Ⅱ.
俺を睨みつける茶髪の少年の前で、一人の少女がそう言った。
「戦いましょう、私たちの存在意義を懸けて」
突然の言葉に困惑しない者などいない。
俺も一瞬目を見開いて驚いたが、数秒も経たぬ内にいつもの冷徹な表情に戻す。
「存在意義……か。生憎、俺は存在意義を捨ててきたんだ。
戦いたいなら他を当たってくれ。俺は霞隊長の命に従うまで。
お前らとなり合うつもりもない」
俺の否定的な言葉に、少女はわずかに表情を曇らせた。
すると、彼女の後ろにいた茶髪の少年が声をかける。
「緋華、やはり霞様の頼みでもこの任務は遂行不可能だ。
帰った方がいい」
少年の諭すような言葉を遮り、少女は鋭く言い放った。
「兄さんは黙ってて」
「……兄さん、ね。お前ら、兄妹か?」
これまでも誰にも興味を示さなかった俺が、久しぶりに興味を示した。
兄妹。
かつては俺も、そうだった。
「?はい。私が鞘 緋華。
で、こっちが私の兄の鞘 竪海。そしてこの子が……」
「緋華ちゃんの同僚の神田 藍菜です」
緋華の前に立っていた背が低く、髪が長い白髪の気弱そうな女の子が、俺に向かってペコリと頭を下げる。
そんな彼女のお辞儀を無視し、素知らぬ振りをする俺に、緋華は〝はぁ……〟と溜息を吐いた。
「戦う事が嫌なのでしたら、私たちに協力して下さい」
「協力?」
緋華は俺の言葉に続けた。
緋華達はこれまで部隊の裏で異能力者の系統や異能力の研究をして来た様で、今回ここに来たのは俺の異能に秘められた可能性を分析、解放する為。
俺と彼女らが協力し合えば、彼の異能が進化するかもしれない。
彼女はそう言った。
やけにはっきりと言い切ったのだ。
そして最終的に俺が出した答えは……。
「……最初も言った様に、お前らと馴れ合うつもりはない。
利用し、利用し合うだけの関係でもいいなら、協力してやる」
「―――では、これからよろしくお願いします」




