Ⅲ.
「逆鉤」
「異能力、第四形態、怪壁……!」
「……なるほどね、第一形態から第四形態までは主に守護……九条の系統を使った怪壁なんだ」
物怪を宿した異能力者に付き纏う呪いは幾つか存在する。
その呪いの一つが、怪絽。
俺の場合だと、一つは冷たい物に触れられない。
水も無理だし、口にしただけでも喉が焼ける。
そんな俺の怪絽の事を知っているであろう緋華が、訓練と称し、俺に向かって軽々と大量の水を放ってくる。
手を握る一つの動作で水という液体をも出現させる緋華の異能力。
何とか怪壁で防いでいるものの、これ以上強度や硬度まで上げられ、量を増やされては、切りが無い。
そんな俺達二人を止めたのは、手を叩く音だった。
振り返ると、竪海がこちらを見ている。
「異能力者は普通、宿した物怪の冷気を異能力に変えて発現しているが……九条からは冷気を感じないな」
「……俺は、冷たい物に触れないんだよ。焼け死んじまう」
「ふむ、怪絽か。ならば尚更、何を燃料に変えているのかが気になるが……」
「兄さん、そんな事より早く続き始めるよ。次は……第五形態だっけ?
怪壁じゃないんでしょ?出してみてよ」
「……いや、第五形態はまだ扱いづらい。第六形態からでいいだろう」
「……まぁ、どちらでも良いけれど。さぁ、発現させてみて―――」




