う私。



月曜の朝になると必ず玄関脇の水槽から熱帯魚が一匹飛び出しているせいで憂鬱なんだよね、と言う同僚のデスク周りは妙に海の臭いがする。



動く歩道に乗って流れゆく天井をぼんやり眺めていたら、白い蛍光灯の中を青い蛇が悠然と泳いでいるのが見えて、慌てて振り返ったらもう居なかった。



目が覚めて時間を見ようとスマホを探していたら「随分とうなされていたよね」という声……え、一人暮らしなのに……。



話題のパンケーキ屋に並んでいたら妙に獣臭くって、でもここまで並んだんだしって我慢してたんだけど、次の次で入れるってとこまで来て獣臭さが店の中からってわかって、どうしても店の中に入れなかった。



カタン、という音に振り返ると道端のマンホールに郵便受けが付いていた……だけじゃなく、隙間から人間の目みたいなのがこちらを見て、消えた。



通勤途中に見かける小高い丘の上の一軒家、窓とドアの配置が愛嬌のある顔に見えてお気に入りでさ、通るときいつも心の中で挨拶してたんだよね、そしたら今朝、挨拶のタイミングでウインク返してきたんだよ、窓。



「わぁ、見て。綺麗な赤い月」という誰かの声の後、スマホを取り出すのに手間取っていたら周りの人たちが空を見上げたままガタガタ震え始めたから、地面だけを見つめながらその場を逃げ出した。



いつ頃からだろうか、自分の心臓の音が、時計の音にしか聞こえなくなったのは。



冷蔵庫の奥の方から賞味期限が数年前に切れてるジャムが出てきたって夫と娘が騒いでるんだけど、それ私が先週ゴミ箱にちゃんと棄てたはずのジャムじゃないよね?



「料理の腕は君には全く敵わないけれど、珈琲淹れるのだけは僕の方がうまいだろ」それか口癖だったあなたは毎年、珈琲の香りで結婚記念日を教えてくれる……とうに亡くなり、私が再婚した今でも。



一行怪談があまりにも集まり過ぎて、結局わずか数日間の募集に対して、すべてに目を通すのに年を越したという。



客先の古いビル、喫煙所が非常階段にあるんだけどね、あそこさ、スマホ画面がベタベタの指紋だらけになるんだよね、どんなに綺麗に拭いてポケットに入れたままだとしても。



階段を何かが落ちる音がして「小指」という小さな声が聞こえて、家族の誰の声とも違うし気のせいだよねと自分に言い聞かせた直後また階段から何かが落ちる音がして「薬指」って声が聞こえて、さらにまた。



枝豆をさやからキュッと口に放り込んだとき舌に刺激を感じて反射的に吐き出してしまったそれは、ぺこりとお辞儀してテーブルの下へ飛び降りて……え、何?



いつもの通勤電車で隣の車両に移ろうとしたら食堂車……あれ、そんなはずは、と思った時、視界の端に入った皿の上に人間の手や足が……慌ててもとの車両に戻って次の駅で降りた。



僕の人差し指の爪が一瞬、ワニの口みたいにガバッと開いて中に小さな牙と舌とが見えた。



うちの防犯カメラには時々白いワンピースの女性が映っていて、実際に見ると居ないからとても気持ち悪かったんだけど、息子が「VRみたい」って言ってから不思議と怖くなくなった。



「ね、一番星」「ね、ね、見て」「見てってば。ほら早く」これか、同僚が言っていた「エレベーターに一人で乗ったら決して上を見るな」ってやつは。



仕事帰りに運良く座れた満員電車で、ふと向かいの窓に映る自分の顔と目があって、あれって思ったらやっぱり満員電車で向かいの窓なんて見えなくて、もちろん私の隣に座っていた笑顔の女の人も居なくって。



頑なにカレーを食べない友人にその理由を無理やり問いただしたら、昔、彼の実家の近くでカレーで煮ることで遺体の腐敗臭を消そうとした事件があったことを語り始めたのがランチの途中。



よく使うエスカレーターに赤い足跡が付いていて「エスカレーターでは立ち止まれ」のマークかなと一瞬思ったら、その足跡だけがエスカレーターを上っていった。



ソファに横たわってスマホいじりながらウトウトしていたら、顔面に落ちてきたスマホに起こされたんだけど「布団で寝なさい」って検索していたの……俺?



近所に有名な「金網を飲み込んでる木」があるんだけど、何の気なしに裏側を覗き込んでみたら人形が埋まっていて「つぎはあなた」って声がどこかから聞こえた。



眩しいほど暑いのが原因なのか、陽向に踏み出そうとすると靴の先から煙が出るんだ。



ふと気になって品川巻きの海苔を剥いたら、白くて小さい蟹のようなモノがたくさん這い出してきて、そのうちの一匹をつまんで口に放り込んでみたらアラレの良い香りが広がった。



夜の浜辺で魚のような蛙のような二足歩行の奇妙な生き物を見たんだけど、不思議と怖くなかったし、むしろ懐かしさのようなものを感じた。



旅先で見つけた昭和の風情漂う銭湯に入ったら、地元のご老人達が指定席のつもりなのか、洗い場にそれぞれ自分の入れ歯と眼球とを置いていた。



帽子を被った少女が、自分の身長くらいある大きなトランクを押していて、でもやけに手足が長いなぁなんて思いながら追い越し際ちらりと横目で見たら、バランス的にどう考えても胴体がなかった。



太陽が二つある砂漠をせっつかれるように歩かされている夢をたまに見るのだけれど、その夢を見た次の日は必ず人身事故で足止めをくらうなと気付いた夜、太陽が三つある夢を見た。



今日はどうも座り心地悪いなと何気なくズボンの後ろポケットをまさぐったら、指先を何かに握られた。



泥の中に手を沈め肘の周りにブツブツと湧く泡を数える。




<気まぐれに増やす予定>

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