Gerechtigkeit?
あの事件から2日、ショックが強かったため上司に頼んで休暇を貰った。それでもまだ回復しない。
重い体を動かしながら、自分の事務所に向かう。
『葬儀監視課』なんとも分かりにくい。一回葬式見守るだけかと思ったわ。外部に情報を流すことは厳禁である。俺はそこに派遣され、こんな目に遭っている、だがそれは葬儀監視課の誰もがそうだろう。
「おはようございます……」
事務所のドアを開ける
「おはよう!そう言えば君この間初仕事だったんだっけ!?誰と一緒だった?教えて!」
なんともパワフルな同僚だ。馬鹿みたいにうるさい。
「えっと雪白ちゃんと結都デス」
途中カタコトだったが答える。
「おっあの双子?いいなぁちなみに俺は初仕事雨雷さんと海織さん。」
横からまた新しく同僚が出てきて言う。
「まじ!?いいなぁー!!」
言い出しっぺのやつが羨ましそうに言う。
「俺なんか雨月さんと佑夏さんの葬儀屋ツートップだぜ?美人だけどビクビクして話もできなかったわ。雨月さんに関してはいつの間にか男にナンパされててなぁ……佑夏さんが助けに行ったから良かったけどさぁ。」
やはり美人は大変なんだな。平均的に顔に生まれて良かったわ。
…………いや俺 顔面は平均の方だからな?
「その後それ見てた結都さんがさぁなんて言ったと思う?『無能め。』だってさ!酷くね!?」
美人に言われると傷つくわぁ。俺そうゆう趣味ないのに。なんて言いながら同僚は言う。
「結都が言ってた無能野郎ってお前のことか。」あっうっかり言っちゃった☆
「うわぁ何それめっちゃ傷つくわぁ……ってかお前だけ呼び捨て許されてるってずるくね!?」
……ん?そうだったのか。いや待てやめろ。みんなそんな目で俺を見るな。
「……まぁそれは置いといて、俺雨月さんって人知らないんだけど。」話を変えて逃げよう。
「お前……テレビ見たことある?」
なんだお前喧嘩売ってんのか。
「ほらこれだよ」もう1人の同僚がスマホの画面を見せる。
テレビ番組の特集のようだ。
『今話題の葬儀サービス』と大きな字で右上に映されたスマホの画面の真ん中に彼女はいた。
左目は前髪で隠れていて、色素の薄い金髪から先端にかけてオレンジ色に変わっていく髪は光の反射からか、白髪にも見える。目は零警視監や雪白ちゃんと同じ真っ赤。白くて長いまつ毛がそれを囲うようにある。
「すっげぇ可愛いよなぁ」と言われたため頷くしか無かった。
「仕事中に雨月姉さんを褒めてくれるのは嬉しいが君たちの上司はお怒りのようだよ。」凛とした声が響く。
バッと振り返るといつもの笑顔をした零警視監と、
キレる寸前の上司がいた。
「「「すんません!!!」」」
俺たち3人は声を揃えた。
俺達の話を聞いていた周りの社員もそれぞれ仕事に着く
「そういえば君の初仕事の時って柊時と僕じゃなかったかい?」
零警視監が上司に言う。
「あぁ零警視監殿も柊時も好き勝手やんなかったから、助かりましたよ。」
また人が増えた。柊時って誰だ。
そう思ったため。こっそりさっきの同僚に聞く。
「あぁ零警視監達の弟。
零警視監のこと溺愛してっから零警視監と関わる時気をつけろよ。」
何それすごく物騒
そんなことを思っていると、
「そうだ、ねぇ君」
零警視監が話しかけてくる。周りの目が一気に俺の方に向く。
やめろ怖いから。
「結都がこれ君に渡してくれって」そう言って手紙と小さな小包を渡してきた。
なんだと思い零警視監に聞く。
「さぁでも小包の方から開けろとは言ってたね。」
なるほど。言われた通り小包を開ける。
「……香水?」てかめっちゃ高そう。そう思いながら手紙も開ける。
『仕事中悪い。雪都姉さんと涼風姉さんのことは頼む。本当、頑張ってくれ。
PSアンタがいつも付けてる香水匂いが好きじゃない。やめた方がいいぞ。』
……おいコラなんだ最後のは
周りは結都さんからなんか貰ってるよ。なんでそんな親しいんだ。とかめっちゃ言っとる。
違う多分これ
「随分と気に入られてるみたいだね。オモチャ的な意味で」
苦笑いで零警視監がいう。
「こりゃ大変だな。さすがに同情するが。お前にはまた仕事だ、雪都と涼風って奴らの監視役なんだか、今回はアイツらからの指名だ。ついてるなお前色んな意味で……」
遠い目をして上司が言う。
俺も遠い目をする。
周りからは嫉妬の目が刺さる。
「羨ましいです!なんで私に仕事来ないんですか!」
一人の女性社員が声を荒らげて言う。
「貴方以前結都さんや涼風さんやその他もろもろにセクハラレベルの質問したじゃない。」隣にいたもう1人の女性社員がすかさず言う。
「セクハラって!そんなことしてないですよ!」すかさず反論する
彼女は華さんといい、俺の上司だ。少し変わった趣味をお持ちらしい(遠い目)
「してないって……貴方この間来た雨月さんと杏璃君に『身体ほっそいですね。腰周りとか測らせて貰ってもいいですか。』なんて真剣な顔で言ってたじゃない。杏璃君なんて雨月さん守って殺意溢れまくりだったわよ。」
……少しじゃないな変態だこの人
「杏璃君が雨月さん守るとか何それおいしい。零警視監!連絡先こうかんしません!?」
うわぁ…いきなり話切り替えたよこの人。
「フフッ柊時達に聞いてごらん?」
笑顔で返す零警視監。
流石だ。
「それ私が死ぬやつじゃないですか!」叫ぶ華さん
「それじゃあここの公園に雪都と涼風はいると思うから。頑張ってね。」
メモを渡し、それだけを言って零警視監は出ていく。
「零警視監を送って来る頼んだ。」上司もそれについて行く
さて、また新しい仕事だ。
「ちょーーっと待ったぁ!!」
華さんが入る
「ねぇお願いがあるんだけどさ!今から雪都ちゃんと涼風に合うんでしょ?だったら写真撮ってきてくんないかな!?お願い!てか上司命令!」
キャー職権乱用だ〜
「……分かりましたよ。でも期待しないでくださいね。」
二つ返事で答える
了解!っと敬礼した華さんを横目に事務所を出た。
雪都さんと涼風さん……
なんか嫌な予感しかしないな
2話 中編
7月とは思えないくらいの涼しさ
しまったもう1枚上着着ときゃ良かったと少し後悔する。
少し歩き数分がたった先にメモに書いてあった公園が見えてくる。
平日の昼間のため人は少ない。
そんな中に……
「ねぇ少しくらい付き合ってくれたっていいじゃん」
ほーら出ましたナンパか?こいつら。
「ごめんなさい人を待ってて……」女の子も困っている。
高校生くらいだろうか、しかし何故こんな時間に。
そう考えても仕方ない一先ずあの子は困ってるんだし助けるしかない。
「ちょっと君たち」男の肩に触れる。
「はぁ?なんだてめぇ。」
アッコワイ
イヤイヤ俺これでも警察な訳だし?ここで引き下がる訳には行かない
「彼女は嫌がっているじゃないか、離しなさい。」
やべぇ声震えてねえか?
「チッウザってぇ、おい行くぞ。」
俺の手を叩き落とし男達は女の子を引っ張ってどこかへ行こうとする。
「……っ離してください!」
女の子は掴まれた手を振りほどこうと必死に動く。
「コイツ……大人しくしろよ!」
女の子を抑えようと、男たちが彼女の子の腕を強く掴む。
次の瞬間
「チェーストォォォ!」
…………なんか人が飛んできた。
「なんだこのガキ!」周囲の目線が飛んできた本人に向く。
だがそれもつかの間
男たちがいつの間にか宙を舞っていた。
投げ飛ばされたんだ。
「うわぁーん涼風ぁぁぁ怖かったよねぇごめんねぇひとりにしてごめぇぇん!」
投げ飛ばした等の本人はさっきの女の子に近き叫ぶ
「こっちこそ迷子になってごめんなさぁぁい」
まさに阿鼻叫喚だ……
「っと。おニーサン監視役の人でしょ?」ショートカットで赤い瞳の少女がこちらを見る。イヤーカフと繋がった紫の宝石が揺れる
「……ということは君たちが…」
「そうその通り!ぼくは雪都!葬儀屋一の元気っ子だよ!雪都ちゃんって呼んでね!」
よろしく!っと元気よく言う
にしても変わった服だチャイナ服に似ていて首元を全く見せない服だが袖の形は巫女服を思わせる服をしている。
「そしてそしてこっちが僕のパートナーのスーパーハッキングガール!涼風ぁ!」ばっと涼風と呼ばれる女の子を出す。
「うぇ!?あ えと 涼風って言います……えっと…よ よろしくお願いします!!」ブォンと勢いよく頭を振る。
ワンレングスの紫が透けて見える黒髪に紫の目。雪都ちゃんとは正反対の子だ……
「あぁ、よろしくね。」
とか言ってるうちにさっきの男達が意識を取り戻す。
「クソ!このガキ共生身でも力あんのかよ!」
生身でもって……
「やっぱりその言い方僕たちの仕事を知ってるみたいだ。」
雪都ちゃんが言う。
「前回の結都ちゃん達の件にも絡んでた組織の雇われって所だと思う。」
それに涼風ちゃんも反応する。前回の事件と同じ組織が絡んでいるという事はやはり彼らも捨て駒なのだろうか。
「四人……いいよ、かかって来……」雪都ちゃんの言葉が止まる。そして
「チッ囲まれてる、あーあやだなぁ。」
ばっと周りを見る。だが彼らと同じこちらを狙う人間は居ないようだが……
「監視役さん逃げますよ。相手は一般人の肉眼ではとらえられません。多くて60人は予想できます。」と涼風ちゃんが言う。
え60?何近くでバスツアーでもやってんの?
「一般の人間はまぁ見えないよなぁ僕たちは見えるけど。っとコイツらよく見たらどいつもこいつも犯罪者ばかりじゃないか」
雪都ちゃんが言う。
「呑気に言ってる場合じゃなくない!?待って!情報量多い!」
てか逃げないと……
気がつけば全身で風を感じていた
「舌噛むよ」とだけ言い俺を担ぐ雪都ちゃん。
目の前で先導をする涼風ちゃん
そして
二人は何故か街の建物を飛ぶようにして渡っている。
そこで俺は考えた。
あれ?俺女の子に担がれてる?
拝啓 お母様
俺お婿にも行けないかも知れません。(現実逃避)
着いたのは何も無い倉庫……いわゆる空き地だ。だがさっきの公園から一キロくらいしか離れてない一気に60人も雇える組織だ。
こんなとこしのぐ場所にもならない。
「ここじゃ追いつかれる!逃げるならもっと遠い所へ逃げないと!」僕の言葉に雪都ちゃんは
しーっと言って
「作戦があるんだ」
ガァンと鉄の扉が勢いよく開けられる。
「ここに居るはずだ!見つけ次第捕まえろ!男の方は殺して構わん!」っておーい、俺即殺されるパターンかーい
バタバタと走る音が聞こえる。
「それじゃぁ。行くよ。」と言い、雪都ちゃんは涼風ちゃんと別れ、二人とも反対方向に行く。
そして
「おーい!僕はこっちだよー!」
雪都ちゃんの声に男達が反応する。全員の視線が雪都ちゃんに向かう。反対側では涼風ちゃんが
「心冥、起動」
倉庫中に紫の炎が広がる。
心冥、現世とあの世を繋ぐ、いわば三途の川のようなものらしい
これが雪都ちゃんの作戦なのだろうか、
「よぉーし包囲完了!」と雪都ちゃんが言う。
「それでは」と涼風ちゃん
「「汚れた汝の醜い賊心」」
「祓ってみせようじゃないか」
雪都ちゃんが飛び出す。
男達の視線は雪都ちゃんの方へ向き彼女を追いかける。
雪都ちゃんはわざと遅く走る。
男達が雪都ちゃんに追いつこうとした次の瞬間……
「バァン☆」雪都ちゃんが銃を撃った。
男が一人倒れる。
けれどなにか違った。
消えないのだ。結都が以前倒した犯人…いやその心を表した化け物のようにはならなかった。
血がどくどくと流れ出る。
人を殺した。
噎せ返る様な鉄の匂いを感じ、その事実を脳が受け止める。
やめろ、やめてくれ。
声を出そうとするが口が動かない。
「この野郎!」男達がナイフを取り出し雪都ちゃんに向かう。
だがしかしそれすら雪都ちゃんはかわし、反撃の一蹴り、相手の首の骨が折れる音が聞こえる。雪白ちゃんと同じく、人間離れした力を持っているのだろう。男は動かなくなった。
残るはあと数人、雪都ちゃんが狙いを定め、即座に銃を撃とうとする。
しかしそこにまた新しく銃を持った男達が現れる。どうやらまだ雇っていた奴らがいたらしい。
男達が一斉に銃を雪都ちゃんに放つ。避けることなんて無理に決まっている。
俺は雪都ちゃんの方を見た
彼女は笑みを浮かべていた
そして彼女の前にひとつの影が落ちる。紫色のスカートが重力を伝えるように揺れる。
彼女は何かを振り回し銃弾叩き切る。
彼女の手には大きな鎌があった、バラバラと地面に真っ二つの銃弾が転がっていく。
「ここからが本番ですから」
大きな鎌をクルクルと回し、俺に話しかけるのは涼風ちゃんだった。
俺の目に映るのは男達の死体だけだった。
雪都ちゃんが銃をどかどかと撃ち
涼風ちゃんが鎌で切り裂いていく
女の子とは思えない程人離れした体力と能力にゾッとする
手も足も動かない。声も出せない。
どうにかして彼女達の殺戮を止められないのか。
入社当時、上司にもらった拳銃に手が置かれた。
『奴らを止めたきゃこれを使え、使えるやつはそういないがお前ならできるだろう。』
上司にそう言われた銃だ。皆ができないことが俺に出来るわけないだろう。そう思って受け取った銃を取り出す。実弾が入っているのか、または電気が流れるのか俺には分からないけど今はこれを使うしかない。
気がつけば雪都ちゃんが男達にトドメをさすところだった。
涼風ちゃんは雪都ちゃんを見ているだけ、止めるなら今だ。
「止まれ!」俺は叫び雪都ちゃんの銃を向ける。
反射的に涼風ちゃんが動いたのがわかった。後ろから鎌を握り直す音が聞こえたからだ。
「大丈夫だよ、涼風」
雪都ちゃんが言うと俺が構えた銃の先へ近づいてくる。
「撃ちなよ」
赤い瞳がこちらを見据える。
銃口に額をつけそのまま俺を見つめていた。まさかそんなこと言われると思っていなかったため動けなくなってしまった。
すると雪都ちゃんの上がっていた口角が降りていく。
つまらない
口がそう動いた気がした。
「管理官君さぁ自分がどんな人間なのか理解してないだろ」
銃口から離れ、気絶した男たちに近寄る雪都ちゃん。
涼風ちゃんは何も言わない。
ゆっくりと雪都ちゃんの方へ歩いて行く。
その手には先程の大きな鎌はない
「結都から聞いたよ。向こうの世界へ行ける«人間»は君が初めてだよ」
そう言いながら右手に銃を構える
「姉さんがね、どのくらい力があるのか試して欲しいらしくてね」
銃口が気絶した男に向けられる。
やめろ
これ以上はやめてくれ、
視界がボヤけてある光景が見えてくる。
誰か俺に向かって叫んでいる。
苦しい、熱い痛い
喉が焼けるような感覚、その感覚には少し覚えがあった。
「やめろぉぉぉ!!」
感情任せだった。朦朧とした視界の中で銃の引き金を引く。
実弾も、電気も出なかった。
その代わりに大きな衝動が俺に来た。
思わずひっくり返ってしまったが体勢を立て直し、銃を放った方を見た。
雪都ちゃんが膝から崩れ落ちる。
「うわぁいったぁ足がビリビリする。すっごいなぁ神魂諸共麻痺してる。管理官君の力、想像以上だわ。」
これじゃ攻撃出来んわぁーとのんびり言う。
涼風ちゃんが雪都ちゃんに肩を貸し立ち上がらせ俺にこう言った
「管理官及び«芦屋道國»(あしやみちくに)さん今回の件は上層部には話しません、ですがまだ完璧出ないとしても神魂を操作する力を持っている貴方を調べる必要があります。」
その後車に乗り、そのまま葬儀屋のみんなが待つ事務所件BARに向かった
雪都ちゃんの体はもう動くらしく狭い車内で手をブンブン回していた。隣では涼風ちゃんが新テクノロジー的なコンピュータをいじっている。青透明の板のようなキーボードがふよふよいっぱい浮いている。
「姉様達には報告書のような形で各自のスマホに送信しました。」
10分も経ってないのにこの働きぶり、俺負けてないか?
「そういや姉さん海外で仕事だったよね。早く帰って来ないかなあ〜」さっき撃たれていた(?)にも関わらず元気に雪都ちゃんが言う。
「いやぁさっきはごめんね?管理官君、悪いと思ってたんだけどこっちも色々あってさぁ…ね?」
雪都ちゃんに謝罪されては仕方ない。それよりもだ
「死体は……どうしたんだ?」
俺の一言で車内が凍るように静かになった。
「あれはね、神魂に呪いがかけられていて無理矢理命じられてるんだよ。雇われるってのはそういうこと、君が前回入った世界も今回の場合雇い主が出てこない限り意味がない。死体は後で処理班が来るよ、神魂の呪いは呪われた相手が死ぬまで解けない、だからあれは殺さないといけない。」
それが唯一の救いだから。
そう言われ空気がまた重くなる。
ピロン
俺のスマホが鳴った。上司からだ
「なんて送られたんですか?」
涼風ちゃんが聞く。
「えーと……雨月…さんが日本に帰って来たらしくてそれまだ他のみんなには伝えてないからせめて雪都ちゃんと涼風ちゃんには伝えておけって……」
二人が立ち上がる音がする
「帰って来るの!?」
横で叫ばれた。
耳がキーンとする
「こらこら二人とも管理官さんを困らせちゃ行けないよ」
タクシーの運転手であるおじいさんにそう言われると2人は静かに腰を下ろす。
この運転手は葬儀屋専用に雇われた佑夏さんの親族らしく、送迎係として特別に雇われているらしい。
「雨月姉さんが帰ってくる…!やった…!」
「姉さん達よりも先に話が出来るかもね!」こうして喜ぶ光景は女子高生と言えるだろう。
さっきの空気とは一変したが、少し安心した。
▓▢▓▢▓▢▓▢▓▢▓▢▓▢
「……予想よりも早く契約が終わって良かったです」
空港から歩きながら彼女はそう言った。
「あぁそうだね、なんのトラブルもなかったから俺も安心したよ」
横を歩く男はそれに応える。
「雫月兄様のおかげですよ。
っとそういえば先程飛行機の中で男性の方からメッセージアプリのIDのメモを頂いたのですが……」
メモ用紙を取り出し、彼女は言う
「……雨月、その男はなんて言ってたんだい?」雫月と言う男は笑顔で聞く。口角が少し引きつっているように見えるが。
「えっと、遊びたかったらおいでとだけ…どうしたらいいでしょうか?」
雨月と呼ばれた女がそう答えると、雫月は番号が書かれたメモ用紙をサッと雨月から奪い取る。
「じゃあ俺がその人と話してくるよ。雨月は乗り気じゃないんだろ?ついでに断りも入れとく。」
と言い、雫月はポケットにメモ用紙をつっこんだ。
「ありがとうございます。兄様は優しいですね。そう言うの、気配り上手って言うのですよね?」
雨月は嬉しそうに言う。
「そんなんじゃないさ、お前達を守るのも、くっついてくる害虫共を駆除するのも、俺がそうしたいと思ったからだよ。」
そう言って二人は葬儀屋へと向かう。
「さてと、彼はどのくらいで僕達と同じくらいに立てるでしょうか。」
雨月の手には一枚の写真が握られていた。