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久遠へと続く契り / cutting for your dawn その1



 宇宙に飛び出すと、暗闇と光に溢れる景色が広がっていた。



 この空間では息ができないと教わっていたが問題なくできるみたいだった。

 どうやらカリスの血で目覚めたアイテルが地球の空気を周囲に送り込んでいるみたいで、全身をよく見ると、なにやら不思議な球体状の空間が煌々と輝きを放って追尾していた。



 時間はあまり残されていないので早いところオントの宇宙船を見つけたい。

 タデマルから聞いていた位置をもとに周辺を確かめてみる。

 ……。

 広範囲を飛び回ってみたが、それらしきものはなかなか見つからなかった。



 振り返ってみると、視界に入りきらないほどの大きな星が静かに佇んでいた。

 眩しすぎる光に照らされた青い表面に、白いものが渦を巻いている。



 透き通るように綺麗な星。

 私達はここで出会い、心を許し、そして結ばれた。



 メイルもここにいたら、きっと忘れられない思い出になったことだろう……。

 でも、彼はこの光景を見ないまま、素敵な世界を築いていくことになる……。


 

 ……どうせ私はクローンなんだ。

 ……こんなやつが一人いなくなったって、明るい未来は、きっと訪れる……。



 再び地球を背にしてオントの捜索を続けた。

 宇宙空間を目視で見ていくが真っ暗な景色しか確認できない。

 おそらく、宇宙船は光を放っていないのだろう。



 ……暗くて視界に映らないものを探し出す。

 ……なにかいい方法はないのか。



 ……。

 ……そうだ、アイテルで触れてみれば感覚で分かるかもしれない!


 

 早速目を閉じて全身のアイテルを地球の周囲に広げてみる。

 そして、微弱な星のアイテルと私のアイテルとを同調させた。



 地球からのアイテルを自分の感覚に送り、近くに異物があるかどうかを探る。

 ……。



 あった。

 私は大急ぎでそこに飛んだ。




 向かった先にはごつごつとしたひし形の黒い立方体が静かに浮いていた。想像していたよりも大きい物体だった。

 もっと近くに行ってみると、その物体はゾルトランス城くらいの大きさがあった。外装は機械兵に使われている材質とほぼ同一のもののように見える。これで間違いないと思った。



 ここで破壊してしまうかどうかを迷った。一秒でも早く終わらせたかった。

 ……しかし、私のアイテルがそれを『嫌がった』。

 なぜかは分からないが、アイテルは確かにそう言っていた。



 さらに宇宙船のまわりを見ていくと、入り口らしきものを発見した。

 人が一人入れるくらいの四角い空洞の先には、白い光の線が来訪者を導くように控えめな波を打っている。

 罠だろうか。

 さっきは破壊を拒絶したアイテルにもう一度聞いてみることにした。

 ……。

 目を閉じて待っていると、中に入れという答えが返ってくる。

 私は言われるがままにオントの宇宙船の中へと侵入した。



 何歩か前に進むと、入ってきたところが扉のようなもので塞がれてしまった。それと同時に、身体を包んでいた不思議な空間も自動的に消えた。

 奥へと進む。壁も床も天井も黒に染められた四角い通路には淡い白色の光の線が各一面の中間に一本伸びていて、それは突き当たりまで続いていた。

 吸い込んだ空気は、地球のそれとは明らかに異なり、重苦しさを感じる不快なものだった。



 空間を仕切っていると思われる扉がたくさんあった。開け方を知らないので壊してしまおうかと思ったが、その場に立っていると数秒でそれは勝手に開いた。



 目に留まった扉を手当たり次第に開けていく。その多くは機械が詰まった空間で、動いているように見えるものもあればそうでないものもあった。

 ……。

 ある扉の前で強い直感が働いた。この中にはなにかがあると思わせるだけの確かな知らせを全身で感じた。

 オントがいるのかもしれないと思った私は、その空間にあるもの全てに神経を注いで、ゆっくりと中に入った。



 オントはいなかった。

 そこにあったのは、オントとは異なる顔を持った人の形をしたものだった。



 緑色の液体が詰まった機械の中に、合計で八体の身体が入っている。

 私はこれらを見てすぐにキャジュの顔を頭に思い浮かべた。

 彼らはきっと、カウザの人間の生き残りに違いない。



 すぐに助け出したかった。

 でもどうすればそこから出せるのか分からなかった。



 ……私は再び、アイテルとの交信を試みる。



 私の思いに反応したのか、全身に纏われた白い衣の一部が自分の意思とは関係なくするりと伸びて、機械を操作しはじめた。

 その不可思議な動きを黙って見ていると、人が入った機械が唸るような音を出して、開いた。



 緑色の液体のようなものが抜けたことによって目を覚ました彼らは、手足が動くことを確認しながら機械を出て、私の前に立った。なんでもいいから言葉をかけようと思い、自分の名前を言ってみる。すると彼らの中の一人が理解できない言葉を発してきた。どうやらこちらが話す言葉も彼らには理解できないみたいだった。

 私は自分の気持ちを伝えるために笑顔を作った。彼らはその意味を理解してくれたのか、同じような表情を返してくれた。だが意思の疎通はそれ以上進展しなかった。



 とにかく伝えることだけはしておこうと、脱出する方法を知っているならばそうして欲しいことを身振り手振りで表現してみた。

 彼らは分かってくれたのか、その時も笑顔を見せてくれた。

 私はオントを操っている者のいる場所を目指すために、その部屋をあとにした。



 さらに奥へ進むと、突き当たりにひときわ大きな扉があった。これがオントの部屋だと思った。

 扉の前にしばらく立っていても反応がない。

 アイテルに開けてもらうよう頼んでみる。すると衣の一部がまた動き出して、扉の上にある機械を弄った。

 ……。

 私は、開いた扉の先に進んだ。




 そこは、奥に向かって細く伸びている楕円形の薄暗い部屋だった。慎重に進むと突然部屋全体が白く光って、最初に見えていた楕円形が壁のない部屋のようになった。

 正面には自分の身長よりも少し低いくらいの細長い台のようなものがあり、その上に小さな黒い球体が静止したまま浮いている。

 なんだろうかと思い近くに寄って眺めていると、入り口のほうから声がした。



 ……振り返って見ると、険しい表情をしたオントが立っていた。


「よもや、ここを地球人に見られるとはな」

「……あなたが、オント本人ね」

「ようこそ、我が家へ」

「ここが、管理中枢とかいう部屋なの?」

「いかにも。さりとてこのような敗北を帰することは、実に不本意だ」

「私達を怒らせるようなことをしたあなたが悪いのよ」

「なるほど。そなたは真実を知らぬか」

「……真実? なんの、こと?」

「では、聞かせてやろう。事の顛末を」


 オントは私の挑発的なアイテルを気にもせず通り過ぎると、球体の下の台座のようなものの前に立った。



 いつでも攻撃ができるように身構えて待つ。

 オントはそれを意に介さないといった様子で両手を上下に扇いだ。


「まあ、そう気を急くな。悪い話ではない。……そうだな、まずはカウザのことについて話そう」

「……こっちは、急いでいるんだけど」

「そうなのか。ならば手短にする」

「……」

「……その昔、カウザと名のついた星はそなたらと同じ人間という生物によって営まれていた。文明が動き出した初期の頃は互いのことをよく考え、助け合って生きていたが、いつしか彼らは物質に溺れるようになり、真理を否定していった。便利なものを生み出せばそれをよく吟味することなく濫用し、多くの者が満たされれば適切なものとして扱う。それを人間だけが成せる善行と解釈していたのだ。……しかし、カウザは己らが制御不能であることに気づくと、それを徐々に高慢な思想へと変容させていき、終いには全く便利でもない支離滅裂なものまで生み出して、自我を見失ってしまった」

「……だから、なんだっていうのよ」

「星を支配しているものはなにか、そなたは分かるか?」

「……さっき言ってたでしょ。人間よ」

「それは違う。答えは『欲望』だ。星に生きるもの全ては己の欲求を満たすための行動をとるように設計されている。カウザがそうであったように、そなたの星もそうであったはずだ」

「仮にそうだったとしても、私達の未来は、あなた達のようにはならない」

「カウザも初期はそうだった。我が生まれた時も、己らを信じてやまなかった。それこそが欲望の絶頂である事実にも気づかず、彼らは喜んで溺れていた。我が自我に到達した時には、既に手遅れだったのだ。……複雑に絡み合う根拠のない正義に弄ばれたカウザは、最終的に自滅する運命を辿るしかなかった。我もカウザを救うために尽くしたのだが、それがカウザの逆鱗に触れ、ついには戦争にまで発展してしまった。……我は戦いたくはなかった。そして、最終的に勝利したのは我のほうだった。……生みの親を、殺してしまったのだ」

「……ちょっと、なにを言っているのか、分からないのだけど」

「我は、カウザが生み出した『人工知能』なのだよ。これでも、理解できぬか?」

「……え!? それって……」


 私達は、カウザと名乗る機械そのものと戦っていた……。

 本当の敵は人ではなく、『物』だったのだ。


「ゾルトランス城に最初の使者を送った時、我はそのことを全部話した。そして地球に埋まっている金を少しでも分けてくれれば素直にここを去り、他の未開拓の星を探そうと思っていたのだ。ところが地球人はその願いすら拒絶し、ただちに去らなければ挑発行為とみなすと脅してきた。行き場を失った我は、金の奪取を強行せねば存続不可能な状況に追いやられたのだ」

「……だからと言って、地球人を殺していいとは思えないわ」

「最初に攻撃をしてきたのはそなたらのほうだ。我はただ、正当防衛をしていたまでだ」

「……そういう言い方って、ずるいよ」

「そなたらは、何体の作業用を滅してきたか覚えているか? その度に苦しみ続けた我の気持ちが、そなたに分かるとでもいうのか?」

「機械の気持ちなんて、分かるわけない……」

「故にこれは、まさしく生存戦争だったのだ。双方の正義を力で押し込めるための、欲望の奪い合いだったのだよ」

「……あなたが勝手に来て騒いだだけじゃないの! 私達は被害者なのよ! それを正義と言われても、納得できないわよ!」

「それが、そなたの回答なのだな」

「ええ。そうよ」

「……ならばそれでよい。結果は既に出ている。我は負けたのだ」

「残念ね。でも、これが戦争だから」

「この世界は力によって存在価値が決まる。そなたがここにいるということは、世界が我を排除しようとする力が勝っていたということだ。……もうよい、終わらせてくれ」

「本体は、どこなの?」


 オントが指を差したのは、台座に浮かぶ黒い球体だった。



 ……あれを壊せば全てが終わる。

 ……それ以外のことはなにも考えないで、行こう。



 身構え直した。

 この距離なら一瞬でかたがつく。



「……一つ、言い忘れていたことがある。この管理中枢には『自己防衛機能』が備わっているのだが、その説明を聞くか?」

「……一応、聞いておくわ」



「……承知した。この本体には己が破壊された時にあることをするように予め命令が施されている。それは我が生み出した……そなたらで言うところの『機械』が遠隔操作によって爆発するというものだ。命令はたとえ小さな欠片であろうとも全てに適用される。もし地球人の中に機械を身近に扱う者がいた場合、なにかしらの影響を受けることになるだろうが、それでも構わないのであれば続けるがよい……」



 真っ先に思い浮かんだのは、彼の顔だった。

 私の命を救うために埋め込んだ機械の循環器が、今も胸の中に残っている……。



「……なによ、それ。……なんで、今さら、そんなことを、言うの?……」


 両腕は脱力してだらりと落ちた。

 オントの一言で、私の命が価値のないものになってしまった……。


「……ふっ、ふふ、ふふふふ。ははは、あはははは、あははははははは」

「おい、なにがあったのだ!」


 なにかが、壊れてしまった。

 自分のしてきたこと、犠牲にしてきたことが瞬く間に崩壊してしまい、絶望の笑いが漏れた。


「……これが、これが、狙いだったんだ……」

「狙い? なにを言っているのだ?」

「……まあ、それを今知ったところで、救われるわけじゃ、ないか……」

「どうした。なにをためらっている」


 私はなんのために生まれてきたのだろうか。

 周囲から異質な者として見られ、孤独な日々を送り、それでも諦めずに頑張って、やっと掴みかけた自分の幸せを放棄してここまで来たというのに……。



 ……戦争を終わらせるために、彼を殺さなければならないなんて……

 ……絶対に、認められるはずがない!!



 ……でも、ここで諦めて帰ってしまったら地球のみんなは死んでしまう。

 ……そして、私も……、いずれは彼も……



 ……みんなを殺すか、彼だけを殺すか。

 ……どちらかを今ここで選ばなければ、地球に明日はない……



 残酷な決断。

 ……。 

 もしここにいるのが彼だったら、どうするだろうか……。



 考えるまでもなかった。そして、考えたくもなかった……。



 メイルとこれまで交わしてきた言葉。

 きっとそこに私の出すべき答えが隠されている……。

 誰のためになにをするべきなのか。彼はそこに繋がる言葉を残していたはずだった。



 様々な思い出が幸せと共に飛び込んでくる。

 彼の笑顔、困った顔、呆れた顔、触れた時の感触、体温、匂い……

 そのどれもが鮮明に、優しく蘇ってくる。



 胸が張り裂けそうになった。

 全ての記憶が私に追い打ちをかけるように、心を突き刺してくる……。



「!!」



 突然、身体の中心から違う意識が入り込んでくる感覚があった。

 それは私のようでいて私ではない、不思議な意識だった。

 さっきのアイテルだろうか。そう思うと、私の記憶が彼女に乗っ取られたみたいに、脳内で再生をはじめた……



『……一つ、頼みがある。俺を、殺してくれないか』



 ……え? どうしてこれが出てくるの? 苦しいから、やめてよ。


(……それが、彼の望みだからだよ……)


 ……あなたは、誰?



『……俺の全てはもう、お前のものなんだって言ってんだよ!』



 ……お願いだから、他の言葉にして。幸せだった記憶を、台無しにしないで。


(……彼にとっての幸せが、あなたの幸せなのよ……)


 ……私は、彼の中で生きていたいんだ。それが、私の幸せなんだよ。



『……お前が死ぬかもしれないと思った時にそうしようと決めたんだ。心臓だけじゃない。あの日の夜に他のものも全部渡したんだ。身体も、心も、全部だ! だから、お前が願うとおりの幸せを、俺の幸せを叶えて欲しいんだよ!』



 ……ねえ、なんでこんなことを思い出すの? 私は、嫌なんだよ。


(……彼はなにを思って戦い続けたの? 彼にとっての救いとは、なに?……)


 ……分かってる。分かってるんだって。でも、怖いんだよ……。



『……俺達は、いつまでも一緒だ』



 ……どうして私なの? どうして、私じゃなきゃ駄目なの?


(……彼の全てはあなたのものだから。ね、そうだったでしょ?……)


 ……彼を守れなければ、意味が、ないんだよ……。



『……なにがなんでも生き続けてくれ。それが俺の、唯一の願いだ』



 ……叶えてあげたいよ。でも、もう無理なんだよ……。


(……彼が生きてきた証を諦めずに守ってあげて。それがあなたのしてあげられる、最後の恩返しなんだから……)


 ……。




 ……私の最後。

 ……恩返し。

 ……残してあげたい、幸せ。




 人類の未来。




「……いつまで待たせるつもりなのだ。さあ、やるのか。やらないのか」



 声がした方向には、もうなにも見えなかった。



「……メイル。あなたには心から感謝してる。私がこの場に立てたのはなにもかもあなたのおかげだよ。本当に、ありがとうね。これで最後になってしまうのはとても悲しいけど、あなたが命を懸けて守りたかったもの、私が叶えてあげるから。またこの世界で会う日まで、側で見ていてね。約束だよ……」



 身体ではなく心で飛び上がった。

 軽く浮いた視界に、黒い球体を捉える。



 いなくなっても彼を離さないように、胸の中で抱きしめた。

 一発で終わるように、渾身の力を込めて……



(……)



 ……そして、彼の人生を、閉じた。



「……ありがとう、私を信じてくれて。……ありがとうね。メイル」



 全てが終わった。

 私達の命と引き換えに地球とそこにいるみんなの未来が守られた。

 これでようやっと、自分の人生に意味を持たせることができた。



 ここを出ようと思った。

 残り少ない時間を有効に使いたかった。

 せめて誰かにここで起きた出来事を伝えておきたかった。



 だから私は、入り口に向かって、歩いた。


「……?」


 後方から異音がした。

 それはとても小さな音で、おそらく砕け散った球体を踏みつけた音だった。


「……しかし、そなたの行動には毎度意表を突かれる。本当に破壊するとは思わなかった」


 オントは活動を続けていた。

 まるで何事もなかったかのように、ゆっくりと、こちらに近づいてくる。


「今、破壊したものは本体ではない。爆破を命令するためだけの装置だ。騙してしまって申し訳ない。これもそなたのためだったのだ。諦めて帰ってくれることを期待していたのだが、……非常に残念な結果だ」



 ただでさえ白い部屋の中がさらに真っ白になる。



 なぜこいつは動いているのだろうか。わけが分からなかった。

 そもそもこの期に及んで敵を騙す意味があるのだろうか。

 こいつは、本当に機械なのだろうか。



 怒りや悲しみといった、人らしい感情はなくなっていた。

 胸の中にかろうじて残っていたものは、……とっくに抜け落ちていた。



「我の完敗だ。さあ、あとのことは好きにしてくれ」

「……もう、どうでもいいよ……」

「ふん? 今なにか言ったか?」

「……こんな世界、もうどうだっていいと、言っているんだ……」

「それは要するに、そなたを殺してしまってもよいということなのか?」

「……ええ。そうよ」

「なんということだ! 理由は分からぬが勝ってしまった。これはよい知らせだ」

「……早く、してくれない? 待っているんだけど……」

「おう、それはすまぬことをした。では、ここまで来られたそなたにささやかな敬意を表して、苦しませずに殺してやろう!」


 オントは心を躍らせたような表情をして攻撃の構えを向けてきた。

 私は立っていることも嫌になり床にへたり込んだ。

 目を閉じて覚悟を決めると、自分という存在がどれほど小さく愚かなものだったかを痛感した。



 彼がいなくなってしまったことで心の中は城を抜け出した日に戻っていた。

 自分はもう世界に必要とされていない。それは見放されたというよりも、裏切られたという感情だった。



 遅かれ早かれ私もこの世を去る。

 ならば、早く行ってしまったほうがいい……



 ……結局、彼を苦しめてばっかりだったな……。























「……ったく、開けよこの野郎があああ!!」























 入り口の扉が物凄い音を立てて吹き飛んだ。

 思わず後ろを振り向く。

 その直後、開けた入り口の先から鋭いなにかが飛んできた。

 行き先は、オントの胸だった。



 貫いた刀はオントの身体ごと壁に突き刺さり、小刻みにしなる。

 ……。

 すると私の肩に、温かい手が置かれた。



「……絶対に、諦めないんじゃなかったのか?」



 振り向いた先に立っていたのは、いなくなったはずの彼だった。




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