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オープニング

(宇宙の誕生。星雲が渦巻き、新たな星が生まれる。カメラは急速に一つの青い惑星、地球へと降下していく。原始の海、生命の萌芽。アメーバのような単細胞生物から、魚類、両生類、爬虫類、そして哺乳類へと、目まぐるしく変化していく生命のモンタージュ。ティラノサウルスの咆哮、マンモスの行進。やがて、ヒトの祖先が登場し、知恵を身につけ、文明を築き始める。その映像に重なるように、ダーウィン、ラマルク、ペイリー、スペンサーのシルエットが浮かび上がり、最後に黄金の番組ロゴ「歴史バトルロワイヤル」が画面中央に力強く現れる。)


(スポットライトがスタジオ中央の演台に立つあすかを照らす。彼女は白いブラウスに知的な印象のスカート姿。手には薄く発光する「クロノス」タブレットを持っている。にこやかな笑顔でカメラを見つめる)


あすか:「こんばんは!そして、ようこそおいでくださいました。『歴史バトルロワイヤル』へ。わたくし、今宵も時空を超えた物語の声を聞く案内人、あすかが皆様を深遠なる知の戦いへと誘います」


(あすかがクロノスタブレットの画面に軽く触れると、背景の巨大LEDパネルに「EVOLUTION WARS ~進化論頂上決戦~」という文字が美しく浮かび上がる)


あすか:「私たちの存在、この地球に生きとし生けるもの全ての起源。それは、人類が長きにわたり問い続けてきた永遠の謎。今宵のテーマは、その謎に真正面から挑み、時に世界を震撼させ、時に希望の光を灯し、そして今なお、私たちの心に熱い議論の火を灯し続ける壮大な物語…そう、『進化論』です」


(あすか、少し声を潜め、観客に語りかけるように)


あすか:「神はサイコロを振るのか、振らないのか? 生命はただ流転するのか、それとも偉大なる設計図の元にあるのか? そして、私たちはどこから来て、どこへ行こうとしているのか…? 今宵、このスタジオには、それぞれの時代でその答えを求め、知の限りを尽くした巨人たちが、時空を超えて集結いたします。彼らの言葉に、魂に、耳を澄ませてみませんか?」


(スタジオの四隅に設置されたスターゲートの一つが、青白い閃光と共に起動する音。ゴォォォ…という重低音が響く)


あすか:「さあ、最初の挑戦者が、時空の扉を開いてご到着です! 彼の名はチャールズ・ダーウィン! 慎重かつ大胆な観察眼で『種の起源』を解き明かし、私たちの生物観に革命をもたらした、近代進化論の父!」


(スターゲートから、少し猫背気味だが実直そうな風貌のチャールズ・ダーウィンが、旅行鞄のようなものを手に、やや戸惑った表情で現れる。周囲を興味深そうに見回している。)


ダーウィン:(小声で)「こ、ここは…一体…? ビーグル号とはずいぶんと趣が異なるな…」


あすか:(微笑みながら)「ダーウィンさん、ようこそ『歴史バトルロワイヤル』へ。長旅でお疲れのところ恐縮ですが、どうぞ中央の席へ」


ダーウィン:(あすかに一礼し、やや緊張した面持ちで指定された席に着く)「ご紹介にあずかりました、チャールズ・ダーウィンです。この様な不思議な場にお招きいただき、光栄やら困惑やら…」


あすか:「よろしくお願いします、ダーウィンさん!続きましては、ダーウィンさんよりも早く進化の思想を体系化した情熱の博物学者! 生物は環境に適応するために自らを変えるのだと、『用不用説』で生命のダイナミズムに挑んだ先駆者! ジャン=バティスト・ラマルクさんです!」


(スターゲートから、やや時代がかったフロックコートに身を包んだラマルクが、鋭い眼光で、しかしどこか誇らしげに登場。背筋をぴんと伸ばしている。)


ラマルク:(ダーウィンを一瞥し、鼻をフンと鳴らすように)「ふむ、ここが噂の討論の場かね? 先客もいるようだが…私の理論を正当に評価する用意はあるのだろうな?」


あすか:「ラマルクさん、ようこそ! あなた様の先駆的な業績なくして、今宵の議論は始まりません。どうぞ、ダーウィンさんのお隣へ」


ラマルク:(やや尊大な態度で席に着き、ダーウィンに軽く会釈する)「ジャン=バティスト・ラマルクだ。異論は歓迎するが、根拠なき批判は時間の無駄だぞ」


あすか:「早速火花が散り始めていますね!そして、この方をお呼びしないわけにはまいりません! 自然界に見られる精巧なデザイン、その完璧な調和に、創造主の偉大なる御業を見出した敬虔なる知性! 『自然神学』の旗手にして、ダーウィンさんにも影響を与えた論客! ウィリアム・ペイリーさんです!」


(スターゲートから、黒いガウンを身にまとい、『自然神学』を抱えたペイリーが、厳粛な面持ちで登場。その佇まいは威厳に満ちている。)


ペイリー:(周囲を見渡し、特にダーウィンとラマルクの二人をじっと見つめ)「…神の御前にて、真理を探究する場であると聞き及んで参りました。いささか騒々しい登場ではありましたが、議論の機会を与えてくださったことには感謝いたします」


あすか:「ペイリーさん、時を超えてお越しいただき、ありがとうございます。あなた様の深い洞察は、今宵の議論に欠かせない光となるでしょう。どうぞ、こちらのお席へ」


ペイリー:(静かに頷き、席に着く。その目は、この場の真理を見極めようとするかのように鋭い)「ウィリアム・ペイリーです。いかなる異説も、神の創造の摂理を超えることはないと信じております」


あすか:「ありがとうございます、ペイリーさん!さあ、最後にご登場いただくのは、この方! 進化の法則を生物界のみならず、人間社会の隅々にまで適用しようとした野心的な思想家! 『適者生存』という言葉を世界に広め、議論の嵐を巻き起こした男! ハーバート・スペンサーさんです!」


(スターゲートから、仕立ての良いスーツに身を包み、自信に満ちた足取りでスペンサーが登場。その瞳は野心と知性で輝いている。)


スペンサー:(他の三人を睥睨するように見渡し、不敵な笑みを浮かべ)「これはこれは、錚々たる顔ぶれだ! まさに歴史の縮図というわけか。私の総合哲学体系を世に問うには、またとない舞台じゃないか!」


あすか:「スペンサーさん、エネルギッシュなご登場、ありがとうございます! あなた様の壮大なビジョンが、今宵の議論をさらに熱くしてくださることでしょう。ラマルクさんとペイリーさんの間のお席へどうぞ」


スペンサー:(意気揚々と席に着き、腕を組む)「ハーバート・スペンサーだ。諸君、宇宙の根本原理たる『進化』について、存分に語り合おうじゃないか!」


あすか:(全員が席に着き、スタジオに緊張と期待が入り混じった空気が流れるのを見渡し)「皆様、ようこそ『歴史バトルロワイヤル』へ、改めてお越しくださいました。時空を超えたこの邂逅、まさに奇跡でございます」


(あすか、クロノスタブレットに指を滑らせると、各対談者の名前と代表的なキーワードがそれぞれの席の前にホログラムのように浮かび上がる)


あすか:「早速ではございますが、皆様の魂を揺さぶるこのテーマ、『進化論』。この言葉を耳にされた時、皆様の胸には今、どのような思いが去来していらっしゃいますか? その第一声をお聞かせいただきたいのです。まずは、近代進化論の礎を築かれた、ダーウィンさんからお願いできますでしょうか?」


ダーウィン:(少し咳払いをしてから、ゆっくりと、しかし確信に満ちた声で)「『進化論』、あるいは私が提唱いたしました『自然選択説』は…そうですね、長年にわたる自然界の観察と、集めた証拠から論理的に導き出した、生命のありようを理解するための一つの道筋、とでも申しましょうか。決して神を否定しようという意図ではなく、ただ、そこにある事実を謙虚に受け止めた結果なのです。この場で皆様と意見を交わせることは、非常に興味深くあります」


あすか:「ありがとうございます、ダーウィンさん。謙虚にして力強いお言葉です。では次に、そのダーウィンさんよりも早く、生物の変化について体系的な考察をなされたラマルクさんはいかがでしょう?」


ラマルク:(腕を組み、ダーウィンの方をチラリと見てから、やや挑戦的な口調で)「フン、『進化論』とな? あえて言わせてもらえば、ダーウィン君の言う『自然選択』なるものは、いささか受動的に過ぎるのではないかね? 生物というものは、もっと能動的に、自らの意志と努力によって環境に適応し、その獲得した素晴らしい形質を子孫に伝えていくのだ! それこそが真の『進化』であり、私が生涯をかけて明らかにしてきたことだ。この場では、その点をはっきりさせておきたいものだな」


(ラマルクの言葉に、ダーウィンは穏やかながらも何か言いたげな表情を浮かべる)


あすか:「情熱的なお言葉、ありがとうございます、ラマルクさん。すでに議論の熱気が高まってまいりました。さて、そのような生物の変化という考え方自体に、根本的な疑問を呈してこられたペイリーさん。あなたにとって『進化論』とは、どのように響きますか?」


ペイリー:(静かに目を閉じ、ややあってから重々しく口を開く)「『進化論』…その言葉が意味するところが、もし、神の計画なしに、盲目的な偶然の力だけでこの精巧な世界、例えば鳥の翼や人間の眼が生まれたのだと主張するのであれば、それは断じて受け入れられません。自然界を見よ! そこには驚くべき秩序と合目的性、そして創造主の知恵と善意が満ち溢れているではありませんか。私は、この場でその揺るがぬ真理を改めて示す所存です」


(ペイリーの厳かな言葉に、スタジオの空気が引き締まる。スペンサーは面白そうに口の端を上げる)


あすか:「ありがとうございます、ペイリーさん。確固たる信念を感じます。では最後に、進化の法則を社会にまで広げようとされたスペンサーさん。このテーマは、あなたにとってまさにご専門と言えるかもしれませんが、いかがでしょうか?」


スペンサー:(自信満々に、他の三人を見渡しながら)「素晴らしい! 実に素晴らしいテーマ設定だ、あすか君! 『進化論』とは、単に生物学の一分野に留まるものではない! それは宇宙の森羅万象を貫く普遍的な法則なのだ! 生物も、社会も、人間の精神も、全ては単純なものから複雑なものへ、未分化なものから分化したものへと『進化』する! そしてその原動力こそが『適者生存』! この場で、その壮大なる総合哲学の一端を諸君にお見せできることを楽しみにしているよ!」


あすか:(微笑みながら)「皆様、力強い第一声、誠にありがとうございました。穏やかなる探求者、情熱の先駆者、敬虔なる論客、そして野心的な思想家…。それぞれの立場から放たれる言葉は、すでに火花を散らし、今宵の議論が並々ならぬものになることを予感させてくれます」


あすか:「それでは、皆様、準備はよろしいでしょうか? 時空を超えた知の祭典、『歴史バトルロワイヤル EVOLUTION WARS ~進化論頂上決戦~』、いよいよ最初のラウンドへと駒を進めてまいりましょう!」

(スタジオの照明が変化し、最初のラウンドテーマが背景LEDに大きく表示される。期待感を煽るBGMが流れる)

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