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ラウンド1・後半:生命は変化するのか?~進化思想の萌芽と自然の観察~

あすか:「ラマルクさんの『用不用説』、ダーウィンさんの観察に基づく疑問、ペイリーさんの『種の不変性』、そしてスペンサーさんの『適者生存』…。生命は変化するのか、しないのか。もし変化するとすれば、その力は何なのか。最初の問いは、ますます深まっていきますね。さあ、この熱い議論、さらに言葉を重ねていただきましょう。ラマルクさん、ペイリーさんの『種の不変性』というご主張、そしてダーウィンさんの『偶然』に重きを置くかのようなご意見、これらに対してさらに反論がおありのようですが」


ラマルク:(憤然とした面持ちで、まずペイリーに向き直り)「ペイリー殿!あなたが神の偉大さを語られるのは結構。しかし、その偉大なる神が、かくも変化に富んだ生命を、ただの操り人形のように『不変』の存在としてお創りになったと、本気でお考えか!それはあまりに生命を、そして創造主の創造性を過小評価していると言わざるを得ませんな!生きとし生けるものは、絶えずより高みを目指す『生命の火花』を内に宿しているのです!それが環境と相互に作用し、努力を重ねることで、より複雑で、より完璧な形態へと『進歩』していく!これこそが自然の理であり、神の真意ではないのですか!」

(次にダーウィンに視線を移し、やや皮肉を込めた口調で)

ラマルク:「そしてダーウィン君、君の言う『たまたま』という言葉には、どうにも納得がいかんな。確かに、自然界には偶然の要素もあろう。しかし、生物の進化という壮大なドラマが、そんな行き当たりばったりのサイコロ遊びで決まるものだろうか?君が観察したフィンチの嘴の違いも、それぞれの島で、それぞれのフィンチが特定の餌を効率よく食べるために嘴を『使い分け』、その努力が世代を超えて受け継がれた結果と考える方が、よほど合理的ではないかね?そこには生物の主体的な意志と、環境への能動的な適応があるのだよ!」


ダーウィン:(ラマルクの熱弁を静かに聞き、落ち着いた声で応じる)「ラマルク先生の仰る『生命の火花』や『進歩への衝動』というお考えは、詩的で魅力的ではございます。しかし、科学的な探求においては、そのような内的な力を実証的に捉えることは極めて難しい。私が『たまたま』という言葉を使いましたのは、個々の変異が生じること自体に、特定の目的や方向性があらかじめ定められているとは考えにくい、という意味合いです。変異は無作為に生じ、その中で、特定の環境において生存と繁殖に有利であったものが結果として選択されていく…このプロセスを説明しようとしたのです」

(ダーウィン、続けてペイリーにも語りかける)

ダーウィン:「ペイリー先生が仰る『種の型』というものも、完全に固定されたものではなく、ある程度の可塑性を持っているのではないでしょうか。地理的に隔離された環境下では、元は同じ『型』であった生物群が、長い時間を経てそれぞれ異なる方向に変化し、やがては交配すらできなくなるほどに分化していく…そのような事例は、枚挙にいとまがありません。これは、神が定められた『設計図』そのものが、環境に応じて変化しうる可能性を示唆しているとは考えられませんでしょうか?」


ペイリー:(ダーウィンの言葉に、厳粛な表情を崩さず)「ダーウィン殿、あなたの言う『地理的隔離による分化』も、それはあくまで創造主が許容された範囲内での適応放散と解釈すべきでしょう。根本的な『型』、例えば鳥が魚に、あるいは爬虫類が哺乳類に変わるなどという、種の境界を越えるような変化は、自然の秩序に反します。神の設計図は、一つ一つが完璧であり、その多様性もまた神の計画の一部なのです。人間の限られた知性で、その深遠なる計画の全てを理解しようとすること自体が、傲慢と言えるのかもしれませんな」

(ペイリー、スペンサーの方を向き、やや非難の色を込めて)

ペイリー:「そしてスペンサー殿、あなたが先ほど『信仰の是非を問うているわけではない』と仰いましたが、生命の起源や変化を語る上で、創造主の存在を抜きにして議論すること自体が、既に一つの偏った立場に立っていることにお気づきではございませんか?あなたの言う『進化』の法則なるものが、もし神の存在を必要としないのであれば、それは生命からその尊厳と目的を奪い去り、道徳の基盤をも揺るがしかねない危険な思想だと、私は警告いたします」


スペンサー:(ペイリーの言葉を鼻で笑うように)「ペイリー先生、それは失敬な。私は事実と論理に基づいて普遍的な法則を追求しているに過ぎませんよ。神の存在を否定も肯定もせず、ただ観察可能な現象から導き出される結論を述べているだけです。むしろ、全てを『神の計画』というブラックボックスに押し込めてしまう方が、知的な探求を放棄しているとは言えませんか?」

(スペンサー、得意の弁舌で続ける)

スペンサー:「ラマルク先生の言う『進歩への衝動』、ダーウィン君の言う『有利な変異の蓄積』、そしてペイリー先生が固執される『創造』という概念でさえも、見方を変えれば、より大きな『進化』のプロセスの一段階として捉えることができるのです。かつて、人々は自然現象を神々の気まぐれとして説明しました。しかし科学の進歩と共に、それらは自然法則によって説明されるようになった。これもまた、人間の認識における『進化』です。同様に、生命の起源や多様性も、かつては神話的な説明がなされていましたが、ラマルク先生やダーウィン君のような方々の努力により、より合理的で検証可能な説明が求められるようになった。これもまた『進化』です!」

(スペンサー、自信に満ちた表情で一同を見渡し)

スペンサー:「そして、その先に待つのは、宇宙の森羅万象を貫く、ただ一つの根本原理としての『進化』の理解です!生物も、社会も、道徳も、宗教観でさえも、全てはこの法則に従って、単純なものから複雑なものへ、未分化なものから分化したものへと、絶えず『進歩』していくのです!適応できないものは淘汰され、より高度なものが生き残る。これこそが宇宙の鉄則であり、私の総合哲学体系が示す未来なのです!」


ラマルク:(スペンサーの壮大な話に、目を丸くしつつも)「ほう、スペンサー君、君の言う『進化』とは、ずいぶんと風呂敷を広げたものだな!私の言う『進歩』とは、あくまで生物がより完璧な形態へと向かうことを指していたのだが…。しかし、君の言うように、社会や思想までもが進化するというのなら、それはそれで興味深い。ただし、その『適者生存』というのが、弱者を切り捨てる冷酷な論理に繋がらぬよう、注意が必要だろうな」


ダーウィン:(スペンサーの言葉に、静かに首を振り)「スペンサーさんの言う『進歩』という概念には、私は少々懐疑的です。自然選択は、必ずしも『より高度なもの』や『より複雑なもの』を生み出すとは限りません。特定の環境において、より単純な形態が有利であれば、そちらに変化することもあり得ます。進化に、あらかじめ定められた方向性や目的があるとは、私には考えられないのです。あくまで、その時々の環境との相互作用の結果に過ぎないのではないでしょうか」


ペイリー:(苦々しい表情で)「スペンサー殿の言う『宗教観の進化』とは、つまり信仰の消滅を意味するのですかな?それは断じて容認できません。人間の道徳や社会の安定は、神への畏敬の念なくしては成り立たないのですぞ!」


あすか:(白熱する議論に割って入るように、しかし冷静な声で)「皆様、ありがとうございます!ラウンド1『生命は変化するのか?』という問いから始まり、議論は早くも生命観、世界観、そして社会観にまで及ぶ、壮大なスケールとなってまいりました!」

(あすか、クロノスタブレットに表示されたキーワードを指し示す)

あすか:「ラマルクさんの『生命の火花と努力による進歩』、ダーウィンさんの『偶然の変異と環境による選択』、ペイリーさんの『神による完璧な創造と種の不変性』、そしてスペンサーさんの『宇宙を貫く適者生存と進歩の法則』…。それぞれの信念と論理が激しくぶつかり合い、進化というテーマの持つ多面性と奥深さが、改めて浮き彫りになったように感じます」

(あすか、微笑みながら一同を見渡す)

あすか:「生命は変化するのか、しないのか。そして、その原動力は何なのか。この問いに対する明確な答えは、まだ出ていないのかもしれません。しかし、皆様の真摯な言葉は、私たちに多くの示唆を与えてくれました。この熱気をそのままに、次のラウンドでは、いよいよダーウィンさんの『自然選択説』と、ペイリーさんの『デザイン論』が、真っ向から激突いたします。果たして、生命の精巧な仕組みは、神の設計によるものなのか、それとも…?」

(スタジオの照明が変わり、次のラウンドへの期待感を高める効果音が鳴り響く)

あすか:「『歴史バトルロワイヤルEVOLUTIONWARS』、ラウンド1はここまで!次のラウンドも、どうぞお見逃しなく!」

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