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白ウサギに連れられて その5

遂に第1章完。城に行くまでどんだけ時間かかってるんだよ。

「アリス! 帽子屋に何かされていませんか? どこか触られたり、嫌なことを言われたりしてないですか?」



「大丈夫よ。それよか貴方は自分の頭を心配したらどう?」



「私の心配をしてくれるんですか? 貴方は…優しいですね」



もう駄目だ。こいつの頭はどうやっても治りそうにない。



呆れる私をしりめに白ウサギはご機嫌な様子で隣にやってきた。さっきまでの機嫌の悪さが嘘みたいだ。チェシャ猫も帽子屋も完全に呆れたような表情で白ウサギを見ている。




「白ウサギをそこまで虜にするなんて……可愛い顔して意外とやるんだ」




「言っておくけど私は何もしてないから! 勝手にこいつが一方的に好意を抱いてるだけだから!」



「そんな一方的だなんて。本当はアリスだって私のことが……」



「ありえない! 絶対にそれはない!」



「もう、照れ屋なんですから」



気持ち悪い! なんなのこいつ!? 1人で勝手に妄想しないで!



色んな意味で寒気を感じていると帽子屋が不機嫌そうな声をだす。



「時間はとうに過ぎていると言うのにお前達はいつまで遊んでいるんだ?」



私に向かってそんなこと言われてもどうしようもない。ちらりと白ウサギの方を見れば帽子屋を鋭く睨んでいた。



「さっきからお前は本当にうるさいな」




「お前がアリスを惑わせるからいけないんだ。それに急がないとお茶会が始まる。早くあのバカウサギを止めてくれ……」



そう言って帽子屋は額を抑える。何だか嫌な気がしてきた。これ以上変なのが増えるのはごめんだ。



「待って。バカウサギって……白ウサギの他にもバカなウサギがいるわけ?」



「アリス! 私を三月ウサギなんかと比べないでください。あいつこそ頭がどうかなってるんですよ!!」



チェシャ猫と帽子屋が黙り込む。否定をしないところ見るとどうやら事実らしい。



また……変なのが1人……。だんだん泣きたくなってきた。






「ねえ、アリスってこれから城に住むの?」




「当たり前だろう? あそこはもとからアリスのための城なんだからな」



「じゃあ、俺の部屋に来なよ。添い寝とかどう?」



「冗談じゃない! お前みたいな危ない奴とアリスが部屋を一緒にする? ありえない。それならいっそ私のところに……」



「いい、遠慮する」



白ウサギと同じ部屋に住んだりしたら何をされるかわかったもんじゃない。断固として拒否だ。



「お前らはバカか? あそこに部屋なんか掃いて捨てるほどあるだろうが」



ため息をつきながら帽子屋はそう言い、2人を睨みつける。どうやらこの中で一番まともなのは帽子屋らしい。



私は先ほどチェシャ猫に邪魔されてしまった質問を思い出し、再度白ウサギに尋ねる。



「ねえ、結局私、お城行ってどうすればいいの?」



すると白ウサギがその質問に答える前に帽子屋が答えた。



「詳しい事は城についてから話す」



帽子屋はそれだけ言って、私を一別もせず、さっさと歩き出す。



何と言うか……帽子屋はあまり私の事をよく思っていないようだ。まあ、執拗に好かれるよりは全然いいんだけど。



そんな事を考えているとチェシャ猫が隣にやって来た。



「ア~リス」



名前を微妙に伸ばして呼ばないで欲しい。注意しようかと思って、彼が白ウサギに負けない危険人物だということを思い出し、止めた。



「何……?」



「そんなに露骨に嫌な顔しないでよ。俺、ただアリスと仲良くしたいだけだからさ」



普通に考えて、自分を撃ち殺そうとした相手と仲良くできるだろうか?



はっきり言おう。無理だ。私の考えてることを感じとったのかチェシャ猫はにやにやしながら言う。



「そんなに怒んないでって。ちょっと興味があっただけなんだ」



「興味本位で私を殺そうとしたの?」



「まあ。でも実際無事だったからいいよね。ね?」



何がねだ!? 言いかえそうと思ったが相変わらずのにやにや顔に私は言い返す気も失せ、結局何も言わなかった。




「まだちゃんと自己紹介してなかったね。俺はチェシャ猫。よろしく」



そう言ってチェシャ猫はにんまりと笑う。



「それって名前じゃないでしょう……」



どう考えてもチェシャ猫は名前ではない。白ウサギと同じたぐいのものだろうか?



「呼び名ってやつ?」



「そうだよ。俺の呼び名はチェシャ猫」



「チェシャ猫ね……」



私はため息をつきながらチェシャ猫を見る。にこにこと笑うチェシャ猫。よくよく笑顔の似合う奴である。



仲良くしたいね……。それも悪くないかも。そうよ、不良少年が友達になったと思えばこのぐらいなんてことはない。



例え……相手が二丁の拳銃をいきなりぶっ放すような、危ない奴だとしても。




例え興味本位で人を本気で殺そうとしても。



何だかひどい頭痛がしてきた。








「あの猫…私のアリスに馴れ馴れしい……本当に殺してやるべきか」



「お前は何を言ってるんだ……」



アリスとチェシャ猫が並んで歩くのを見て、今にもきりかかろうとする白ウサギに帽子屋は深くため息をついた。



「あんな猫がアリスの隣を歩くなんて許される事じゃない!」



「前から可笑しい奴だと思っていたが遂にとち狂ったか」



「貴様、私をバカする気か?」



白ウサギの殺気だった視線を受けながらも、なれてるのか帽子屋は気にもしない。



血走った目をする白ウサギを涼しい顔で見返しす。





「バカにしてるのはお前だ。何故、あんな小娘をアリスに選んだんだ?」



帽子屋の言葉に白ウサギは不快げな顔をする。



「まさか気に入らないのか?」



「いや」



「だろうな。もしそんな事言ってみろ。殺す」



険しい表情で詰め寄る白ウサギを見て、帽子屋は再度深いため息をつく。



「何故、あの子を連れてきた?」



「あの子がアリスだからだ。アリスは不思議の国にいるべきだ」



「……どうなっても知らないからな」



「貴様なんかに心配される筋あいはない」




そう言うと白ウサギは急に走り出し、アリスとチェシャ猫の間にわってはいる。




そんな白ウサギを帽子屋はただただ呆れた表情で見ていた。

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