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奇怪なお茶会 その2

3月ウサギは一回しゃべりだすと止まらず、セニフが非常に読みずらくなってしまいました。読む方は大変だと思いますが、頑張って読んで下さい。

真っ白なテーブルクロスに大きな大きなテーブル。そのテーブルに溢れんばかりに並べらたお茶菓子達。かわいいティーポットとティーカップが均等にテーブルに並び、まさにお茶会の雰囲気漂う会場。



ただ一つ気になることがあるとすればテーブルに男がまるで死んだのかのように突っ伏していることとその隣で盛大な笑い声を上げいる男がいることだ。



どちらが3月ウサギかは聞くまでもなかった。



「ねえ、あれが3月ウサギよね? あの笑ってるハイテンションの人の方」



「そうだ、あれが3月ウサギだ。気をつけろ。あまり関わらない方いい」




帽子屋は渋い顔をしながらそう言い、笑う男を見る。



「ねえ、あのテーブルに突っ伏してるのは誰?」



「あれはネムリネズミですよ」



「ネズミさん?」



「ええ、バカ真面目な性格のため、3月ウサギに毎回お茶会の準備に付き合わされて一睡も出来ず、いつもああやってお茶会当日に寝込んでるんですよ」



だからネムリネズミ。おかしいでしょと言って笑う白ウサギ。



何だか初対面だがネムリネズミが哀れに思えてきた。



私が2人を遠目から見ていると、ふと3月ウサギが笑うのを止め、私達の方に気づいたのか視線をやる。



視線が合い。私は曖昧にお辞儀する。



「ど、どーも……」



3月ウサギは私の方をじっと見たかと思うと突然、大きな声を上げた。



「アリスじゃないか!? アリス! 君という奴はそこの帽子屋の影響を受けて頭がイカレてしまったのかい? それともその頭は元からかい? まあ、このさいそんな小さなことはいいとしよう。私は心が広いからね。例え君が11時間とちょっと遅れようと……あ、今12時間になったね。君が12時間遅れようと私は平気だ。なにせ3月ウサギだからね。さあさあ座ってくれたまえ。いや、笑いが止まらないよ。君が新しいアリスか。よろしく、アリス! そして誕生日おめでとう!」


ああ……どこから突っ込めばいいんだろう。一息で一気にしゃべられたもんだから全くもって話がわからない。



とりあえず立っている訳にもいかず、席に座る。すると帽子屋と白ウサギは両隣に来て座った。



「えっと……遅れたことは申し訳ないと思うけど……私と貴方は初対面だし、そんな約束した覚えもないし……って言うか別に今日は私の誕生日とかじゃないんだけど……」



「何を言ってるんだい? アリスはお茶会に出るものだし、お茶会が真夜中であろうと昼だろうとそれは私の勝手だ。それに今日が君の誕生日でないとしても私がそう言ったのなら今日は君の誕生日だ」



「何でそうなるのよ……」




全く道理がわからない。



困惑する私をよそに帽子屋と白ウサギは隣で深々とため息をついていた。



「アリス、そのバカの話をまともに聞いてはいけませんよ。そいつの頭はいつだっておめでたいんですから」



「まともに相手にするな……言わせたい事を言わせとけ」



「そんな事言うなら何でお茶会なんて連れてきたのよ」



「仕方ないだろう。アリスはお茶会に出ると決まっているんだ」



「だれがそんな事を……」



決めたのかと聞くよりも前に3月ウサギがああと声を上げる。



「そうだな、そうだ。アリス! 君はいい質問をした! 何故アリスはお茶会に出るものなのか、それについてじっくり話し合おう!」



「別に話し合わなくてもいいんだけど……」




私のその言葉は見事に無視され3月ウサギは話しだす。



ここまできたらもう気にしたら負けなのかもしれない。



そう1人納得して、3月ウサギの話をいちよ聴くことにする。



「アリスが何故お茶会に出るか! アリスはお茶会に出るものだとアリスが決めたからだ!」



「アリスが決めた?」



当然、私にはそんなものを決めた記憶はない。と言うことは私以外にもアリスと呼ばれる少女がいるという事だろうか?



「アリスって……」



「アリス! いいところに目をつけたね! ラズベリーよりブルーベリーの方が紅茶によく合う!」



「はあ?」




「そうだ、そうだ! 君はチーズケーキが好きだろう! さあ、どんどんお食べ」



「えっ……や、そうじゃなくて……」



「チョコレートケーキ? あんな甘いものは駄目だよ! 紅茶の風味が消えてしまう!」



「え、だから……その……」



「紅茶のおかわりだね! いくらでも飲みなさい! 君のために用意したんだ」



駄目だ……完全に話を聴いてない……。



私ががっくりと肩を落とすと白ウサギが心配そうな顔をする。



「大丈夫ですか、アリス? あんな奴の話なんか聴いても無駄ですよ。それより私と2人っきりで甘いお茶会でもしませんか?」




駄目だ。3月ウサギは全く私の話を聴いてくれないし、隣にいるウサギは妄想の世界へと飛んでいる。



私は縋るような思いで隣に座る帽子屋を見た。



が帽子屋は気にもせず紅茶を啜っている。


もうなんなのよ。みんなして勝手な事して。


仕方なく自分で考える。


「アリスが決めたってことは……私以外にもアリスがいたってこと?」



誰に言った訳でもないその疑問に意外にも反応したのは3月ウサギだった。



「そうだよ。アリスは毎回やってくる。白ウサギに連れられてこの不思議の国にやってくる。そう決まっているんだよ」



「決まってるって…だから誰がそれを決めたの?」




「最初にやってきたアリスがそう決めたんだ。彼女は突然、我々のもとにやってきて、我々に名前を与え、力を与えた。我々にとってアリスは絶対的な存在なんだ。我々はアリスのために、アリスだけのために存在している。ここは不思議の国。アリスがそう名付けたアリスの国だ。ようこそ新しいアリス。我々は君を歓迎するよ」



そう言って3月ウサギは笑う。白ウサギとはまた違う、淡い赤の瞳が静かに私を見つめてきた。

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