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とある転移者は王道を嫌う  作者: たまねこ
第1章
1/11

巻き込まれし転移者1‐1

 ☆




 いきなり空気が変わったのに気づき、静かに目を開ける。

 目の前に広がったのはまったく知らない場所の光景。

 草原だ。

 高くて青い空。

 陽光を浴びてエメラルド色に輝く草が風でさざ波のように揺れている。



 彼は━━クレナイレイは空を見上げたまま呟いた。



「ここ・・・・どこだ?」



 突然見知らない場所にいたわけだが彼はあまり驚いた様子はなかった。

 なぜこんな場所に佇んでいるのか━━何となくであるが理解していたからだ。

 何者かによって召喚されたからだ。

 どうしてそれが分かるのか━━元の世界で心当たりがある経験をしたからである。


 零が教室にいた時、いきなり不思議な扉━━ゲートと呼べばいいか━━が出現。

 それが開いて光があふれ、気づいた時にはこの場所。

 普通ならそれで混乱するのだが彼はいたって平然と。

 耳の上あたりに指を当て、冷静に分析する。


 ゲートが出現する前、教室にいたのは自分の他にリア充の少年1人に少女が2人。

 その3人は零と幼馴染み━━一応は━━で、零と違って友達も多く、王道の小説やマンガ、アニメでいうところの主人公やヒロインになりうる存在の三人だった。


 ああ、そうか・・・・と零は呟いた。



「俺・・・・奴らに巻き込まれただけじゃん」



 そう結論づけた。

 それもそのはずだ。

 あのゲートが召喚を意味するものだとして、果たして自分は召喚される側の人間だろうか?


 否。



 それは考えるまでもなかった。

 ゲートが出現したのは幼馴染み3人の近く。

 それだけで自分はただ巻き込まれただけだということがすぐに分かった。


 そして現在自分はなぜ1人なのか━━ゲートとやらが不要と見なして途中で吐き出したのだろう。

 別にそれでもいい。

 下手に巻き込まれるよりは1人のほうが何かと気楽だ。

 とはいえ。


 ずっと立っているわけにはいかない。

 何らかの行動を起こす必要が━━

 そう考えていた零は気づいた。

 頭の上に浮かんでいる【それ】に。



 ━━RPGでいうところのステータスだよな?



 そしてメニュー。

 RPGゲームのような画面、メニューが広がっている。

 零が手を伸ばしてみるが触れることができなかった。



 ━━確か王道の小説なんかだと考えただけで・・・・



 零が想像しただけでメニュー画面がきりかわった。







 >ステータス

 名前:零・S・紅



「RPG風の名前表示になっている。名前の中にあるSは・・・・ミドルネームか?」



 レベル1



「来たばかりだから低いのは当たり前か」



 種族:混沌の魔人



「・・・・・」



 そこで零はいったん思考を停止させた。


 ━━混沌?魔人?

 ━━このステータス、バグっているんじゃないか?



 自分は人間だ。

 生粋の日本人である。

 先祖に異世界人がいたなんて聞いたことはなかった。



「何かの間違いだろう」



 小さく呟いてからズボンのポケットから折りたたみの鏡を取り出して見る。

 鏡に自分の顔を映し出し、零はため息をした。

 鏡に映っている自分の顔は人間種族・・・・ではなかった。


 年齢は16。

 零が記憶しているのは黒髪と黒目、鏡に映っているのは白髪・・紅目・・

 右の頬あたりに何やら2匹の竜が絡まり、天へのぼるような紋章みたいなのが刻まれていた。

 そして額には2本の角。


 あきらかに自分ではないかだ。

 自分はただ巻き込まれただけなので何らかの問題が発生したのかもしれない。



 ━━これだとあきらかにあちら側の存在だよな。



 魔王。大いなる災い。闇を振り撒く者。他種族の敵対者。

 そんな感じの。

 人間種族たちがいる場所にいたら確実に大騒ぎ、大混乱を招きそうだ。

 自分の姿が人間種族とは別のものだと分かっても零はあくまで冷静だった。



 職業:ラタの禁忌書使い



「ラタの禁忌書使い?」



 ━━それは何だ?



 と呟こうとした瞬間、零の前に紫色の光が渦巻き、1冊の本が出現した。

 紫色の表紙を持つ本。

 表紙に【ラタの禁忌書】と描かれていた。

 零がラタの禁忌書を開いてみるとそのほとんどが白紙だったが、何ページかは何かが描かれていた。



「変化?」



 書に描かれていた一つを口にしてみる。

 と。


 >スキル:変化ヘンゲ発動



 どこからか声が・・・・機械的な女性の声が聞こえたかと思うと体に違和感を覚えた。

 零はとりあえず折りたたみの鏡を見、そしてステータスに視線を向けた。



 種族:人間種族



「なるほど。これは使える」



 鏡に映っているのは元の姿だ。

 これなら人間種族がいる場所でも騒がれる心配はないがいくつか疑問があった。

 ただの変化・・だけで種族まで変わるものだろうか?



「口に呟くとスキルが発動するのか?なら無闇に口にしないほうがいいよな」



 変化に発動があるように解除もあるだろう。



「白紙の部分が気になるが今は確かめる術はないよな」



 禁忌書というくらいだから世間で知られるのはまずい本ではなかろうか?


「それなら職業欄も変化可能か?」


 それはあまり期待はしてなかったが。


 >スキル:変化発動



 職業:テイマー見習い



「何でもありだな、このラタの禁忌書」



 テイマーといえば何かと契約し、力を得る職業か。



「他には何かないか?」



 レベルが1なためすべてのステータスは低かった。

 すべてが50前後だ。

 四大魔術(炎、水、風、土)は一応使えるみたいだがそれは初歩中の初歩程度みたいだ。



「ユニークスキルというのは何だ?」



 ユニークスキル:召喚魔法【ダーク・メテオ】。5回限定。


 ユニークスキル:神衣カムイ武装。現在使用不可能。


 ユニークスキル:空間ボックス



「魔術じゃなく魔法?何が違うんだ?」



 この世界の知識がない零には同じように思えた。



「神衣武装ってこれは魔術や魔法の類じゃないみたいし、この空間ボックスというのは」



 ≫ユニークスキル:空間ボックス



 ラタの禁忌書が突然消えた。



「よくファンタジー小説とかである何でも収納できる空間か」



 これなら手ぶらで冒険もできる。


 いじっていたメニューをある程度頭に叩き込み、零は空を仰ぎ見た。

 太陽が2ニコある。

 元の世界ではありえないことだ。

 そのことから自分は異世界に来たんだなと実感させられた。


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