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呟怖、怪談大喜利、一行怪談 (2021/01/31 呟怖、怪談大喜利 更新)

作者: だんぞう

■ 呟怖   :001~224 (2021/01/31 更新)

■ 怪談大喜利:001~007 (2021/01/31 更新)

■ 一行怪談 : 01~ 34 (2017/09/30 更新)


【2019年7月~、呟怖】


001

胸ポケットにスマホを入れておくと、たまに勝手にロック解除されて、TL上のツイートや、それにぶら下がるツイートにイイネしたりしてるんだよね。なんで?

(実話)



002

物語のプロットをトイレや風呂でよく思いつく。怖い話なんかは特に風呂で。出てからメモるのもいい加減面倒で、防水のスマホを買い風呂に持ち込んだが、いざ書こうとしたら電源が入らない。おかしいなぁと画面を覗き込む自分の顔の横、耳元に、妙に艶めかしい唇が笑っているのが映っていた。



003

列車遅延で職場ビルへの到着がギリギリ。こういう時に限ってエレベーターの扉がなかなか閉まらない。入口付近の人は荷物を引いているのに。すると部長が一喝。「最後の君、いったん降りなさい」扉はすっと閉まる。「お盆が近づくと出社する奴が増えるんだよなぁ」部長は苦笑いを浮かべた。



004

引っ越して来たとき、やけに部屋が綺麗だったのにも関わらず、壁に引っ掻き傷が幾つかついていたのでカメラに収めた。出て行く時、始めからついていたことを証明するために。その時の画像を今確認したんだけどこのドアストッパー、やっぱり咬み傷なんて全然ないよね。ペット飼ってないのにな。

→お題はこちら

https://twitter.com/fooler_/status/1158694879855173633



005

「楽しいかい?」

夫の声で目が覚めた。時計は深夜2時。こんな時間に何がと横を見ると、夫が四つん這いになって部屋の中をぐるぐる回りながら背中に向かって語りかけている。もちろん誰も乗っていない。

その時ふと、この旅館の前にあった馬の像を思い出した。その途端、夫がみるみる蒼ざめた。

→お題はこちら

https://twitter.com/R5ZcRPBLrUgckRE/status/1160405712188477443



006

頭上から視線を感じて見上げると、夕暮れの終わりかけに巨大な何かが立っていた。輝く両眼を持つ、影のような巨人。不意にそいつは口を開く。

「お前に決めた」

途端にその巨体は歪みながら形を変え、うねりながらどこかへと流れ始め……すぐに気づく。あれは私の家の方角だと。

→お題はこちら

https://twitter.com/sousaku9116/status/1161387339177844736



007

バス停へ向かう途中に向日葵が毎年咲く場所がある。その根元辺りを犬が深く掘り返していた。犬の体はみるみる地面に潜り込んでいく。よく見ると犬は喰われていた。

特に晴れた日は昼に蓄えた陽の輝きを持て余すのか、黄昏時にもまだ仄かに光を残している。あれはきっと向日葵ではない。

→お題はこちら

https://twitter.com/Sasaquet/status/1161868132119564288



008

猫は自分の狩った獲物をわざわざ見せに来る。虫とか鼠とか雀とか。でもこの子はちょっと違う。

影のような蛇とか、人の足首から下だけとか、目玉だけの何かとか、そんなのばかり見せに来て、

猫パンチで退治する。

ねぇ、今そのコップに追いこんだのは何? 髪の長い女の顔半分に見えたんだけど。

→お題はこちら

https://twitter.com/shimanohibi/status/1162316326334894080



009

そこに引っ越してから猫の夢を観るようになった。光の三原色が別々に震えている幻想的な世界に佇む虹色の猫。その猫を撫でたくて、おいでおいでをした。猫はいったん消え、何かを咥えて戻ってきた。そこで目が覚めた。

腹の違和感に気付き寝間着をめくってみると、そこに人面疽が出来ていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1162731742718877696



010

黄昏の海辺。水平線の彼方に見つけた一番星が、気付けばこちらへ向かってきていた。瞬きながら、静かに、真っ直ぐに。

やがてその光が、顔の見えない女の持つ花火だと気付いたが、私の体は砂浜に根を張ったように動かない。

女は波打ち際で止まり、花火で宙に何かを描く。不意に涙が溢れた。

→お題はこちら

https://twitter.com/couchiyan/status/1163072106935906304



011

友人がバイク事故で帰らぬ人となり、サークル仲間全員で葬式に行った。すると新入生のMが「汁はもらえないんですか」とか言い出した。Mの地元では葬式に行くと謎の汁をもらい、寝る前にそれを顔に塗るのだという。塩の間違いだろ、とからかってその場は終わったのだが、その晩、Mは自殺した。

→お題はこちら

https://twitter.com/usagamisousuke/status/1163611437484220418



012

中南米某国で行方不明になっていた同僚が4ヶ月ぶりに見つかった。発見当時、彼は上半身裸で両手を後ろ手に縛られ正座させられていた。彼はかなり太っていたので腹の弛みが大きなシワとして刻まれ、首を切られてからの時間経過か皮膚は黄色く変色し、まるでスマイリー風船のように見えたと云う。

→お題はこちら

https://twitter.com/No0_0128/status/1163640391209406464



013

混雑した美術展でその絵の前だけはやけに空いていた。

真っ黒に塗られた絵からは、指のようなモノが突き出ていて、額縁を掴んでいる。ふと寒気を感じてその場を立ち去る俺と入れ違いに女性が一人、その絵の前に立った。

何気なく振り返ると女性は消え、指の位置がずれていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/takenaga_draw/status/1163331467843268608



014

キラキラと光る宝物のような想い出はあるかい?

このフラスコに触れてごらん……そう、その一瞬の想い出を何度でもリアルに追体験できるのさ。

作りたい?

ではこの空のフラスコを持ち、その想い出を思い浮かべて……原理? 簡単なことさ。魂を閉じ込めて固めるだけ……ってもう聞こえないか。

→お題はこちら

https://twitter.com/sayusayu8020/status/1164260027735035904



015

駅前で怒鳴る男がいた。老人が近づき男の肩を軽く叩くと、男の肩から黒い鳥が飛び立ち、男は急に大人しくなった。

それ以来、老人があちこちで人の肩を叩くのを見かけるようになった。

街には黒い鳥が増え続け、そのうち黒い鳥の雛まで見かけた。

雛達は育ち、親鳥と共に人々の肩へ帰り始めた。

→お題はこちら

https://twitter.com/nonokue_no_e/status/1164364913155817472



016

大晦日の王子では稲荷装束の行列に遭える。和装し狐のお面かメイクがあれば誰でも参加できる行列。僕ら兄妹も毎年参加している。

行列に連なり右手を開くと、線香の香りと共に足音だけがはしゃぎながら僕の周りに響く。

年の変わり目は色んな境界が曖昧になるから見えない線香の煙が目にしみる。

→お題はこちら

https://twitter.com/417jyukaiikou/status/1164197282486505474



017

祖母の遺品の中に真っ黒い藁人形があった。私が怯えていると、母がその人形を優しく撫で始める。

「藁人形はね、呪いの道具として有名だけど御守りとしても使われているの。それにこれ藁じゃなくおばあちゃんの髪の毛だから」

私が二十歳になったら作り方を教えるという母をなぜか遠く感じた。

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1164439849769656320



018

バーで隣の席の女が突然、俺の手の甲に触れた。

「83点」

「何の点数?」

「あなたの」

「良い点?」

「なかなかね」

俺は女に誘われるままベッドまでついて行く。

「スキン付けて」

そう言って手渡されたモノは妙にゴワゴワしている。

「100点の肌なのよ」

俺は服も着ないで走って逃げ出した。

→お題はこちら

https://twitter.com/tsubukowa/status/1164848659919278081



019

並べられた提灯の真ん中で目を閉じる。輝きが瞼を透けて眩しい。その光の中に……見えてくる……久しぶりの幼い息子が石を積んでいるのが。

抱きしめたい気持ちをぐっと堪え、息子に近づく影を追い払う。それ以外は許されていないが、これで十分だ。お地蔵様とこの村とには本当に感謝している。

→お題はこちら

https://twitter.com/gimatetu/status/1164878973924306944



020

その花は夜の中にだけ咲く。

種を埋められた者の血を吸い尽くし、生命を滾らせた赤で咲く。

だが陽の光を浴びるとすぐに色を失い、灰となって散る。

私は銀のピンセットで灰の中から種を拾い、特製の銃に弾としてこめる。

私を吸血鬼だと信じる者も居るようだがね、期待を裏切ってすまないね。

→お題はこちら

https://twitter.com/Take_irakusa/status/1164889768087310337



021

「隠れて」

路傍の茂みに潜った僕らの目の前を、淡く光る恐竜のようなナニカが通り過ぎる。あの口の中に震えるのは食われてしまった誰かの魂か。

「行こう」

この少女、僕を導いてくれるけど、出遭うナニカの造詣がどんどん僕の時代から遠ざかっている気がする。本当にあの神社に戻れるのかな。

→お題はこちら

https://twitter.com/No0_0128/status/1165540379657027585



022

耳鳴りがする……と、アレが現れる。今日は客先の階段で。

青白い満月。そう呼ぶのが相応しい。触れることは出来ないが、いつも私の脚にすり寄るように現れる。ブルームーンって幸運の験なんだっけ?

ふと気付く。その月が微かに脈打っていることに。その瞬間、月の影が幾つかの胎児に見えた。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1165943204379627521



023

水路に真っ赤な金魚が居た。昨日の増水で量も流れも普段の倍以上になっているのに、金魚は優雅にその場に留まっていた。

同僚はそんなの居ないと言ったが俺は助けたかった。水路に片足を踏み入れバランスを崩した所で同僚に止められた。

夜、一人で金魚を助けにきた。ほら、やっぱり待って居る。

→お題はこちら

https://twitter.com/takenaga_draw/status/1164848092581003265



024

僕の彼女は舌先が器用だ。さくらんぼのヘタを結ぶのはもちろん、チューインガムを口の中で色んな形に成形出来るくらい。今日は何を作っているのかな。

「ほは、へひは」

舌先にガムで出来た指輪を乗せて微笑む彼女の口の中で、ごくごく小さな屈強そうなおじさん達がポージングをキメていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/usagamisousuke/status/1166119147442335744



025

入院した親父を見舞いに行ったら、窓から綺麗な夕焼けが見えた。

突然、看護士が病室に走り込んできて、窓を閉め鍵をかけカーテンで窓を覆う。

「面会時間は終わりです」

時計を見るとまだ昼なのに、もう終了?

看護士に誘導されて乗ったエレベーターは、今居た階のボタンが封鎖されていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/Mad8068/status/1166151074287214592



026

「あれ? 怪我したんですか?」

「大丈夫? 血が出てない?」

仕事中に青いインクが指についたのを同僚達にからかわれた。

「痛っ、紙で指切っちゃった」

そう言う同僚の指から流れたのは青い血……他の同僚達は俺のインクの時と同じ反応だ。

もしも、からかわれていないのだとしたら……。

→お題はこちら

https://twitter.com/tEg8XuCK6tKz0v7/status/1166264488921710592



027

実家の玄関には立派な兜が飾ってあって、その兜飾りがとんぼだった。

その金属製のとんぼが、夜中に鼠を齧っているのを見たことがある。夜中にトイレに行った帰りに僕はそれを見たのだ。それを弟にこっそり教えたら、見に行ったきり帰ってこなかった。

翌朝から弟は始めから居ない者となった。

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https://twitter.com/R5ZcRPBLrUgckRE/status/1166353826787602432



028

うちは駅から遠くて分かりにくい場所にある。今夜の飲み会は初めての人が多いからと道案内用に写真を撮りまくった。その中で目印のコンビニがなぜか白黒に映っていた。

飲み会に遅刻してきた奴が、目印のコンビニが火事だと告げる。写真を再確認したらもう一枚、うちも白黒に映っていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/sa3_yu2/status/1166364697190391808



029

煽り運転のニュースを見ていた妹が、通学時にスマホの動画撮影をするのだと言い出した。乗換駅で毎朝ぶつかってくる男がいるらしい。

帰宅した妹に撮れたのか尋ねたら、ダメだったと答えた。ぶつかられたし目では見えていたのに撮れてなかった、と言った直後、妹は突き飛ばされたように転んだ。



030

異世界へ迷い込む時は世界の色が変わるって聞いたことがある。実際、異世界へ行ける方法を試してみたら、鳥居の色以外全ての色が消えた。

しばらくして色が戻ったら目が二つしかない奴らばかりの世界に来ていた。どうしたら元の世界に戻れるのかな。

ねぇ、この世界に来た人、僕以外にも居る?

→お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1166858833366355968



031

通学路にあるそのカーブミラーには、いつも僕が映っていた。どんな角度から見ても必ず僕が映っているんだ。

監視されてるみたいで嫌だったけど不思議と慣れるもので、今日なんかは心の中で、いつも見守りありがとうって挨拶した。するとカーブミラーはパチパチと瞬きして、赤くなった。

→お題はこちら

https://twitter.com/Wbaet11/status/1166935797414547456



032

中学の時、初めてのお泊まり会に行った時のこと。友人宅では花なしの花瓶があちこちに飾ってあって、軽い気持ちで覗いてみたら骨が入っていた。どの花瓶にも骨。怖くなって逃げ帰ったら、私の鞄がやけに重い。いつの間にか大量の骨入り花瓶が入れられていた。

学校の焼却炉で全部燃やした。

→お題はこちら

https://twitter.com/couchiyan/status/1166133838059163648



033

久々に実家に戻ると居間に羽毛の絵が飾ってあった。不思議な立体感がある絵。

「父さんの熱帯魚の骨で作ったんだ」

妹の声を追い仏間へ移動すると、仏壇が真っ白くゴツくなって……これもしかして……人骨?

「兄さんも手伝ってよ。父さんと母さんのだけじゃ足りなくてさ」

背後から妹の声。

→お題はこちら

https://twitter.com/YaChiRuewomiru4/status/1167388186659545088



034

古典の岡下は、俺たちが眠くなりかけると漢字の成り立ちを解説しはじめる。今日は「書」だ。

「敵の首を取ったあと肉が全部無くなるまで野晒しにして自分達の強さを伝えた。下の日が生首だよ」

これで皆、目が覚める。

「猫で試したが本当に書だったよ」

ん? 岡下いまなにかボソボソ言ってた?

→お題はこちら

https://twitter.com/tsubukowa/status/1168155057558155265



035

この外階段、異様に長いだろ。二階をすっ飛ばして三階に続いてんだ。十年くらい前に二階で凄絶な殺人事件があってね、それ以来、内階段を登った人は酷い事故に遭うんだとよ。ところがさ、定期的にここの二階に引越が出るのさ……引越屋の社長が社員に保険をかけててな。命が惜しけりゃ内緒だぜ。

→お題はこちら

https://twitter.com/kaleidoscopeka6/status/1167989231253241856



036

心霊スポットに集うのは圧倒的に若者が多い。そこに目を付けた闇臓器ブローカーが拉致し易い場所を「心霊スポット」として広めた。臓器を取られた若者は口を封じられる。そしたらそいつらの怨念が溜まってここは本当に心霊スポットになってしまった。見えないか? あんたの臓器へと伸びてる手。

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https://twitter.com/hiro_jake/status/1168499130877923331



037

ヘビースモーカーだったじいちゃんの月命日には線香代わりに煙草

を一箱供えている。


「だけど今日はごめんな、じいちゃん。学校帰りにじいちゃんの馴染みの店で買おうとしたら、いつものおっちゃんじゃなくて売ってくんなかった。事情を説明してもダメでさ」


その晩、その店は燃えたらしい。

→お題はこちら

https://twitter.com/tsubukowa/status/1168469215512154113



038

彼の結婚式ディナーのパンは私からのサプライズ。酵母から手作りの特別製。イタリア男みたいに浮気者の彼だから酵母はパネトーネ種を選んだわ。

知ってる? パネトーネ種の作り方。母牛の乳を飲み始めたばかりの仔牛の腸を容れ物にして発酵させるの。

人の腸でも発酵するのよ。彼の子の腸でも。

→お題はこちら

https://twitter.com/legacystsubarun/status/1168678340531638272



039

お寺の境内で遊んでいたら、住職さんにいきなり怒鳴られた。僕の足に小さな女の子がしがみついているって。

お寺の前に遊んでいた公園へ住職さんを案内する。

「あの家の庭にボール取りに勝手に入りました」

僕らが帰らせられた後、あの家の庭で、虐待死の少女が埋められていたのが見つかった。

→お題はこちら

【寺の住職「お前ら!!! そんなもんどこで拾ってきた!!!」】



040

取引先のオフィスに赤電話がある。と言ってもレトロなアナログ公衆電話ではなく、赤のビニールテープでぐるぐる巻きにされたオフィス用の電話。

定時間際になるときっかり4コール鳴る。

「すみませんね、鳴り終わるまでは待ってください」

それ以上のことは教えてもらえなかった。



041 (返怖)

ある日の練習終わり、鍵を締めてくれた人に思い切って聞いてみた。あの白い人のことを。

「あれは初代の校長先生なんですよ。戦争を経験しているから、子どもが校庭で普通に遊べる光景が素晴らしいと……僕の恩師だった方です」

確かに夜に走り回っているのに、誰もが怪我一つない。

→お題はこちら

https://twitter.com/suika_sheep/status/977386548898381825



042

お盆の頃、海岸近くにはよく霧が出る。地元ではご先祖様が「来て」いる証拠だと言う。お盆以外でも霧は出るが、あの世に迷い込むから近づくなというのが村の常識。それでもたまに霧の日には行方不明が出る……その理由が今日初めてわかった。霧の中から聞こえるんだ。懐かしいお前の呼ぶ声が。

→お題はこちら

https://twitter.com/Wbaet11/status/1169730138600140800



043

地下鉄でふと向かいが空席だと気付く。車外は漆黒ゆえ窓には車内の様子が映り込む……私以外の全てが。

最初に気付いたのはいつだかな。私の姿だけぼんやりと霞んでいる事に。その翌日、妻が大金を拾った。

その後も映る私が霞みゆく度、身内に幸運が続いた。

ついに消えたか。

私は目を閉じた。

→お題はこちら

https://twitter.com/Piy8mk6gUbXooGE/status/1169655958261288960



044

「立ち小便防止の鳥居とか今時珍しくね?」

ホロ酔いの同僚が立ち止まる。

「赤じゃないんだ」

俺は思わず後退った。寒気で酔いが覚めたから。

「ちょっとご挨拶」

しかし同僚はチャックを下ろしながら鳥居へと向かう。

俺は目を離して……無音に振り返ると同僚は居ない。彼はそのまま失踪した。

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https://twitter.com/ichifuji77/status/1170086925539037185



045

賽の河原と呼ばれる場所は日本各地にある。昔、仲間と行った温泉にもあった。

その賽の河原を夜に散歩したら、体が次第に重くなり、俺は意識を失った。

起きたとき地元の坊さんが居て、とんでもないことを言われた。

「あんたハゲてるから、お地蔵さんに間違われてすがられたんだよ」

マジか。



046

「居間にスイカがあったんです。触れたら冷たくて……だから二つに割ったんです……そしたらブツブツとした種から黒い汁みたいなのがどくどくと流れ出してきて……全部の種からです……僕はただスイカを切っただけなんです」

妻を殺した男の供述だ。私には、彼は本当に嘆いているように見えた。

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https://twitter.com/No0_0128/status/1170167962818363394



047

葬儀屋のパンフレットに袋とじがあった。中身を尋ねると「上級者向け」と答える。気になったので開けてもらうと、一つ目は『風舞葬』。遺体をプラスティネーション加工して、それをカンナで透けるくらいの薄さに削り、強風の中に撒く……袋とじを開いたことを早速後悔した。

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https://twitter.com/tsubukowa/status/1169288565789839360



048

あれ?

ここ来るの初めて?

デザイン微妙だけど、何かと独特でクセになるぜ。

ほら、この乗り物なんてさ、背中のコイン入れるとこがガムテで塞がれててさ、受付で200円の煎餅みたいなの買って首の付け根の隙間に差し入れるんだよ。そうするとバリボリ音立てながら動き出すんだぜ。面白いだろ?

→お題はこちら

https://twitter.com/monisoma_0428/status/1170513282588786691



049

おかしいな。なんで写らないんだ?

公園の石垣の前によくいる黒い猫がね、撫でようとすると逃げるんだけど、見ているだけならこの距離でも逃げないんだよ……って写真に撮ったんだ。でも写らないんだよ。そこにいるのに。

な、写ってないだろ……と画像を見せた友人はことごとく事故に遭った。

→お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1170613836216274946



050

娘の死に顔は微笑んでいるようにも見えた。

娘は優しい子だった。周囲の人が笑顔でいられるならと自己犠牲すら厭わない子。

その想いを誰が踏みにじったのか……娘が死んで初めてそれを私は知ったのだ。

私は娘のデスマスクを作り、肉を溶かす接着剤を裏に塗り、あの外道の顔に強く押し当てた。

→お題はこちら

https://twitter.com/YaChiRuewomiru4/status/1171015180894867456



051

深夜に帰宅した姉が妙に甘い香りを漂わせていた。

「香水、変えたの?」

「ううん。猫を撫でたの」

話がかみ合わない、この酔っ払いめ。

「猫を撫でたらね、手にチョコレートがついたの。舐めたら甘くてね」

姉が見せてきた手のひらは赤黒く変色し、皮膚が剥がれているようにしか見えなかった。



052

ゲームとか少年漫画とかのさ、倒したのに強くなって復活する敵っているじゃん。あのイメージなんだよ。

とりあえず巨大化ってとこだけに

特化して時間差で二段階変化させてね。

いや驚いたよ。

水につける前と一段階目の変化がタピオカそっくりでさ……まさか胃酸で膨張率が百倍になるとはなぁ。

→お題はこちら

https://twitter.com/legacystsubarun/status/1171206523843825664



053

毒々しい赤の表面に無数の目が見開いてこちら見つめている……ように見えた。

横着せず台所の電気を点けると、目なんて見えない。ちょっと大型のドラゴンフルーツ。実についた幾つもの突起部分は確かに瞼に見えないこともないが……試しに台所の電気を再び消してみる。

その瞼が一斉に見開いた。

→お題はこちら

https://twitter.com/YaChiRuewomiru4/status/1183222754419412993



054

SNSでホラー小説をアップしあう仲間の新作は妙にリアリティがあった。人を解体する猟奇モノ。読むだけで冷や汗が流れたその悔しさから、捨てアカウントを作って「見たな」と書き込んだ。悪戯のつもりだった。

俺の書き込みの直後「俺のをな」と誰かが書き込んだ。



055

ベビーカーを押した母親が歩道橋を歩いていて、そのすぐ後ろを三輪車に乗った小さな坊やが追いかけていた。

その母親がさ、降りるエレベーターに乗って、三輪車の坊やがまだ追いついてないのに扉を閉めたの。

思わず声が出そうになったのを呑み込んだのは、坊やが三輪車ごと扉をすり抜けたから。



056

やけに蒼白い月に見とれながら歩いていたら踵がぬるりと不意に滑った。

バランスを崩しかけた私の手を誰かがつかんでくれた。

お礼を言おうと右手の先を見たが誰も居ない。というより手首から向こうがない。

「ありがとう。拾ってくれて」

囁くような声が脳裏に響き、私の手の中の手も消えた。

→お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1187991175560482817



057

ガードレールのない夜道。車に気付いて道の端に寄る。流れるヘッドライトが私の影を傍らの民家のシャッターへと映す。何台も通ると私の影が踊っているように見えた。

あれ?

車が全て行ってしまったというのに、私の影は踊るのを止めない。どこからか祭囃が聞こえはじめ、慌ててその場を離れた。



058

玄関にセンサーライト(扉の内側)付いてるんだけど、ライト点かないのは嫌だな。特にこういう怖い話に触れたタイミングで。

確かこのあたりのはず……って、ものすご手を近付けてようやくライトが付いたんだけど、センサーとの間にまるで何か障害物があったのかよ、なんて感じてしまう。



059

政府がコロナウイルスの水際対策をわざと甘くしたのは、若くて健康な人は感染しても影響薄いけれど保菌してて、発症少ないままどんどん感染は広がって、抵抗力弱い老人や病人ばかりが発症して死亡し、年金や医療保険に消費する国費を結果的に軽減する淘汰作戦だから……



060

屋外でイヤホンを手放せないのは、音が無くなるのが合図だから。

音が消えて立ち止まり、周囲を見渡すと、必ずそこにはボタン式の横断歩道がある。必ず「おまちください」が点いている。

そしてたいていすぐ目の前を猛スピードで車が通り過ぎてゆく。もう一度見ると歩行者の信号は青なんだ。

→お題はこちら

https://twitter.com/411_izayoi_rio/status/1238062656705024001



061

はじめは目を背けられていたがライブを繰り返すうち、曲も固定ファンも次第に増えてきた。

そんな矢先のある朝、私の大事な日本人形の着ていた着物が、ズタズタに切り裂かれて床に落ちていた。

急いで日本人形をパッと見る。

すると彼女の手前に、フランス人形が誇らしげに立っていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/misa_funeral/status/1199896717123977217



062

締め切った部屋のカーテンを少し開いた隙間から射し込む陽の光、そこに埃がキラキラと浮かんでいるだろ、あんな感じ。彼女が咥えたストローから魂を出すときは。

でも僕は幽体離脱ってのが信じられなくて、ストローを塞いでみた。だって目も開いたままだし。


そのまま彼女は死んでしまった。

→お題はこちら

https://twitter.com/r_Okishima/status/1125699609777430529



063

「おかーさん!」

娘が学校から帰ってくるなり泣きついてきた。

「これ」

娘が差し出した右手の小指にオレンジ色に仄かに光る紐が結ばれている……いえ、紐はみるみる赤くなってゆき、娘の顔から血の気が引いてゆく。

私が慌てて紐をハサミで切ると、切り口から勢いよく血が吹き出した。

→お題はこちら

https://twitter.com/sachuta_0u0/status/1151870710546960384



064

漆黒に浮かぶは小さく光る球。

私の足は勝手に向かう、火に飛び込む虫の様に。

光はどんどん近付いて、私の視界を塞ぐほどに。

光の彼方に何かが見える。あれは大きな……恐竜が……こっち来る?

ドシンと背後で音が轟き、我に返る。慌てて振り返ると巨大な足跡の真ん中に半裸の男が潰れていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/3eaDarxQ0LWi9MD/status/1238381701413220352



065

目が覚めたらエレベーターの中に居た。起き上がり、とりあえず1を押してみた。

動く気配がして、扉が開いた……と同時に、目の前に設置されたギロチンが落ち、見知らぬ人の首が飛んだ。

黒服の男たちが現れ、血の臭いが残るギロチンへ俺を固定した。

次のヤツ……頼むから1は押すな。

→お題はこちら

https://twitter.com/tanderion1216/status/1256890475383930880



066

公園設計者はオカルトを信じない人だった。

「あの世へつながっている井戸」として文献に残っていた井戸をデザイン重視で半分だけ埋め、蓋をしてベンチとした。

しばらくすると公園の近辺で浮浪者が次々と死んだ。近隣住民にも自殺者が増え、公園設計者や工事関係者も急死し、公園は封鎖された。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1257455999201525760



067

高校時代の彼女は、新月の夜にデートする時は必ず「今夜は月のお葬式だね」と言う。理由を聞くと「だって『死ん月』って書くでしょ?」と。

ああそうか。だからこの反魂香の注意書きに「使用は朔の夜に限る」と書いてあるのか。

煙の向こうの彼女は今宵もまた同じことを言う。永遠の高校生。

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1255839596673261569 (No.1)



068

未明に沖合で爆発が起き、人が死んだ。救助された生存者は「人魚を捕まえようと思った」と供述。


その記事を新聞で見つけた私は教授にすぐさま報告した。

「教授が港で昨日『人魚を見つけた』とか騒いでたせいですよ!」

「ほぼ形の残っている貴重な人間魚雷だったのに!」

死者よりそっちかよ!

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1255839596673261569 (No.2)



069

「好きな人に頭を撫でてもらえるおまじない」が学校で流行っている。

でも試すのはやめたほうがいい。それはそんな可愛いもんじゃないんだ。


最近、夜になると急に両手が強張り掌を閉じられなくなる。

指先に何かが触れている感触。そして最後に必ず髪の毛が絡まってくる。俺の手は櫛じゃねぇ。

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1255839596673261569 (No.3)



070

珍しいペット?

ああ、あの本のことか。ペットと言えなくもないがね。

内容?

中世の魔導書……稀覯本ってやつさ。ページ数を言うと読み上げてくれてね。

違う違うスマートスピーカーじゃない。

どうやって……って砂糖を零したら懐いたんだ。

だが嘘ばかりつくんだぜ。なんせ二百枚舌だからな。

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1261922714094202881 (No.9)



071

ふと迷い込んだ路地裏に、小さい頃住んでいた家とそっくりの家があった。路地に面した窓は曇ガラスで、星に似たガラスの柄まで同じ。だからかな。ほんの少し開いていた窓の隙間から向こうを覗き見てしまったのは。

小さい頃に「僕を捨てて出ていった」はずの母の首を、まだ若い父が絞めていた。

→お題はこちら

https://twitter.com/ryoda_odai/status/1264014060648972288 (No.1)



072

昔から時々、景色の一部に黒い靄がかかって視えることがあった。数日かけて靄が濃くなり先が見通せなくなると、その日のうちに必ずそこで人が死んだ。

この道の先も、昨日までそうやって黒い靄がかかっていたのに、今はなぜか光輝いて視える。

危機は去ったのか、それとも罠なのか。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1263590121456074762



073

この団地は広い。入り口からうちの棟まで歩くのも疲れる。

しかも怪しいおじさんに声かけられるし。

僕は慌てて逃げた。だってそのおじさん、ランドセルを背負ってたんだ。

走って、走って、ようやく一人になれたけど……ここどこ?

あっ、人!

「すいませーん」

その小学生は走って逃げだした。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1280820218550345728



074

#このお題で呟恋をください というハッシュタグがある。

お題として「好きな人の名前」を書くと、その名前と書いた本人の名前とで素敵なラブストーリーをリプライしてくれるの。

一見いい話みたいだけど、気づいちゃった。このリプライする人、書いた本人の本名をどうやって調べてるんだろ。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1280171720498798592



075

突然吹いた風に誘われるように見上げた空に、何かが浮かんでいた。

青くて、無数の触手か棘みたいのがウネウネと動き、気持ち悪い。

よく見ると糸のようなものがのびていて、誰がこんな悪趣味な凧を……と思って辿ったら、すぐ隣に立っているスーツ姿の男の首が細く伸びたものだった。

→お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1280750471179718661



076

合歓の樹を見るとあの夏の朝を思い出す。

僕と兄は海岸沿いの国道を歩いていた。もう少しで防風林の切れ間から砂浜へ降りられるってとこまで来たら、変な音が聞こえた。

バリボリって何かが砕ける音。

兄は僕に待ってろと言って走って行き、右足を残して居なくなった。

その防風林が合歓だった。

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1274613601681068032



077

熱気で陽炎のように揺れる街。

見上げた空へ高く昇る入道雲。

だから雷かと思ったんだ。

ガラスの割れる音が。

でも振り返った僕が見たのはラムネ瓶を落とした彼女の引きつった顔。

「睨んだの……ビー玉が」

暑さのせいにしたことを今でも後悔している。

結果的に僕も睨まれ片目を失ったから。

→お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1272071247237545984



078

地下鉄の中に蝉の幽霊が居た。

何度踏まれても潰れないのに、時々突然激しく暴れ始める。

違う意味で心臓に悪い。

ああ、まただ。何度聞いても慣れないなと思ったその瞬間。耳元で「あなた見える人だね」と声がした。暗い車窓に映る私の後ろに人は立っていない。



079

残業帰り、普段は通らない駅への近道に、なんとも風情のある洒落た店を見つけた。

扉の向こうからは胃袋を刺激するいい匂いまで。

今日はここで晩飯にするか。

あ、その前にと、その入り口を撮ろうと構えたスマホの画面には壁しか映っていない。

慌ててその場を立ち去った。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1294089116510896129



080

彼女の家に向かう途中、彼女が必ず立ち寄る小さなお稲荷さん。

「いつも寄るよね」と言ったらギョッとした顔をして「え、私、寄ってた? ここに?」と狼狽えた。

その後すぐに彼女は引っ越して、二度と会えなくなった……のをたった今思い出した。君が「いつも寄るよね」とか言うから。



081

「いたい」と「こわい」しかない自販機がいまだに撤去されない。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1295236210344882179



082

妻が結婚指輪を失くしたと言った翌日に私が釣り上げた魚。

腹を裂いたら出てきたのは私が妻へ贈った結婚指輪だった……指付きで。

じゃあ今、家の中に居るこの妻は誰だ?

友人は指紋を調べなよと言うが普通は妻の指紋など記録してないだろ?

だが念の為と寝ている妻の指を見たら指紋がなかった。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1298722020234899456



083

公園でランチを食べていたら悪魔みたいな目をした鳩が物欲しそうに寄ってきた。

試しに鳥の唐揚げをやってみたらガツガツと喰う。

共食いだなと笑っていたら「俺はトリよりもブタの方が好きだ」と鳩が囁いた。

翌日、同じ公園で太った男が鳩に啄まれているのを見て、俺はダイエットを誓った。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1298716369836417026



084

彼女から貰った風鈴を割ってから一晩中鳴る音だけが響きやがる。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1295236210344882179



085

幽体離脱する薬を手に入れた。試してみると、自分の口から細い煙のようなモノが出て、その出た方の私が倒れている私を見下ろしている。どこまで離れられるか確かめようとしたけど壁は通り抜けられない。

なーんだ。抜けられないのか……彼に飲ませられれば彼の魂を飼うことができるじゃない。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1303820813804564481



086

電話の音に起こされて寝ぼけ眼で受話器を取る。

フロントからかな。もう起きる時間か、と枕元のスマホを見るとまだ深夜2時。

受話器の向こうから「あなた、聞こえる人だね」という嬉しそうな声。

→お題はこちら

https://twitter.com/5000004xxx/status/1301198557488115713



087

文化祭の企画で、クラス全員の手形で、ゴッホの『星月夜』を描いた。

何日もかけ、皆で一生懸命絵を作っていった。

そして文化祭の前日、とうとう完成したはずの絵の中央に、真っ赤な手形が一つ、いつの間にかついていた。

互いに手を見せ合ったけど、真っ赤な手なんて一人も居なかった。

→お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1304768172503965696



088

「小学校に二宮金次郎の像あった?」

何の脈絡もなく尋ねてしまった。

「いや、ないけど?」

友人は不思議そうに返す。

「そっか」

「なんだよ突然」

「いや、気にしないでくれ」

どうにも理由がわからない。友人の背中に二宮金次郎の像が憑いていることの。

こいつ、何したの?



089

広島のとある豪農の蔵に稲生物怪録について言及された巻物があるという。

それによると平太郎が出会った物怪の数々は、稲生家が栄えるまでに必要とした人柱の数だという。しかも、全員、稲生家の者だとも。

手塚治虫が「どろろ」を描く際のネタとなったという噂もある。

→お題はこちら

https://twitter.com/da21t0rama3/status/1310087820816470022



090

人混みが嫌いな君と、よくここに来たよね。

僕はまだ覚えているよ。突然雨が降ってきて、僕らが初めての相合い傘をした、あの時のこと。

肌寒い日だったけど、君と握った傘の柄はやけに温かかったんだ。

今でもね、雨が振るとよくここに来るんだよ。

傘の柄が時々温かくなるからさ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/STR_reo88/status/1311134639252152320



091

転入届を出しに行った役所で小冊子をもらった。

パラパラとめくると自治体のルールが書かれている。後ろの方は粗大ゴミのリストで、山が近い田舎だからか「罠」とか「檻」とかいう項目まである……ん?

この最後の「おもげ様」三万円ってなんだ?

誰に聞いても目をそらされるだけだった。



092

「こんなゆめをみたよ」

小一の息子が写真みたいにリアルな絵を描いた。うちの子、天才なんじゃないかと喜んだのもつかの間。

「こうやってゆれてるの」

その左右への揺らし方がどうにも不気味でやめさせたら、今度は首が痛いと言い出した。

お前、いつからこんな首を一巡りするような痣が……。

→ お題はこちら

https://twitter.com/tanupon_music/status/1315882769994575872



093

「その和室の畳、やけに新しくてさ」

入院した廃虚マニアの友人を見舞ったら、最近一押しな廃墟の説明が始まった。

「二面が廊下と接してて、中央には変な囲いがあって……木の板を反時計回りに何度も折った感じの……あ、上から見ると壁込みで『厄』みたいな」

それが友人の最期の言葉だった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1316178393755344896



094

小学生の頃、宇宙の心霊写真を持って来たヤツがいた。

岩の影をよく見ると顔みたいなのが見えて、しかもその顔がグレイそっくりだった。

「グレイよかドクロっぽくね?」

ケチをつけたクラスメイトはその日の帰り道、交通事故で亡くなった。

翌日、写真を持って来たヤツを誰も思い出せなかった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/da21t0rama3/status/1316601851484221440



095

彼の部屋に遊びに行ったら見つけた長い黒髪。問い詰めたけど記憶にないとか言い張るし。泊まるのも嫌がるし。

でも無理やり泊まってやったら真夜中、ぴちゃぴちゃ舐めるような音で目が覚めた。

しかも金縛り。

視線だけ動かせたから隣の彼の方を見ると、真っ黒い大きな獣みたいなのが彼の顔を。



096

【蕾】

飲み屋で仲良くなったおじさんの小指がないことに気付いたのは、しばらく経ってからだった。

「小指が気になるかい?」

慌てて首を左右に振ると、おじさんは手を僕の方へ近づける。

あれ? 小指の付け根に何か挿してある……蕾?

「咲くと綺麗なんだよ」

トイレに行くフリをして僕は逃げた。


【花開く】

「久しぶりだねぇ」

信号待ちで声をかけられて振り返ったら、あの小指がないおじさんだった。

僕に向かって振る手……その小指の部分に、赤い花が咲いている。その花だけじゃない。おじさんの目も、花と同じ色に充血していた。

僕は思わず逃げ出しちゃって……そして轢かれてしまった。


【種】

意識を取り戻したのは病院のベッドの上だった。

全身が痛くて体を動かせない。

「大丈夫、早く治るよ」

声がした方へ頭を少しだけ倒すと、小指に花が咲いたおじさんが立っていた。

「ほら、種だよ」

おじさんが何かを僕の胸元にパラパラと蒔くと、不思議と痛みが引いてゆく。

や、やめて!


【贈り物】

「えー、入院してたの? じゃあ仕方ないか。許してあげる」

一ヶ月も連絡できないでいた僕を、彼女は許してくれた。

お詫びに僕はプレゼントを贈る。

「これ何?」

「種だよ。咲くと綺麗なんだよ」

そんなこと言いたくないのに、僕の口は勝手にそう言った。

僕はまだ僕なのだろうか。


→ 一連のお題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1317689815660335104



097

へぇ、ザリガニ好きなんだ?

昔、青ザリガニ育ててた?

そうそう、餌で調整すんだよ。

うん。応接室のピンクのザリガニが? 気になってた?

自分の状況わかっている割には余裕じゃん。

教えてやんよ。ピンクの育てるにはな、この液体を餌に飲ませるの。そう、お前がさっき飲んだやつだよ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1318374819788849152



098

あいつの言うことはさ、聞いている時は納得感があってな。けっこう本気で賛同しちゃうんだよ。

でもよ。いざ蓋をあけて実行段階になると、すげー苦しい状況になってることが多いわけ。

え?

何が? 俺たちが? 闇鍋? どうしてだよ?

蓋を開けたら中にたくさんの茹で蛙……うまくねぇよ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/RainSound_Drops/status/1318096517194936320



099

スマホ画面に水滴が落ち、空を見上げて初めて、闇混じりの重たい夕焼けに気付いた。

気が滅入るどす黒い赤。

ため息をつきながら水滴を指で拭うと、指先が赤く汚れる……血?

その時、視界の端を飛ぶ黒い影が電線にぶつかって裂け、スマホ画面にまた血が飛んだ。

足下には幾つもの烏の生首。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1318308164060639232



100

ホーム下の緊急避難スペースに体育座りしている男の子を見た。

二度見したときには消えていたから、見間違いかもなんだけど……それ以来その場所が気になるようになってしまった。

「落ちるよ」

見知らぬ人に声をかけられ、ホームの縁に立っていることに気付く。

……もしかして、あの子は囮?

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1318848001058615296



101

学校の裏手に人間用の一方通行の道がある。

通学路から外されているその道を、学校の方へ向かって歩いてはダメだという。

でも帰り道ならと一部の男子は度胸試しに使っている。今歩いている僕みたいに。

ふと忘れ物を思い出して振り向きかけてわかった。向こうを見ること自体がヤバいんだって。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1319205130869194753



102

近所の公園で遊具を接写している男がいた。

蜘蛛の巣を撮っているようだ。

その時、一陣の風が吹き抜け、男の体がふわりと浮き上がる。

首を押さえながらしばらくバタバタしていた男は、やがてぐったりとして地面へ落ちた。

男の首から糸でつながった蜘蛛が、凧のようにまだ宙を舞っている。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Kadismercado/status/1319247972614406145



103

大量に栗をもらった。

栗ご飯を作ろうと皮を剥いたら、形がなんか変……脳みそっぽいの。

それはより分けておいて次のを剥いたら、今度は拳。

全部剥いたらバラバラ殺人現場みたいになった。

気のせいということにして食べてやった……くらいしか妊娠の理由が思いつかない。相手もいないのに。

→ お題はこちら

https://twitter.com/usagamisousuke/status/1319451698083942400



104

この神社は、お願いするときにお赤飯を備える。

それも小豆じゃなくささげ豆の。「ささげ」は「捧げ」に通じるから。


願ったあと、私はおさがりの赤飯を食べる……ああ、血の味がする。

これで願いが叶う。

私は頬が喜びに歪むのを感じながら、ささげ豆を噛み砕いた。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Hinata_Motthi/status/1319247384438738944



105

昔から時々、セピア色の夢を見た。

泣いている私。ピエロが現れて風船をくれる。風船の数が増える……そんな夢。


今日、久々に同じ夢を見た。


ピエロが風船をくれて……私は気付く。

中に何か入っている!

幼い私を虐待した両親、いじめっ子、パワハラ上司、妻とその愛人……ヤツらの生首が!

→ お題はこちら

https://twitter.com/thousandgenie66/status/1319140963764162561



106

友人に呼ばれてWebチャットをつけたら、変な顔文字のボードを顔の前で構えていやがった。

話しかけても何も答えないし、ギャグにしても長すぎだし、いい加減切ろうとしたら。

カタン。

友人はようやくボードを落とした……けど、なんで後頭部が見えてんの?


その時、うちのチャイムが鳴った。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1319910224778543104



107

君がいつまでも泣きやまずにふて寝を続けたから、ちょっと悪戯してやろうと思っただけなんだ。

まさか、花が咲くなんて。


冷たくなった彼女を抱きしめると、自然と涙がこぼれる。

次の瞬間、僕の頬へ無数の根が伸びてきた。

→ お題はこちら

『君・涙・花を使って文を作ろうそれがお前の求めているシリアスだ』



108

だらしなく開かれた唇を指先でなぞると、つぷり、と指が滑り入る。

内側の湿度を確かめる指先が、君の中に溶けてゆく。

いったん引き抜いた指に絡みついた君の唾液を嗅ぐと、甘い蜜の香りがした。もうそろそろか。

葉をざわめかせて獲物をねだる君の口へ、僕は古い妻の欠片を落とした。

→ お題はこちら

https://twitter.com/majorimapsmuroo/status/1320353749290741760



109

「信号様に誓って!」

「誓う!」

「私のこと誰よりも好き?」

「りっちゃんのこと、誰よりも好き!」

「じゃあ押して!」

押しボタン式の信号で、小学生のカップルが何やら儀式めいた遊びをしている。

その直後、信号が青になり、渡り始めた男の子が車にはねられた。

慌てて見た信号はまだ赤。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1320528111994241024



110

娘がカービング教室に通い始めたらしく、うちでも練習している。

昨晩は南瓜。そうか、もうすぐハロウィンか。

翌朝、私によく似たリアルな南瓜カービングが、リビングに飾られていた……メモを添えて。

『早く愛人と別れないと刻むからね』

さっきカミソリで付けた傷が、南瓜の私にもあった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1320728031992958976



111

白い……妙に白さが気になる傘が地面に落ちていた。

お骨みたいな白。

「ダメですよ」

急に肩を叩かれ驚いて振り返ると、見知らぬおばさん。

「あれは随分と宿っています。近づかない方がいいです」

そう話し終わらないうちに幾つもの足が突き出た傘は、ヤドカリのように歩いて行ってしまった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1321047303344386049



112

赤が印象的な瀟洒なペンション。そこに泊まった夜から、実家が濁流に呑まれる悪夢を観るようになった。

私が両親を温泉に誘ったのは、夢のせいでも大型台風の予報のせいでもない。

だが結果的に両親の命だけは助かった。

後日、ペンションのオーナーが神戸の震災で家族を亡くしていたの知った。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Kadismercado/status/1322872119835938819



113

中学生の頃、お盆に駅前ロータリーで騎馬武者達の姿を見た。最初は映画の撮影だと思ったくらいリアルで、近くで交通事故が起きた瞬間に消えるまで霊だとは気づかなかった。

数年前、また見たんだ。

新田義貞像を見上げる騎馬武者達……の間にひしゃげた自転車に乗る血まみれのサラリーマンを。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Nuit_VolVolonte/status/1322917187338727425



114

呟怖のお題画像として、昔住んでいた街の風景があがった。

懐かしさに目を細めた私のTLにまた別のお題画像……今度も見覚えある景色。またアップ、またまたアップ……お題画像はなぜか私の知る景色を、人生を追いかける。やがて自宅ベランダから見下ろす景色の画像を最後に、お題投稿は止まった。



115

うちの近所は夜になると騒がしくなる。

開かずの電話ボックスを探す連中だ。

その電話ボックスは見つけても決して中に入れないという。そりゃそうさ。電話ボックスの幽霊なんだもの。

しかもあれ人の恨みを買っているヤツにしか見えないんだよ……ああ、五月蝿いな。

また掃除に出なきゃ、か。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1322748300802490372



116

古い街並みが残る路地裏の薄暗い突き当たりにお気に入りの場所がある。

昔は汲み上げ式ポンプがあったその場所は、今はコンクリートの台座だけが侘しげに残っている。

夕暮れにその台座に座ると、あの通りを歩いていた過去の人々が透けて見えるから、その中の一人に恋をした僕は今日も座るんだ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/matatabinbin48/status/1322418437096841216



117

近道だと聞いたからこのトンネルへ足を踏み入れたのだが、こんなに暗くて長いとは……ようやく出口か……え?

思わず足が止まる。

視線を感じたのは、山の稜線とトンネルの天井とが目の形を成していたから。黒目部分も垂れ下がった木か何か……うわ、動いた?

違う。あれは浮いている生首だ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/GOGO_FISHY/status/1322186194927591424



118

じいちゃんの家は花火大会の会場が近いのに、庭からじゃほとんど見えない。

でも屋根に登ることは堅く禁じられていた。

一度だけ、こっそり登ってみたことがある。

瓦にそっと体重をかけたら、瓦の下で何かが蠢いて、慌てて降りた。

それ以来、あの瓦が何かの鱗に思えてならない。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1323892868562366464



119

うちの村ではみんな雷を恐れてるよ。

ああ、もちろん打たれれば命はないさ。でもそういうことじゃない。

雷が落ちてしばらくの間はさ、声が聞こえるんだよ。

どこから?

……地中から、なのかな。

ここいら一帯は古戦場でね……声だけじゃないのさ。

斬られた痛みや射られた痛みも感じるんだよ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/da21t0rama3/status/1324189572054491136



120

「ここは……」

「ああ、君は初めてか?」

「な、何をしているんですかっ! こんなこと倫理的に」

「静かにしたまえ。封印がブレる」

「封印?」

「出荷前の標識と交通事故死した親子のご遺体を一緒に49時間安置する。するとその標識の範囲では確実に事故が減るんだよ。さあ、早く入れ替えて」

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1324269130048966658



121

海岸も夕暮れも嫌いだ。

双子の妹と、最期のお別れをさせてもらえなかった海岸の、涙に滲んだ夕暮れを思い出すから。

姿を消してから一週間経っていた。変わり果てた姿だからと私は近寄らせてももらえなかった。

そのせいか彼女は毎晩、夢枕に立つ。おそらく私が会わせてもらえなかったその姿で。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Horn_GreenTea/status/1322867911325749249



122

この浜で視界の端が闇に食まれるとき、海汀女(アマナギサメ)に出遭うという。

裸足で波打ち際に立ち、海汀女の後ろの正面に願い事を言うと、叶うならば足の裏の砂が増え、叶わぬ時は足下の砂と一緒に魂も波間に呑まれるとか。

去年死んだ兄は海汀女の撮影が叶ったと言っていたが、本当だろうか。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1322750545392672768



123

「三不思議いくつ?」

この学校では七不思議の話をするとき、必ずこう聞かなきゃいけないルールがある。

「二つ」

「じゃあ話すね。理科室のおじいさんの話」

三つより多く知ると死を封印できなくなるんだって。

私が知ってるのはプールのお母さんと音楽室の姪さん。他も気になって仕方がない。

→ お題はこちら

https://twitter.com/dancewithsky/status/1324921762623102976



124

立待岬は年に一度夜に立入禁止となる。地元漁師だけの秘密の祭があるからだ。


その昔、不漁を嘆く漁師の前に巨大な烏賊が現れ、漁師の子を寄越せば自分の子を穫らせると約束した……口減らしと豊漁の民話。


祭にて、投げた肉塊を受け取る巨大な触手を見たから漁師をやめたのだと祖父は語った。

→ お題はこちら

https://twitter.com/majorimapsmuroo/status/1324946657826361344



125

見上げた螺旋の彼方は眩しくて、一対の天使の翼のようにも映る。

だが彼の光は決して我らを救いはしない。それどころか我が同胞を次々と突き落とす。

螺旋が回転を始め、壁際の仲間がすり潰されてゆく中、周囲の仲間の躯からまだ使える部品を集めて取り込んだ僕は、人間への復讐を改めて誓う。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1324928757199638534



126

この世の中から消えないもの、それは残業~。

即興の鼻歌を歌いながら廊下に出ると、いつものように暗い。20時過ぎると節電で灯りが一つおきになる……あれ? 廊下、こんなに長かったっけ?

闇と灯りが交互に描く縞々を見つめていたら、いつの間にか数歩前へ出ていたことにも気付いた。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1325632530205171712



127

彼の部屋には悪趣味な硝子の裸婦像が並んでいる。何が悪趣味かと言うと全ての像に毛が混入しているのだ。

彼が撮影した女性のデータから型を造り、戦時中の御守りよろしくワザと毛を入れたという。

彼は幸運の女神達とか言っていたが、先日の地震の後、女神のモデル達の身体は悉く欠けたらしい。

→ お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1326148646421766145



128

この街にはスピーカーが多い。その稼働回数も。


「サイレンだ! 耳を塞げ!」

誰かが叫ぶ。


それに最初に遭遇したときは理解できなかった。

しかし振動するスピーカーから大量の黒い虫が這い出し、周囲を飛び回り始めたとき、私はすぐに耳を塞いだ。


災漣が耳に入った人の行方は、知らない。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1326431646657114112



129

Twitterの新機能フリート。

拡散されないし、24時間で消えるしと愚痴ばかり書きまくった。

そしたら足跡に、一度も絡んだことがない人をよく見るようになった。

試しに飛んでみたらTwitterのアカウントトップではなく怪しいサイトに直接繋がった。

24時間以内の殺人を請け負う闇サイトに。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kurohacci/status/1326387927019122688



130

いつからだろう。

木が人の姿に見えるようになったのは。

まだ明けきらぬ朝靄の中、出会う彼らにはじめのうちは挨拶さえしていた。陽が登りきると、もう木にしか見えない。

しかも、姿を見てしまった人は一年以内に亡くなる。


その事を母に話したら、棺桶職人だった祖父もそうだったと聞いた。

→ お題はこちら

https://twitter.com/thousandgenie66/status/1326703686941224960



131

蚤の市で見つけた辞典。何の辞典だか分からない。

例えば「a」の最初の項目「Aglon」には「次にTetagramを唱える」としか書かれていない。「Tetagram」には「次にVaycheonを唱える」と。

買って自宅に戻り、とりあえず項目を孫引きしながら唱え続けていたら、妻が死に、悪魔が現れた。

→ お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1326414737815588865



132

村外れの「不吉の森」は禍を知らせると古くから言い伝えられていて、村民は毎日交代で見回りに行く決まりだ。


今日の森のざわめきは、妙に胸の奥をもざわつかせる。


帰宅した私を出迎えた娘に違和感を感じた。目が血走っている……どこかで見た……あ!

毛細血管があの森の枝ぶりと同じ形だ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1327023026773262337



133

街灯の光が両手と首だけをやけに白く照らしてたんだ。

顔は覚えてない。

真っ黒い紙袋から何かを取り出して俺の肩にかけてくれたよ。

その瞬間は首筋がヒュッとして……それ以外は覚えていない。

どうやって連絡取ったか、レンタル背後霊って何なのか、あの心霊スポットで俺だけ助かった理由も。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1326151106947289093



134

じいちゃんが「パソなんたら」の教室に通い始めたと言い出した。

足が悪く散歩ですら手すりのついた廊下の行き来だけのじいちゃん。

とうとうボケたかと思った矢先、深夜にテレビと話しているのを見た。

電源は入っていないのに画面には確かに誰かが映ってイナカッタ。明日ノ授業ハ俺モ出ナキャ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/gAXkoAVwvvIu4sC/status/1327545485817643008



135

「聞いてよ! さっきトイレで手を洗っていたらね!」


同僚の話を、私は出来の悪いジョークくらいにしか思っていなかった。

だって信じられないでしょ。

手を洗っただけだよ?

都心のオフィスビルの22階だよ?

なんで泡の中から小ちゃなカマキリがわらわら出てくるの?

返して! 私の指先!

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1327903567995256832



136

通夜に夜おばけが来たら、その後一年間、遺族は息災だという。

くたびれた喪服に山高帽、鼻が異様に大きい男。

「夜おばけ」と自ら名乗る。

でもね、彼が預けようとする傘は、絶対に預かってはいけないんだって。

それを守れないとたくさん死ぬ。

あの日、夜おばけを見て生き残ったのは私だけ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/GOGO_FISHY/status/1327847471377072128



137

三角コーン美味しいよね。


え、知らない?


うん……田舎では皆、そう呼んでた。


味?

コーンスープとクラムチャウダーが混ざった感じ。


今日の鍋みたい?

うんうん。そうだよ。入れたもん。


どこから……って、お風呂場で飼ってるの。


見ていいよ?

壁にびっしり張り付いてるから。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1328223477212409861



138

旧大統領官邸前にある「英雄の像」。

いつ訪れても、街の人々が祈りを捧げている。


私にはその光景が受け入れ難い。

石膏を染み込ませた布を被せた思想犯を、生きたまま焼き殺した結果なのだと知る前から。


あの像には禍々しい影が無数に纏わりついていて、邪神崇拝にしか見えなくて。

→ お題はこちら

https://twitter.com/thousandgenie66/status/1328164879597912064



139

私には双子の妹がいた。

なぜか行動の決定権はいつも妹にあった。

あの廃墟へ探検に行ったときも。


あれから十年。

一人になった今も私は廃墟を廻る。

入り口で、私の中の妹に尋ねる。

「私は行きたくないけど……さよなら、行く?」

『さよは、いきたい』

妹の声に、また背中を押された。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1328298975401689089



140

曇天を見上げる。

ダイヤモンド富士の夕暮れまであと一時間もないってのに。

俺の気持ちに同調するように、付近の茂みもざわめいている。


ふと、山の入口で出会った老人の言葉を思い出す。

「日が暮れるまでに山を出ろ」

思い出した途端に晴れてくるんだ……周囲のざわめきが増えた気がする。

→ お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1327846882639450112



141

目が覚めたら、教室に独りぼっち。

廊下に出ると隣のクラスの女子が襲いかかってきた。逃げていたら、その子、階段で転んで死んだ。

トイレで自分の額に「残」って書いてあるのに気付く……正確には点が一個ない。


その後も出会う人を殺し続けて額の字は「戈」になった。


殺すのは本当に正解?

→ お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1328484484493107200



142

前の日にヘアドネーションのために切った髪が、朝起きたら一束増えていた。

数え間違えたかなと気にしないでいたら、翌日ももう一束増えた。

さすがに気味が悪い。

夜の間ずっと撮影してみたら、飼い猫が髪の束を裂いて二つに分けていた……あ!

動画の中のうちの子、尻尾が二つに分かれている!

→ お題はこちら

https://twitter.com/majorimapsmuroo/status/1328645050906021888



143

近所の公園でホームレスが一人殺された。池の鯉によく餌をあげていた老人。

その数日後、同じ公園でまた死者が出た。

被害者のスマホには、ホームレスを殴り殺す動画と、池から鯉が跳ねて襲って来る動画が残されていた。


鯉は聴覚が鋭く、歩く音などで餌をよくくれる人を聞き分けられるという。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Clematis_sen/status/1328558397440999424



144

消火栓じじい知ってる?

学校の消火栓の中に一つだけ鳴らない押しボタンがあって、そこの扉の中に住んでいるの。

悪い子が嫌いで、腸を引きずり出してホースの代わりに飾るって。

あるいじめられっ子が消火栓じじいに告げ口したら、皆、殺された。その子も……押しボタンを悪戯しただろって。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1328603771858018308



145

家の隣は物心ついたときから空き地で、よく入り込んで遊んでいた。

草むらに寝転ぶと道路からは見えなくなるから秘密基地感覚だった。

ある日、誰かが呼ぶ声がして、声の方向へほふく前進していたら、山の中に居た。

すぐに発見してもらえたんだけど、家に着いたら隣に空き地なんてなかった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1328973023785861120



146

あなたの左の薬指。

皮膚と肉とのわずかな隙間。

穴を開けるの針刺して。

眠るあなたは気づかない。

貴方を想う私の日々が伸ばした髪をその穴に優しく挿れた今さえも。

指をぐるりと巡る約束の髪を結わえて婚姻の証とするの貴方との。


ねぇ、そろそろ起きて!

そして早く私に一目惚れして!

→ お題は「愉悦」

https://twitter.com/AraisanIQ/status/1329360173719113728



147

俺は岩のりに命を助けられたことがある。

中学最初の夏休み、人がめったに来ない岩場で足を滑らせた俺は波間へと落ちた。

必死に手を伸ばし、とにかくつかまったそれが岩のりだった。

なんとか岩場へ戻れたとき俺はまだ岩のりを握っていて、その岩のりの根は人の頭蓋骨にへばりついていたんだ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/SP2KTtQ18oUI2AV/status/1329384391127121921



148

修学旅行で東京に行った姉が、参道にエスカレーターのついた神社を見たという。

お参りするのに楽しようだなんてと私が東京を蔑もうとしたら、姉は首を横に振った。

姉の前に乗っていた人がエスカレーターを降りるとき、その人に憑いていた黒い影だけが巻き込まれて消えたらしい。

東京すごい。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1329374851409186816



149

そこを通るとなぜか爪を切りたくなる道がある。使い込まれたベンチ以外に特徴のない道だけど。


その理由がようやくわかった。

ほろ酔いな俺がつい、そのベンチに座ったとき、パチッという音が聞こえて。

振り向くと、すぐ横でおじいさんが詰め将棋しているのが一瞬だけ見えた。


爪、切ろう。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1329744618926182402



150

一面に広がる紅葉絨毯の表を軽く乾いた音が幾つも撫でる。

この場所は紅葉がこんなにも綺麗なのに人がとても少ない穴場……だと思っていた。

写真を見せた人から「赤ちゃんの手がいっぱい」と言われるまでは。

後で調べたらここには堕胎屋が住んでいたという。

どうりで風も無かったのに。

→ お題はこちら

https://twitter.com/matatabinbin48/status/1330333758399021056



151

落ち葉が綺麗なのでカメラアプリを起動したら謎のモードが増えていた。

試してみたら、変な色で写る。

面白くなって撮りまくっていたら、同じ落ち葉でも写る色が変わっていってるのに気づいた。

写しながら人を刺してみる……やっぱり……命が写っているんだ。


え、なんで俺、人を刺してんの?

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1330433844588150785



152

突然響く重い音に驚き見上げると、クレーンのフックが降りてきて一瞬にして隣の男に突き刺さった。

フックはすぐに上がってゆく。男から半透明の男を抜き取り刺したまま。

地上に残された方の男は虚ろな目で近くの建物の中へ。

再び見上げた空にクレーンは消えていたが、飛び降りる男が見えた。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Kadimerc/status/1330511564496130050



153

……えーと次は三番の赤いソースで円を描く……次はその中に塩で六芒星を……今度は。

リピート必至と聞いていたが、面倒な手順でのセルフ盛付け強要に辟易。

ようやく最後かと呪文を唱えたら……何か現れた!

「召喚者よ、寿命一年分に相応しい願いを叶えよう」


確かにこれはリピートする。

→ お題はこちら

https://twitter.com/gAXkoAVwvvIu4sC/status/1330678663780528129



154

視界の隅にお社を確認したとき、歩いていたはずのショッピングセンターが陽炎のように滲んで消えた。

その前は寂れた商店街……その前は焼け野原……その前は賑やかな街道筋……周囲を歩く人々の姿も歴史を遡る。

やがてお社が最初の姿を取り戻したとき、自身がこの地の記憶の泡沫だと思い出す。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1331128139523579904



155

この写真見てくれよ。

あいつ、この道のここ指して「艶めかしい」って言ったんだぜ。

撮った奴はダチでさ……死んでんだ。この写真撮った後、ここで。


だろ?

聞き覚えあるだろ?

課長が先週見せびらかしてた新車画像見たときの、あいつの言葉。


昨日、課長が事故死しただろ……どう思う?

→ お題はこちら

https://twitter.com/moon04cat/status/1331554014412980229



156

「ね、見て! あれ! あの門、逆さから見るとホント『門』って漢字みたい」

そう言われて立ち止まり、後ろを向いてからの股覗きで……確かに『門』だな……だけどアレ、誰だ?

今まで彼女だと思っていたナニカが俺に構わず門へと向かってゆく。首の上に逆さ生首を乗せたままで。

→ お題はこちら

https://twitter.com/thousandgenie66/status/1331054455412822018



157

妻の首に何か付いていた。

軽い気持ちで取ったら、二つの点のような傷口から出血。

取ったモノは手当て中にどこかへいってしまったが、形状はオナモミによく似ていた気がする。


その日から妻はやたらと僕にひっつくようになり、それはそれで嬉しいのだが、隙を見て噛みつこうとする口に……牙?

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1331398551507587072



158

友人は催眠術の名人だ。

しかも催眠術をかけた相手まで催眠術の名人になる。

そんな凄いの動画に撮ったら絶対バズるっしょって隠し撮りしたんだ。


カメラには残ってた。

友人が指を回し出した直後、指そのものが友人の手を離れて俺の瞼の隙間に飛び込むのが……俺の指が勝手に動画を消した。

→ お題はこちら

https://twitter.com/gAXkoAVwvvIu4sC/status/1331029702631309315



159

ホテル側のミスで予約取消されたお詫びとして「ちょうど今キャンセルされたシングル」へ案内されたが、どう見てもシングルではない。

なんか甘い匂いがするし、ずっと見られている感じもするし、あとフロント係がボソッともらした「お客様が男性で良かったです」の意味もあまり考えたくない。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Siochan_SioSio/status/1332218218715385857



160

道を歩いていたら急に鳥肌が立ち、自分の腕を確認した視界の端に白線が震えたのを見た。

次の瞬間、凄まじいブレーキ音がして、車が電信柱へ突っ込んだ。

私は見てしまった。

地面から急に浮いた白線が、電信柱の手前を歩いていた小学生を守るように車のタイヤに咬みつき進路を変えたのを。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1332245047425654784



161

狭いトンネルを這いずりながら進むと弟がつかえていた。

二階より眺めが良いとはしゃいでいる弟。

俺にも見せろよと弟をぐいぐい押し始める……そこで目が覚めた。


だけど弟は目を覚まさなかった。


うちのアンテナに引っかかっていたモノが、弟の頭から消失していた脳の一部だと後日判明した。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1332559944978108416



162

夜になると不眠(ネムラズ)はここを徘徊する。

出会うと選ばされる二択に「贈り物」と答えれば斧を縦に振り死を贈られ、「落とし物」と答えれば斧を横に振り首を落とされる。

助かる方法はただ一つ。夜明け前まで逃げ続け、不眠が透けたら「届け物」と叫ぶこと。

夜明けまであと一時間……早く。

→ お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1332936534165577732



163

長い縦格子フェンスの一部が歪んでいた。

目が留まったのは綺麗な手のひら型だったから。

思わず手をハメてみると……ヤバい。ピッタリ過ぎて気持ちいい。


うわ。一時間もハメてたのか。慌てて歩き出したら今度は足型を見つけた。

靴下脱ぎかけで我に返れたのは、あそこの顔なし死体のおかげ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1333013816708218881



164

顔が影に呑まれるのは死が近いから。死が近い者同士が正面から相手を指すと指された奴は死ぬ。たくさん死なせれば本物の死神になれる。


だから俺は指しまくって……気付かなかったんだ。指した相手が片思いのあの子だったなんて。


失意のまま鏡の中の自分を指したが、俺はもう死ねなかった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/Horn_GreenTea/status/1333775950891208704



165

毎年開催の同窓会も今年はオンラインで。

おかげで遠方の連中も参加できて、テンション上がった俺は途中で寝落ち。

でも録画しといたもんね……と再生したら、知らない奴しか映ってない。おまけに二次会は俺の家でとか言ってる……マジかよって呟いたら耳元で「つれないなぁ」って幾つもの声。

→ お題はこちら

https://twitter.com/gAXkoAVwvvIu4sC/status/1333037778913771522



166

母は女手一つで私を育ててくれた。何の因果か私も母と同じ道を歩き、今になって母の苦労を噛みしめる日々。

でも最近気づいた。

私が「ごめんね」と言うたび、幼い娘が私の背後を見つめることを。そのとき暖かいものを感じることにも。

娘を抱きしめ、言い直す。

「ありがとう」って、二人に。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1335509094996721665



167

ラブホが満室だったけど盛り上がった気持ちは収まらなかったので河川敷に停めた。

いい感じにイチャイチャし始めたら彼女が急に冷めてしまった。

「ねぇ、今……何時?」

22時と言おうとして言葉を失ったのは土手の向こうに黎明を感じたから。

そこに居てはいけない気がして慌てて車を出した。

→ お題はこちら

https://twitter.com/usagamisousuke/status/1335146458706714624



168

小一のときの担任は下校前に必ず僕らに歌を歌わせた。

そしてクラス替えの直前、僕らの歌声を録音したCDをクラス全員にプレゼントしてくれた。なんでそんなことを思い出したかというと、この部屋、ずっとあの歌が流れてるんだ……どこからか。

孤独死した部屋の主は、あの先生だったのかな。

→ お題はこちら

https://twitter.com/AraisanIQ/status/1335141086054895617



169

美人だから覚えていた。マドラーの本数がいつも多い店員さん。

「お前がその美人店員の話する日さ、いつも事故目撃してねぇ?」

友人に言われて初めて気付いた。

目撃した事故で必ず死者が出ていたこと。その見てしまった死体数とマドラー本数とが一致していたこと。

今日これから三人死ぬのか?

→ お題はこちら

https://twitter.com/Nekozou_kuro/status/1335026751462772737



170

夜道で袖を引かれた。

シャツの袖口にあるボタンに糸が引っかかっている……ように感じるのだが、肝心の糸が見えない。指先の感覚では存在もボタンから外れないのもわかるのに、どうしても見えない。

困ったなと周囲を見回して花束を見つけた。


後日、そこで亡くなったのは古い友人だと知った。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1335873027360186375



171

ふぅ、と吐き出した白い小さな雲は、内側から広がりながら輪になって、青い空へと吸い込まれてゆく。

貴方の真似して覚えた煙草をふかしている間は取り戻せるから……貴方の笑顔を、温度を、重さを膝の上に。

「雨なんか、降らすなよ。こんな晴れた日に」

貴方の最期の言葉が今も耳に木霊する。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1337181144127688709



172

目を閉じて

深呼吸。

それから

祈る気持ちでギアをバックへ。


警告音が

耳の中に溜まると共に

浮かび上がる。

バックモニターに君の姿。


膝を抱え

僕を見つめる君の

瞳は悲しそうで……違う。

悲しいのは僕だ。

噂通りなら

ここに映るのは後悔のはずだから。


……やっぱり行こう。

君の処へ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1337302567047479296



173

石畳の上で跳ねていた小魚を、歩道脇の海へ戻してやろうとつまんで持ち上げたとき、周囲の人々が全くいなくなっていることに気付いた。

いつの間にか手のひらの小魚もいない。


視界の端の動く影を反射的に目で追うと、時計を持った魚が、目の前の古びた建物へ忙しなく走り込むところだった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/majorimapsmuroo/status/1337728914878132224



174

天井からぶら下がる木の根を電灯の紐と間違えて引っ張ったことに気付いたのは、天井が抜け、大量の土と共に木が落ちてきてからだった。

呆然とする私の前で土の中から半裸の男が突然起き上がって逃げ、玄関の向こうへ消えた。

冷蔵庫の中身が時々消えていた理由をこんな風に知りたくはなかった。

→ お題はこちら

https://twitter.com/takikaruit_0808/status/1338262427251531776



175

夕食の直前、女将に耳打ちされた。

「サルの脳みそ、お召しになられたこと、ございます?」


実際食べてみると、白子よりは少し淡白だが不味くはない。

なんでも伝統技能の継承とやらで定期的に供されるとか。


初耳だと伝えると、また女将の耳打ち。

「言いふらす方は、ございませんので」

→ お題はこちら

https://twitter.com/gAXkoAVwvvIu4sC/status/1338410833659871232



176

失踪した弟の部屋にあった古い写真。

うら寂しい荒野の中央付近に黒い染みが三つあり、それが人の顔に見えてやけに不気味。

こういうのシミなんたら現象って言うんだよなと改めて見るとシミが動いている。

やがてそれぞれのシミから体が生えたところで我に返り、慌てて写真を伏せ、部屋を出た。

→ お題はこちら

https://twitter.com/thousandgenie66/status/1338695564674756608



177

「狸の金玉にはさ、魔除けの効果があるんだぜ。た抜きのきんたま……きんま……禁魔」

そう嘯き、信楽焼きの狸の下半分だけを開運グッズと称して高額で売っていた友人が、下半身だけの遺体として発見された。

彼が仕入れた信楽焼きの狸も、彼自身も、上半身はまだ見つかっていない。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1338773859357450240



178

──わかっていること。

壁に触れると喰われる。

床は焼けるように熱い。

ベッドの上に居れば熱くもないしお腹も空かない。

でもベッドは時々、壁に向かって閉じる。

一人喰われると、また一人補充される。

お姉ちゃんは味方。


──わからないこと。

目的。

脱出方法。

どうして僕らなのか。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1338821163762339840



179

「良い子からの希望は左の受話器から聞こえます。この白い紙にしっかり書いてくださいね」

「悪い子からの希望は真ん中から。改心したときのため一応灰色の紙に」

「右の黒いの? 改心の見込みの全くない子が……ええ、受話器の穴から直接。掃除をお願いします」

これ本当にサンタの手伝いか?

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1342026388266618880



180

抽選で当たったナイトアクアリウム。彼女と楽しいクリスマスデートになるはずだったのに、普通はぐれる?


彼女を探し回るうち赤い水槽ばかりの場所に迷い込んだ。


話し声だ……え?

何人か逃げた……って?

「ヒッ」

思わず声が出たのは目が合ったから……水槽の中に浮かぶ彼女の虚ろな目と。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1342026724846960640



181

夜、何の気なしにiPodを手にとったらBluetoothがオンになっていた。

その日は音楽プレイヤーとしては使用していない。

何が接続されているのかと慌てて調べたら、ワイヤレスイヤホン。

そこでハッと気付いて洗濯かごを確認すると、翌日洗濯する予定だったズボンのポケットから出てきた。

(実話)



182

残業中の後輩に缶珈琲を差し入れたら、缶切りを取り出し、底の方をキコキコ開け始めた。

驚いて理由を尋ねると、ダメなんですよ、とだけ答える。

しつこく聞き続けたら、飲み終えた空き缶のプルタブを開け、俺に手渡した。

その穴から、なぜか線香の匂いが漂い出てきた。

→ お題はこちら

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183

罠にかかった鶴を助けた数日後、先日助けて頂いた鶴だと名乗る若い娘が尋ねてきた。

しかし顔はドス黒く変色し、その膝は人間とは逆方向に曲がっている。極めつけは頭頂部が赤い……中身が見えている?

震える手で慌てて戸を閉めた。

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184

川岸で遊んでいたら背中を押された。

水の中でもがく私の周囲でも多くの人が泡と共に沈んでゆく。背後には人の気配が次々と増え、水面へ出られない。


「大丈夫か?」


私を助けてくれた人が教えてくれた。

戦時中、戦火から逃れる人たちがこの川へ雪崩込み、その多くが溺れたことを。

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185

「あれ何?」

「さっき飛ばした風船じゃない? 高度が高いと白い点にしか見えないらしいよ」

「あの真ん中の赤いのも?」

その遠い空の赤い点はぐんぐん大きくなって……いや近づいてきて、垂れ下がる紐を友人の首へ刺した。

あっという間の出来事。


赤みを増した風船は、空へまた昇ってゆく。

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186

その日、実験室に着くと鍵が開いていた。

床に倒れている同僚達は、その腹に冗談みたいに丸い穴のような傷がいくつも。


ガポッという音に驚いて振り向くと実験動物が檻の外に居て、所長の腹に空き瓶を押し当てて……ガポッ。


そいつは俺の顔を見て歯ぐきを剥き出し、新しい空き瓶を手にした。

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187

改札前に立つ人々へ片っ端から声をかけている男が居た。

近づいてくるにつれ、話の内容が耳に入る。

「待ち時間を捨てたくないか?」

すぐ隣に立っていた若者が軽めに「そうっすね」と返事をした直後、絶叫。


驚いて横を見ると、白髪の若者が目を見開いていた。

あの男らしき姿は見当たらない。

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188

友人は繁華街の路地裏へ積極的に入って行く。なんでも換気扇から漂い出る匂いで美味しい店かどうか判るのだとか。

「最近物凄く旨そうな匂いの店を見つけたんだが、店の入口がわからないんだよ」

そう悩んでいた友人の首なし死体が路地裏で見つかった。換気扇のない路地裏で。

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189

夜中の二時にスプーンの窪みを覗いてある呪文を唱えると、将来の結婚相手の顔が見えるという。

他愛もないおまじないだけど、私はそうして映った顔の男と結婚した。

でも先割れスプーンを使ったのがよくなかったのかなって思い出した私の前に今、頭を割られたその男が倒れている。

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190

殻付きのピータンを買ってきた。

殻を剥くとゼリーのようにプルップルの中身が出てくる。

ところが次のピータンを剥き始めたら、皿に置いたピータンがまだプルプル揺れている。

重心がおかしいのかなと包丁で二つに割ると、黄身に相当する部分が空洞で、内側に小さな手形がたくさんついていた。

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191

掃除といやぁ重曹だが、うちは虫にもよく使う。

蔵の奥、「部屋」と呼ばれる竹籠を幾つも重ねてある場所。その壁へ、息を止めながら竹筒を滑らせると、白い粉が筒の中へ落ちる。

急いで蓋をして母屋へ戻り、娘の男友達へ茶を出そうとする妻に手渡した。

虫の死骸はまた新たな重曹の材料になる。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1344226073827966977



192

キャットタワーならぬそのマウスタワーは人の形をしている。それの表面を駆け上るマウスたちはそれぞれお気に入りの場所があるようで、この子は手の上がお気に入り。

わかるんだな。自分に移植された脳がどの部位を動かす領域だったのかが……脳を採った後の体を棄てずにおいて本当に良かった。

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1344245259438497792



193

大晦日まで残業だった俺は、鳴り始めた除夜の鐘を数えながら蕎麦屋へ入る。確か107まで打っておいて新年と同時に最後の一発を打つんだよな。


蕎麦に天丼まで付けてしまったが、なんとか今年のうちに食い納められた。

「じきに0時か」

そう呟いた途端、除夜の鐘が早鐘のようにもう107回鳴った。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1344591538060345345



194

ちょっとお洒落な日めくりカレンダーを買ったんだ。黒地に白抜きの字で雰囲気あるだろ。そして下の方、黒が少し薄くなった場所に井戸の写真でさ。数枚めくってみたら井戸の中から手が出てくんの。パラパラ漫画になってんのかな。

そこまで嬉々として喋っていた友人の電話が突然、途切れた。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1344899386103353344



195

地下鉄でたまたま先頭に乗った。何気なく前を見ると無機質な地下道が滑らかに続いている。思ってたよりもアップダウンあるんだな……その光景に妙な既視感を覚えた。

あれだ!

オンラインゲームの昨日発見した隠しダンジョン!

確かこの先にボスが……え、な、なんでレールの先に人が?

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https://twitter.com/moon04cat/status/1345232358027325440



196

自宅裏手の丘が古墳だったことが判明し、保存状態の良い猫のミイラが発見された。

そのミイラを観に行った妻が、やけに自分のへその臭いを嗅ぎたがるようになった。


出張から帰宅すると、妻が体をくの字に曲げ自身を抱え込む姿で死んでいた。自分の腹を食い破った妻の顔が背中から出ていた。

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https://twitter.com/majorimapsmuroo/status/1346334722037751817



197

鹿せんべいはもうないのに私は鹿に取り囲まれたまま。

見かねた彼が、奈良県民だけが使えるという鹿避けアプリを起動してくれた。

即座に顔を背け出す鹿たち。

「でも酷い耳鳴り」

「え、聞こえんの?」

気が付くと周囲には鹿の代わりに人だかり。口々に「シカガミサマ」と呟きながら私を拝む。

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1346731683672834048



198

「あっ、なんでチャンネル変えちゃうの? 今出てたの、あなたの叔母さんでしょ? 料理研究家の! なんかすごい下拵えするよね!」

その下拵えのネタ元が、叔母さんの家の本棚の世界処刑大全からヒントを得ているのを知っている僕は、とてもじゃないが叔母さんの料理風景を直視できないのだ。

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https://twitter.com/molmol299/status/1348143976214261761



199

「このドア本当にこの壁につけるんスか? はみ出ちゃいますよ?」

「この一帯は、あの給水塔とあっちの建物を結ぶライン上の壁にはこのドアを取り付けるって決まってんだ。理由は考えずにやれ」

納得していない目。口が固いと紹介されたが、この好奇心はいただけねぇ。また事故が起きちまう。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1348185635979284480



200

廃校の決まった母校、深夜。

私の靴音は皆より少しだけ遅い。


七不思議を辿るあの夏の続きは保健室の姿見が終点。

その中に白衣の影が揺れ、皆は逃げだした。

私と彼を置いて。


「これは怪談ではない。僕の初恋だ」


彼の声と気配とが闇に溶ける。


「そうね、怪談じゃない。私の卒業の物語」

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https://twitter.com/dancewithsky/status/1348236745020633091



201

名前なんだっけ……遠足のお弁当で、糸切り鋏で食べていた子。

閉じればスプーンとしても使えるし、ナイフにもフォークにもなる万能な道具だって自慢してた子。


そんなことを思い出したのは、舌を切り取られる連続殺人が起きているから。

被害者が全員、当時のクラスメイトだと気づいたから。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1348993353975615490



202

奇妙な声に振り向くと屋根の上に小鳥がいた。

そいつと目が合った途端、俄かに空が掻き曇り、黄昏と見紛う暗さの中、小鳥は羽ばたきながら膨らみ始めた……リスザルの顔、ハムスターの胴体、猫の手足に尾はカナヘビ?

呆然としている間にそいつは空を駆けて消えた。

あとにはただ鳴き声が一つ。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1349268360106631174



203

何故か耳に残る乾いた音に誘われ、私はそこを訪れた。

第一印象は芸術的な庭園。

大小様々な動物や人型のトピアリーが立ち並び……違う。これは庭木を刈り込んだのではなく、芯材に蔦を絡ませて……あっ。

蔦の内側に、風に揺られる白い髑髏を見つけた私の背後で、門が閉じられる重い音がした。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1349660777716695040



204

その幼馴染はいつも僕を支配しようとした。

「あなたのそういうとこきらい」

僕は必死に従った。好きだったから。

だが両親の離婚を機に僕達は離れた。


現在、僕に近寄ってくる女は悉く僕を肯定する。

違うんだ。

嫌悪してくれ……こんな酷いことをする僕を……ああ君もまた黙ってしまうのか。

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1349706243099619334



205

医大の先輩が悪趣味な牌を使っていた。

盲牌できないよう写真が貼り付けてあるんだけど、筒子は眼球、索子は骨がその数だけ、萬子と字牌は字の形の傷が写っていた。

これを作った先輩はCGだよと笑っていたが、寮で火事が出たとき先輩とその牌だけ黒焦げになっていたんだよね。

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https://twitter.com/Mad8068/status/1349769160679583747



206

空いているときはつい立ち止まる。

向こうのホームが見下ろせる連絡通路の窓の前。


階段脇のあの場所は彼女がいつも乗る場所で。

ドア一つ分の間を空けて僕もいつもそこに居た。


僕だけはいつも。


まだ居るのだろうか。

友人が見たという生霊は。


あの想いを手放せないでいる僕の。

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1351860976778285059



207

近所の公園が封鎖された。ジャングルジムに動物の死体の一部が棄てられていたからだ。

犯人はすぐに捕まり、動機を自供した。

「骨の内側に内臓を収めなさいという声が聞こえたんです」


そんな古い記事を見つけた。

そのジャングルジムは今、樹に呑まれている。

触れると鼓動が聞こえる樹に。



208

浜辺で毎日待ち続ける私に根負けしたのか、彼はとうとう砂浜に言葉を書き始めた。

約束してくれたプロポーズの言葉を。

しかしその字はすぐに波に浚われる。

次の言葉が書かれた。

『約束は果たした。だからもう前を向くんだ』

涙に濡れた私の頬を海風が冷やす。隣に佇む彼は風除けにならない。

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https://twitter.com/Mad8068/status/1350398377721122819



209

震えるほど寒い暗闇。自らの吐く息が白く降る。


凍える指先を握りしめると、拳の先に息が薄く結晶する。

驚いて手を開くとその刃は割れた。


不意に体が上へと引っ張られる。

私だけじゃない。周囲でも……ただ手に刃を残した人だけは落ちていった。


それがあの事故で生き残った私の見た夢。

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1350492631919300608



210

「これが新種の細菌?」

「その被害者です。永久凍土に近い村の娘で、発症から三日ほどです。細菌は血液を餌にしながら血管を通じて全身へ広がります。細菌は浮力の高いガスを排出し」

「よく燃えるというやつか」

「十人も居れば当施設の一日分の電力を賄えます」

「国を救う英雄を集めたまえ」

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1350577691972444160



211

最近できた個別指導のマナー教室が評判だ。必ず礼儀正しくなると。

実際、不良だった兄もすっかり更正した。


でも僕には判る。あれは兄じゃない。

そのマナー教室へ忍び込み真実を知った。浮遊霊を憑依させているだけなのだと。塩に触れたら元に戻ると。


僕は急いで帰宅し、家中の塩を隠した。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1350758953324408833



212

「医者でも草津の湯でも治せない病気のワクチンがあるって言ったら信じます?」


その男が結婚詐欺師だったことはつきとめた。

だが男を断る理由はそれではない。

男の背後に蠢くもはや人の形を留めぬ闇に、あの方がご参加なさるようなことは断じてならないのだ。侍従長たる私の目が黒いうちは。

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https://twitter.com/molmol299/status/1350999909454000132



213

ここでは昔、たくさんの人が死んだ。

だから地面を掘り返すと、いまだに人骨が出てくるんだ。

でも人々が地面を掘り返したがらないのには、もっと違う理由がある。

見つけた人骨の一部が欠損していたら、そこを失うと言われているから。

それを信じざるを得ない歴史がある、ここはそういう土地。

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214

20XX年、人類は冬眠という新たな脅威にさらされた。寒さを感じると深い眠りに落ちるという奇病。

飛行機が機長の寒いジョークで落ちたのを皮切りに、寒くなる話をする者はテロリストとして弾圧された。

#呟怖 というハッシュタグを使えばアカウント凍結。怪談とオヤジギャグとが世から駆逐された。

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https://twitter.com/_Osahiro/status/1351483125885411329



215

忘れられない中三の夏休み。熱とカビ臭さとがこもる体育倉庫。目の前で服を脱ぐ彼女。

僕は異様な盛り上がりを見た……その背中に。

「定規がね、皮膚の下にね」

本来は背骨がある位置に確かにそうとしか思えない形。

「ね、わかったでしょう?」

再び冬服を着込んだ彼女の背中は凛としていた。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1351812817553248256



216

朝もホームで見た男。幾度となくホームの縁まで行ってはベンチまで戻る繰り返し。

通過列車のアナウンス。

男は決意した顔で白線の上に立つ。

「乗り換えはどちらですか?」

「あちらです。急がないと出てしまいますよ」

そんな声が聞こえた直後、男は踵を返す。すぐに振り返ったが誰も居ない。

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https://twitter.com/kwaidanbattle/status/1351860976778285059



217

植物って感受性が豊かなんだよ。

ほら、この樹を見てよ。

本来なら枝が真っ直ぐ伸びる種類なのさ。

でも近くに大きな「痛み」があると、そこに寄り添うように枝を曲げるんだ。


うん。よく分かったね、僕がやったって。

たくさん殺して周りに埋めたり移したり……こういうの盆栽って言うんだろ?

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1352112489886957568



218

中南米の遺跡みたいな名前のチョコレート移動販売。見た目は平凡なのに味は至高の最高の極上。新しいお友達連れてくとサービスもあるし、三食ここのチョコでも全然平気。


店が去った街では死者数が激増する。

神への供物をチョコレートで清めた話を冗談混じりにコメントした考古学者も死んだ。

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https://twitter.com/ChrisRabbit11/status/1352550006415183872



219

ある朝、学校に着くと、教室の皆がニヤニヤしていた。

『なんで皆、笑ってるの?』

校庭の隅に設置されたスピーカーから私の声が流れた。

『えっ、ちょっと待って、何コレ? 私の考えたことが流れてる? ちょっと笑わないでよ!』

皆、笑うのをやめた。

『全部忘れて』

皆、赤ちゃん返りした。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1352579964093100034



220

#呟怖 というハッシュタグを見つけ夢中になった。それが間違いだった。

日々増える怪談を、はじめのうちは楽しんでいた……読んだ話が実際に起きるようになるまでは。

親しい人を次々と失い、悍ましい何かが視界の端に彷徨く。


好き勝手書きやがって。報いを受けろ。私がそう考えるのも仕方ないだろ?

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1352924470059560960



221

狭い暗室には幽閉された少女。

白髪であることを除けば十代に見える少女の盆の窪には穴が穿たれ、天井から垂れたリボンの先が無造作に押し込まれている。リボンに触れた途端、少女は虚ろな瞳で歌い出した。

暗室の扉に『呼び鈴』と書かれていたのを思い出す。

突然の寒気と被視感。

歌が止んだ。

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https://twitter.com/magma_maniac/status/1353243832507191297



222

その芸能事務所は原石となる子達を広く集めた。

定期的な試験「研磨」を経て成績の伸びない子を次々に退所(カット)していった。

裸石(ルース)と呼ばれるたった一人の子だけが残ったが、その子はとある大御所と不倫で無理心中してしまった。


初めからその大御所へ復讐するための蠱毒だったのだ。

→ お題はこちら

https://twitter.com/molmol299/status/1353321058699407362



223

昼過ぎなのに重く暗い空を見上げると、見慣れているはずの歩道橋に違和感を覚えた……世界がモノクロームに見えている?

そんな中、一つだけ色のついた……黄色い月。

人の体を持つ月が歩道橋を登り、満ち、降り、欠けた。

色が戻った瞬間トラックが歩道橋へ突っ込み、轢かれた人の顔も欠けた。

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https://twitter.com/maroney_novel/status/1353513577684946944



224

信号が変わるまでと眺めていたスマホの脇に、隣の人たちの足が見えた。二人とも裸足。

ヤバい人だったらヤダなと、なるべくそちらを直視しないよう少しだけ視界を寄せる。

「ヒッ」

声が出てしまった。

立っている四本以外にも無数の足を生やした一つの何かが居たから。

四つ同時に踵が返る。

→ お題はこちら

https://twitter.com/maroney_novel/status/1353905678981578752





【2019年5月~、怪談大喜利】


001

「……」

「聞き取れないよ。いくら美術館だからってもう少し聞こえる声で」

「あの、絵にあまり近寄らないでください」

係員さんに声をかけられ、自分が絵に向かってしゃべりかけていることに気付いた。

あれ? 友人は?

一緒に来た……よね? あれ?

何もかもが不安に呑まれてゆく。

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https://twitter.com/panda_bancho/status/1262053557236203520



002

まずは噂通り安い方に泊まる。

親友の名前と生年月日を書いた写真を枕の下に入れ……本当に親友の夢を見た!

翌日は高い方に。すると私は金縛りに遭い、枕元に親友の霊が現れた。やった成功だ! 私の婚約者を奪った報いだよ!

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https://twitter.com/panda_bancho/status/1264694111648403456



003

僕を見下ろす無数の恨みがましい目。

慌てて会社まで戻り、古びた散歩紐を手に取る。

途端にずっしりと重たい手応え。それと獣臭さ。ハァハァと息遣いも。

ディレクター昇格で増えた仕事、散歩供養番。一本の紐でまとめて連れ回せるのは楽だが……しかしけっこう殺してるんだなTVって。

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https://twitter.com/panda_bancho/status/1267802504487526401



004

部屋中の壁や天井が赤くなっていた。

いや、無数の赤い何かが刺さっている……近づいて見ると、それが人の爪だとわかった。無数の。血まみれの爪だけが。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kaidan_oogiri/status/1279762612620677121



005

気がつくと朝だった。

瞼をこすりながら「なんだよ寝落ちってオチかよ」と皆で笑いあっていると一人足りないことに気付く。

その時、外から悲鳴が聞こえ慌てて窓の外を見た。

居なくなったそいつが地面に落ちていた。

物凄い高さから落とした水風船のように血の染みがやけに大きかった。

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https://twitter.com/panda_bancho/status/1295566896536797184




006

「……だって、あなた、気づいちゃったじゃないですか」

電話口の向こうで笑い声を噛み殺す不動産屋の声を聞き、私は思い出した。こんな電話をするのが、初めてじゃないことに。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kaidan_oogiri/status/1320347042766438406




007

今まで目撃情報を伝えてくれた知り合い全員が、知らない人だったと気づいた。


どうして自分は彼らを知り合いだなんて思っていたんだろう。

→ お題はこちら

https://twitter.com/kaidan_oogiri/status/1353693824590045185





【2017年9月、一行怪談】


01

どこでもらったかわからないスタンプカードをいつも財布から出して除けておくのにいつの間にか戻っていて、しかも今気づいたけどスタンプ増えているんだよね、血の染みみたいなスタンプが。



02

コンビニ袋をガサガサやったときにテレビ横の小物が倒れた夜には、大好物だった鰹節を供えることにしている。



03

いつの間にか入り込んでいた大きな蛾が昼寝中の旦那の唇に止まっていたのを払おうとして、旦那の国では蝶も蛾も「パピヨン」なんだっけとつい躊躇う私。



04

月曜の朝になると必ず玄関脇の水槽から熱帯魚が一匹飛び出しているせいで憂鬱なんだよね、と言う同僚のデスク周りは妙に海の臭いがする。



05

動く歩道に乗って流れゆく天井をぼんやり眺めていたら、白い蛍光灯の中を青い蛇が悠然と泳いでいるのが見えて、慌てて振り返ったらもう居なかった。



06

目が覚めて時間を見ようとスマホを探していたら「随分とうなされていたよね」という声……え、一人暮らしなのに……。



07

話題のパンケーキ屋に並んでいたら妙に獣臭くって、でもここまで並んだんだしって我慢してたんだけど、次の次で入れるってとこまで来て獣臭さが店の中からってわかって、どうしても店の中に入れなかった。



08

カタン、という音に振り返ると道端のマンホールに郵便受けが付いていた……だけじゃなく、隙間から人間の目みたいなのがこちらを見て、消えた。



09

通勤途中に見かける小高い丘の上の一軒家、窓とドアの配置が愛嬌のある顔に見えてお気に入りでさ、通るときいつも心の中で挨拶してたんだよね、そしたら今朝、挨拶のタイミングでウインク返してきたんだよ、窓。



10

「わぁ、見て。綺麗な赤い月」という誰かの声の後、スマホを取り出すのに手間取っていたら周りの人たちが空を見上げたままガタガタ震え始めたから、地面だけを見つめながらその場を逃げ出した。



11

いつ頃からだろうか、自分の心臓の音が、時計の音にしか聞こえなくなったのは。



12

冷蔵庫の奥の方から賞味期限が数年前に切れてるジャムが出てきたって夫と娘が騒いでるんだけど、それ私が先週ゴミ箱にちゃんと棄てたはずのジャムじゃないよね?



13

「料理の腕は君には全く敵わないけれど、珈琲淹れるのだけは僕の方がうまいだろ」それか口癖だったあなたは毎年、珈琲の香りで結婚記念日を教えてくれる……とうに亡くなり、私が再婚した今でも。



14

一行怪談があまりにも集まり過ぎて、結局わずか数日間の募集に対して、すべてに目を通すのに年を越したという。



15

客先の古いビル、喫煙所が非常階段にあるんだけどね、あそこさ、スマホ画面がベタベタの指紋だらけになるんだよね、どんなに綺麗に拭いてポケットに入れたままだとしても。



16

階段を何かが落ちる音がして「小指」という小さな声が聞こえて、家族の誰の声とも違うし気のせいだよねと自分に言い聞かせた直後また階段から何かが落ちる音がして「薬指」って声が聞こえて、さらにまた。



17

枝豆をさやからキュッと口に放り込んだとき舌に刺激を感じて反射的に吐き出してしまったそれは、ぺこりとお辞儀してテーブルの下へ飛び降りて……え、何?



18

いつもの通勤電車で隣の車両に移ろうとしたら食堂車……あれ、そんなはずは、と思った時、視界の端に入った皿の上に人間の手や足が……慌ててもとの車両に戻って次の駅で降りた。



19

僕の人差し指の爪が一瞬、ワニの口みたいにガバッと開いて中に小さな牙と舌とが見えた。



20

うちの防犯カメラには時々白いワンピースの女性が映っていて、実際に見ると居ないからとても気持ち悪かったんだけど、息子が「VRみたい」って言ってから不思議と怖くなくなった。



21

「ね、一番星」「ね、ね、見て」「見てってば。ほら早く」これか、同僚が言っていた「エレベーターに一人で乗ったら決して上を見るな」ってやつは。



22

仕事帰りに運良く座れた満員電車で、ふと向かいの窓に映る自分の顔と目があって、あれって思ったらやっぱり満員電車で向かいの窓なんて見えなくて、もちろん私の隣に座っていた笑顔の女の人も居なくって。



23

頑なにカレーを食べない友人にその理由を無理やり問いただしたら、昔、彼の実家の近くでカレーで煮ることで遺体の腐敗臭を消そうとした事件があったことを語り始めたのがランチの途中。



24

よく使うエスカレーターに赤い足跡が付いていて「エスカレーターでは立ち止まれ」のマークかなと一瞬思ったら、その足跡だけがエスカレーターを上っていった。



25

ソファに横たわってスマホいじりながらウトウトしていたら、顔面に落ちてきたスマホに起こされたんだけど「布団で寝なさい」って検索していたの……俺?



26

近所に有名な「金網を飲み込んでる木」があるんだけど、何の気なしに裏側を覗き込んでみたら人形が埋まっていて「つぎはあなた」って声がどこかから聞こえた。



27

眩しいほど暑いのが原因なのか、陽向に踏み出そうとすると靴の先から煙が出るんだ。



28

ふと気になって品川巻きの海苔を剥いたら、白くて小さい蟹のようなモノがたくさん這い出してきて、そのうちの一匹をつまんで口に放り込んでみたらアラレの良い香りが広がった。



29

夜の浜辺で魚のような蛙のような二足歩行の奇妙な生き物を見たんだけど、不思議と怖くなかったし、むしろ懐かしさのようなものを感じた。



30

旅先で見つけた昭和の風情漂う銭湯に入ったら、地元のご老人達が指定席のつもりなのか、洗い場にそれぞれ自分の入れ歯と眼球とを置いていた。



31

帽子を被った少女が、自分の身長くらいある大きなトランクを押していて、でもやけに手足が長いなぁなんて思いながら追い越し際ちらりと横目で見たら、バランス的にどう考えても胴体がなかった。



32

太陽が二つある砂漠をせっつかれるように歩かされている夢をたまに見るのだけれど、その夢を見た次の日は必ず人身事故で足止めをくらうなと気付いた夜、太陽が三つある夢を見た。



33

今日はどうも座り心地悪いなと何気なくズボンの後ろポケットをまさぐったら、指先を何かに握られた。



34

泥の中に手を沈め肘の周りにブツブツと湧く泡を数える。




(※ 呟怖、怪談大喜利は、随時追加中)

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