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翠閻≠弔い  作者: つむろ.〈CANA.〉
一章.

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4/5

Ⅳ.

「逆鱗」



先程と同じく、異能力使用時により、黒く染まった右手を握り込む仕草で今度は炎を出現させたのは、緋華だった。

俺の霊絽に配慮してくれているのか、実験の道具を壊したくないのか……その変わらない仏頂面から表情を読み取る事は、俺にはまだ出来ない。

俺も俺で、第六形態(シックスタイプ)を出現させようと左手を前に出すと、ウィーンと、訓練場の自動扉が開かれた。




「あ!嵐いた〜!へぇ、霞隊長には聞いたけど、こんな所で特訓か〜!頑張ってるね、嵐」


「ツルミヨ……!?」


「ツル……ミヨ……って誰だ……?」




髪先が紫かかった白髪、肩上まで伸ばされた髪を後でハーフアップに結び、軽快な口調に、白黒ジェケット、紫シューズ、黒ハーフパンツを着用し、ヘッドフォンを装着している。小柄なので、身長は百五十cmもないだろう。

それが、物怪・ツルミヨだ。

急に入って来たかと思えば、ははっ、と笑ってこちらへ来る。

緋華も、竪海も警戒態勢に入っている様だ。




「おい、九条……こいつの説明をしろ」


「まぁ、物怪だ」


「い、いや、だから何の物怪で……どうしてここに……?」


「僕はツルミヨ、本名は素戔嗚(すさのお)。まぁ、伝説の神様だからって別に特段強いわけじゃないよ。

僕、元々守護系だしね。それに、僕なんかよりも真希の方が……」


「?真希?誰だ?」


「ううん、何でもない!ねぇねぇ、それより君達さぁ、最近流行りのバンド、RI:END(リ・エンド)の公式サイトに公開された新曲・〝ネバーランド〟聞いた?

今回のもすごく良かったよね!何ていうか、情があって、歌詞に深い意味が隠されてそうな感じ!

考察しがいがあるよ〜」


「お、おぉ……」




何処かオタク気質で、何処か闇を纏ったツルミヨに圧倒されながらも、緋華はチラチラとこちらを見てきているし、竪海は押されている。

唯一、藍菜だけがツルミヨと普通に話している様だ。

自己紹介をしつつ、和やかに雑談している四人。

確かに、俺も最初ツルミヨと出会った時は竪海の様な感じだった。



ぐいぐいと押されに押されて結局、あいつに―――。



そこまで思い出して俺は、ハッと現実へ目を向けた。

そうだ。

俺が今、目を向けなければいけないのはこの現実(いま)だ。

過去じゃない。

そんな事、とっくに理解していたはずなのに……。




「……。ねぇねぇ、皆!僕も特訓混ぜてくれない?最近鍛えてなかったから少し力出しにくくて……」


「もちろん……!ねぇ、緋華ちゃん?」


「うん、別にいいよ。ね、兄さん」


「そうだな。俺達研究所から来たから、そんなに強くないけど……」


「兄さん……か」


「?ツルくん、どうしたの?」




ぼそっと呟いたツルミヨの言葉に反応したのは、藍菜だった。

ツルくんと言う呼び名にツルミヨと俺がガバっと顔を上げ、ツルミヨが小さく真希に似てる、とまた呟いた。

今度は、俺以外には聞こえていない。

悲しそうな、でも愛おしそうな顔をして、すぐにいつもの明るい仮面を被る。

そんなツルミヨの瞳には、何故か紺色の長髪をサイドテールにして結んだ、少女の笑顔が映っている様な気がしたのは、俺の気のせいだろうか。




「ううん、何でもない!それじゃあ、宜しくね!」

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