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とある転移者は王道を嫌う  作者: たまねこ
第1章
3/11

巻き込まれし転移者1‐3

 ☆




 火の雨という表現は大袈裟だったかもしれない。

 小規模な火の矢が十数本飛来してくるのが見えた。

 ナノは「あわあわ」しているだけで避けないので零は少女を小脇に抱えるようにしてその場から離れた。

 火の矢が草原に着弾し、炎が広がった。



「ナノでいいな?魔法か何かで【あれ】を撃退できないか?」



 零はダメもとで聞いてみた。



「無理です。ナノは魔法は使えません」



 ナノはきっぱりと答えた。

 零はナノを抱えたまま、とりあえず駆ける。

 火の矢が降り注ぐ音が後ろのほうでしたがそれを無視してダッシュした。



「ここは魔法と剣のファンタジー世界じゃないのか?」

「えと、ご主人様が何を言いたいのか分かりませんが、この世界の種族のほとんどは魔法使えませんよ?」



 ━━は?



「じゃあ、【あれ】は何だ?火の矢を放ってきているあれは?」



 ナノをずっと追いかけていたのは2歩行している蜥蜴人間。

 奴らは軽そうな鎧と槍を持ち、その槍を杖のように振って火の矢を解き放っていた。

 奴らは魔物だろうか?

 零が確認したところ100匹はいそうだった。



「彼らは小蜥蜴一族プチ・リザードンなのです」


 名前に「プチ」をつけているが全長は零より大きかった。

 この際、名前のことなどどうでもよかったが。


「彼らが使っているのは魔術なのです」


 零は気になったことを聞いてみることにした。



「魔法と魔術はベツモノなのか?」

「はい。魔法はこの世界を創造した7人の女神様が扱ったと伝えられている奇蹟の力なのです。

 魔法は天と地をわけ、海をつくるほど強力で、一説によりますと星も降らして世界そのものを変えた、と言われてます」

「それはすごいな」



 ━━俺のユニークスキルの中に星に関係するものがあったよな。しかもそれは魔術ではなく魔法だった。



 零はそれに気づいたが口に出すことはしなかった。



「そして魔術は女神様に対抗するために4聖獣様がこの世界の種族に与えた力のことです」

「ん?女神に対抗するための力が魔術?女神とやらはこの世界をつくったんだよな?」

「はい!なのです!」

「じゃあ何で女神に対抗するための力が必要なんだ?」


 零が聞くとナノはあっけらかんと答えた。



「女神様は災いのもとですよ?偉大なる魔法の力で世界に大混乱を招き、女神様がいなくなって1000年以上経過していますがいまだに各地で異変が起きています。            

 その1つが獣魔です。女神様は種族の中に【闇の種】を植えつたと伝えられています。それが育つと生物は心を闇に支配され、その身をバケモノに変える。それが獣魔化」

「じゃああの蜥蜴人間━━小蜥蜴一族プチ・リザードンは獣魔というやつか?」

「いえ。あれはちょっと知識を与えられた魔物です」

「違いが分からない。この世界には魔王はいないのか?」



 ━━召喚=魔王退治。



 それはチュウニ何とかじゃなくても思いつくことだ。

 しかしナノはキョトン、とした顔で、



「魔王様は英雄の中の英雄らしいですよ?英雄様の中で実力や実績があれば王様たちよりも権力がある魔王様になれるらしいのです」



 ━━英雄が魔王?



 それは零が知るどの物語とも違っていた。

 まあ、世界が違えばそういうこともあるか。







「その魔王になれる条件は?」

「召喚された方だと聞いています。この世界で誕生した方は魔王様にはなれません」

「それは転生者でも無理か?」

「てんせい・・・・しゃ?」

「いや、こっちのことだ」


 答えてから零は肩越しに小蜥蜴一族プチ・リザードンの上、ステータスを見た。

 小蜥蜴一族プチ・リザードンの中で一際大きい奴、それがリーダーみたいだ。



 >ステータス


 名前:ニゲル

 レベル:20

 種族:小蜥蜴一族プチ・リザードン

 職業:小蜥蜴一族プチ・リザードンの小隊長

 称号:火吹きの蜥蜴勇者



 小蜥蜴一族プチ・リザードンのリーダーらしいニゲルを見、零は首を傾げた。



「は?あの蜥蜴、称号持ちだと?」



 この世界にギルドがあるか分からないが、そこで経験をつみ、相当な実力者になってから称号や【2つ名】をもらえるというのが零の認識だ。

 レベル20はあまりにも低すぎる。



「称号はそれぞれ種族で違うので。あのリーダーさんは10人も他種族を殺して称号を得たと聞いてます」

「10人?それで勇者?」



 腐っている種族としか言いようがない。

 それでも、



「奴は俺たちよりレベル高いぞ?奴だけじゃなく部下らしい小蜥蜴一族プチ・リザードンたちも」



 レベル5はある。



「殺るのは無理だとして、逃げ切るのも難しそうだ」

「そこでナノはナノは考えたのです。ご主人様はただ冒険者じゃないのです。多分。絶対に。時の旅人さんはこの世界にはないスキルや珍しい職業を持っていると聞いてます」



 じいっと見つめられ零はため息をした。



「あぁ。一応、テイマー見習い━━らしい」

「テイマーさん!?それならナノはお願いしたいのです!」



 ナノは唇が触れそうなくらいに零に顔を近づけて、



「ご主人様!ナノと隸属の儀式をして欲しいのです!」

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