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真っ赤な舞踏会 その7

久しぶり過ぎてところどころ口調がおかしいかもしれません。すみません。

「何よ。何よ! トカゲのくせにトカゲのくせにアリスと一緒に楽しそうに! 私だって! 私だってアリスと一緒にいたいのに!!」



「あー、悪かったな。謝ってやるからとりあえず泣き止め」



いかにも面倒くさそうにビルがそう言う。当然ながらそんな言葉で彼女が泣き止む訳がなかった。



女王様はまるで子供のように大きな声でわんわんと泣き出す。



よくもまあ、ここまで年がいもなく堂々と泣けるもんだ。



呆れを通り越して感心さえ覚える。



「あーうるせえな。アリスどうにかしてくれ」



「どうにかって……貴方が泣かせたんでしょう……」



「もとはお前がどうにかしろって言ったからだろう?」




そりゃあそうだけど。



私は大きくため息をつく。



確かにビルに女王様をどうにかしてくれと頼んだのは私だけど、まさかあんなにあっさりと倒されるとは……



鎌を振り回しながら、勢いよく駆けてきた女王をビルは軽くあしらい、彼女の足に自分の足をかけ、いとも容易く転ばせた。



さらにビルは転んださいに床に転がった鎌を素早く蹴り飛ばし、遠くにやる。



そしてどうだとばかりに上から彼女を見下ろした。



それがおそらく女王様にはとてもとても屈辱的だったのだろう。



その結果がこれだ。



すっかり機嫌を損ね、小さな子供のように彼女は泣いている。



「女王様ももう泣かないで下さいよ……」






私が何かした訳じゃないけど、こうも泣かれると何だかとても悪い事をした気がする。



しかも顔は姉さんと同じ顔だ。



姉さんがこんな子供のように泣く筈がないとわかっていても何だかほっとけない。



「アリス……私を心配してくれるの?」



「えっと……はい」



心配と言うかとにかく泣き止んで欲しい。



「アリス……アリス!」



「え!?」



一瞬何がおこったのかわからなくなった。



目の前が暗くなったと思ったら、強い衝撃を受け、私は床に倒れ込んだ。



何が起きたのか、慌てて見れば、なんと女王様がそれはそれは力強く私に抱きついていた。




「アリス! やっぱりアリスは私の事が大好きなのね!」



待って。このパターンはどこかで見た気がする。



「アリス! 私もアリスが大好きよ!」


ああ。わかった。白ウサギだ。白ウサギと全くいっしょ。



どうしてこの世界の住人はこうも思い込みが激しいのだろう。



「おい! いつまでアリスに抱きついていやがる! さっさと離れろ!」



ああ。まだもう一人いたんだっけ。



我慢できなくなったのかビルは私と彼女との間に割って入る。



「ちょっと、トカゲ邪魔しないでくれる!?」



「うるせえ! アリスにベタベタすんな!」



「何でトカゲにそんな事言われなきゃいけないのよ!」




「うるせえ!」



ああ、もう、何でこうゆう事になるのよ。



本当にこの世界の住人って変。みんな変人ばっか。



駄目。もう呆れて私からは何も言えない。



「ねえ、アリス。私とお茶会しましょう? 私の美味しい手作りお菓子をアリスには特別食べさせてあげる!」



「バカ言うな! アリスはこれから俺と薔薇園に行くんだ!」



「薔薇園って私の薔薇園でしょう!」



「うるせえ! さっさとどっか行けよ! 邪魔だ!」



このままほっとけば、いつまでも2人は言い争うだろう。



それは困る。スッゴく煩いし。



「あの……」



「あ? どうした?」




「アリスも私とお茶会したいんでしょう? そうなんでしょう?」



「バカ言うな! アリスは俺と一緒に薔薇園に行くんだ!」



「このさいもう3人で薔薇園に行くっていうのは……どう?」



私の提案に2人は黙り込む。



そうゆう発想はなかったのか。いや、あっても言いたくはなかったのか。



2人は明らかに不満げな表情をしつつも、お互いが譲らない事をわかりきっている為か、はっきり嫌だとは言わなかった。



「アリスがそれがいいって言うなら……」



ビルはいかにも仕方ないという感じでそう言う。



女王様も実に嫌そうではあったが、いちよ頷いた。




そう言う訳で私達は3人で薔薇園へ向かう事になった。









華麗で鮮やかな、視界一杯に広がる赤。



どこをどう見ても赤、赤、赤。赤一色の美しい薔薇園。



目眩を覚える程のその圧倒的な光景に私はただただあ然とするしかなかった。



確かに薔薇と言えば赤がもっともポピュラーだ。



綺麗だとは思うがここまで赤一色だと強烈過ぎてどうにも目に痛い。



「どうだ? 凄いだろう?」



ビルの得意気なその言葉に私は頷く。



確かに凄い。



色んな意味で。



「ちょっと! 何で貴方が自慢げにする訳? この薔薇園は私のものなのよ!」




「お前のもんって誰が決めたんだ。勝手にそう言ってるだけだろう」



「誰が世話してると思ってるの!?」



「世話してるのはお前じゃなくて、トランプ兵だろう」



トランプ兵と聞いて、胸に僅かに痛みがはしる。



私を殺そうとした一人の少女。その子がトランプ兵と言われる、使い捨ての駒だと言われた時のわだかまりは未だに私の心に影をさしている。



そんな私の気持ちに2人が気づく筈もなく、薔薇園の中へとどんどん進んで行く。



置いていかれても困るので私もその後に続いた。



視界に嫌でも入る美しい美しい赤い薔薇。



華麗すぎる赤い薔薇を見ていると何故か胸騒ぎがした。








「はい。着いたわよ」



丸い丸いテーブル。そこにかけられた可愛いらしいピンクのテーブルクロス。



さらに女の子らしいオシャレなカップやティーポット、お皿、食器が並ぶそこはまさにお茶会にふさわしい場所だった。



ビルが前に出て、椅子の一つをひく。



「どうぞ」



「ありがとう……」



私が座るとビルは満足げな顔をし、当然のように私の隣に座る。



それを見て女王様は何か言いたげな顔をしたが、どうせ何を言っても無駄だと思ったのか、何も言わず、あいている椅子に座った。



彼女が座ると屋敷の方から可愛らしい少年や少女達が駆け寄ってきて、お茶会の準備をしていく。




私が驚いて、その子達を見ているとビルが不思議そうな顔をする。



「どうした?」



「この子達って……」



「女王様ご自慢のトランプ兵だ。見た事ねえのか?」



やっぱりそうだったんだ。



見た目は普通の子供と変わらないけど、この子供達はトランプ兵と言うだけあって恐ろしい子供達だ。



私はそれを身をもって知っている。



子供達は無駄口も叩かず、てきぱきとお茶会の準備をしていく。



その様子を見ているとその中の一人が私の方を向いて、まるで本物の子供のようにあどけなく微笑んだ。

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