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恋の始まり。

作者: 景山 斐雲





「おい。何をしている」


「あ?ヒィッ!!」



私に絡んでいた男達が、声に振り向くと息を飲んだ。



「何してるって聞いてんだ」


「あ、いえ特に何もぉ〜…」


「あははは〜…、その、俺ら用事を思い出したんで!!!!」



顔を引き攣らせた男達が、我先にとそそくさと逃げ出す姿は滑稽だった。



「で?何してんだ」


(こっわ!!!!!!)



190cmを超えるガッシリとした巨体に、剃り込みの入った頭髪、タトゥーまでうっすらと透けて見える整ってはいるが、強面の顔立ちに、私はビビり散らすしかなかった。





ーーーーー





まあ、それが半年ほど前の話で、



「サキちゃん、やっほ〜」


「アキオミさん、こんばんは」


「かった〜い!!」


「アキオミ、絡むんじゃねぇ」


「いった〜〜〜い!!殴んなくったっていいじゃん!!」



金髪のチャラチャラしたピアスとかアクセサリーとかジャラジャラしてるアキオミさん、殴った硬派なタイプのヤンキーはユウスケさん。

キャラキャラと笑っているド派手なギャル達の中で、長方形の眼鏡に飾り気もないゴムで一つ結びにしている地味女の私は随分と浮いてるだろう。



「サキー!おいで!」


「カンナさん、こんばんは」


「こんばんは。育ちがいいね〜」



私を手招きしたのは、ピッチピチの露出多めの服を着たボンキュッボンの美女なカンナさん。

The・女性って見た目だけど、中身は竹を割ったようなさっぱりした人だし、頭を撫でながら言うので、あんまり悪い気はしない。

片親だけど、小さい頃から夜の仕事をする母親が男を取っかえ引っ変えしてて、家に帰って来なかったから挨拶する相手がいなかったから、挨拶をよく忘れるけど、挨拶する相手が居るのが嬉しい!って可愛がってくれている。



「ん〜、まっ、こんなもんかな!」



毎回メイクをしてくれるのも彼女だ。

私は、父親の再婚で使えるお金がないからメイク用品も買えない。

新しい…、お父さんの奥さんは、私にお金を使うのを嫌がるから…。

中学生はバイトも出来ないし、お金がない。

カンナさんは、パパ活して、自分で高校の学費を払ってるんだって。

私は、そこまで出来そうにないな…、死んだお母さんが自分の体を大切にしなさいって言ってたの裏切りたくないから…。

それに最初は、好きな人が良いし…。

カンナさんは、そう言った私に、私は母親見て、貞操観念もクソもなかったから、そういうの素敵だと思うよって笑って言ってくれたから、本当に心が広いと思う。



「集合」



大きくはないけど、低く、響くような通る声に、ここらでいくつかのグループになって話してた面々が、声の先を向く。



「お前ら、問題はないか」



190cmを超えるガッシリとした巨体に、剃り込みの入った頭髪、タトゥーまでうっすらと透けて見える整ってはいるが、強面の顔立ち。

半年前に初めて夜の街に繰り出して、ヤンキーに絡まれてた私を助けてくれた人。



「はい!!トウマさん!!」



この辺りを仕切ってるヤンキー集団のカシラ、トウマ。



「いいか、やりすぎんなよ」


「「「はい!!」」」



喧嘩もする、売春してる子もいる、でもやり過ぎないがここのモットー。

ここは、家に居場所のない子供達の逃げ場で、大人達に目をつけられちゃいけない。

それは、イイ大人(警察)もワルイ大人(裏稼業)にも、だ。

ここはただの逃避行。

裏で生きる覚悟なんてないし、大人は何も解決してくれない。

だから、どちらにも目をつけられないように、でも、同年代に舐められないように生きなきゃいけない。それが私達の生き方。





ーーーーー





(あああ!!!!!失敗した失敗した失敗した!!!)



カンナさんに付き纏っていた男達を同じグループのメンバーでぶちのめそうとした。

でも、相手の数が思った以上に多かった。



「ハハ、女が居るぜ!!」



嬉しそうな声で私の服に手をかける男に抵抗する気力も残ってなかった。



「やめろ!!」


「うるせぇ!!!」


「っぁああああああああ!!!!!!」



馬乗りになられながら殴られてたアキオミさんが、止めようと声を張り上げてボキリと骨から嫌な音をさせた。



(ああ、嫌だな。初めくらい、好きな人が良かったな…)



ビリビリと破かれる服と卑下た男の薄汚い笑みを見ながら、どこか冷静にそんなことを思っていた。

それでも、仲間が殴る人が減るなら、まあイイかって思ってたのかもしれない。



──ドゴッ!!


「テメェら!!!俺の仲間に何してやがる!!!!」



私に馬乗りになってた男がぶん殴られて吹き飛ばされた隙に、体を引き上げられる。

160㎝に足りないくらいの身長の私とは、体格差があり過ぎて、少し不格好に見えたかもしれないけど、破かれて肌けた前を隠すように抱き寄せてくれた、敵を見据えるキツイ眼差しを下から見上げて、どうしようもなく胸がときめいた。



(バレなきゃいいのに…)



バクバクと鳴り響く心音が、トウマさんに聞こえないように、喧嘩の音に混じるようにと願いながら、ぎゅっと抱きついた。





ーーーーー






(はああぁぁぁ…!!!!!)



カンナに変な男が付き纏ってたのは知っていた。

カンナは、美人だし、わりとよくある話で、本人も慣れたようにあしらっていたから、今回もそんなに不安視はしていなかった。



(それがこのザマだ!!)



カンナに執着したクソ野郎は、気が付けば、ここらの一大勢力を参加に置いてたらしく、カンナに懐いてる連中がお灸を据えようとして返り討ちにあっていた。

死に物狂いで逃げ出した奴が報告してこなきゃどうなってたかと思えば、肝が冷える。



(つーか、マジでコイツ、俺が男なの忘れてねぇか!!!)



数が多かろうが、小さい頃から体格にも腕力にも恵まれてた俺からすれば、屁でもない。

ましてや、緊急招集したうちの全勢力で来てんだから負けるわけがない。

問題は、さっきまで襲われかけててビビり散らして俺に抱きついてるお子様だ。



(そう、これはお子様、これはお子様、これはお子様)



カンナのように目の行くような胸はないが、うっすらと柔らかな生の感覚…。



(ブラ切られてんなコレ…)



守るために抱き締めたはずの腰は、ほっそいのに、男とは違うやわさがあり…。



(コレはガキ、コレはガキ、コレはガキ)



高3と中3はマズイだろ…。と必死に自分の煩悩を追い出すように殴る、殴る、殴る。

…いや、分かってるんだ、本当は。

クソみたいな親だった。

色んな女に自分のガキ生ませては連れ帰ってくるクソみたいな父親と、それに怒りながらも離婚もしねぇ、クソみたいな母親だった。

その上、まともに育児も家事も仕事もしねぇから、気付いたら上の弟妹達がY○uTubeで大家族チャンネル作って稼いで生活してるようなクソみたいな家で、イイ兄貴のフリして、夜な夜な喧嘩三昧の俺もクソみたいな兄貴だ。


あの時もそうだった。

またガキ作った親父が赤子を連れ帰って、嫌気が差して逃げ出した。

河川でボーとしてた俺に気付いて、どうしようもなく弱ってて、愚痴った俺に、「へー」ってどこか無関心な返事をするイヤなチビだった。

でも、「情けねぇだろ」って自嘲した俺に、「同じ逃避行者なんで何にも言えないですね」って淡々と感情もなく言われて、どうしようもなく救われた俺が居たんだ…。


あの時から女として意識するようになってたから…。



(あ゛ーーーーーー!!!!!!!新手の拷問か!!!!!)



ニヤニヤと嗤う親友の視線が鬱陶しい!!!!!!


サキ

・中3

・本当はもっとツッコミキャラな感じにしたかったけど、話が長くなりそうなので今回はわりと無感情な性格になった


トウマ

・高3

・無口で硬派なタイプのヤンキー

・人望厚め

・これからサキに内心振り回されるが、表情筋が仕事を放棄してるので、付き合うまでに時間がかかる予定


カンナ

・付き合いが長いのでサキよりも先にトウマの気持ちに気付いて揶揄う

・とりあえず、夏に海にみんなで行って、サキにビキニ着せて、眉を顰めながら(他の男に見せたくないという嫉妬)もチラチラ見る(可愛いし、自分だけが見てたい)トウマの反応を笑う予定

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