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話を読み返したら、懐かしさを感じますね。


「…おはよう」


 気まずいながらも和哉は恭子に声を掛けた。姉は言い争いにキレて姿を消してしまった。


「おはよう、カズちゃん。めぐみちゃんも一緒に朝ごはん食べる?」


 恐る恐る母親に声を掛けると、予想に反してうれしそうに対応する。


 どうしたんだ?


 さっきのことはなかったことになっているのか。


 やぶ蛇になりそうで言い出せない。


「いいから、いいから。遠慮なんてしない。お家のほうには私から言っておくから」


 恭子はめぐみを強引にテーブルに座らせる。

 テーブルの上にはトーストとサラダ、コーヒー。そして、何故か洋食の中にコンビニの赤飯が……。


「いや~、急いでコンビニまで走っちゃったわ」


 さも、何かを成し遂げたような表情で恭子は語る。そして、めぐみに詰め寄る。


「めぐみちゃん。昨日はカズちゃんに脅されて無理やりとかじゃないわよね」


「ちょっと、何質問しているんだ?」


「めぐみの方から一緒に寝たくなりました」


「いや、めぐみも答えなくて良いから」


「…そうなの。カズちゃんは昨日優しかった?」


「カズ君はいつも優しいですよ」


「いつも!」


 恭子はオーバーなリアクションで相槌を打つ。


「あの~~」


 口を挟むが、恭子は息子の意見など意に解さない。それどころか恭子は明らかにわざと和哉を美視し話を続けている。


「それはよく一緒に寝ているってこと?」


「最近はカズ君が恥ずかしがって寝てくれません」


「じゃあ、それまでは一緒に寝ていたのね」


 めぐみはすなおにうなずいたが、おそらくめぐみが言っているのは子供のころの話だ。


「全く気がつかなかった。どうしよう。まさかそこまで進んでいたなんて……」


 恭子は一人つぶやくが、恭子の想像している最近という期間とは数年の誤差があるはずだ。


「絶対母さん勘違いしているからな」という和哉の主張は興奮した恭子にはスルーされた。


「ああ、どうしよう。おばさんたちに正式に挨拶に行かなくっちゃ。今度の日曜はどう?」


 なぜ、この母親はそんなにうれしそうに言いますか。


 恭子の暴走に付き合わされたが、どうにか誤魔化した。どこまで誤魔化しきれているか自信はなかったが。


 めぐみは学校の用意があるため一度家に帰った。

 和哉も制服に着替え、いつものようにめぐみの家へ迎えに行く。


 恭子は勘違いしたまま既にめぐみの両親に伝えてしまったそうだ。

 緊張してインターホンを押そうとした手が震える。


 何もやましいことはしていない。大丈夫だ。


 自分に言い聞かせ、再度インターホンに手を掛けると、見計らったようにめぐみの母親が出てきた。

 見た目、品のいいおばあちゃんといった感じだ。


 めぐみは遅くにできた子なので親子で並ぶと、知らなければおばあちゃんと孫に見える。

 めぐみが生まれる前は隣に住んでいた恭子を娘のようにかわいがっていた。そのためいまでも上杉家と長尾家は仲が良い。


「あら、カズ君。おはよう」


「おはようございます」


 和哉はいつものように挨拶を返すが、恭子が何を吹き込んだか分からないため内心ビクビクだ。


 和哉は挨拶もそこそこに言葉を続ける。


「母さんが何か変な事言ったかもしれませんが、勘違いだから気にしないでください。本当に何もなかったですから」


「はい、分かっていますよ。わたしはカズ君を信じていますから」


 ああ、うちの母親とはえらい違いだ。さすが年の功。

 朗らかにおばさんは言葉を続ける。


「これからもめぐみのことよろしくね。それから、わたしのことはもうお義母さんと呼んで良いから」


 全然信じていなかった。

 そして、さらにはめぐみの父親も和哉の到来を待ち構えていたらしい。


「あ~、なんだ…その~。まだ早いのではないか。そういうのは結婚してから徐々にだなぁ」


 おじさんは諭すように口を開くが、おばさんがそれをさえぎる。


「あら、お父さんは古いですね。今の子は好き合っていたら結婚前でもそういうのをしちゃうものなのですよ。ねえ、カズ君」


 そこで、ボクに同意を求めないでください。頼みますから。


「それとも、お父さんはめぐみとカズ君の結婚に反対なのですか? 好きな者同士が結ばれる。素敵なことじゃないですか。それとも別の人が良いのですか?」


 何で、結婚まで話が飛ぶのですか…


「いや、どこの馬とも分からん奴にやるくらいなら、和哉のほうが安心だが、もっと順序をふんでだな……」


 もしかして、十六歳にして人生決まっちゃっていますか? いや、めぐみとの結婚が決して嫌な訳じゃないんだけど……、なんと言うか、もうちょっと冒険してみたいお年頃だったりするんですけれど。この両親を前に言えるはずが無い。


「お父さん、お母さん。玄関でどうしたですか」


 制服へ着替え、準備を済ませためぐみが不思議そうに三人を見比べる。


「めぐみはカズ君のこと好きかい?」


 おばさんがめぐみの顔を見て訊く。


「はい。めぐみはカズ君のこと大好きですよ」


 いや、おばさんの言っている好きと、めぐみの言っている好きは意味が違うと思うぞ。


 おばさんは勝ち誇ったような、おじさんは苦虫を噛み潰したような、対照的な表情を見せる。


 めぐみは訳が分からずに「どうしたですか、カズ君」 と朗らかな笑顔を見せる。


 とりあえず、「二度と娘に会うな」とか言われるよりはマシなのだろうな。


「なんでもないよ。早く行かないと学校に遅れるぞ」


 ──誤解は解けそうにない。



次の話は予約掲載設定を試してみます。

次は今日の15時更新予定です。

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