第4話"戦争"
1日空きましたが、アイリス・グレー・ブレイブの方書いたのでお許しを...
「はぁ〜、なんとなかったぁ...」
「よく頑張ったわ、私たち...」
演説を終え、俺と風夏はぐったりとその場に座り込む。
「いやぁ、作戦通りに決まってよかった...」
「そうね...透也の作戦は、認めたくはないけど完璧だったわね...」
20分前...
「試運転兼実演販売...?」
「なんの話?急に...」
「では、僕の作戦を話します。まず、風夏さん」
「う、うん...」
「あなたは思いきってスピーチをしなさい。民衆に、心から伝えたいことを伝えれば、きっとそれで活気が戻るでしょうから」
「わ、わかったわ」
「で、問題は零さん、あなたです」
「お、おう...」
一体、どんな無茶ぶりをしてくるのか...
「あなたは、一旦全員の士気を下げなさい」
「.......は?」
「ちょ、何言ってるのよ!?せっかく私が上げた士気下げてどうするの!?」
「話は最後まで聞くものですよ。士気の下げ方は任せます。ま、あなたの場合、最高の肩書きがありますから、そっちは簡単でしょうね」
「...<堕天使>、か」
「その通り。で、その後ですが...ここで、あなたに試運転兼実演販売を行ってもらいます」
一体なにをさせる気なんだ...??
「零さん、あなた、今までスキルはまだ使ったことありませんよね?」
「あぁ、そうだが...あぁ、そういうことか」
「そう、試運転とは...スキルの初使用のことです。さらに、民衆の目の前で英志さんを瞬く間に治療したらどうなるか?それも、見下されきった<堕天使>が、そんな神の奇跡に近しいことを成し遂げたのなら?」
「...大盛り上がり、だな」
「...表現は気に入りませんが、概ねその認識でいいでしょう。人は、ギャップに弱い生き物ですからね」
...という作戦を立て..想定通りに、事は進んだ。
「僕の作戦を褒めるのはいくらでもしていただいて構いませんが、休んでる暇はありませんよ、2人とも。風夏さんは戦線に出なければなりませんし、零さんもさっさと治療しないと間に合いませんよ?」
「あぁ...わかってるよ」
「仕方ないわねぇ...」
そう言い、俺たちは座ったばかりだったが、仕方なくゆっくりと立ち上がった。
その時、さっき治療した英志さんに声をかけられた。
「なぁ、3人とも」
「ん、なんですか?」
「オレも手伝わせてほしいんだ。俺はここの責任者として、ただ指くわえて眺めてるわけにもいかないが...指揮権は、風夏がもらった。だから、風夏から俺に指示を出してほしいんだ」
「え、そんな急に!?」
突然の申し出だったが...これは、とてもありがたかった。
正直、俺たちも、風夏だけに指揮を任せるのは不安だった。彼女が指揮の経験が無いのもそうだが、彼女自身、前線で戦うことになるからだ。
でも、長年西部戦線を任されてきた英志さんがサポートしてくれるなら...なんの問題もなく、指揮ができるだろう。
「...じゃあ、英志さんは私についてきて、私のサポートをしてほしい。私と一緒に、軍の指揮をして」
「おう、任せてくれ!」
「そろそろ行きますよ、風夏さん。それから...英志さん。でないと、いい加減前線が崩壊しそうです」
「なんで見てないのに分かるのよ...まぁいいわ。さ、行きましょう」
「おう。あ、そうだ。軍医さん」
「ん、なんですか?」
「助けてくれてありがとう。おかげで、俺も共に戦えるよ」
そう言い、彼はぺこりと頭を下げる。
...いつぶりだろうか、こんな風に傷ついた人を治して、感謝されるなんて...
少しくすぐったいけど、達成感と、満足感に満たされる、この感覚。
あぁ...やっぱり、人を救うってのはいいな。
「俺は軍医として当然のことをしたまでです。でも..その感謝の気持ちは、ありがたくいただいときますね」
「ハハッ、そうしてくれ。では...お互い、頑張ろうじゃないか」
「ええ、お互い無事にまたここで会えることを楽しみにしてますよ」
そう言い、3人は戦地へと赴き...
俺は、再びあの病室へと歩を進めるのだった。
───────
「さて...では僕はここで一旦お別れです」
前線に戻る途中、急に透也がそう言った。
「お別れって...どういうこと?」
「言ったはずです、僕は前線維持のサポートをする、と。そのためには、前線に出ていたら目の前の敵しか倒せないでしょう?」
戦争において、相手に前線を押し上げられている時...味方が前線を戻す、または維持するためには、味方の前線の陣形を、相手より広く取らなければならない。でないと、相手に包囲されてしまうからだ。
だが...そんなことをしなくても、前線全体をカバーできる方法がある。それが...
「遠くからの射撃援護です。前線の2、3歩手前からならば、前線全体を視野に入れることができます。高い位置ならば尚更やりやすいですね。さて、この条件を踏まえた上で、僕が向かうべき場所は...分かりますよね?」
「...なるほど。あの監視塔ね」
それは、防衛拠点から少し離れた位置にある、森の中に建てられた監視塔。比較的広めで、砲弾などが備わっている、監視塔というよりかは臨時拠点ともいえる場所。
高さが控えめなので相手から見つかりにくい上、今くらい前線が下がっていれば前線全体を見ることもできる、後方支援にはもってこいの場所だ。
「正解です。僕はあそこから前線が崩壊しないようにサポートしているので、みなさんは心おきなく前線で暴れてきてくださいね。その方が、僕へのヘイトもたまりにくいですし」
「アンタねぇ...まぁいいわ、それでお願い」
そうして私は透也と別れ、英志さんと共に前線へ急いだ。
「...なぁ、風夏」
「なに?」
「本当に彼1人で向かわせてよかったのか?」
「...というと?」
「彼の言っていることも、お前の考えも分かっている。あの塔から、前線全範囲をカバーするつもりなのだろう?だが...そんなことが、本当に可能なのか?」
...たしかに、あの塔からは前線全体を見ることができる。だが...
前線全体に気を配りながら、ピンチの所や穴を見つけては、そこを銃撃でサポートする...一見簡単に聞こえるが、実際はとてつもない集中力と並行思考力、エイム力が求められる、至難の業なのだ。
きっと、私にだってそんなこと欠片もできないと思う。でも...
「彼なら大丈夫。透也の加護は...『こういうの』に特化した効果だったはずだから」
私は彼を信頼している。普段はサボってばかりだけど、こういう状況の時は、無駄によく回るあの頭で周りを見て...常に正しい判断を下して、実行できるのがアイツだから。今回も...必ずなんとかしてくれる、そう信じている。
「だから...心配しないで。私たちは、私たちの戦いに全力を尽くそう」
「...あぁ、そうだな。よし、急ごうか」
「えぇ!」
私たちは、前線へと急いだ。
───────
「予想はしていましたが...やはり、かなりまずい状況ですねぇ」
防衛拠点からほど近い監視塔から戦地を見下ろし、思わず声が漏れる。
話には聞いていたし、僕自身ある程度覚悟はしていた...つもりだった。だが、これは思った以上に押されていた。
「ふむ...完全に数で負けているようですね。敵軍と自軍の差は...ざっと、3倍といったところでしょうか?」
今回のような、ずば抜けて強い異次元の化け物たちがいない戦場では...数の差が、戦況を左右する最大の要因となる。その差が3倍ともなると...普通に考えたら、敗北確定のクソ盤面といったところだろう。
普通なら、だが。
「まぁ...今回は、そのずば抜けて強い異次元の化け物が、今から参戦することになりますからねぇ?」
僕は、スキル無しにも関わらず齢24歳にして1等兵へと上り詰めた、エリート中のエリート。そんな僕が前線サポートに加わるのだから...前線が崩れることなんて、絶対に起こりえない。それに...
「適当に維持してれば、あとは彼がなんとかしてくれるでしょう」
現時点最大の問題である、数の差。今は圧倒的な差があるが...この差は、いずれは覆ることになるだろう。
突然現れた、<堕天使>という名の変数。はじめは<堕天使>ごときに付き合う時間が勿体ないと考えていたが...久しぶりに、面白そうなヤツを見つけることができた。
彼のスキルがあれば、怪我人を一瞬で前線に戻せる。そうなれば、数の差なんて関係ない。死ななければ、無限に戦うことが出来るはずだから。
そう考えると...彼自身は雑魚だが、彼も、ある意味ではずば抜けた異次元の化け物と同等の影響力を持っていると言えるだろう。
「ククッ...期待していますよ、零さん?」
僕は銃をしっかりと握り...押され続けている前線へと目を向けた。
───────
「さて...治療をはじめるとするか。」
とりあえず、誰から治療するかを決めておきたい。
軽傷者は、包帯などで一時的に治療してもらい、命の危険がある重傷者や、精神的にヤバそうな人から治療を優先したい。
なんせ、俺は1人しかいない。一度に全員を治療するのは不可能だからな。
「.....そうなると...助手が欲しいな。」
外科医だった頃は、俺には優秀な助手がいてくれたおかげで、手術はいつも円滑に進んでいた。
メスを渡す、糸を渡す、薬を持ってくる...手術に必要なことを、全部やってくれる、とても大切な存在。だから、助手の存在は必要不可欠である。
「今から怪我人の治療をはじめます。それに際して、俺の手伝い担当が1人欲しい」
「では、私が手伝わせていただきます。私は救護班班長、川崎華と申します」
助手の志願者はすぐに出てきてくれた。
ショートの黒髪、黒目で、小柄な、白衣を纏った女性。とても知的で、大人しそうな雰囲気だった。
救護班の班長と言っていたので、腕前は信用してもいいだろう。
「よろしくお願いします。では、早速ですが...今ここにいる負傷者の中で、命の危険がある人を教えてください。それから...怪我の影響で、精神的に参ってしまっている人も」
「わかりました、ではまずは...」
最初に教えられた人は、腹部を撃たれた兵士だった。
「...これは、急がないとまずいな」
出血が激しい。早くしないと死の危険が伴う。
急いで銃を構え、引き金を引く。この瞬間は、やはり緊張する。もし本当に弾が当たったらどうしよう、と...
だが、当然そんなことは起こらず...患者の傷は、見事に治ってくれた。成功だ。
「よし...意識はまだ戻っていませんが、これで大丈夫です」
「す、すごい...!」
「感心している場合じゃありません。次はどなたですか?」
「あっ、次はこちらの...」
その後は、順調に治療を進めていき、13人いた重傷者を治療した。全員まだ意識は戻っていないが、これで死の心配は無くなった。
そして、残りは全員意識がある、彼らに比べれば比較的マシな患者たち。
だが...俺の仕事は、ここからが本番だ。
───────
「風夏、引き気味で撃ち合え!」
「了解...!!」
「全員、もっと下がれ!浮いた奴はすぐ落とされる!」
「1箇所にまとまらずに広がって!囲まれたら勝ち目はない!退路を確保しつつ、囲まれないことを最優先して!!」
「タンクも少し下がれ!耐えきれなくなる!!」
「なるべく障害物を利用して攻撃を防いで!盾が割られたら死んじゃうから!」
「...!風夏!敵陣左から回り込まれ──」
ダダダダダダダダッ!
「大丈夫、囲まれそうになったら...透也がカバーしてくれるから」
「分かった、なら正面の敵に気をつければいいんだな」
「うん、私は戦いながら指揮出すから、英志さんも指揮お願いね」
「任せろ!」
前線では、熾烈な戦いが繰り広げられていた。
相手との数の差が圧倒的な現時点で、攻めに出るのは悪手。だが、守っているだけでは、いずれは押し切られてしまうというジレンマを抱えていた。
最前線で、防御に特化した加護を持つ人が、盾や重装備で武装し、攻撃を受け止める。その間に、後方の射手が敵の足止めをして、砲手が一気に敵を蹴散らす...これが、本来行うべき作戦。
ただ...現時点、前線維持に最も重要な射手がほとんどやられているせいで、タンクが集中砲火を受けてしまう。
それを防ぐため...私が『疾風の加護』で戦場を駆け回り、ヘイトを稼ぎながら前線を維持。そして、私がカバーしきれない範囲については、透也が1人で全部カバーしてくれている。
ハッキリ言って、かなりきつい。多分、そう長くは持たないと思う。でも...
「私たちには、まだ希望が残ってる」
味方はまだ、ほとんど死者が出ていない。実力が拮抗している戦争において、死者より怪我人を出す方が、相手の邪魔を出来るから、敵は致命傷には至らない程度の攻撃をしてくるからだ。
つまり...彼のスキルによって、治せる人がほとんどなのである。
「お願い...早くして、零...!!」
私は前線を駆け巡りながら、そう祈った。
───────
「うぁあああああああっ!!」
「痛い、痛い...!」
「怖い...怖いぃっ...!!!」
俺は、華さんに連れられて精神的ダメージが大きい患者の元を訪れていた。
彼らのほとんどは、腕や足に大きな損傷が出ており、命に別状はないが...なまじ意識があるせいで、激しい痛みと、四肢が壊死する感覚によって、強い恐怖を覚えていた。
「みなさん、落ち着いてください。俺は──」
「ち、近寄るな!!」
「ころ、ころさないで...」
「もう戦場になんて出ねぇ!俺は...平和に暮らすんだ...」
「ふへ、ふへへははははっ...」
「...こりゃ厳しいな...」
これは.....全員、相当重い精神疾患にかかっているようだな。
俺の話は聞いてもらえそうにないし、無理やりにでも治療を...
そう思って銃を取り出すと、場は余計大変なことになってしまった。
「うっ、うわあああぁぁぁぁぁっ!!」
「こ、ころ、ころさないで...お願いします...」
「俺はまだ、死にたくない!やめろ、近寄るなぁっ!!」
銃で撃たれた時の恐怖が蘇ったらしく、全員パニックを起こしていた。暴れたり、うずくまったり、泣きわめいたり...場は混沌をきわめていた。
どうする...?どうにかして宥めないと、たとえ治療できても意味が無い。こんな状態では、戦場になど出れるはずないからだ。
「.....にしても、前似たようなことあったなぁ...」
...どうしてだろうか?こんな大変な状況にも関わらず...俺は、なぜか懐かしい気分になっていた。今まで、過去のことは思い出したくも無かったってのに...
俺の中に眠っていた、過去の記憶.......外科医時代、ある男性が、手術を頑なに拒んだあの時のことが、自然と頭に浮かんできた。
───────
「嫌だ!オレは手術なんて受けない!!」
彼はかなり重篤な症状の患者で、早く手術しないと間に合わないかもしれない。そんな状況にも関わらず...彼は、頑なに手術を拒んだ。
「なんでそんなに嫌なんですか?怖いんですか?」
そう聞くと、彼は激怒し、こう言った。
「怖いか、だと?ふざけんな!!舐めてんのか、テメェ!?」
そう言い、胸ぐらを掴んできたので、イラッとしながらこう言った。
「じゃあなんで嫌がるんです?」
「そりゃあ...高いからだ!金がかかるだろ!?それが嫌なんだよ、俺は!」
「アンタ、別に医療費払ってないだろ?医療費払ってんのはアンタの息子。なのにアンタが、金の心配すんのか?」
「...っ!あぁ、そうだ!息子にわざわざ負荷かけてやる程のもんでもねぇだろうがよ!!どうせアンタらヤブ医者の言うことなんざ嘘っぱち、手術なんてしなくても生きれんだろうが!!!」
その発言を聞いて、怒りを我慢できなくなった俺は、そのままブン殴って気絶させてでも手術受けさせてやろうと思ったが...彼の息子の怒りは、俺の怒りを遥かに凌駕していたらしく...
「じゃあ、僕が今まで出した医療費返せよ」
「...え?」
「僕に負荷かけたくないんだろ?なら、僕が今まで出してきた医療費184万、返せよ」
「いや、それは...その...」
「チッ...みっともねぇんだよ、マジで。ガキじゃあるまいし、ただ手術怖いだけなのに、ヘタな理屈並べて喚いて。僕が一番恥ずかしいんだけど?」
「え、えっと...」
俺も彼も、それまでずっと温厚だった彼の息子の突然のブチギレに、硬直してしまっていた。
「おい」
「はっ、はい!」
「頼むから何も言わずに手術受けて。もうこれ以上、恥かくのやめてもらえない?」
「で、でも...」
「怖いなんて言わねぇよな?さっき、怖いって言わなかったもんな?」
「うっ...」
「ハイ、じゃあお医者さん、あとはよろしくお願いします」
「お、おう...」
「ちゃんと受けてこいよ」
「は、ハイ...」
───────
そのまま彼は、とても大人しく手術を受け...無事、成功した。退院する際、迎えに来た彼の息子の優しい笑顔が、あれほど温かいと思っていた笑顔が、恐ろしくて仕方なかったのを、よく覚えている。彼も、迎えに来た息子の前で縮こまって、まるで犬と飼い主のように、言うことを聞いていたのは、滑稽を通り越して最早可哀想に思えた。
「あん時の息子さんの変わりようは凄まじかったな...殺されるかと思ったくらいだし...」
そんな思い出に浸っているうちに.....ひとつ、方法を思いついた。
「...なるほど、これなら...華さん」
「はっ、はい!」
「やってほしいことがあるんですが...」
彼女に、俺の作戦を伝える。それを聞いた彼女は、とても驚いたような顔をしていた。
「ほ、本当にそんなので受けてくれるでしょうか...?」
「俺が諭し続けるよかマシでしょう。ま、よろしく頼みますよ」
「まぁ、私に出来ることならやりますけど...でも...」
「ダイジョブですって。俺に任せてくださいよ」
「...分かりました。気をつけてくださいね」
「おう!」
よし、なんとか引き受けてくれた。さぁ、あとは上手くいくかどうかだが...
「さぁ.....頼むから上手くいってくれよ?」
俺は、いつでも治療できるよう準備し、そう呟いた。
───────
ダダダダダダダダダッ!
「チッ、相変わらず西部戦線の防衛は厳しいですね...」
前線がかなり押されている。数の差があまりにも大きすぎるせいで、僕1人ではカバーが効かなくなってきた。
拠点を出てから早1時間強。休む間もなく、加護をフル稼働して銃を撃ち続け、なんとか前線をキープできている。
僕が参戦する前後において、人数差は多少縮まった。僕がカバーする必要ない時、チマチマと狙撃で削った甲斐があった。
しかし...そもそもの数の差が大きすぎて、その程度じゃ話にならない。味方も何人か減っているので、尚更である。
「何人か、で済んでるだけマシでしょうね。はぁ...これ、僕と風夏さんが居なかったらもうとっくに終わってますね...」
風夏さんも、本当に頑張ってくれている。タンクじゃないのに前線でヘイトを買うことでタンクの負荷を下げつつ、少しずつ数を減らす。彼女の加護による高速移動は、何気にかなり優秀である。だが...
「いい加減、これ以上は射手がいないと持ちませんね。そろそろタンクが落とされそうです」
防御系の加護がある以上、タンクの能力は相手タンク1人分を遥かに凌駕している。それどころか、恐らく5倍近く耐えられるだろう。
とはいえ、限界は存在する。そして...その限界が、目の前まで来ている。
まずいな...どうにかして打開策を──
「...!あれは...ククッ、どうやら終わったようですね」
防衛拠点から、大量の武装した兵たちが一斉に走ってくるのが見えた。どうやら、彼は本当にやり遂げたようです。そうならば、話は変わってきます。
「さて、僕も降りて戦うとしましょうか」
人数差が戻れば、僕もカバーに回る必要性が薄くなる。つまり、攻撃に全力を尽くせるということです。
「ここからは時間稼ぎの防衛戦ではありません。対等な条件下での...本気の、削り合いです」
ここまで我慢していた分...存分に、暴れさせてもらうとしましょうか?
「ククッ...本当に反則クラスのスキル...素晴らしいですよ、零さん!!」
僕は心を踊らせながら、前線へと急ぐのだった。
前書きでも言いましたが、久しぶりにアイリス・グレー・ブレイブも書きました!よかったらあっちも読んでみてください!!




