[短編版]老害扱いされ隠居した不老不死の大賢者であるエルフ美少女は田舎でスローライフを送りたい~私をBBA呼ばわりして婚約破棄した若い王子がいたらしいけどもう忘れました~世界の秩序が大変?知るかボケ。
短編詐欺じゃないです。
この話だけで完結します。
連載版
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それはいつもの議会の途中、唐突に起こりました――。
「残念だが、シルヴィア・エレンスフィード……あなたとの婚約はなかったことにさせてもらおう!」
私の婚約者であるクロード・キュプロス王子は、皆の前でそう宣言しました。
「はぁ、別に私は構いませんが……」
もともと、クロード王子の方から熱心に言い寄ってきたので、しぶしぶ婚約を受け入れただけの関係でしたし。
特に深い思い入れはありません。
婚約も短い期間でしたし――特に私にとっては……。
今思えば私は利用されただけなのかもしれませんね……。
「そして私はこちらのルリア・マシュコンレーさまとの婚約を決めました。彼女こそが私にとって、本当の運命の相手だったと気づいたのです!」
「はぁ、それはまた。おめでとうございます……」
なるほど、そういうことでしたか……。
まあ今までにもこの手の輩はいましたが……はぁ……。
それを私に報告してどうするつもりかは知りませんが……。
そんなことで私が心に傷を負うとでも思ったのでしょうか。
だとしたら考え違いもいいところです。
ルリア・マシュコンレー王女――リリンガ王国の王女……。
たしかにルリアは美人で、若く、頭もいい……理想の結婚相手です。
ですがそれと同時に、彼女は私にとっても大事な可愛い妹分でもあるのです。
そんな彼女の結婚を、祝福こそすれ、恨みなどする私ではありません。
「それに……あなたの横暴にはもう、うんざりだったのです。今後はご自身の身の振り方をわきまえたほうがよいでしょう」
「はぁ、そうですか……」
たしかに私は国の長でもない、ただの民間人です。
ただ人より知識がいくらか豊富なだけの、ね。
だけれど横暴な振る舞いなどした覚えはありません。
まあ、理由はなんでもいいのでしょうね……。
ただ私を厄介払いできれば、それで。
「それと、議会のほうも抜けてもらいたいのです」
「はい……?」
議会というのは、ここに集まった6人の王族たちからなる、六人国議会のことです。
ま、私は王族ではありませんが……。
私たちは世界の秩序を守るために、定期的に集まって、世界会議を開いています。
新世界秩序機構――ようはこの世界にとって、頭脳ともいうべき場所。
そんな重要組織から、私を追い出そうというのです。
「当然です。元婚約者がいっしょでは、いろいろやりにくいでしょう。それに、あなたもそろそろ引退したいのでは?」
引退……考えたこともありませんでした……。
ずっと仕事一筋でこの500年間を生きてきたものですから……。
まあ500歳と言っても、見た目は17歳のままですが。
それにもともと、エルフでもありますしね。
私は不老不死の魔術を100%の完成度で使用できる、唯一の存在です。
そんな私が生涯をかけてやってきたことは――この世界の秩序の構築と維持。
そう、この組織も、もともとは私が作り上げたものです。
だからこそ、私が抜けるなどと考えもしませんでした。
「ですが、他のみなさんはそれで構わないのですか?」
正直、私がいなくなって大丈夫なようには思えません。
私からみればみんな、まだまだ子供みたいなものですし。
世界の運営はそれほど簡単なことではありません。
幅広い知識と、確かな判断力が必要とされる、特別な仕事です。
ですが――。
「残念だがシルヴィアさん。これはみんなの総意なんだ。もう議会で決まったことなんだよ。これからは新しい考え方が必要な時代なんだ。悪いが今のあなたはもう……必要とされていない」
議長のドルス・シュマーケンは、神妙な顔つきでそう言いました。
新しい考え方ですか……たしかに、私のやり方は少々古臭いのかもしれませんね。
前々から、それをよく思っていない議会員もいたことは知っていますが……。
ですがこの議会が動かすのは国ですらない――世界そのものの命運です。
新しいやり方と言えば聞こえはいいですが、それはあまりにリスクが大きすぎる……。
何事も古来からの安定した方法というのは、確立された最適解なのです。
「はぁ、そうですか……。それは残念です。ですが議会の決定なのでしたら仕方ありませんね……」
◇◇◇
と、まあ……見事に厄介払いをされたわけですが……。
正直、痛くも痒くもありません。
この組織も、そろそろ私の手を離れる時期が来たのでしょう。
私が議会堂を去ろうとしていたところ――。
「お待ちなさい、シルヴィア!」
呼び止めたのは、私からクロード王子を奪った張本人である――リリンガ王国王女――ルリア・マシュコンレー。
まあ奪ったといっても、元からクロードにその気はなかったのでしょうけど……。
それにルリアは私にとっても大事な妹分。
ここは素直に祝福を述べるとしましょうか。
「あらルリア。気にしなくてもいいんですよ? 私は一向に構いませんから、どうぞクロード王子とお幸せになってください。ご結婚、おめでとうございます」
だがルリアは祝辞の言葉に眉をひそめた。
「よくもまぁ……そんなことが言えましたわね。皮肉ですの?」
「? はぁ……。ですから、気にしてないと言ってるじゃありませんか。元々クロードは私になんか気はなかったんですよ。彼はただ六議会に入るための足掛かりが欲しかっただけなのでしょう……。組織に入れた以上、もう私は彼にとっては用済みなのですよ。ぜんぶわかってます。お見通しのうえで、私はこの組織を去ることにしたんです」
私の婚約者であれば、六議会入りの話も通りやすいですからね。
クロードのヴァルム王国はなんの後ろ盾もない小国で、そうでもしないと中心国にはなれなかったはずです。
まあ、それで彼が満足なのであれば、私は別に構いません。
「私のクロードさまに、あんな仕打ちをしておいて……!?」
なんのことでしょうか……?
話が全然かみ合いませんね……。
「あんな仕打ち……? 私とクロード王子には、なにもありませんでしたよ?」
「……むきぃいいいい! なんていう女ですの! 年増の老害ババアのくせに!」
ババアとは失礼な! 私は肉体年齢ではまだぴちぴちの17歳なんですから!
ルリア……昔はこんな娘じゃなかったと思うんですがねぇ……。
私の妹分として、いろいろ教えて上げましたし、彼女も慕ってくれていたと思っていたのですが……。
みんなの前では猫をかぶっていたのかもしれませんね……。
「クロードさまから聞いたんですよ!? なにもかも、全部ね! あなたがクロードさまに変態行為で迫ったことや、遺産狙いで近づいたこともね!」
「はぁ……」
長く生きていると、いろいろ恨みを買うことはありましたが……。
これはちょっとお粗末すぎますね。
「……で、あなたはそれを信じると……?」
「あたりまえでしょう!? 汚らわしい! さっさと出ていってください!」
出ていってくださいって……。呼び止めたのはあなたじゃないですか……。
恋は盲目とはいいますが……これは……。
まあ、ルリアもクロードに利用されているだけなのでしょうね……。
私を追い出す口実に、手ごろな美人を味方につけた……そういったところでしょうか。
元々、ルリアも野心家なところがありますし……うまくそそのかされたのでしょうね。
まあ、せいぜい私抜きで頑張ってみてください、といったところです。
「もういいです。言われた通りに出ていきますので、もう放っておいてもらえます?」
「早く消えて! ババア!」
まったく……。困った子ですね……。
正直、私からすればルリアも子供みたいなものなので、なにを言われても駄々をこねているようにしか思えません。
「はぁ……。はいはい……」
私は複雑な気持ちで、議会堂を出る。
もはやこの先どうなろうが知ったこっちゃない。
私を手放したあなた方が悪いんですからね……?
◇◇◇
「ここに戻ってくるのも、何年振りでしょう……」
議会を追放された私がやってきたのは、かつての大国……私の生まれ故郷。
エルフの国――エルムンドキア。
およそ500年前に、エルフ族もろとも、滅び去った亡国。
「ただいま……みなさん……」
私は切り倒された大木の切り株に、手を添える。
これこそがエルムンドキアそのものと言ってもいい、象徴的な国宝――世界樹。
事件のあの日、切り倒されて以来、その効力を失っています。
エルムンドキアの世界樹は、その幹の中に不思議な力を宿していました……。
世界樹の切り口には、異世界に通じるゲートがあったのです。
それを利用しようとした愚かな人間たちに、エルフは滅ぼされてしまいました。
今ではゲートは私によって封印されていますが……。
絶対に許せません!
しかも人間たちの歴史には、エルフが悪者として記されています。
私は二度とこのような悲劇が起きないように、世界の秩序を保とうとしたのですが……。
とうとう人間たちとわかりあうことはできませんでしたね。
「そういえば、この周辺にはさっぱり来ていませんでしたね……」
ここに来ると悲しい思い出ばかりです。
500年たって、ようやく帰ってこれました。
「空中浮遊!」
私は宙に浮き、空中から森の周辺を見渡します。
遠くに、街のようなものが見えました。
「あれはなんでしょう……。こんなところに国が……?」
ここら一帯は不毛の土地、こんなところに人が住んでいるとは思えません。
実際、組織のデータベースにもありませんでした。
利用価値がないとされている土地ですから、他国に知られていなかったのでしょうね……。
世界樹が切り倒されたせいで、この地域にはろくな作物が実りません。
「行ってみましょうか……」
私は森を離れ、その向こうに広がる不毛の荒野を目指します。
◇◇◇
「あはは……! 待てー!」
国の中に入ると、子供たちが元気に遊んでいるのが見えました。
赤砂でできた土壁が美しい国です。
ですが、なんでしょう……この、独特の雰囲気は。
道行く誰もがみな、飢えているはずなのに、笑顔だけは絶えません。
このような国、他に見たことがありません。
ここらは不毛の地なので、住んでいる人も不幸だと決めつけていましたが……違うのでしょうか?
「あのーすみません」
私は、道行く一人の女性に話しかけます。
妊婦だというのに、明らかに栄養不良で瘦せすぎています。
「はい? なんでしょうか。旅のお方とは珍しいですね」
「あなたはこの国に住んでいて、幸せですか? 見たところ、食べ物が不足しているようですが……」
「はい。幸せですよ。確かに資源には乏しいですが、みなさん温かく、仲良く暮らしています。物がなければないで、ある物で暮らすだけですよ」
なるほど……。
他国にはない考え方ですね。
陸の孤島として発展したこの国独自の文化がたくさんありそうです。
「では、この国の王族についてはどう思いますか? この食糧難は、彼らの圧政のせいなのでは?」
「大変よき王族ですよ? 自らの食事を削ってまで、民に分け与えるほどです。あんな王族はいません。きっと神の祝福を受けていらっしゃるのだわ。王族たちは、我々民のために、精一杯やってくれています」
「そうですか。それはよかったです」
この国の王族は、幸せものですね……。
民たちにこれほど深く愛されて。
物質的には豊かでなくとも、心は豊かな国です。
そんな国の王に、はやく会ってみたくなりました。
「空中浮遊!」
「うわ!」
「いろいろ聞かせてもらって、ありがとうございました! お元気でー!」
「いえ……」
女性はその場で放心状態で飛び去る私を見送ります。
彼女のような民を、一人でも死なせたくありませんね……。
◇◇◇
「うぅ……困った。これじゃあ民を養うことが出来ない」
どうしたのでしょう……。
何か困っている男性がいますね。
見たところ、かなり立場が上の人物のようです。
あれは……お城でしょうか?
「あのー、どうされたんですか?」
「うわぁ! びっくりした……。あなたは……?」
「空中から突然すみません。私はシルヴィアと申します。お困りのようだったので……」
「と、とりあえず降りてきてください。あなたが何者か、詳しく知る必要があります。お茶でも出しますから、座って話しましょう……」
男性は、ひどく呆れたようすで私を城内に招き入れました。
まあ、急に空から見知らぬ人物が、しかも自分の国の城に現れたら、驚きますよね。
長く生きていると、こうした浮世の常識が欠けてしまいます。
「まずは、ここはどこなんですか……? 私はこの世界の秩序を、長らく管理していますが、こんな国は知りませんでしたよ?」
「ここは荒地の王国、ルキアール王国です。そして私は王である、リシアン・コルティサング」
「あなた、王様だったんですねぇ。どうりで高貴な格好をされているわけです……」
「ここが他国に知られていないのには理由があります。この地域一帯には、瘴気がまとっていて、遠くからだと観測できないんですよ。それに、わざわざこんなところまでやってくる人もいません。不毛の地ですからね。それに、瘴気を抜けるのにも危険がともないます」
瘴気……ですか……。
世界樹が切り倒されたせいで、ここ一帯には長年、瘴気が溜まってしまっているんですよね。
なるほど、それで他国の干渉を受けなかったというわけですか。
完全に陸の孤島と化していますね。
「でも、よくそんな状況で国が滅びませんでしたね……」
「この地域にあった他の国々はすべて、滅亡しました。ここが最後の砦です。不毛の土地でも、なんとかやってはこれたんです。幸い、出生率は非常に高い……まあ、産まれてもすぐに死ぬ子も多いんですが。ですがそろそろ限界です。瘴気が年々濃くなる一方で……」
「はぁ、そうなんですか……それは……」
知りませんでした……この隔離地域で、そんなことが起こっていたなんて……!
もっと早くにここに来ていれば、彼らを救えたかもしれません。
そうです――!
「わ、私に、この国が生き残るためのお手伝いをさせていただけませんか?」
「え? あ、あなたは……いったい何者なんですか……」
「私は500年生きるエルフの魔女です。大抵のことなら魔法でなんでもできちゃいます! だからどうぞ、私にお任せを!」
「は、はぁ……」
■■■
この500年で、私の心は氷のように冷たくなってしまっていました。
そして、そのせいで人を過剰に避けてしまっていました……。
あの日、私の最愛の女性だった――【リエリー】を失ってからというもの、私の時間は止まったままでした。
彼女との日々は、今でも忘れません。
私は基本、恋人は男性でと考えていましたが、彼女だけは別でした。
――【リエリー】は私に、言葉で呪いをかけました。
「シルヴィア、せめて……この世界をよろしくね。人間たちはまだまだ未熟だから、災いから守ってあげて……この世界の秩序を……」
彼女の最後の言葉が、それでした。
私が新世界秩序機構を立ち上げたのも、それが理由です。
まあ、それも失敗に終わったようですが……。
■■■
私は、この辺境の国――ルキアール王国でやり直してみたい!
かつてのエルムンドキアのような、小さくも温かい国……その理想の姿が、ここにはあるような気がします。
以前の私は、世界の秩序を守ることばかりに躍起になってしまっていたように思えます。
でも、この国を見て気がつきました。
【リエリー】が本当に喜ぶのは、こういう国の姿なのかもしれない、と。
こうして私、シルヴィア・エレンスフィードはリシアン・コルティサング王子の手助けをして、辺境の王国――ルキアール王国を滅亡の危機から救うことに決めたのです!
◇◇◇
「この国は、瘴気のせいで不毛の地なんでしたよね……?」
「はい、そうです。大昔はここまでではなかったらしいのですが……」
私とリシアンさんは、お城の中から城下町を見渡します。
見渡す限り、一切の緑はなく……赤茶けた砂壁の街が広がっています。
その外に広がるのも、荒れ果てた土地。
もう少し行けば、森があるのですけどねぇ……。
ここから徒歩では少々遠すぎますし……。
森の土地を農耕にというのは難しいでしょうね。
「では、まずはこの国にはびこる瘴気を祓うところから始めましょうか」
「えぇ!? そんなこと、できるんですか!?」
「ええ、可能です。私は500年生きていますからね。その間に、独自で魔法の研究をしていたんですよ、ずっと……暇でしたから」
「シルヴィアさん、本当になんでもできちゃうんですね……」
若干引かれたでしょうか……。
人は自分と違い過ぎるものには共感を示さないと言いますし……。
そのせいで議会を追放されたようなものです。
でも、リシアンさんは違いました。
ふと彼の目を見ると、そこには一切の畏怖がなく、むしろそれは尊敬と驚きの眼差しでした。
「あの……そんなにじっくりと見つめられると照れます……」
「あ! す、すみませんでした……。私、そんなに見つめていましたか?」
「ええ、それは……もう」
リシアンさんは顔を真っ赤にしてそむけます。
私まで恥ずかしくなってしまいます。
いい歳をして、なにを若者にときめいてしまっているのでしょうか、私は。
「い、いいですか? いきますよ! 土壌浄化!」
私は誤魔化すように、瘴気を祓います。
「すごいです……一瞬にして瘴気の風が消えました……」
「すぐにとはいきませんが、これでしばらくすれば作物が育つ肥沃な土地に回復するはずです」
「ありがとうございます、シルヴィアさん」
「いえいえ、お安い御用ですよ」
この調子でどんどんこの国を良くしていきましょう。
私のチカラを使えば、さほど時間はかからないはずです。
◇◇◇
【side:クロード】
俺はヴァルム王国の第一王子、クロード・キュプロスだ。
我が国は六議会に参加できるほどの国ではなかったのだが、老害エルフとの婚約を機に、なんとか議会に入ることができた。
「では、あの老害はもういなくなったことですし……我々は建設的な議論をしましょうか」
俺は議会のみなに、話しかける。
シルヴィア・エレンスフィードがいなくなった今、俺たちを止めるものは誰もいない。
あのババアに取り入るのには苦労した……。
だがそのおかげで、俺ははれて組織の一員となれたのだ。
その苦労がようやく報われる……。
「そうだな、クロードの言う通りだ。今まで何を提案しても、シルヴィアによって退けられ、自由な議論ができずにいた。おかげで世の中は数世紀もの間、たいした進歩もなしに停滞を強いられていた。だがそれも今日で終わりだ。我々の新たな時代が、すぐそこに来ている!」
さすがはドルス議長、みなを奮起させる、いい言葉だ。
だがまあ、いずれはその席も、俺のものだがな……!
「まずは最初の議題だ。誰か、何か言いたいことがあれば挙手を願おう」
ドルスがみなに訊ねる。
「いいですか?」
――スッ。
俺はここぞとばかりに真っ先に手を挙げた。
「なんだクロード? 話してみてくれ」
「老人を冷遇するというのはどうでしょう? 彼らは何も生み出しません、あとは死にゆくのみ。それはシルヴィアを見ていてもよくわかったでしょう?」
「たしかにそうだが……それはやりすぎではないのか? 明らかに私怨が混じっているように聞こえるが……?」
ドルスめ……話の分からんやつだな。
俺はなにも老人をすべて迫害し、殺せと言っているのではない。
現在職に就いていないものや、生産を行っていない人口を減らすだけだ。
「そんなことはありません。彼らは口だけで、我々の邪魔ばかりします。なにも殺せというのではありません。彼らを国外へ追放しましょう! そうすれば、国の生産力は間違いなく向上しますよ!」
「だが、どうやって老人を外へ追い出す? 出ていけと言って素直に従うか?」
「そこは考えがあります。老人を廃棄した世帯に、補助金を配るのです。これくらい、痛くもありません。未来の生産力への投資です。これによって出生率もアップすること間違いなしです!」
「うーん、そうだなぁ……まあ確かに……」
クソ、ドルスの奴、慎重にもほどがある。
だがあともう一押しだな。
俺は新婚約者、ルリア・マシュコンレー王女に目くばせする。
すると、ルリアは無言でうなずき。
「ドルス議長、私からもクロードさまのアイデアを推薦しますわ。彼の意見は素晴らしく機知に富み、鋭い考察だと言わざるを得ません。これを採用しないのは、組織、いや人類にとっての損失ですわ」
「まあ、ルリアさんがそこまで言うのなら……。そうだな……」
ルリアの援護で、どうやら可決できそうだな。
これで婚約した甲斐もあったというものだ。
我々二人が議席を抑えていれば、我々の案が通りやすくなる。
「よし、それでは決まりだな。今日のまとめに入ろう」
その後、ドルスを中心に、報告書が作成された。
会議の内容は書面に残しておくことで、後からのトラブルを避けられるのだ。
●報告書●
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・老人追放 / ヴァルム王国 / クロード・キュプロスにより提案、可決
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて、これがどう転ぶかな……。
上手くいくことを祈ろう――。
◇◇◇
「どういうことだ!? 老人を追い出したら、治安が驚くほど悪化した……」
俺たちは混乱していた、まさかこんなことになるなんて!
俺の考えた政策は完ぺきだったはずだ、老人を追い出せば、この国はよくなるはずなんだ!
「おいクロード、どう責任を取ってくれる!? お前の提案のせいで、とんでもないことになったぞ!」
ドルス議長が大声で俺を責め立てる。
なぜ俺ばかりが責められなきゃならない!?
「っは! みなさん同意の上での可決だったではありませんか!」
「うるさい! なんとかできなきゃお前も追放だ!」
「っく……!」
まずい、このままでは俺は落ちぶれてしまう。
せっかくシルヴィアのババアに取り入って、この議会に入れたのに、それがすべて無駄になってしまう!
「各地で暴動まで起こりだしたぞ! どうするんだ! 取り返しがつかなくなってしまう。このままでは我々の権力すら危ういぞ!」
「そんなの、もう一度老人たちを連れ戻せばいいでしょう」
「そういう問題ではない! 国民が怒っているのは別のとこだ。キサマ、賄賂によって一部の金持ち連中の追放を特別に見逃しただろう! そのせいで国民は格差社会に疑問を抱き始めている!」
クソ……。
国民も馬鹿ではないというわけか……。
だがなんで俺が怒られなきゃならない!?
こいつらも全員、同罪なはずだ。
「それに、補助金欲しさに居もしない老人の名前で申請したりと、混乱が起きている。さらには危機を感じた中年層の犯罪率が跳ね上がった!」
「そんなことを言われても……。こんなはずではなかったのです! 俺の考えでは……!」
「いい訳はもういい! それより、解決策を考えよう」
そんな、もうおしまいだろ……。
こんな状況を解決しろだなんて、そんなこと――。
――いや、一つあったか。
「では、シルヴィアさんを頼りましょう」
「はぁ!? クロード、お前正気か!? 我々はシルヴィアさんを追い出したじゃないか! それなのに、彼女が助けてくれるとは思えない……。それにあんなババア、もはやなんの役にも立たないじゃないか!」
「いや、あんな耄碌ババアでも、魔法の腕だけは確かです。この状況をなんとかできるはず……」
「そうまでいうなら、お前が連れてくるんだな……!」
こうして俺は不本意ながらも、しぶしぶ旅立った。
◇◇◇
【side:シルヴィア】
私がルキアール王国に来てから、数か月が経ちました。
その間に私がやったことと言えば――。
土地の改造、それから農耕改革、さらには政治に関する改善まで、多岐にわたります。
この国のみなさんの努力もあって、今ではすっかり国力を取り戻しています。
あれだけ荒れ果てていた土地は、もはやどこにも面影がありません。
辺り一面緑に囲まれ、たくさんの作物が育っています。
「いやぁ、これもシルヴィアさんのおかげですよ」
「いえいえ、リシアンさんもかなり頑張ってましたよ。私一人の力じゃありません」
私たちは、豊かになった国をしみじみと感じながら歩いて回ります。
みなさん熱心に農業に励んだり、興行にいそしんでいます。
「あ! リシアン王、それにシルヴィアさんだ!」
「ほんとだ! 今日もお似合いですねぇ!」
「もう、みなさん茶化さないでください」
二人で歩いていると、よくこうして声をかけられます。
国民との距離が近くて、気さくな王様です。
私はそんな平和な、この国が大好きになりました。
だけどそんなある日、招かれざる客が訪れたのです――。
「シルヴィアさん、昔の知り合いだという方がいらっしゃってますが……」
私はお城の一室をお借りして、そこに寝泊まりしていました。
来客を知らせに来てくださったのも、お城の報告係の方でした。
「ありがとうございます。今、参ります」
私が広間へ行くと、すでにリシアンさんが来客を対応されていました。
「リシアンさん、私の代わりに……? お城へ通してよかったのですか?」
「当然です、シルヴィアさんの昔の知り合いなのでしょう? でしたら、面会を断る理由はありませんよ。むしろ、私もシルヴィアさんの昔話を聞かせてもらいたくて、こうして先にお通ししたのです」
「はぁ、そうですか……」
たしかに、リシアンさんからすればそうなるのでしょう……。
ですが、この来客は……。
昔の知り合い、と言っても――。
「なんの用でしょうか、クロード・キュプロス王子……?」
そう、来客とは、私を追放した張本人である――ヴァルム王国のクロード・キュプロス王子だったのです。
いったいどの面を下げてやってこれたのでしょうか。
しかもわざわざ私の行き先を調べ上げたなんて……気持ち悪いです。
「これはこれはシルヴィアさん、つれないじゃないですか。元婚約者が、わざわざこうして訪ねてきたのですよ? もっと歓迎してくれてもいいんじゃありません? ねえ、リシアン王」
「えぇ!? お二人は婚約関係にあったのですか!?」
「勘違いしないでくださいリシアンさん。彼はデタラメを言っています。こんな人の言うこと、信じないでください」
「おいおい! 失礼だなぁ! この国は客人にそんな対応するのかよ!」
相変わらず嫌な感じの人ですね……。
これがクロードの本性というわけですか。
今思うと、さっさと婚約を破棄出来てよかったです。
「それで、今更なんの用なのでしょうか?」
「ああ、そうでした……。実はですねぇシルヴィアさん。あなたが居なくなってしまって、大変困っているのですよ……」
「はぁ……?」
自分たちから追い出しておいて、何を言っているのでしょう?
さすがに低知能すぎて呆れます……。
言ってることが滅茶苦茶ですね。
「いえね、あれから皆で話し合って、老人を追放することにしたのです。ですがその政策は失敗に終わりました……。なのでこの状況をなんとかしてほしいのです。暴動が起きてしまって、正直手に負えない」
「え……」
私はクロードの言葉に絶句しました。
本当のバカなのでしょうか……。
まさか私が居なくなって数か月で、ここまでの失策をやらかすとは思ってもみませんでした。
本来であればクロードの国は、議会に参加できないほどの小国です。
なのでクロードの知識や統治能力も、大したことないことは、百も承知でした。
ですがまさかここまでとは……。
「そんなの、あたりまえじゃないですか。自業自得ですよ。というか、他の議会員がよく許しましたね……」
まあきっと、私がいなくなったところで調子に乗っていたのでしょう。
議会揃って無能ですね……。
いくら経験がないと言っても、これは……。
歴史を学ばないからこうなるんです。
私は500年の間に、知識の累積がありますからね、こんなへまはしません。
「そこをなんとか……! 私も後悔をしているのです! あなたを追い出してしまったことはこの際ですから謝ります! ですからどうか、最後に一度だけお助けください! シルヴィアさんの魔法なら、なんとかできるはずです!」
「そんな、暴動を鎮めるなんてこと、無理ですよ。魔法で人の心までは操れませんからね。民の心が一度離れたら、その国はもうおしまいですよ」
まったく、このルキアール王国を見習ってもらいたいものですね。
するとそこで、さっきまでは比較的穏やかに話していたクロードが、豹変しました。
「っち……下手にでりゃあ、さっきからなんなんだよ! 結局なんにもできねえ、口先だけの老害ババアのくせに!」
ついに本性を表しましたね……。
まったく、愚かにもほどがあります。
どうしましょうかねぇ……。
私がどう対処するべきか悩んでいると、リシアンさんが急にクロードへと詰め寄りました。
「な、なんだよ!?」
「さっきから聞いていれば……なんなんですかあなたは! シルヴィアさんに向かってその態度は!」
リシアンさん、私のために……。
「っは! 俺はヴァルム王国のクロード・キュプロス王子だぞ? それに新世界秩序機構の一員でもある。そんな俺に、こんな小国の王ごときがたてつこうっていうのか?」
「そんなことは関係ありません、シルヴィアさんは私の恩人です。そしてこのルキアール王国の救世主です。あなたのようにシルヴィアさんにあだなす者は、この国にとっても敵です」
リシアンさんの気持ちは嬉しいですが……そんなことを言って大丈夫なのでしょうか……。
「ほう……? その言葉、忘れないぞ? こんな無礼な小国、ひねりつぶしてやるからな。覚えておけよ?」
クロードはそれだけ言うと、怒ったまま帰ってしまいました。
「リシアンさん、ありがとうございました。ですが、リシアンさんまで彼の恨みを買ってしまったのでは?」
「大丈夫ですよシルヴィアさん。あんな男怖くありません。それに、この国も国力を取り戻しつつありますので……。彼らの国からこの国を攻めようと思うと、険しい山や森を抜けてこなければなりませんからね。そう強くは出てこれないでしょう」
「そうですか……」
だといいのですが……。
まあ、クロードの国は暴動が起きていると言っていましたし、戦争どころではないでしょうから……。
放っておいても大丈夫かもしれませんね。
◇
【side:クロード】
くそうシルヴィアの奴め……俺を見捨てやがって……。
このまま帰るなんて屈辱だ。
それに、暴動をおさめる方法も完全に尽きた……。
万事休すか。
「みなさん、戻りました」
俺は憂鬱な気分で議会員たちに会いに行った。
「クロード、それで……シルヴィアさんは? どうだった?」
「ダメでした……」
「そうか……ならもう終わりだな……」
「え……?」
「クロード・キュプロス王子、君は新世界秩序機構を追放だ。短い間だったがこれでさよならだ」
ドルス議長は、表情を変えないまま淡々と俺にそう言った。
「そんな……!」
「もう暴動をおさめるには、これしか方法はないんだ。お前が責任を取って、平民に落ちる。それで手打ちにしようということになった……」
は……?
今なんて……?
ドルスはなんて言ったんだ?
「待ってください! 平民落ち!? そんなことになったら、俺は殺されてしまう!」
「まあ、そうかもな。残念だ」
ヤバい……ドルスの目は本気だ。
俺は切り捨てられたのだ、組織のために……。
こんな非道なやり方、許されるのか?
そもそも俺が責任をとったところで、本当に民たちは静まるのか!?
俺は無駄死にはごめんだ。
そうだ!
俺にはまだ愛する婚約者がいたじゃないか。
シルヴィアとは違い、若く美人で頭もよく、権力もある優しい女性。
「お、おい! ルリア俺を助けてくれ! このままじゃ殺される!」
俺はルリアに懇願する。
だが……ルリアの目は、ひどく冷めきったものだった。
あれほど俺に羨望の眼差しを向けてくれていたというのに……!
今ではまるでゴミでも見るかのような、軽蔑した目。
「は? 王族でもなくなったあなたに興味なんかないですわ……。まったく、いい迷惑です。私も見る目がないですが……あなた、頭悪すぎでは? 将来有望な若い優良物件だと思っていたのに、まさかここまでのマヌケとは思いませんでしたわ」
「っく……!」
俺は絶望した。
この女、手のひらを返しやがって……!
俺に惚れていたというのは嘘なのか!?
だが次の瞬間、ドルス議長の口からとんでもない言葉が言い渡される。
「は? ルリア・マシュコンレー殿、なにを言っているんです? あなたもクロードと同じですよ?」
「は?」
さっきまでのルリアのすました顔が、一瞬にして絶望の表情に変わる。
「あなた、クロードの案に賛成しましたよね? それに、こんなバカと婚約しようだなんていう人間は、組織に必要ありません。すでに後継の代表者は決まっています」
「きさまあああああああああああああ!!!! ドルス!!!!」
ルリアは鬼の形相で叫んだ。
そうか……最初から俺たちは議長の手のひらで踊っていたのかもな……。
俺たちを議会から外して、空いた席にドルスの手のものを座らせる気だ。
こうして俺たちは、シルヴィアと同じように議会を追放され……。
さらには身分も奪われた。
着の身着のままで放り出されて……。
明日にはおそらく死ぬだろう。
怒りにかられた民にでも見つかれば即座にヤられる。
そうでなくとも、数日のうちに餓死して終了。
温室育ちの俺たちに生きるすべはない。
「あああああああああああああああああああああああああ!!!!」
俺は思いのままに叫んだ。
だがその叫びは、誰に届くわけでもなく――議会堂にこだました。
◇
【side:シルヴィア】
「そういえば、クロードは老人を追い出したと言っていましたが……。その後老人たちはどこにいったのでしょう……」
私はふと疑問に思い、それを口に出しました。
民が暴動を起こしたからといっても、それまでに追放された老人は、すでにどこかにいってしまったのでは?
組織加盟国にはいられないでしょうから、それ以外の地域を目指して旅立った可能性もあります。
最悪の場合だと、その道中で……。
いや、考えるのはやめましょう。
「そうですね、シルヴィアさんの言う通りです。行く当てがなく困っている人がたくさんいるかもしれません」
「それに、クロードの国はもう立て直しが効かないほど混乱しているでしょうから……それに伴って難民が発生してもおかしくありません」
残念ですが、どうしようもありませんね。
私はもう組織の人間ではありませんから……。
私が干渉するのは、難しいでしょう。
ですがリシアンさんは、思いがけない提案をしました。
「どうでしょうシルヴィアさん。その方々たちを、我々のルキアール王国で受け入れる、というのは」
「えぇ!? でも、リシアンさんはそれでいいんですか?」
「ええ。私はシルヴィアさんに助けてもらいました。だからこそ、私も誰かを救いたい。それは、他の国民たちも同じ思いだと思います。きっと彼らを歓迎しますよ」
リシアンさんはなんて立派な方なのでしょうか……。
そういえば、私のかつての恋人――リエリーも彼のような正義感にあふれた人物でした。
「でも、この国にそんな余裕は……」
「それも大丈夫ですよ。シルヴィアさんのおかげで、瘴気がなくなったので、この辺りにはまだまだ利用可能な土地がいくらでもあります。それに、またシルヴィアさんのお力をお借りする事にはなるのですが……きっと、みんなで力を合わせれば、乗り越えられますよ!」
「リシアンさん……そうですね。私も頑張ってみます」
ということで、難民をルキアール王国で受け入れることになりました。
そうと決まれば、急いで私の魔法で彼らを探しだし、こちらに転移させましょう。
転移はものの数週間で終わりました。
新たに国の領土を広げ、彼らに土地を与え、農作業をしてもらいます。
ここら一帯は長年の瘴気のせいで、ルキアール王国以外には国がないので、独り占めし放題です。
老人たち以外にも、今回の件で組織に不満を持った一部の人たちも、受け入れることにしました。
これからルキアール王国はますます発展していくことでしょう。
私も楽しみです。
私とリシアンさんも、力を合わせて上手くやっています。
彼とは本当によく気が合いますし、なんといっても誠実です。
クロードなんかと違って、彼には全幅の信頼を置けます。
そんな忙しくも充実した毎日が過ぎ――。
ある日のことです。
「シルヴィアさん……ぜひ、私と結婚して……この国をずっと支えていってくれませんか? 私にはもう、あなたなしの人生など考えられない。それはあなたの力だけを見て言っているのではありません。この何か月かを共に過ごしてみて、あなたがかけがえのないパートナーだと思えたのです。互いに信頼し、尊敬しあえる関係を、これからも築いていきたい」
リシアンさんの急な告白に、私は驚きました。
いままでにもクロードのように政略的な意味での婚約を持ち掛けてくる人間はいましたが……。
リシアンさんの目は本気でした。
彼は私に、心から恋をしてしまっているのでしょう……。
「あの、大変うれしいのですが……。いいんですか? 私、500年も生きているんですよ? おばあちゃんです。こんな年上でも構わないんですか?」
「関係ありませんよ。私の魂が、あなただと言っているのです。それに、こんなに可愛らしいおばあちゃんなら、大歓迎ですよ」
リシアンさんの手が、私の頬に優しく触れます。
顔が熱くなっているのが、バレてしまいます……。
私も、彼と同じ気持ちでした。
共に過ごす中で、彼に惹かれていったのは事実です。
ですが――。
それでも素直にはいと言えない理由がありました。
「私には――リエリーという恋人がいました。もう数百年も昔のことです」
「はい」
リシアンさんはそれだけ言うと、私の目を見て話を聞いてくれました。
なにを話しても受け入れてくれる、そんな安心感がありました。
「私はリエリーを、彼女を殺してしまったのです」
「……」
「正確には、そう望んだのは彼女自身でした。私は自分の都合で、彼女を自分と同じ不老不死の身体に変えました。最初の内は、彼女もそれを喜んでくれていました。ですが……長い時間が過ぎるにつれ、彼女は考えを変えていきました」
「そんなことが……」
「最後には、彼女は自死を選びました。もう殺してくれ、もう終わりにしたい。そう言った彼女の顔が、今でも忘れられません……」
私は、リシアンさんを受け入れて、その後拒絶されることが怖いです。
また、あの時と同じことを繰り返してしまうのではないかと――。
ですが、リシアンさんは笑って言いました。
「大丈夫ですよシルヴィアさん。私は、シルヴィアさんと一緒なら、何百年だって生きていたい」
「最初はリエリーもそう言いました。でも、違ったんです。時の流れに、彼女は耐えられなかった。もう、これ以上失うのは嫌です……」
「では、こうするのはどうでしょう――」
リシアンさんは私を優しく抱きしめました。
ようやく私は、ともに年を重ねていける相手を見つけたのかもしれない。
◇
あれから、私とリシアンさんは結婚し、ともに国をおさめていくことになりました。
多くの国民がそれを祝福し、すべてが上手くいきました。
あのときリシアンさんが私に言った言葉。
――ともに年を重ねましょう。いっしょに、生きて死にましょう。
その言葉の通り、私は不老不死であることをやめました。
私の作った魔法で、不老不死になっていたのですから、それをやめることも簡単です。
私はずっと怖かった。
一人で死ぬのが怖かった。
だから、不老不死であり続けました。
でも、リシアンさんの腕の中で、心底安心した私は、思ったのです。
彼となら、なにも怖くない――と。
かつて私は恋人を身勝手に不老不死にしてしまったことで、不幸にしてしまいました……。
それは今でも後悔しています。
ですが、今度は逆に私が相手に合わせることで、幸せをつかめたような気がします。
ありがとう、リエリー……。
ごめんなさい、リエリー……。
ありがとう、リシアンさん。
■■■
「シルヴィア、せめて……この世界をよろしくね。人間たちはまだまだ未熟だから、災いから守ってあげて……この世界の秩序を……」
■■■
かつてリエリーは私にそう言いました。
あれは、どういう意味だったのでしょうか。
少なくとも、組織は失敗だったように思います。
今のこの国を、ルキアール王国を彼女が見たらどう思うでしょうか……。
国民全員が、幸せそうに暮らしています。
これこそが、彼女の理想の国の形だったのかもしれませんね。
私はリシアンさんと、そしてこの国と出会ったことで、ようやく気付けました。
「見てますか、リエリー。この国は……この世界は、こんなにも美しいです」
国のはずれの、小高い丘に、リエリーの墓をたてました。
そこからは、国全体が見渡せ、緑に広がる草原が美しく輝いています。
――Fin.
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