闇黒歴4852年 3月7日
闇黒歴4852年 3月7日
何という事だ。3日経たずに1日開いてしまった。
もちろん理由はある。
勇者が城へやってきたのだ。
久しぶりの事であったので下僕どもが返り討ちにしてやると張り切っていたが、せっかくの遊び相手だ。
下僕どもを追い払って、勇者を私の玉座へと招いてやったのだ。
昨日の勇者は今までの勇者と違い、少し変わっていた。
今までの勇者は、玉座の間に入るなり問答無用で私に斬りかかり、殺そうと挑んでくるものだった。
時には女神に授かったという聖剣を使って。時には精霊王から譲り受けたという強大な魔法の力で。
それであったのに、今回の勇者は私を見るなりにこりと笑い、自己紹介を始めたのだ。
正直、なんだこいつと思った。
思ったが、暇つぶしにはなりそうだったので聞いてやった。
なんでも、世界の半分を私の領土として認めると人間の王が言い、人類を害さなければ魔王もひとつの国の王として認めるので受け入れるように、だそうだ。
受け入れなかったらと聞けば、この勇者に大人しく殺されろ。抵抗しなければ一思いに殺してくれる、とのことだ。
面白くもなんともない冗談だ。聞いて損した。
私はいつも通り、勇者を殺さないように四肢を奪い、化膿をしないように止血と治療はしっかりとし、再び挑んでこないように魔法を使えば死んだ方がマシだと思えるほどの痛みを感じる呪いをかけ、勇者を人間の国へと送り返しておいた。
勇者の話は面白くはなかったが、勇者を送り返した時に会った人間の王の顔が面白かったので、まあ、暇つぶしにはなったかな。
とにかく、昨日はそういう理由で日記を書く時間がなかったのだ。
挑んでくるモノをどうにかするのが魔王たる私の仕事であり、仕事なんだから仕方がない。