マリオンとの甘い恋
カフェを出て、街にある港へ向かった。
国は巨大な貝殻の上につくられているので、貝の縁に来たことになる。そのから少し海へ進むと青の洞窟と呼ばれる恋人たちのスポットがある。
「あそこまで行こう!」
海の中は透き通るようであるが、波の屈折で眩しいほどだ。マリオンに手を引いてもらい、先に進む。手のひらが硬く、普段から剣を握っている手だった。リシェラの頬がぽっとする。
やはり力強い男性はかっこいい・・・。
青の洞窟に着いた時、昼の陽射しがさしていた。中の様子は見えないが、マリオンはすっと進んでいく。
「昔はここで愛を告白するというのが流行っていたそうだよ。ロマンチックだね。」
洞窟の中は、まるで水の妖精たちが舞っているように360度が青く光って見えた。
「なんて綺麗なの。今日はたくさんのところに連れて行ってくださって、ありがとうございました。デート、すごく楽しいです。」
力を抜いて、海の中に揺蕩う。不思議と海水の音もしなかった。母なる海、偉大な存在を感じる。
マリオンも力を抜いて海に身を任せてみた。
神が手ずから造ったような美しい一対の人魚。
もしこの光景を見た者がいたとしたら、眩しくて目を細めながらも、なんとか心の奥にに焼き付けようとするのではないだろうか。
しばらく海に漂ったあと、ぽつりとリシェラが話始めた。
「私、自分のしたいことだけは、分かるようになりたいんです。今まで自分で決めてきたことなんて、きっとほんの少ししかないんです。」
「そうか。うん、それは大切なことだね。自分の意思を感じることは」
今まで自分で決断する自由なんてなかったお姫様である。せめて自分の心が望むことは分かるようになりたかった。
「リシェラ、好きだよ」
「私もです。お兄様」
まるで水の妖精たちが笑ったかのように、海面がじゃぶんと波打つ。2つだったものが1つに曖昧に溶けていく。