第5話 殿と観察 3/24加筆修正
殿ルート②
※遠野視点
(危険思考につき、ご注意ください)
[一日目]
今日、僕は女神に出会った。艶やかな黒髪の美しい人。
同じクラスの折原しおりさん。
出席番号五番、誕生日は二月十日。家は山上町で徒歩通学。家族構成は父親と本人の二人。部活は入っていない。得意教科は英語と体育で、苦手なのは数学と家庭科。将来の夢は……英語を活かせる職に就くこと。か、今日一日ではこのくらいが限界か、あとは地道にデータを更新していこう。
[三日目]
今日も僕の女神は美しい。……たとえ1限目から、既に居眠りをしているのだとしても。楽しい夢を見ているのか、たまに口元が笑みを作る。すごく可愛い。体育での活躍は素晴らしかった。ノールックでの味方へのパス、同じチームの子の顔面に見事に命中したね。とても輝いていたよ。あのゴールになって君からのシュートを受けとめたいと何度思ったことか。使っていたボールは後で回収しようかな。昼ご飯はお弁当だね、バランスのいい中身が気になる。……彼女は家庭科が苦手なのに、誰が作ってるんだろう?
[五日目]
……彼女の弁当が誰が作ったか判明した。隣のクラスにいる、彼女の幼なじみの荒木。奴の弁当はいつも彼女と同じ。……憎い、なんだアイツ。彼女の傍にいるのは僕だけでいい。……ああ、授業中は彼女がじっくり見られるからいいな。世界が僕と彼女だけになればいいのに。そうしたら、誰にも邪魔をされず彼女と過ごせるのに……。
[一週間目]
アイツ、なんなんだよ……邪魔だ。彼女の登下校を見守るのが日課になったが、気付いたことがある。……幼なじみというクソ虫が、彼女と一緒に登下校をしている。なぜ、君はそんな奴に微笑むんだ?君を一番好きなのはこの僕だ。この世で君を幸せにできるのは僕だけ、そこにいる虫じゃない、この僕だ。……僕がこんなに君を愛しているのに、君は全然わかってくれない。……なんて、君はひどい人なんだ!!そうか、これは僕の気を引くための演技なんだね。判ってる、君は本当は僕のことに気が付いていて、僕の嫉妬をあおるためにその虫の傍にいるんだろう?ああ…僕を苦しめるなんて悪い人だ。そんな君でも、僕は愛してる。
[十日目]
……彼女にまとわり付く汚らわしいウジ虫ども!……触るな、近付くな、見るな!!死んでしまえ!!……彼女の傍にいるのは僕だけでいい。世界には僕と彼女だけがいればいい!!消えてしまえ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ…………………………みんな死んでしまえ
[二週間目]
……今日は君が死んだときのことを考えてみた。君のいない世界……なんてつまらないんだろう。君が死ぬときは僕も一緒に死のう。そして、生まれ変わっても二人で愛し合おう。健やかなるときも病めるときも、永遠に一緒だ。たとえ僕が先に死ぬことがあったとしても、君を一人にしない。……ずっと一緒だ。君を離さない。……………………………………………………………………………傍にいたい、傍にいて欲しい。触れたい、触れてほしい。愛してる、……どうして君は違う男の傍にいる!?
………止められないこの狂気が僕を蝕んで君を壊す前に、僕に気付いてほしい。
※ストーカーは犯罪です。ダメ、絶対。