ギフト
☆
>機獣乙女武装解除
機械的な女性の声が頭の中で聞こえたと同時にナノが元の姿に戻った。
なぜか呆然とした感じで突っ立っている。
そんな少女に声をかけることもそず零はあたりを見回した。
「思ったより威力があったな。ナノ・ファイヤー」
ナノ・ファイヤーに零の力を上乗せした火の妖精は小蜥蜴一族を一掃していた。
しかし零には見えていた。
右腕を焼かれる寸前、蜥蜴のリーダーであるニゲルが右腕を斬り落とし逃げるのを。
「逃げたか」
人並みの知能があるとすればいずれ復讐に動くかもしれない。
それは厄介だ。
そうなる前にしとめたほうがいいだろう。
のんびりまったりファンタジー世界を満喫するはずが。
頭を掻いてため息をする零の服の裾をナノが引いた。
いまだどこか夢を見ているように。
「ナノ、どうした?」
「さっきのは詠唱・・・・破棄です?」
「詠唱?」
「ハイなのです。詠唱も唱えず力を使うことなのです」
「ああ」
と零は一つ頷いて、
「技名って叫ぶの恥ずかしいからイメージしただけだ。この世界の奴らなら誰でもできるだろう?」
「できないのです!」
ナノはすかさず叫んだ。
「そうなのか?」
「ご主人様はちーとなのです!?」
この世界に来てチートという言葉を聞くとは思わなかった。
「いや。そんなたいそうなもんじゃないだろう?ビーッとやってドカーンと放っただけだから」
「?分からないのです?」
☆
「ご主人様ご主人様。どこに行くのです?」
歩き出そうとした零の背中にナノが声をかけた。
「やることはすんだからそろそろ別の場所に━━ん?」
零は小蜥蜴一族の燃えカスが残っていた場所に輝くものがあるのに気づいた。
そして。
「これは魔核ですね。たまに魔物が消滅したあとから宝石が出るのです。それを換金すればお金になるのですよ?」
目を輝かせているナノは魔核を手にして空へとかざした。
「じゃあ、これは何だ?魔核━━とは違うようだが?」
赤い宝石でできたような、小さな花。
星形の花びらを中心に火花のようなものが散っていた。
それも蜥蜴が消滅したあとに出てきた。
「あ、それはギフトですね。女神様の恩恵を受けた方たちを倒すかクエストをクリアした時にこれまたたまーに出現するのです」
>ギフト:火の花
説明:半永遠に輝き続ける花。夜の闇の中におくと灯りのかわりになる。ただし少しの力をくわえるとちょっとした爆発をおこす。
「何かに使えるかもしれないな」
零は魔核と火の花を回収してナノに手をあげた。
「じゃあ、ナノ。バイバイ」
「待つのです、ご主人様!ナノはナノはご主人様に身も心も捧げたのです!」
━━捧げてもらってないし捧げられても困る。
「だから捨てないでご主人様!」
━━聞き捨てならない言葉だ。
「仮隸属契約じゃなかったのか?」
「違うのです!モノホンのほうです!」
零にしがみついたナノは目をうるうるさせた。
零はため息をしつつ、
「じゃあこの世界のことを簡単に教えてくれるか?あとうまいもんを」
「了解なのです!ご主人様ついてきてなのです」
ナノは零の手を引いて歩き出した。