夏の試練
昨今災害関連の話題が多いですね。
もし、大切な人を失ってしまったら。という自分の持論を交えて書きました。
小説を書くのはまだ初心者なので暖かい目で見てほしいです。
また、地震や津波の描写を含むので、苦手な方はお控えください。
僕は校舎の窓に反射する強い日差しを見つめ、独り言のように呟いた。
「まるで、あの日みたいだな」
あんな恐ろしい出来事が待ち受けているなどと、当時は誰も予想していなかった。
「一年……かぁ……」
あの日も今日のようによく晴れ渡り、ジリジリと照りつける太陽、耳障りなほどのセミ時雨、アスファルトを走る車の騒音と排気ガスの匂いが満ちていた。
あれから丸一年が経った今、世界で変わったことと言えば、季節が進んでセミの声が消えたことくらいだ。
……いや、違う。僕にとって最も大切で、ずっと背中を追い続けていた君がいない。ただそれだけが、あの頃からの決定的な違いだった。
さあ、あの日の話をしよう。
あれも、ちょうど今のような時間だったか……。
突然、足元から地響きが突き上げ、ポケットの携帯電話からけたたましい警報音が鳴り響いた。人生の終焉を覚悟した恐怖は、今でも忘れられない。それでも、周囲に高い建物がなかったという奇跡に救われ、僕たちはどうにか生き延びることができるはずだった。
「大丈夫?」
それが最後の言葉になるなんて、僕も、そして君も想像していなかっただろう。
そして、一緒に安全な場所へ逃げた……はずだった。
気付いた時には、もう遅かった。
「あれ? 凪沙? なんでいないんだ……」
その時に聞こえたのだ。すぐ近くでする、荒々しい水の音が。普段なら、こんな場所まで聞こえるはずのない音だった。
「まさか……」
その時の僕の頭は、まるで色を剥ぎ取られたように真っ白だった。振り返りたくはなかった。見たくなんてなかった。
そう、濁流となった津波が、すぐそこまで襲ってきていたのだ。
僕は間一髪で高台への階段を駆け上がったから助かったものの、背中を追っていた彼女は――凪沙は、助からなかった。
助かった命の温もりが、今はひどく冷たく感じる。
遠くで、キィキィと蝉の残響のような金属音が響いた。あの日の喧騒の代わりに、今は冷たい風が耳をかすめる。
「ねえ、凪沙。僕だけが生き残ってしまった世界で、君のいない明日を、僕はどうやって生きていけばいいんだろう」
答えのない問いを空に投げかけながら、僕はまた、誰もいない校庭に目を落とした。
それから一年が経った、それでも僕は思うんだ。
「君のいない世界は生きている意味はあるんかな」
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
いつもの変わらない日常が、ある日突然、音を立てて崩れてしまうこと。そして、大切な人を失ったあとも、時間だけが残酷に過ぎていってしまうこと。そんな切なさと、どうしようもない喪失感をこの物語に込めてみました。
隣にいることが当たり前だった「君」がいなくなった世界で、主人公の彼はこれからどんなふうに歩んでいくのでしょうか。答えの出ない痛みを抱えた彼らの姿に、少しでも心を重ねていただけていたら嬉しいです。
また気が向いたときに、ふと別の物語も書いていけたらなと思っています。その時は、またお付き合いいただけると嬉しいです。それでは、また。




