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 荒れ果てた機械街の路地で鉄屑(てつくず)を拾い集める少年少女5人は作業に夢中になるあまり、いつの間にか人相(にんそう)の悪い10人の男たちに囲まれていた。


「逃げろ!」


 リーダーのハヤトの叫びと共に5人は四方(しほう)に散ったが、さすがに倍の人数を突破するのは叶わなかった。


 ノーマルどころかロースペック機身の少年少女たちは、闇サイバー医師の改造したボディを持つ男たちに、四肢のいずれかを掴み上げられる。


「放せ!」


 ハヤトが自由になる脚で男の1人の胸を蹴ったが、相手は鼻で笑っただけだ。


屑鉄(くずてつ)どもが、屑鉄を集めてやがる」


 ハヤトを捕まえた男が(あざけ)れば、他の男たちもドッと笑った。


 ハヤトの仲間たちは皆、怯えている。


 彼らに戦う(すべ)はない。


「そんなお前たちでも、まとめて売れば少々の金になる。オレたちの縄張りから、目障(めざわ)りなゴミも消えるしな」


 ハヤトを掴む丸鼻の男が、少年少女たちのこれからの運命を告げた。


 非力な彼らにも、ネットのバックアップは存在する。


 しかし、データの海に逃げたとて、再び戻る機身は無く、デジタルゴーストになるのが(せき)(やま)だ。


 すなわち、ここで人生を終えるか、売り飛ばされた先で奴隷として生きるかの2択。


 ハヤトは悔しさに歯噛(はが)みした。


「行くぞ」


 丸鼻の男が仲間を(うなが)し、歩きだす。


「おい」


 男たちの上方(じょうほう)から、女の声がした。


 ならず者たちが一斉(いっせい)に、そちらを見上げる。


 鉄屑山の頂きに、1人の女が座っていた。


 銀のボブヘア、切れ長の眼の娘だ。


 機身は20代前半。


 黄色に黒縞(くろしま)の道着を着ている。


「何だ、お前」


 丸鼻が、すごんだ。


「オレたちがゲドウ団と知らないのか?」


「ゲドウ団?」


 娘が首を傾げた。


「知らないね。あたしは、この街に来たばかりさ」


 彼女は、鉄屑の斜面を(すべ)り下りてくる。


「なるほど。バカに教えてやるよ。この街でオレたちに逆らうと、どうなるかをな!」


 丸鼻が子供たちを捕らえていない5人に、(あご)で指図した。


 5人が娘を囲む。


 丸鼻が彼女の機身をジロジロと見つめた。


「どノーマルの身体か。お前も売り飛ばしてやる。痛めつけてやれ!」


 1番、娘に近い男が、両手で掴みかかった。


 娘の高速右ストレートが、男の顎を砕く。


 バランスを崩した相手の胸を娘が蹴り、もう1人とぶつけた。


 残った3人が唖然(あぜん)とする(すき)に、娘はスルスルと接近する。


 諸手(もろて)打ちした両拳が2人の顔面を砕き、最後の1人に右ハイキックを決めた。


 頭部を破壊された4人はおろか、仲間にぶつかり、下敷きになった男もジタバタと立ち上がれない。


「な!?」


 丸鼻が驚愕する。


「女! 何者だ!?」


「あたしはガオコ」


 娘が名乗った。


「まさか、ノーマルボディで…お前も改造しているな!?」


「ああ。そうだね。設定は少し変えてる」


 ガオコが頷く。


「ガキどもは、もういい! この女をやれ!」


 ハヤトを放した丸鼻の指示に、4人の男は少年少女を自由にした。


 彼らは鉄屑の陰に逃げる。


 同時にかかってきた4人の拳をガオコはまるで魔法の如く避け、短打(たんだ)と肩をぶつけて転倒させた。


 そして、残った丸鼻の顔面に高速の左パンチを放つ。


 それを鼻先で止めた。


「ヒッ!」


 丸鼻が、腰を抜かす。


「まだやる? データの海に帰りたいなら、相手になるよ」


 丸鼻は悲鳴をあげ、四つん這いで逃げ去った。


 それに、フラフラの男9人が続く。


「フッ」と笑ったガオコに、ハヤトたちが駆け寄った。


「姉ちゃん、強いね!」


「そうか?」


 ガオコが右眉を上げた。


「まだ修行の途中さ」


「なのに、あんなに強いの!? すげー!」


 少年少女たちの憧れの眼差しが、ガオコに注がれる。


「ノーマルボディなのに!」


「んー。さっきの奴らは何?」


 ガオコが訊いた。


「ゲドウ団だよ。この辺じゃ、やりたい放題。誰も止められない。きっと、仕返しに来るよ」


 ハヤトが表情を曇らせる。


「姉ちゃん、もう逃げた(ほう)がいいよ」


「いいや」


 ガオコが首を横に振った。


「こっちから、あいつらに会いに行こう」


「え!?」


 ハヤトたちが青ざめる。


「やめなよ! ゲドウの手下は大勢だし、1人、すごく強い奴が居るんだ!」


「強い奴?」


 ガオコの瞳が、ギラッと光った。


「用心棒だよ。さっきの奴らより良い機身で、ずっとずっと強いんだ」


「それなら、なおさら行かないとね。奴らのアジトの場所を教えて」


 ガオコは、ニヤリと笑った。





































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