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真っ赤な舞踏会 その4

また新たな変人が出ました。

「みいつけた」


少年が笑う。


逃げようと慌てて振り向けば、全く同じ顔の少年がそこに立っていた。


「みいつけた」


少年が笑う。


2人の手に握られた剣が光る。


あっと思った時にはもう遅い。



剣が私に向かって振り下ろされる。



もう駄目だ。



そう思い、とっさに目を閉じたその時、ふわりと体が浮き、誰かに抱きかかえられた。



「白ウサギ……?」



どうしてそう思ったのかはわからない。



でもそんな事するのなんて白ウサギしか思いつかなかった。



もしかしたら心のどこかで私は来るはずもない彼が来る事を期待していたのかもしれない。




しかし耳に届いたその声は当然ながら白ウサギの声ではなかった。



「残念」




声のした方を向けば、見たことのない男が私を笑顔で見下ろしている。


その顔には全く見に覚えがない。


しかしその声は聞いた事があった。


「貴方さっきの……」



そう、あのどこからか聞こえてきた声だ。



という事はあの謎の声の主はこの男なのだろうか。



「白ウサギじゃなくて残念だったな」



その声はどこか冷ややかで、何だかバカにされてる気がする。



「……っ、放して!」



「うわっ、暴れんな。せっかく助けてやったんだぜ?」



「うるさい! 別に貴方に助けてなんて言ってないでしょう!」




「じゃあ、来たのが白ウサギなら良かったのか?」



別にそうゆう訳で名前を呼んだ訳じゃない。



それなのに……



何だか、妙に感に触る言い方をする。



悔しくて睨みつければ、男はすまないと案外素直に謝った。



「悪気はないんだ。ただちょっと白ウサギが羨ましくてな」



羨ましいかった?



白ウサギが羨ましいかったってこと?



もしかして、この男白ウサギの知り合いなの?



どういう意味か尋ねようとした時、少年達の怒った声がした。



「何でお前が邪魔すんだよ!」



「そうだよ! 邪魔するなよ!」




少年達は剣を片手に振り回し、私を狙うように見る。



どうやらまだ鬼ごっこをする気のようだ。



まずい。このままだと殺される。



そう思って暴れるのを止めた私をかばうためか、それとも自己満足のためか、男は自分の胸元へとさらに私を引き寄せる。



「うるせえ。勝手に鬼ごっこなんかやりやがって、遊びたいなら他の奴としろ。アリスを巻き込むな」



怒鳴っている訳ではないが男の不機嫌そうな物言いに双子達が僅かにたじろぐ。



少年達の態度や話のやりとりからして、いちよ男と少年達は知り合いらしい。



「まだアリスかどうかわからないじゃないか……」



「そうだよ。僕らの事を覚えてないって……」






「他の奴らみたいに偽物かも」



「こいつは本物だ。本物のアリスだ」



男は何を根拠したのか、迷いもなくきっぱりとそう言い切る。



これには私も驚いたが双子達はひどく納得できなさそうにする。



「何でわかるんだよ!?」



「そうだよ! お前なんかにわかる訳ないだろう!」



「わかるさ。俺にはな」



そう言って男は笑う。



やはりその目に迷いはない。



「剣を下ろせ。じゃないとこっちも本気で相手するぞ?」



男の目が鋭くなる。



一瞬にして男のまとっていた空気がかわり、その事に気づいた双子達は怯えた表情をする。



「……っ」




1人が逃げ出すのと同時にもう1人も逃げ出す。



双子は2人一緒に駆け出し、あっという間に見えなくなった。



それを確認してから男から離れようと動く。



しかし腕が肩にがっちりとまわされ、離れることができない。



また変な男と2人きっり。



この国には本当に変な人達しかいない。



「貴方……どういうつもり?」



「うん? 何がだ?」



何がって、見ればわかるでしょう?



黙って睨めば、男が嬉しそうな顔をする。



「そんなに嫌そうな顔するなよ。こうされるの始めてじゃないだろう?」



「名前も知らない男にこうされるのは始めてよ。さっさと放して」



「アリスは冷たいな」






「貴方みたいな人に優しくする必要なんかないでしょう!」



さっさと放してほしくて暴れるが男はいとも容易く抑えこみ、私をなかなか放してくれない。



「いい加減に放して!」



「お礼」



「はい?」



「助けてやっただろう?」



だからお礼。



そう言って男は笑う。



確かに助けて貰った。



この男がいなければあの双子達に見るも無惨な姿にされていただろう。



「……ありがとう」



いちよお礼ぐらいはと思って言えば、男はうんと少し不服そうな顔をする。



「何?」



「お礼の言葉だけか? 感謝の口付けぐらいしてもいいんだぜ?」



「っ!?」




何でそうなる!?



「絶対にしない!」



「何だ? 嫌か?」



「当たり前でしょう!」



いくら命を助けられたからと言って、そこまでやる気はない。



「俺ぐらいの美男子はなかなか他にいないぜ?」



自分で美男子とか……



いったい何様のつもりだろうか?



何だかむかつく。



「そうかしら? 私も最近までそう思ってたけどこの国の人達はほとんどみんな顔がいいわ」



むかついて、ちょっとひねくれた答えをしてやる。



別に嘘ではない。本当にここの人達は皆、顔がいい。



無論、それはこの男もそうだが。



「俺よりかっこいい奴なんかいねえだろう?」




「自惚れ屋。他にいくらでもいるから」



「例えば?」



例えばと言われると少し困る。



ついつい言ってしまったが特に誰がかっこいいとか考えてなかった。



「そ、それは…えっと……」



「例えば白ウサギとかな」



「そうそう白ウサギとか……」



うん? 白ウサギ?


「白ウサギって……」



そう言えばさっきも白ウサギのことを言っていた。



「貴方、白ウサギのこと何で知ってるの……?」



「何でか? 知ってるに決まってるだろう? あいつは裏切り者だ」



裏切り者?



「あいつはアリスを…お前を裏切った。裏切り者じゃないか」




男はそう言って、私を見つめる。



その言葉の意味がわからず、私は呆然とその目を見返した。

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