022 板金7万円コース後編
2024/5/31(金) AM11:34記
前回の続きです。
5月29日(水)
語呂合わせでは,幸(5)福(29)となる日ですが真逆のアクシデントが発生。
結論から言うと私の住む田舎では日常の足として欠かせない車が壊れたのだ。ウケる。
水曜は勤務先店舗の定休日なのだが,この日は事務作業を任されていた。
1時間に1,2本しか走っていないやる気の少ない電車では,終わるやいなやの退勤は不可能。車一択だ。
車通勤の時は,我が町に似合わないスタバに寄り,コーヒーを買ってラジオを聴きながら運転するのがお決まり。
家ではあまり飲めないアメリカーノを頼む。
ほぼこれしか頼んだことがないので,裏では特定のあだ名が付けられているかもしれない。
この日はさらに格好つけて
「ブロンド(浅煎りの豆)でお願いします」
などとぼざいていた。
この後,動けなくなるとも知らずに。
コーヒー片手に車内に戻り,radikoでラジオをかける。呑気なものだ。
野村 訓市さんがナビゲーターを務める
『TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING』
この後,自ら「動かない旅」を体験することになるとも知らずに。
準備が整ったところで,いざ出発。
駐車場を出て,国道にぶつかる丁字路を右折しようとハンドルを切りながらアクセルを踏んだその時。
下からゴリゴリゴリゴリっ!!という異音が。
何か擦った!?
止まれの停止線を過ぎた所に確かグレーチングがあったが……。
とにかく右折だ。しかし,進まない…。
動けと心で叫びながらギアを変えてみる。
と言ってもオートマなので,SやLの位置に
スライドさせるだけだが。
碇シンジの胸中とシンクロさせるようにレバーをガチャガチャやる。
ダメ。動かない。ウンともスンとも。
鼓動が大きくなる。
まさか……暴走?
頭をよぎったあのシーンのような事態になることはなく"止まれ"の文字に忠実に居座る黒い塊。
とにかくこのままでは邪魔になることこの上ないので後退を試みる。
Rに入れると辛うじて後進。
これは後退ではなく後進だ!
シフトボックスに付いているRの文字は不敗神話のRだ‼︎
オレのRについて来れるか⁉︎
と喜びも束の間。進みが遅い。異様に。だめだこりゃ。
幸いにも国道にぶつかるまでの数メートルは僅かながら登り勾配になっているため,Nに入れ自重でバックし何とか路肩に寄せられた。
ドッグファイトでの経験値が活きた。
ここからは早い。
事故対応には定評のある中年だ。
エンジンは問題なさそう。油や水漏れはない。
下部を覗き込んだが大きな破損は確認できない。
再びギアをDに入れてアクセルを踏んでみる。
プロジェクトDだ。
動かない。
先程辛うじて機能したかに見えたRも逝ってしまったようだ。不敗神話終了のお知らせ。
ミッションがイカれたな。これはレッカーだ。
後は慣れたものです。
スタバの店員さんに事情を説明し,駐車場にある使用していないカラーコーンを拝借して黒い塊の前後に設置。
保険会社のロードサービスに電話し,車両の受け入れ先の候補と開店時間を確認。
さぁ優雅に動かない車でラジオとコーヒーだ。
一息つこうとした時,妻の車が横を通り過ぎた。
憐れむように,でも半笑いでこちらを一瞥してスタバへ入って行った。
注文を終えたのか,戻ってきて
「どうしたの?」
と一言。
事情説明のため,米ソの対立は一時規制緩和。
保険屋から連絡があり,様子を見に来たのかと想像したが,娘を保育園に送り届け,次の用事までの空き時間でスタバに寄っただけらしい。
つくづく他に行く所がない町である笑
妻は店員さんから
「助けにいらしたんですね」
「良かったぁ」
などと言われたようだが,?で頭が埋め尽くされたらしい。
次の用事に向かうため颯爽と走り出した妻の車を見つめ,車に乗っているのに車って良いなぁ~と思う不思議な時間を体験。
今回は負けちまったが,不思議と爽やかな気分だぜ(白目)。
17万キロ以上走り切って,止まっちまったんだからな。
いってーな。また板金7万円コースかな。
そんなもんで済むはずもなく。
40万円以上でした(白目)。
放心状態の私を見て笑っている妻につられ,私も哀愁漂う微笑みを浮かべながら,その日の一部始終を車屋まで迎えに来てくれた車内で話す。
今日は笑っちまったが,不思議と爽やかな……
以降,繰り返し。
以上,誰か中古車を格安で譲ってくれますように。