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ちゃんと投稿出来ているでしょうか。
和哉は教室に着くと、クラスメートへの挨拶もおざなりで済まし机に突っ伏す。
「はぁ~~~」
「もう既に疲労困憊みたいな感じね」
その声に顔を上げると直江美佳子だ。めぐみの友人で和哉もちょくちょく話す結構面白い子だ。
しかし、今日は彼女を構う元気がない。
「今朝イロイロあってす~ごく疲れてるんだよ」
和哉の言葉に美佳子はきょとんとして、
「今朝? 昨晩の間違いでしょ。昨晩はお楽しみだったのかしら…。わたしもめぐみにイロイロ教えたかいがあったわ。何があったのか教えなさいよ」
その言葉に和哉は顔を上げる。
「まさか、お前か? お前と姉ちゃんが原因だったんだな! この騒動の差し金は」
クラスメートの目が無ければ男泣きに泣きたいところだ。
「お前の所為で、今朝、ボクがどんなに精神的ダメージを負ったか……」
ヤバイ、涙がこぼれそう。
「何よ。逆に感謝されたいくらいよ。ふ~ん。いいもんね、めぐみに聞くから」
「あっ、こら。まて、やめろ」
捕まえようとするが、美佳子はひらりとかわす。
「ねえ、ねえ、めぐみ。和哉君は昨日優しかった?」
勢い込んで質問する美佳子に、訳も分からずめぐみは素直に答える。
「カズ君はいつも優しいですよ」
「いつも!」
美佳子はオーバーなリアクションで相槌を打つ。
「それはよく一緒に寝ているってこと?」
何だかデジャブを感じる。
「最近はカズ君が恥ずかしがって寝てくれません」
「じゃあ、それまでは一緒に寝ていたのね。ああ、どうしよう。まさかそこまで進んでいたなんて。和哉君は奥手に見えてその正体は、ムッツリスケベだったのね」
「誰がムッツリスケベだ! しかもうちの母親と同じ反応するな! 全部お前の勘違いだ」
美佳子の口を塞ごうとするが、別の手が和哉の肩を掴む。
「裏切り者め」
「上杉。お前は一人で大人の階段へ昇ってしまったんだな。──ならば、漢同士の話し合いがある。」
クラスの男子生徒一同だ。
「いや、みんな誤解しているぞ。それにその血走った目はやめたほうが良い。絶対話だけで終わらないだろ」
「漢の話といえばこれだ!」
「漢はこれで語り合うものだ!」
それぞれずいっと拳を突き上げる。
そんなところで団結を見せるな。もっと重要なときにとっとけ。
だからその目は怖いって。
「暴力反対~。助けて~」
肩を掴まれて教室の外へ連れ出される。
「言い訳は見苦しいぞ!」
「問答無用。きりきり歩く」
抵抗むなしく、引きずられる和哉をめぐみはニコニコと見送る。全く当てにならない。
姉ちゃん。見ているんだろ。助けてくれ。弟のピンチだ。
和哉の願いが届いたのか、姉が姿を現す。…が、姉は姿を現すと腹を抱えて笑っている。微塵も助ける気配はない。
『腐れエロ姉ちゃん』呼ばわりしたことがまだご立腹らしい。
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──ボロ雑巾のようになり席に倒れこむ。
「チャイムが鳴るわよ。それから和哉君とめぐみは何も無かったって」
戻ってきた男子に美佳子は呆れたように怒鳴る。
「だから言っただろ」
和哉の抗議に男子一同は目をそらす。
「…俺たちは上杉を信じていたぞ」
「…勿論だ。俺たちはいつまでも友達だ」
手のひらを返したようなさわやかさで彼らは自分らの席へ去っていく。
もっと早く言ってくれ。 まだ授業も始まっていないのに身も心もグロッキーだ。
アニメやマンガだと幼馴染と同じクラスだとずっと一緒にいるような雰囲気だが、むしろ一緒に行動することは少ない。
大抵男子と女子では別々で行動するし、個々の友人もいる。美佳子のように和哉とめぐみの共通の友人もいるが少数だ。
というわけで、昼休みなどめぐみが何をしているのか和哉は知らない。しかし、おせっかいな人間(美佳子)は報告に来る。
「ちょっと、ちょっと。聞いた? なんと、めぐみがB組の佐藤君に告白されるわよ」
大げさな身振りで喋りかけてくる。
ちょっとおばさんくさい。
「余計なお世話よ。こんなかわいい娘を捕まえて。それより、気になるでしょ。さ、行くわよ」
和哉の腕を引っ張ってくる。
「いや、別に興味ないから…」
和哉はうんざりしてそっけなく答えた。
「またまた~、嘘言っちゃて。ホントは興味津々のくせに。めぐみ佐藤君に取られちゃってもいいの? 心配で心配でたまらないんでしょ」
それはない。そんな心配は無用だ。
といっても、別にめぐみが和哉に惚れているというわけではない。まだ付き合ってもいないのだから…
和哉はめぐみのことを女の子として好きだが、めぐみのほうは和哉のことを異性とみなしているのかも怪しい。
それで何故心配していないかといえば、めぐみに近づく男は姉が全て撃退してきたからだ。
姉は生きていた頃から和哉以外の男を近づけたがらなかった。今頃その斉藤君とやらは姿の見えない姉のせいで不思議な目にあっていることだろう。
そんなことは知らない美佳子は和哉の態度に憤る。
「ホントに取られたらどうするの!」
「大丈夫だって。それに行ってどうするんだよ」
「いいから素直に来る!」
美佳子は渋る和哉を告白の現場まで強引に引っ張る。
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現場はオーソドックスに体育館の裏。いつもなら人がいないはず…なのに植木の茂みや用具入れの影に人間がいる。みんなクラスの野次馬だ。
いったい何をやっているのだか。
めぐみと佐藤君は周囲の人間に気づいている様子はない。
「まだ始まっていないようね」
美佳子は先に来ていたクラスメートの一人に確認すると和哉を茂みに引き込む。
佐藤君は離れても分かるくらい顔を赤くしている。
対して、めぐみはいつも通り。これから何を言われるのかも分かっていないに違いない。
「覗いて、何をしでかすつもりだ?」
「うぶな友達を心配して待機しているのよ」
二人から目を離さずに美佳子は答える。
「単なる野次馬に見えるんだけど」
「気のせいよ。でも、万が一のとき、行くのは和哉君よ。わたしたちは暖かく応援するわ」
つまりは何もしないってことか。
まぁ、姉ちゃんが憑いていれば変なことにはならないだろう。
──って、何でここにいる…? 真横を見ると、姉が腕を組んで浮いている。
続きは投稿明日予定です。




