機獣乙女《ワルキュリア》1‐1
☆
この世界のことなど無知である零だが隸属の儀式が何を意味しているのか、それは分かった。
今どのような状況か忘れたようにナノは興奮している。
「ちょっと待て。それは見知らぬ男に頼むようなものか?」
ロリがつく人種ならあることないことを並び立て、儀式というなの色々な行為をおよびそうだ。
「運命を感じたので。ご主人様も赤い糸的なもの感じません?」
━━あと5年ほど経過したらそういったものも見えたかもしれないが。
「隸属の儀式って何だ?」
「ナノはナノは機獣乙女の中でも落ちこぼれなのです。
誰かと隸属契約をしないとろくに魔術も使えないのです。お姉ちゃんたちが羨ましいのです」
━━姉がいるのか。
「そもそも機獣乙女っていうのは?」
「魔導兵器━━みたいな存在。
己を武器へと変化させ、契約者━━テイマーさんとともに戦う。それが機獣乙女」
「乙女というくらいだから女性だけしかいないのか?」
「昔は男性バージョンもあったようですが、今は乙女だけなのです」
ナノはしゅん、となった。
昔━━ということはナノが誕生する前のことだろう。
どうやって子孫を残しているのか気になったが見た目子供なナノに聞くことはできなかった。
「武器化した機獣乙女は魔剣や聖剣にもできないことができるのです。ナノのご先祖様は一度それをやったと聞いてます」
「何を?」
「女神殺し」
「それはたいそうな」
「魔術だけでは女神様に対抗は難しかったみたいですので。魔術は魔法の劣化バージョンみたいですから。いわゆる女神様から力を盗んで出来たのが魔術の祖と伝えられています」
「ありがちだな。盗っ人の力か」
「そうまでしないと女神様にタチウチできないの、です」
「んじゃあ今は女神の所在は?すべて殺ったのか?」
「いえ。女神様は不死の存在。女神様の命を断つことができるのは機獣乙女の所有者と魔王様。
魔術では封じるのが精一杯なのです」
「それじゃあナノと契約すれば容易く女神様を?いないんじゃ仕方ないが」
「今の機獣乙女にはそのような力はないのです」
「まあ、期待はしてないが」
「ヒドイです!ナノと隸属契約すればいいことありますよ?」
「たとえば?」
「ナノの頭をナデナデし放題!」
━━それはナノがしてほしいのではなかろうか。
「それにそれにレベルがどばーん!とあがるのです!」
そう言うナノが体全体で表現しようとするので零は危うく落としそうになった。
レベルアップは魅力的だが、
「俺はすすんでイベントをクリアはしたくないんだ。できるなら異世界ライブを満喫したい」
「でもでも!」
「ナノの仕草は癒しだから助けたい気もするが、なぜ小蜥蜴一族に襲われているんだ?」
「ナノたちは少し先にある村を警護していたのです。名もないような小さな村ですが、そこのお婆さんが料理上手で。へへ」
その料理を思い出してか、ナノは幸せそうな顔だ。
「彼らは野党なのです。平気で殺しをします。ナノたちは料理━━いえいえ、村の人を守りたいので戦うのです!」
村の人より大半がおしいし料理を横取りすんなや!みたいな感じに聞こえなくもない。
「警護はナノ一人じゃないだろう?」
「はい!なので・・・・ナノはナノは落ちこぼれですから、少しでもお姉ちゃんの役に立ちたくて一人で」
「ナノ。無謀という言葉、知っているか?」
「うっ・・・・」
ナノは涙目になった。
「まあ、俺もここで死にたくないわけだが」
「じゃあ!」
「あくまで仮だな。仮隸属契約。今を退けるだけの力」
「はうっ、ご主人様のいけずーなので」
ナノは拗ねたように言った。