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第9話"帰還"

いい感じの展開がなかなか思いつかない。難しいものです。

「...ん...」


あたりが明るくなっているのに気がつく。もう朝みたいだな...


「ふあぁ〜...って、体痛っ!?」


体を起こそうとしたら、急に全身に激痛が走った。なんで──

って思ったけど、そういや昨夜酒飲みすぎて途中で寝落ちしたんだな...だから、基地のフロアの固い床の上で寝てて...今、身体が痛くなってるってわけか。まぁ、久々の酒だったから仕方ねぇよな...

まぁ...あとは、筋肉痛か...


「...信じらんねぇよな、ホント...」


あまりにも突然、異世界なんて場所に飛ばされて、なんか知らんうちに戦争に参加することになって...戦争中も色々あって、終わったら終わったで忙しくて...本当に、昨日1日で、色々ありすぎたな...


「くか〜...」

「ぐお〜...」


フロアに、寝息やいびきやらが響き渡っている。昨夜、祝勝会に参加してたヤツらはほぼ寝落ちしたみたいで、みんなフロアで寝ていた。俺はみんなより一足早く目が覚めたみたいだ。


「...なんもやることねぇな」


みんな寝てるから、起こす訳にはいかないし...スマホも何もないから、全くもってやることがない。暇だ。


「...一旦、外出てみるかな」


どうせ暇だし...外の空気を吸うついでに、散歩でもしてくるか。

西部戦線側の出口から、基地を出る。といっても、アテは何もないし、なんならこの辺の地形もほぼ知らないから、適当に歩くだけだが...

あ、でもそういえばたしか...


「ここから...右手側だっけ?森があんのは...」


前線に向かう前に見つけた、小さな森。たしか、こっちだったと思うんだが...


「お、あれか。やっぱこっちで合ってたな」


少し離れた場所に、小さな森と監視塔を見つけた。俺の探してた場所だ。

にしても...めっちゃ分かりやすいな。ある程度距離があるのに、一目で見つけられた。

まぁ...こんだけ真っ平らな荒地に、1箇所だけあんな緑の生い茂る場所と、そこにそびえ立つ塔がありゃ目につくのも当然といえば当然だが...


「...なんか、一息つくのも久しぶりだな」


今まで、数年間家に引きこもってたのに...昨日一日で、色々と走り回ったり、銃撃ったり、俺が撃たれたり、ビンタしたり、人と話したり...色々しすぎたな、ホント。


「静かだな...ここは...」


風で草木が揺れる音だけが聞こえる空間。昨日の分の疲労も忘れられそうだ。


「ふあぁ〜...眠た...」


せっかく早起きしたけど...どのみちまだやることもないし、体も痛い。そうだな...ちょっとくらい、この辺で寝ても問題ないよな?


生い茂る草の上に寝転ぶ。ちょっとチクチクするが、なんだか自然に包まれてる感じがしてどことなく心地いい。

いつ以来だろうか...?こんなに自然に囲まれて癒しを求めるなんて。小学校か中学校の頃以来か...?

高校入ってからは勉強ばっかりだったし...医者になってからは、まぁ忙しかったし。

引きこもり始めてからは、まぁ...そもそも外にすら出なかったからな。


「こりゃ...寝れるな...」


瞼が重くなってきた。意識もちょっとずつ薄れてきた。

よし、このままここで一眠りしよ──


「...何してるんですか?」

「へっ?」


突然、頭上から男の声が聞こえた。しかも、なんだか聞き覚えのあるような...

そのせいで、せっかく寝そうだったのに、意識がまたハッキリしてしまった。完全に睡眠妨害だ。

体を起こして、声の主を確認する。一体、俺の眠りを邪魔したやつは誰...


「って、透也!?なんでここに...」

「こちらのセリフです。なんで零さんが、こんな場所で寝ているんですか?」


そこには、怪訝そうな顔の透也が立っていた。

お互いに同じ質問を相手に飛ばす。完全に、名刺交換になってしまった。


「俺は目覚めちまったから、散歩しに来たんだ。透也は?」

「僕は昨日酔い潰れた愚か者とは違い、かなり早い時間に起きたので...少し、トレーニングをしていたんですよ」

「トレーニング...?」

「そうです。まぁ、トレーニングといっても、普通の筋トレですがね」


筋トレだと...?あの透也が、か...?


「なんでお前が筋トレなんかしてんだ...?」

「なんで...と言われましても、日課なんですよ。これが」

「日課...?」

「えぇ、そうです。父に課された日課ですよ」


父から日課で筋トレを課されるのか...なんか、変わった家庭だな...

でも...それって、なんか意味あんのかな?


「お前みたいな天才が、筋トレしてどうすんだ?戦争では、そんなに意味ないだろ?」

「はぁ...分かってませんね、零さん。戦争においても、筋肉はかなり大事な要素のひとつですよ?特に、個人の強さに関しては」

「いや、銃撃戦のどこに筋肉の要素があるんだよ?」


まぁ、タンクは確かに筋肉あった方がいいだろうけど...透也みたいな、射手(シューター)に筋肉なんて必要ねぇと思うんだが...


「そりゃいりますよ。重い銃を持ったまま走り回る必要がありますし、怪我をした味方を背負って移動することもありますし。というか、ある程度の筋肉がないと照準(エイム)が定まりませんからね?銃の反動に振り回されてしまうので」

「あぁ...言われてみれば、確かに...」


そういや俺、今猛烈に筋肉痛になってるんだった...それを考えたら、確かに筋肉って大事なんだな...


「それに、僕は天才なんかではありませんし...」

「...え?」


急に、透也の表情が曇る。なんか、言っちゃマズイこと言ったのか...?


「...とにかく。言っておきますが、今後は零さんも一緒に毎日トレーニングするですからね?」

「え?俺も?」

「当たり前でしょう?なんせ、僕は零さんの「先生」で、零さんは僕の「生徒」なんですから」

「...そういや、俺はお前に鍛えてもらわなきゃいけねぇんだったな...」


筋トレか...基本勉強漬けの日々か、病院での無限労働か、引きこもり生活を続けてたせいで、まともに筋トレしたことないんだよな...おかげで、今も筋肉痛だし。


「それって、割とハードだったりするか?」

「ハード...という程ではないです。ま、楽ではないのも事実ですがね」

「どんなことしてるんだ?」

「全身トレーニングを30分ほど。あとは有酸素ですね」

「うーん、聞いても分からんな」


まぁいいや、メニューはまたおいおい聞くとして、だ。


「そういえば、管理局にはいつ帰るんだ?」

「あぁ...報告に行く必要があるので、僕としても早く帰りたい限りなのですが...まぁ、昨夜酔い潰れた方々が起きるまでは帰れませんねぇ...」

「勝手に帰るわけにはいかねぇからな...」


ま、とはいえ無理やり起こすのも気が引けるしな...

昨夜は、戦争が終わって間もないのに、みんなかなり頑張って準備してくれたみたいで...たくさんの料理や酒で、俺と透也を労ってくれた。みんなで色々話しながら飲むなんて、久々だったが...めちゃくちゃ楽しかった。

だから...まぁ、勝手に帰るなんて非人道的なことできやしねぇ。みんなが起きるまでは帰ることはできないってことだ。


「...せっかくですし、今からトレーニングしますか?」

「いや、やめとく。俺は今、絶賛筋肉痛なんでな」

「ま、昨日初めて戦争に出たんですし、そりゃそうですよねぇ...」


うーん、何をして時間を潰すべきか...


「帰りたかったら帰っていいわよ」


頭の上から声が聞こえた。ま、そういうことならありがたく帰らせてもらうかね...


「って、風夏!?」

「おや、おはようございます、風夏さん」

「おはよう、2人とも。早いわね」


声の主は、風夏だった。いつからここに来てたんだ...?


「風夏さんはなぜこんな場所へ?」

「私はこの辺を散歩するのが好きなの。で、散歩してたら暇そうなあなたたちを見つけたってわけ」

「なるほどな」

「2人とも、管理局に帰らなきゃいけないんでしょ?私たちのことは気にしなくていいから、帰っていいわよ」


おっと、俺たちの考えてることは筒抜けってわけか...


「いいのか?まだ全然お礼もできてないのに...」

「いやいや、むしろ私たちが2人にお礼しなきゃいけない立場だから。そんなの気にしないで」

「つってもなぁ...」


あんだけ盛大に労われて、なんも言わずに帰るのは...さすがに良心が痛むというか...


「零さん、ここはお言葉に甘えて帰らせていただきましょう」

「え?でも...」

「いいの。私たち、2人に迷惑かけてまで感謝されたくないから。さ、帰った帰った!」

「はぁ...ま、そういうことなら帰らせてもらうよ。ありがとな、風夏」

「いいのよ。みんなには、私からお礼しとくから」

「へへっ、頼んだぜ」


いやー、風夏は俺の言いたいこと全部先に言ってくれるから助かるな。無駄に話す必要がないってのはいいもんだ。


その後、風夏に見送られ、最初に基地に入ってきた方の出口へ向かった。


「では、また戦場で」

「えぇ。また戦場で」


別れ際に、急に透也と風夏が同じ言葉を交わした。これは...この世界の挨拶的なやつなのか?

なら、俺も言っといた方がいいよな、多分...


「ま、また戦場で!」

「えぇ。また戦場でね。あなたがいると、絶対死なない安心感があるから、また一緒に戦ってほしいわ」

「任せとけ。俺の意思でここに来れるわけじゃねぇけど」


まぁ...できることなら、もう戦争なんて起きないのが1番なんだけどな...


「出してください」


運転席に座っていたおじいさんに、透也が伝えた。


「お願いします、おじいさん」

「かしこまりました」


車が動き出す。少しずつ、西部戦線の基地から離れていく。

車の窓を開けて、基地の前に立ってる風夏に手を振る。


「元気でな!」

「えぇ、そっちも!」


2人で手を振りあい、笑顔で別れを告げた。

風夏とは...きっと、また戦場で会うことになるんだろうな。そん時はまた、一緒に戦えたらいいな...


「...さて、今度こそあなたの初陣はこれにて終了です。お疲れ様でした、零さん」

「あぁ...透也も、おつかれさん」

「...っ!はぁ、僕はあなたに心配されるほどヤワな男じゃありませんけど?」

「え?心配とかじゃなくて普通に言っただけなんだけど...」

「...まぁいいでしょう。まぁ何はともあれ、これであなたは一端の軍人という扱いになります」

「え、今までは違ったのか?」


俺、もう入軍して軍人になったんだと思ってたんだが...


「概ねその認識でも間違ってはいませんが...実際に軍人と定められるのは、初回の戦争を生き抜いてからになります」

「入軍したのに...?」

「ええ。なんせ、入軍当初の実力と、実際の戦場での実力には、かなりの差が出る場合がありますからね」

「...なるほど、精神面の問題で、か」


一般的に、人間の能力は、精神状態が万全な時にしか発揮されない。入軍したタイミングで評価された能力が、実際に戦場に出た時に怯えきって発揮できない、なんて場合もあるからだろうな。


「ま、他にもパターンはありますがね。基本はその通りです。その点、あなたは入軍当初よりも高い評価を与えられてもおかしくない活躍でした」

「おぉ、マジ!?ってことは、早速昇格できたりする感じか?」

「それはないでしょう。三等兵という等級は、概ね正しかった。ただ、三等兵の中でもギリギリ三等兵になれた雑魚から、三等兵の中でも相当上位の兵である、って程度の評価に変わるだけです」

「入軍当初の評価酷すぎねぇか?」


ま、さすがにそんな簡単に昇格なんてできねぇか...

そういえば...


「なぁ、透也。この等級って、高いとなんかいいことあったりするのか?」

「ありますよ。主に給与の件で」

「マジ!?どのくらいなんだ?」

「ひとつ等級が上がるごとに10万くらい増えますかね?あとは、戦争での実際の活躍を評価してボーナスがつきますよ」

「10か...でかいな」


この世界の物価がどんなもんかは分からねぇが、こっちの世界と変わらないなら、10は結構でかいぞ...


「三等兵は大体月50万ってところですね。ボーナス換算なしで、ですが」

「なるほど。つまりいっぱい頑張ってボーナスもつけりゃ、月100もいける...と?」

「100万は...まぁ、かなりの活躍をすれば行けるかもしれませんけど...」

「っしゃ、やる気出てきたぜ!!」


これでいっぱい稼いで、いっぱい美味いもん食える...!

前世では、大学入ってからずっとだから...20年近くカップ麺生活だった。たまに姉貴の手料理も食べさせてもらえたけど...

まぁだから、美味い飯を食べたいお年頃ってわけだ。


「透也は、一等兵になるまで何年くらいかかったんだ?」

「4年です。入軍当初は六等兵でしたが、初陣で二等兵まで上げて、2年前に一等兵になりました」

「...色々聞きたいことがあるんだけど?」


なんで初陣で6から2まで上がったんだ?とか...ほんでもって、2から1に上げるのに4年もかかるのか?とか...

まぁでも、簡単じゃないのは分かったな。なんせ、透也でこんだけかかるんだから...


「ま、地道に精進しなさい。現時点では、まだ大した戦力にはなりませんからね」

「はい...」

「...おや、話していたらいつの間にかこんな所まで来ていたんですか」


そう言われて外を見ると、いつの間にか都市部まで来ていた。少し離れた場所には、雲を貫く巨大な塔──管理局がそびえ立っていた。

相変わらず高ぇな...どうやって建てたんだろうか?


「到着致しました」


管理局の前で車を止め、おじいさんが言った。


「ありがとうございました、おじいさん」

「感謝は不要ですよ、坊ちゃんのご友人」

「友達じゃありませんよ、コイツは」


坊ちゃん...やっぱり透也って家柄がいいみたいだな。所作とか服装とか綺麗だったからそうだと思ったけど...

で、このおじいさんは運転手ってとこか?


「ま、そう言わずに受け取っておいてくださいよ、俺の感謝の気持ちくらい」

「ふむ...そこまで仰るのであれば。どういたしまして」


うん、やっぱり感謝は受け取ってもらえてなんぼだな。


「それじゃ、俺たちはこれで!」

「ええ、いってらっしゃいませ、お二人とも」

「またよろしくお願いしますね、じい」

「おまかせを、坊ちゃん」


俺たちは車から降りておじいさんに別れを告げ、管理局の中へと入っていった。


「では僕は輝明様のもとへ報告へ行きます。零さん、あなたは適当な場所で待っておいてください」


ロビーに入ると、透也にそう告げられた。


「俺は行かなくていいのか?」

「はい、報告は僕だけでできますので。あなたは傍に置いてるとヒヤヒヤさせられることになるので」

「失礼な...」


まぁ、俺も堅苦しい場はそんな好きじゃないからな...WinWinってやつか。


「じゃ、任せるわ。俺はその辺座っとくぜ」

「是非そうしてください。では、行ってきます」


そう言って、透也はエレベーターの方へと向かった。

さて...


「何して待つかな...」


またも暇な時間の到来。そろそろ飽きてきたぞ...

報告もそんな早く終わるとは思えねぇし...結構かかりそうなんだよな〜...

うーん、なにするかなぁ...


「はぁ...せめてタバコの1本でもありゃなぁ...」


無意識のうちに、俺の口からこぼれたその言葉に...反応する声があった。


「タバコがほしいのか?」

「うおっ!?」


急に、後ろから声をかけられる。

振り向いて相手の姿を確認する。声の主は、かなり整った顔立ちの、中年の男だった。ヒゲを綺麗に剃り、髪型も整えてある。メガネをかけていて、その目つきはとても鋭い。綺麗な紺の軍服を身につけ、背中に一丁のサブマシンガンと思しき銃を背負っていた。

その手にはタバコを持ち、こちらに差し出している。

だが...誰だ?知らない人なんだが...


「えっと...どなたですか?」

「私が誰かなど些事。君は今、タバコを欲していたのだろう?」

「些事じゃありませんけど?知らん人からタバコ勧められるの怖いんですけど!?」

「そんなことはない。受け取れ」

「いや、怖ぇよ!?」


ぐいぐいと、タバコを持った手をこちらに押し付けてくる。何が狙いなんだよ...!?


「ふむ...なぜそこまで頑なに断る?タバコが吸いたいのではなかったのか?」

「そうだとしても、知らんやつに急に渡されたタバコなんか吸えるわけねぇだろ!!」

「ふむ、変わった男だ」

「お前だわ!?」


クソ、マジで話通じねぇな...!!いっそ逃げた方がいいか...?


「何をしているのですか、達也?」

「...あれ?この声は...」


俺とこの男とで組み合っていると、その後ろからまた声が聞こえた。

今度は、若そうな女の人の声。それも、どこかで聞き覚えのあるような...


「...あ!!」

「...あら、あなたは...」


その姿を確認する。その者の正体は...


「よう、昨日ぶりだな!」

「...楠木零さん。昨日ぶりですね」


昨日ここまで案内してくれた女の子...葵だった。いやぁ、まさかこんな所で会えるとは。


「いいところに来た。助けてくれ、不審者に絡まれてるんだ」

「不審者...ですか...」


そう言って、チラリと男の方を見る。男の方も、葵と目を合わせる。


「本当に...何をやっているんですか?達也」

「...え?」


達也...って言った?え、もしかして知り合いなの?この2人...


「私はただ、同類を見つけたため仲間に引き入れようと試みていただけです。特に怪しいことはしていません」

「怪しすぎたわ!!」

「...はぁ、まぁそんな所だと思いました」


葵は、呆れ顔でこちらに向き直る。


「すみませんでした、楠木零さん。彼は、諸星達也(もろほしたつや)、私の仲間です。彼は重度のタバコ中毒者で...同じタバコ中毒者を見つけると、こうして絡みにいくんです」

「とんでもねぇな」

「えぇ、とんでもないですよ」

「2人してタバコを愚弄するとは...許せませんね」

「違ぇよお前に言ってんだよ!!」


また変なやつが出てきたな...俺もタバコ好きだけど、こいつはなんか...次元が違う。脳まで乗っ取られてやがる...


「...というか、気になっていたのですが」

「なんだ?」

「葵さんと...楠木零、でしたか?2人は知り合いなのですか?」

「まぁな」

「昨日会って少し話しただけですが、一応」

「...へぇ...」


達也は、こちらを鋭い眼光で、突然睨んできた。なんだ?急に...


「楠木零...そうですか、あなたが噂の<堕天使>...」

「...噂の?」

「えぇ、噂になっていますよ?なんでも、多少使える<堕天使>が入軍したんだとか」

「へぇ、そりゃ光栄だな」

「ほう...あなたが、ね...」


達也は、まるで品定めするかのようにこちらを見る。何がしたいんだ、一体...


「はぁ...達也、あなたの悪いクセが出ていますよ」

「あぁ、失礼。少し興味深い存在でしたので、つい」

「はぁ、まったく...」


葵も大変だな、コイツと仲間とか...

ていうか...仲間ってどういうことだ?同じ軍の中にも、チームみたいなのがあるのか...?

この2人の軍服...どっちも、青が基調になってるし。達也は紺で、葵は青と白の明るめの色って違いはあるけど...この2人以外、青い軍服なんて見たことないし。


「なぁ、葵」

「葵!?」


急に、達也が驚いたように声を上げる。どうしたんだ?急に...


「あなた今、葵と呼びました?葵さんのことを...」

「え、呼んだけど...つか、なんでお前さん付けなんだ?年下なのに...」

「...!?...!?!?」


達也は、驚いて声も出ない、みたいな顔をしていた。ちょっと面白いな。


「...達也、彼の異質さについて話しましたよね?」

「...ええ」

「これのことを言っていました。彼は、こういう人みたいです」

「これは...想定外ですね」

「おいおい、なんだよ2人して俺の悪口かよ!?」


失礼な...なんで、葵を呼び捨てしただけでそんな言われなきゃいけないんだよ!?


「俄然興味が湧いた。楠木零、少し私に付き合いませんか?悪いようにはしませんので」

「付き合う...?」


達也からの突然の提案...一体、何をさせる気なんだ?コイツ、なんかちょっとイカれてるから怖いんだけど...


「私と...一服しましょう」

「...は?」

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