機獣乙女《ワルキュリア》1‐2
☆
>ユニークスキル更新
≫ユニークスキル:機獣乙女武装発動。剣モード、【ナノ・ブレード】
「・・・・・・」
契約というから何か難しい儀式があるのかと思ったがあっさりと終わった。
お互いの魔力をつなげ(零は詳しく理解できなかったが)、契約者が隸属契約した者に現れた黒い首輪をつける。
それで終了。
何だかいけないことをしている気分だ。
元の世界だと確実に変態扱いされ、100パーセント警察に捕まる。
目を開けた零が見たのは・・・・
「ああ、剣。これは剣だ。うん。ナイフじゃないよな」
シンプルなナイフに見えなくもないショボい得物だった。
武器━━とはいえないシロモノだ。
台所にあれば違和感ないように思える。
『ヒドイのです!ご主人様!』
頭の中に声が響いた。
『ナノはナノは落ちこぼれだから今はこんなんですが、いずれはボン!キュッ!ボン!なのです!」
━━何の話をしているのだろうか。
「これはあきらかに武器じゃないよな?野菜でも切るのか?」
『れっきとした武器なのです!』
頭の中で抗議してくる声。
「しかし剣のネーミングは何だ?ナノ・ブレード?」
『最強の名前なのです!かの有名なミスリル性の武器を折ることも可能━━』
「それは無理だな。刃に刃がついてないし、突いたり叩いたりしても。うーん、ドンマイ」
『うぅ~。ヒドイのです』
「でもレベルはあがったみたいだぞ」
>レベル:115。限界突発確認。
『!?ご主人様スゴイのです!?限界なのです!?』
ナノが驚く意味が分からない。
「そんなに驚くことか?」
『ハイなのです!この世界の人たちの最高レベルで大体80から90の間。有名な英雄様になればレベル95、そして勇者様で99、魔王様でようやくレベル100!限界突破といわれる現象です。それを15も上回るなんて!』
ナノは興奮しているらしい。
零は首をひねった。
何も訓練してないし、苦労もしてないのにレベルがこんなにはねあがっていいものか。
飛躍━━と呼べばいいか。
レベルがあがったわりにはまったく実感がない。
「ナノもレベルアップしたのか?」
『ハイなのです!レベル20になったのです!』
「あ、うん」
『ご主人様。ナノを誉めてもいいのですよ?』
「・・・・・」
『ご主人様。なぜ無言に?レベル20は不服ですか?』
「いや、ナノ・ブレードという名前を変更できないものかと」
『そんなの無理に決まって━━』
━━『武器名:ナノ・ブレード変更。新たな名前を入力してください』
『はう?何ですか、この声?ナノはナノは怖いのです!』
「ああ、声は聞こえるのか」
『ナノはナノはユウレーさんが怖いのです!』
「この世界にも幽霊はいるのか」
『ナノは何も聞いてないのです!』
耳を塞ぎたい心境なのだろう。
「それじゃあもちっとましな名前に━━としたいが、俺もセンスはない。だからとりあえずキャンセルで」
━━『キャンセル。確認。武器名、ナノ・ブレード続行』
それっきり声が聞こえなくなった。
「このレベルもどうにかしたいな。秘匿もあり?」
━━『大丈夫』
その声が何者なのか、零は何となく【ナビ】のようなものだと推測した。
その【ナビ】が普通に答えるのもどうかと思うが。
「レベルは20ほど」
━━『了解です』
零は自分のステータスを見て「レベル20」になったのを確認した。
が、ステータスのすべての能力値も下がったはずだが体に変化はなかったので能力値もレベル同様に秘匿扱いにされているようだった。
「ナノ。これからどうする?今の俺なら逃げ切れると思うが?」
『このまま戦うのです』
ナノがキッパリと答えた。
強い意思を持って。
『そしてご主人様とナノのつよ~い絆の力を見せつけてやるのです!』
強く言うナノに零は内心で小さく呟いた。
━━そんなのはない。
と。